砂塵が舞う荒野を二つの影が進む。その足取りは軽く、まるで何かを成し遂げた者たちのようだった。ドロシーは肩に掛けたバッグを片手で押さえ、微笑を浮かべている。シンデレラもまた満足げな表情でドロシーの横を歩いていた。
彼女たちの視線の先には臨時監視所の見張り台が見える。見張り台の上には紅蓮の姿があった。刀を腰に携え、遠くから接近する二人に気づいた彼女は、風に髪をなびかせながら目を細めた。
「おや、戻ってきたか。」
紅蓮はつぶやき、見張り台から軽やかに飛び降りる。地上に降り立つと、二人を迎えに砂利道を進む。
「ご苦労だったな、ドロシー、シンデレラ。」
「ありがとう、紅蓮。問題なく戻ってこれました。」
ドロシーが短く答え、少し得意げにバッグを掲げた。
「アンチェインドです。研究所に残っていた資料も持ってきたので後はラプンツェルに任せましょう。」
紅蓮はバッグの中身を一瞥し、静かに頷いた。
「良かった良かった。それがあれば、ピナの侵食も治るのだろう。」
「ええ、待っていてくださいね、ピナ。」
ドロシーの声には、隠しきれない希望が込められていた。
「他には何かあったかい?」
紅蓮の問いかけに、ドロシーは少し間を置いた。
「道中、何回かラプチャーの群れに遭遇しましたが、シンデレラのおかげですぐに殲滅することができました。第二世代フェアリーテイルモデルというのも伊達ではありませんね。」
「ゴッデスと一緒に戦うのだから、美しくない戦いはできないわ。」
シンデレラが軽く笑いながらそう言うと、紅蓮は小さく鼻を鳴らした。 そして、二人に道を譲るようにして臨時監視所への入り口を指差した。
「立ち話もなんだ、中に入ろう。」
「そうしましょう。」
ドロシーは軽やかな足取りで進み、紅蓮とシンデレラも後に続いた。
少し進むと、断続的に響く銃声がドロシーたちの耳に飛び込んできた。
「……何でしょうか?」
ドロシーが立ち止まり、音の方向に鋭い視線を向ける。シンデレラは一瞬身構えたが、すぐに戦闘の気配ではないことに気づいた。
「訓練の音だ。ネフィリムは武器を持っていなかったからのう、スノーホワイトが銃器の扱いを教えているのだよ。」
紅蓮がそう言って先導するように歩き出す。
銃声のする方向に進むと、臨時監視所の一角でネフィリムが銃を構えているのが見えた。傍らにはスノーホワイトが立ち、静かに指示を出している。
「しっかり構えろ。そう、その角度を保つんだ。」
スノーホワイトの冷静な声に従いながら、ネフィリムは手にした古びた拳銃をじっと見つめ、真剣な表情で狙いを定めていた。
「……ちょっと待て、これ本当に当たるのか?なんかもっとこう、スコープとか欲しいんだが。」
不安げに呟いたネフィリムは、引き金を引いた。銃口から火花が散り、弾丸が標的をかすめて壁に当たる。
「惜しいな。けれど、筋は悪くないと思う。」
スノーホワイトが静かに頷く。彼女の足元にはいくつかの古い銃や予備の弾薬が無造作に置かれていた。それは量産型ニケが残したものや、かつてアークに避難してきた人々の遺品だ。
「随分と熱心ですね。」
ドロシーがその光景に目を細めながら声をかけると、ネフィリムがこちらを振り返り、照れくさそうに頭をかいた。
「ああ、帰ってきたのか。スノーホワイトにしごかれてるところだよ。」
「銃を使ったことがないと言っていたからな、ここを離れる前に少しは扱えるように教えていた。」
スノーホワイトが簡潔に説明すると、ドロシーは小さくため息をつく。
そして、改めてドロシーの方を向いた。
「おかえり、ドロシー。戻ってきたなら、まず状況を聞かせてほしい。」
「ええ、もちろん。アンチェインドを見つけたました。」
「良かった。こっちはあなた達がエブラ粒子発生装置を破壊してくれたからアークと通信することができた。」
スノーホワイトの言葉に、ドロシーは一瞬動きを止めた。
「……アークからは、何と?」
その一言には、緊張と不安の入り混じった響きが込められていた。
スノーホワイトは短く息を吐き、ドロシーをじっと見据えた。
「アークからの通信では、私たちを受け入れるつもりはないと言われた。」
その言葉に、ドロシーの表情が凍りついた。
「……どういうことですか?」
声は静かだが、その裏には怒りが隠しきれない。スノーホワイトはさらに説明を続けた。
「アークガーディアン作戦の責任者が言うには、軌道エレベーター攻略戦での敗北が原因で、私たちへの非難の声がアーク内部で高まっているらしい。そのため、私たちを迎え入れるのは不可能だと。」
ドロシーの拳がぎゅっと握られた。その目は怒りに燃え、鋭い視線がスノーホワイトに向けられる。
「不可能?私たちがどれだけの犠牲を払ってきたと思っているのですか!命を懸けて戦ったのに、その結果がこれ?」
「……分かっている。けれど、アークは私たちを受け入れることはできない。」
スノーホワイトの冷静な言葉がその場に沈黙をもたらした。怒りのあまり息を荒らげるドロシーを見ながら、ネフィリムが口を開いた。
「なあ、ちょっと思ったんだけどさ。」
ネフィリムが軽い口調で切り出す。その声に、スノーホワイトとドロシーが同時に視線を向けた。
「アークに受け入れられないなら、少しくらい復讐したっていいんじゃないか?」
その言葉は静かだったが、場の空気を一瞬で重たくするには十分だった。スノーホワイトの眉が微かに動き、ドロシーは拳を握り締めた。
「……復讐、か。」
スノーホワイトが静かに言葉を紡ぐ。その目には冷静さと、どこか芯の強さが宿っている。
「確かに、私たちはやろうと思えばできるだろう。封鎖されたアークをこじ開けることもできるかもしれない。」
ネフィリムは無言で続きを促すようにスノーホワイトを見つめる。その視線を受け、スノーホワイトは毅然とした口調で続けた。
「けれど、それはしない。私たちはアークに拒絶されても、なお人類の希望であり、勝利の女神なのだから。」
その言葉には揺るぎない決意が込められていた。
「私たちが憎しみに駆られて力を行使すれば、それこそアークにいる人々を絶望の淵に追いやることになる。」
ネフィリムはしばらく無言だった。スノーホワイトの言葉が静かに胸に響く。その場を支配する静けさを破ったのは、ドロシーの小さな笑い声だった。
「ふふっ……そうですね、スノーホワイト。ありがとうございます、私たちがどうあるべきかを思い出させてくれて。」
その顔には、先ほどまでの怒りの影はなかった。むしろ、何か吹っ切れたような穏やかささえ感じられる。
「ええ。私たちはゴッデス部隊。勝利の女神であることを忘れてはいけません。」
ドロシーがスノーホワイトに頷くと、紅蓮も静かに同意を示した。その姿に、ネフィリムは少しだけ居心地の悪さを感じながらも、どこか安心感を覚えていた。
「……悪かったな、余計なことを言って。」
「いい。」
スノーホワイトが柔らかく微笑む。彼女のその表情は冷静でありながらも、どこか温かみを感じさせた。
「でも、知っていてほしい。私たちが何のために戦っているのか。それさえ見失わなければ、何も怖くない。」
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臨時監視所内の一室。そこではピナが簡易ベッドの上で横たわり、その表情は痛々しいほどに歪んでいる。彼女が時折開く目は赤く光り、衝動を抑えるかのように苦悶の声を上げる。
ラプンツェルがテーブルの上に置かれたアンチェインドの入ったアンプルをじっと見つめている。その横には、ドロシーとシンデレラが立ち、彼女の判断を待っていた。
「研究資料を読みました。アンチェインドはニケのNIMPHを破壊するようです。その結果、NIMPHに命令を出す侵食の影響を受けなくなります。」
ラプンツェルが資料を閉じ、アンプルを慎重に手に取る。その目には微かな緊張が見て取れる。
「これをそのまま彼女の体内に投与すれば……侵食は治療できるはずです。」
ラプンツェルの言葉に、ドロシーが静かに頷いた。
「分かりました。ラプンツェル、お願いします。」
ラプンツェルはピナの枕元に立ち、アンプルの封を切る。淡い赤い液体が中でゆっくり揺れているのが見えた。それをピナの口元に慎重に運び、流し込んでいく。
「……お願いです。効いてください……。」
ラプンツェルが小さく呟く中、アンチェインドはピナの喉を通っていった。一瞬、室内が静まり返る。誰もが息を呑み、その変化を待っていた。
ピナの体が突然大きく震える。
「ピナ!」
ドロシーが思わず駆け寄るが、ラプンツェルが手を伸ばして制する。
「大丈夫です……多分、効いています。」
次の瞬間、ピナの痙攣も収まり、代わりに穏やかな呼吸が戻ってきた。
「……!」
ピナの目がゆっくりと開く。その瞳は赤いままだが、以前の彼女のような理性が戻っている。
「ここは……?ドロシー様……?」
その声に、ドロシーが感極まった表情で答える。
「ピナ……良かったです。本当に……良かった。」
ピナはぼんやりとした表情で自分の体を見下ろす。侵食の影響がほとんど消えていることに気づき、目を丸くした。
「侵食が…治ったのですか……?」
シンデレラが軽く微笑みながら頷く。
「アンチェインドのおかげよ。あなたはもう大丈夫。」
「……ありがとうございます。本当に……ありがとう……。」
ピナの目にはうっすらと涙が浮かび、彼女の声は震えていた。室内に温かい空気が満ち、全員が一息つくように安心感を共有する。
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臨時監視所の外には冷たい風が吹きつけていた。曇り空の下、ゴッデス部隊とシンデレラ、そして主人公のネフィリムが向き合い、短い別れの時間を過ごしていた。
ドロシーが一歩前に出て、ゴッデス部隊の面々に目を向けた。
「ピナが無事に戻ったのは奇跡のようなものです。そして、シンデレラがクイーンを宇宙ステーションから切り離したと聞いて、私たちにもまだ希望が残っていると感じました。」
スノーホワイトは微かに頷き、静かに答える。
「そうだな。でも、まだラプチャーの脅威が消えたわけじゃない。クイーンの代わりになる存在、あるいは別の司令塔がきっといるはずだ。」
「だから、私たちはその存在を見つけて、倒す旅を始めることにします。」
ドロシーの声には力強い決意が込められていた。それを受けて、紅蓮が少し微笑む。
ドロシーは静かにピナの肩に手を置きながら続けた。
「ピナも私たちと一緒です。もし何かがあれば私たちで守りますから。」
一方でネフィリムは静かに話を聞きながら、隣に立つシンデレラに目を向けた。
「それじゃあ、俺たちはどうする?」
シンデレラは優雅に肩をすくめながら、微笑を浮かべて答える。
「もちろん、私はエイブたちを探しに行くわ。彼らが無事でいるかどうか、確かめないと気が済まないの。」
「……なら、俺もついていくさ。ここに来る前と変わらないってことだな。」
ネフィリムが苦笑混じりに答えると、シンデレラは満足げに頷いた。
「そういうこと。」
ドロシーが最後に一歩前に出て、全員を見渡した。
「これでお別れですね。私たちは別々の道を進むけれど、また会いましょう。」
その言葉に全員が小さく頷いた。その中でスノーホワイトが歩み寄り、シンデレラとネフィリムに小型の通信機を手渡す。
「これを持っていけ。」
「通信機か。ありがとうな。」
「これで私たちと連絡を取れる。2、3年に一度、お互いの無事を確かめ合って、得た情報を交換しよう。」
ラプンツェルも静かに頷いた。
「どうか無事でいてください。そして、あなたの仲間たちも見つかることを祈っています。」
「ありがとう。」
冷たい風が再び吹き抜ける中、それぞれが別々の方向へと歩みを進め始める。
「さて、次はどこを探しに行く?」
シンデレラが軽やかな笑みを浮かべながら、答えた。
「そうね、まずは私たちが訓練をしていた所、エリシオン第3ニケ研究所に行きましょう。」
多分次ぐらいで過去編は終了して指揮官の時代になります。
その間の100年間はまだ何も考えてないですが何か思いついたら投稿します。
NIMPHの無くなったニケって老化したりするんですかね?ニケの不死性はNIMPHのバックアップによって成り立っているわけですし、NIMPH無くして100年間生きていたニケもシンデレラしか居ないし、でもシンデレラはほとんどの時間を寝て過ごしてて…
ピナは生き残りましたが侵食でヘレティックに進化したわけでなくNIMPHの無くなった量産型になったのでエデン設立後に寿命でポックリという感じにしようかな、とか。
シンデレラは起こしちゃいましたけど割と万能なヘレティックパワーで何とか…
元々は侵食されない予定だったので死亡キャラ生存のタグ付けてたのですが、それに伴ってタグを消します。
100年後の主人公はどのような形態がいいですか?
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シャガルマガラ
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渾沌に呻くゴア・マガラ