斉木楠雄は告らせない   作:のぞむ

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思いの外続きを望む声が多くて評価も良さげなので今回から連載開始します!

それでは本編をどうぞ!


Ψキックな恋愛マスター

僕の名前は斉木楠雄。超能力者である。

 

えっ?知ってるから説明しなくてもいい?

何を言ってるんだ?この小説が今回から連載になるのだからこういう説明は大事だろ。ご新規様への配慮という奴だ。

 

昼休みになり、僕は生徒会室の前まで来ていた。え?四宮さんとの映画館デートはどうしたって?そんなのとっくに終わったぞ。

 

さて、四宮さんや藤原さんが来る前に昼ご飯を食べておこう。この時間こそ僕の数少ない安らぎの時間だからな。

 

「さ、斉木会長!」

 

…さよなら、安らぎの時間。

後ろを振り向くと、そこにいたのはクラスメイトの田沼翼だった。

 

やれやれ…どうしたんだ?

 

「実は…好きな人が出来たんです!…でも、どうすればいいかわからなくて…」

 

そうか。じゃあ頑張れ。

 

「ま、待ってください!恋愛において百戦錬磨と言われてる会長なら良いアイディアが浮かぶと思うんです」

 

生憎そんな通り名は持ち合わせていない。悪いが他を当たるんだな。

 

「タダでとは言いません!これを…」

 

やれやれ…言っておくが、何を渡されても答えは変わら…

 

「これ、有名店監修の高級コーヒーゼリーです。会長は甘いものに目がないと噂で聞いたんですけど…どうですか?」

 

…入れ。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

す、素晴らしい…!

 

高級な珈琲豆の豊潤な深い香りとコクが凝縮されている…更に上に乗っている生クリームとの相性も最高だ…

 

ふむ、全然嫌いではない…

 

「会長!聞いてるんですか!?」

 

あれ?君まだいたの?

 

「ちゃんと聞いてくださいよ会長!」

 

やれやれ、人がコーヒーゼリーを食べているというのに…仕方ない。話だけでも聞いてやるか。

 

しかし、下手なアドバイスは出来ないな。何故かって?それは…

 

(会長が恋愛相談…これは、会長の恋愛観を知るチャンスでは!?)

 

四宮さんが部屋の外から僕達の様子を覗いているからだ。下手な事を言えば四宮さんが喜び、その勢いのまま僕に告白してくるかもしれない。まぁ彼女は自身の好意を認めない天邪鬼のような娘だから大丈夫だとは思うが…

 

 

それで田沼、いったい誰を好きになったんだ?

 

「クラスメイトの柏木さんという子なんですけど…」

 

ふむ…確かにそんな名前の女子がクラスにいたな。

 

「…僕、彼女に告白しようと思うんです!」

 

そうか。なら告白すればいいだろ?

 

「それはそうなんですけど…断られたらと思うと怖いんです。それで色々考えてしまって…」

 

なるほど…恋愛というのはよくわからないが、そんなに怖い物なのか…?

 

それで、柏木さんとは何か接点があるのか?

 

「バレンタインにチョコを貰いました!」

 

なんだ。バレンタインにチョコを貰ったのならそこそこ親交があるんじゃないか。

 

「まぁ、チョコボール三粒なんですけど…」

 

義理じゃないか。どう考えても脈はないな。

 

(それって…義理以外の何物でもないわね)

 

流石に今回は四宮さんとも意見が一致したな…待てよ?これを上手く利用すれば、四宮さんの僕に対する好感度は下がるんじゃないか?

ちなみに好感度メーターによると四宮さんの僕への好感度は『79』。僕から告白すればすんなりカップルが成立するレベルだ。これを最低まで下げるのが今回の僕の目標だ。

 

さて…ハッキリ言うが田沼。柏木さんは…

 

「そうですよね…チョコボール三粒は流石に義理…」

 

間違いなくお前に惚れている。

 

「…えっ?」

 

(どうして!?チョコボールよ!)

 

僕の作戦はこうだ。テキトーな恋愛観を田沼に教え、それから田沼は柏木さんに告白するも撃沈。そこから僕の恋愛観の酷さが学校中に広まり、僕に恋愛相談が来る事がなくなる。更にここで話を聞いていた四宮さんは恋愛音痴の僕に幻滅し…

 

 

 

『お可愛いこと…』

 

 

 

と、僕を蔑んだ四宮さんは僕に迫ってこなくなるという事だ。

 

「でも…柏木さんにその気なんてないと思います。実はこの前…」

 

田沼によると、柏木さんから彼女はいないのかと聞かれ、田沼がいないと答えると柏木さんは友人達にそれを言いふらしたようだ。

 

おそらく揶揄われているだけだと思うが、少し大袈裟に言ってみよう。

 

喜べ田沼。お前は今モテ期が来ている。

 

「えぇっ!?」

 

お前の話では、柏木さんはお前に彼女がいなくて笑いながら友達にその事を伝えたそうだな?

 

「そうですけど…」

 

そして柏木さんの友人達もそれを聞いて笑っていた。つまり、彼女達は全員お前に好意を抱いているのだ。

 

(ポジティブすぎません!?)

 

「そ、そんな馬鹿な…」

 

(その通りよ!もっと言ってあげなさい!)

 

「彼女達の中からたった一人を選ばなきゃいけないなんて…!」

 

(あなたもバカなの!?まったく…まさか会長があそこまで酷い恋愛観を持っていただなんて…)

 

よし、だいぶ四宮さんの僕への好感度は下がったぞ。

今の好感度は『54』。二人きりになったら気まずくてなって会話が出来なくなるレベルだ。

 

「でも僕、告白なんて初めてで…どんな風に告白すればいいんですか?」

 

それなら壁ドンでもして好きだと伝えればいいんじゃないか?

 

(急に適当すぎません!?)

 

「なるほど…ありがとうございます!会長のおかげで勇気が出ました!流石あの四宮さんを落としただけありますね!

 

なっ!?

 

(えぇっ!?)

 

まさか僕と四宮さんの噂がここまで大きくなってたとは…とにかく否定するべきだ。

 

「えっ?付き合ってないんですか?」

 

(そ、そうよ!私、落とされてなんかないから!)

 

「でも会長と四宮さんって、端から見てたらいい感じに見えますけど…」

 

それだけは絶対にない。僕と彼女とでは住む世界も立場も違うのだからな。

 

「会長!大事なのは自分がどう思ってるかですよ!会長は四宮さんの事をどう思ってるんですか!?」

 

ふむ。これこそが今後の僕と四宮さんの関係を決定づける質問になるな。ここで彼女の悪い所を言えば四宮さんは完全に僕に失望する。それで僕は晴れて自由の身になれる…

 

(会長!私の事をどう思っているの!?さぁ言って!場合によっては私と付き合う事を許してあげてもいいわよ!悪口なんて言ったら承知しないから!)

 

…心の声が聞こえる僕だから知っている。四宮さんは天才故に他者を見下し、人を利用しようと画策する。そして、そんな自分が嫌になっている事も知っている…

四宮家の教えが異常であることは常人ではない僕でもわかってしまう。そんな家で四宮さんは育ち、他人と関わらず、彼女を纏う冷たさが四宮さんを『氷のかぐや姫』と言わしめてしまった。

 

だが生徒会に入ってから四宮さんは変わった。多少なり人に接するようになったし、人とコミュニケーションを取るようにもなった。

だが時折心配になってしまう。彼女の仮面が砕け、壊れてしまわないか…

 

ほっとけない感じもするが、今の彼女はさほど嫌いではない。

 

「その感じだと、満更でもなさそうですね!」

 

(という事は…会長は私に恋しているという事!まったく、会長も素直ではありませんね…)

 

勘違いするな。僕と君は同じ生徒会役員だ。あのままギスギスした雰囲気になれば仕事に支障をきたすからな。

まぁ結局四宮さんの僕への好感度は元に戻ってしまったがな。

 

「会長!僕、頑張って告白してみます!本当にありがとうございました!」

 

そう言って田沼は生徒会室から去っていった。

まぁいい。このまま彼が撃沈すれば恋愛百戦錬磨という僕の間違った噂は消えるんだからな。

 

 

 

 

 

 

数日後、田沼は柏木さんに告白し、何故か付き合えるようになったそうだ。おかげで僕の恋愛百戦錬磨の呼び名は更に広まってしまった。やれやれ…

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