斉木楠雄は告らせない   作:のぞむ

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Ψキッカーのお見舞い

「おぉ斉木!ちょうど良かった!」

 

学校について教室に向かっていた僕は別のクラスの先生に呼び止められる。この先生は確か四宮さんのクラスの担任だったな。

 

「実はな、四宮が風邪で欠席してしまってな…」

 

四宮さんが風邪だと?珍しい事もあるんだな…

 

「それで悪いんだが、このプリントを四宮のとこまで届けてもらえないか?」

 

そう言って先生は僕にプリントを渡してくる。ちょっと待て、何故僕が行かなければならないんだ?そっちのクラスの奴に行かせればいいだろ。

 

「お前四宮と同じ生徒会だろ?斉木以上の適任者はいないじゃないか。それじゃあ授業の準備があるからもう行くぞ(早くしないとピカ○ュウが逃げちゃうからな!)」

 

あんた学校でポ○モンGOやってるな?

 

 

 

 

 

 

 

 

やれやれ…面倒な事を押し付けられてしまった。僕も誰かに押し付けるか。

 

 

藤原さん…余計風邪が悪化するからダメだな。

 

石上…あいつは四宮さんに恐怖心を持ってるから断られそうだな。

 

燃堂…あいつもダメだ。藤原さん同様風邪を悪化させる危険性がある。

 

海藤…以前四宮さんにフラれて気まずいだろうが僕にとって特に困る事はないからな。あいつにするとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お?チビなら今日風邪で休みだってよ」

 

いやお前もかよ!?

 

やれやれ、行くしかないか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふむ、ここが四宮別邸か…別邸でこのデカさとは、四宮家が所有しているだけの事はあるな。

 

『どうぞ、中へお進みください』

 

インターホンを鳴らすと声が聞こえ、それと同時に別邸へ続く門が開いた。別邸まで行くとそこには金髪のメイドの姿があった。

 

「かぐや様のご学友の斉木様でございますね。私、かぐや様のお世話係を務めさせて頂いております、スミシー・A・ハーサカと申します。以後お見知りおきを」

 

丁寧に自己紹介をするメイドのハーサカさん…いや、ここでは早坂さんと呼んでおこう。

 

早坂愛。何でも幼い頃から四宮さんに仕えている近侍らしい。学園では四宮さんとの主従関係を隠しているらしく、明るいギャルとして振舞っている。

 

さて、彼女の説明はこれくらいにして見舞いの品を早坂さんに渡して早く帰ろう。

 

「良ければ斉木様が直接お渡ししては如何でしょうか?」

 

いや、僕は…

 

「いえいえ、遠慮なさらないでください」

 

そう言って早坂さんは僕を押していき、あっという間に四宮さんがいる部屋に連れてこられてしまった。

 

「かぐや様、お客人がお見えですよ」

 

そう言って早坂さんはドアを開ける。

 

 

 

 

 

 

うわぁ…寝着姿の四宮さんが部屋を汚くしてる…

 

「かぐや様!何をしてるんですか!?」

 

「だって、みつからないんだもん…」

 

「はぁ…それで、何をお探しなんですか?」

 

「はなび…」

 

花火!?

 

「お布団から出てはダメじゃないですか。風邪を治すのが先決です。それよりもお客様がお見えですよ」

 

「おきゃくさま?…かいちょう!?どうしてかいちょうがいるの?きょうからうちにすむの!?」

 

住まない。

 

しかしどうなってるんだ?いくら風邪を引いているとはいえいつもの四宮さんと様子が違い過ぎる…

 

「…人間の行動は欲望と理性によって決定されるそうです」

 

僕の心境を察したのか、早坂さんが何やら話し始める。

 

「人間の本能は欲望を生み出し続け、理性はそれらを抑制するブレーキの役割を持ちます。ですが理性の源である思考力が何らかの理由で失われてしまえば、人は欲望のままに動く獣…すなわちアホになるという事です」

 

君よく主にアホとか言えるな。

 

だが彼女の言っている事は正しいのだろう。どういう訳か先程から四宮さんの思考が読めなくなっているのだ。つまり今の彼女の知能は燃堂レベルに陥っており、思考を読む事が出来なくなったのだ

 

「一見起きてるように見えますが実際まだ夢の中にいるようなものです。元気になったら風邪の時の記憶はきれいさっぱりなくなります」

 

そう言いながら早坂さんは四宮さんをペチペチと叩く。君結構四宮さんに不満持ってたりするのか?

 

「では私は仕事に戻りますのでかぐや様のお相手をお願いします…いいですか?この部屋には三時間誰も絶対に入りませんが、変なコトをしては絶対にいけませんよ?」

 

早く行け。

 

さて、土産とプリントを置いたことだし、僕は今の内にお暇するとしよう。

 

「かいちょう…いかないでぇ…」

 

しかし四宮さんに制服の裾をぎゅっと掴まれてしまう。

 

やれやれ…少しだけだぞ。

 

「やったぁ…」

 

そう言って四宮さんは嬉しそうにする。まったく、いつもこれくらい素直ならまだ可愛げがあるんだがな…

 

四宮さん、来る途中で飲み物を買ってきたんだが飲むか?

 

「はなび?」

 

花火じゃない。

 

やれやれ…どうも今の四宮さんには話の文脈という概念が存在しないようだ。

 

「かいちょう…おこってる?…ごめんなさい…」

 

いや、怒ってない。だから君が謝る事じゃない。

 

「ううん…わたし、いつもかいちょうをこまらせてる…わたしね、どうしたらいいのかわからないの…はじめてのことばかりだから…だからわたしがしってるやりかたしかできない…」

 

…この部屋に来る途中、一瞬だが四宮家の教えが書かれている者が見えた。

『人に頼るな。成らば使え』、『人から貰うな。成らば奪え』、最後に『人を愛すな』…これらが四宮さんが家で教わって来た教えなのだろう。

 

久しぶりだ…この僕が不快感を覚えたのは…

 

「かいちょう…?」

 

気が付くと僕は四宮さんの頭を撫でていた。これには僕も驚いてしまっている。

 

「えへへ…かいちょうになでなでされちゃった…ありがとう、かいちょう…」

 

…まぁいい、どうせこの風邪が治れば撫でられた事を忘れるのだから。

 

 

 

 

 

それから四宮さんが眠りについたのを見計らい、僕は四宮別邸を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ん…」

 

斉木が帰宅してしばらく経ち、かぐやが目を覚ました。

 

「結構長い時間寝ていたような…」

 

かぐやはベッドのそばに置かれている斉木からの見舞いの品とプリントに気づく。

 

「これ、一体だれが…?」

 

「斉木会長ですよ」

 

部屋に入って来た早坂が斉木からの見舞いの品だと言う。

 

「…か、会長が!?」

 

「はい。先程までかぐや様のお見舞いにいらしてましたよ。覚えておられませんか?」

 

「え、えぇ…」

 

「そうですか。今日はもう遅いのでゆっくりお休みください」

 

そう言って早坂は部屋を後にしていった。

 

(そういえば、凄く心地良い夢を見ていたような…)

 

自分でも気づいていないが、今のかぐやはどこか嬉しそうな表情をしていた。

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