それでは本編をどうぞ!
突然だが、祭りはそこまで嫌いではない。
昔はよく両親が連れて行ってくれたものだ。金魚すくいやヨーヨー釣りを夢中になってやっていたな。懐かしいものだ。とにかく楽しくて家族全員で笑ってたっけ…何故か露天商の人達は全く笑っていなかったがな。
「あ、会長~!」
「うっす」
りんご飴を持っている藤原さんがこっちに向かって手を振ってくる。石上も一緒の様だ。
一学期最後の日に生徒会のメンバーで花火大会に行く約束をしており、今日はその花火大会の日だ。
…というか藤原さんはよく来れたな。確か今日はトマト祭りでスペインに行く日じゃなかったか?
「嫌ですね会長!やめたに決まってるじゃないですか~。夏といえばトマトじゃなくて花火と相場が決まってますから」
トマトも夏の野菜だがな。
それより四宮さんの姿がないが、まだ来ていないのか?
「花火の時間までまだ時間がありますし、かぐやさんが来るまで店を見て回りませんか?」
「藤原先輩、会長が来る前もそう言ってから店でりんご飴買ってたじゃないですか」
やれやれ…まぁいい。生徒会のメンバーの方がバカと中二病といるよりはまだマシだからな…
「お?相棒~!」
「フッ、斉木も来ていたのか…」
「あ、リッキー君に海藤君じゃないですか~!」
「お?千花っちと一年のゲーム君もいんじゃねぇか」
一年のゲーム君…あ、石上の事か。そういえばよく隠れてゲームをしてるらしいな。僕も以前風紀委員の女子に見つかって叱られてる石上の姿を見た事がある。
「燃堂先輩と海藤先輩も来てたんですね」
「おうよ!ここに来りゃうめぇラーメン食えると思ってな」
ラーメン以外に食べる物はないのか?
「…っていうか海藤先輩、前から気になってんですけど、なんでいつも手に包帯なんて巻いてるんですか?」
「これか?俺の手には強大な闇の力が宿っていてな、力が暴走しない様に普段は封印しているんだ」
「…海藤先輩、高二にもなって中二病患者とか恥ずかしくないんスか?」
「グフッ!」
「そもそも先輩、以前風紀委員に注意されて包帯外してたのに何も起きなかったじゃないですか。もし闇の力が暴走するんならその時点で校舎が木っ端微塵ですよ。だいたい…」
「石上君…そのくらいにしてあげません?海藤君泣いてますよ」
「ひっぐ…泣いてなんかないやい…ホントに力を封印してるんだもん…っ」
駄々をこねた子供か。
「それはそうとかぐやさん遅いですね~。何かあったのかな?」
藤原さんの一言には僕も同意だ。いくらなんでも遅すぎる。
やれやれ…千里眼で四宮さんの様子を覗いてみるか。
千里眼で四宮別邸の中を覗いてみるとそこには四宮さんと早坂さん、それと執事らしき人の姿がある。
「なりません」
執事が言った一言の意味は四宮さんの表情を見てすぐにわかった。
「最近のかぐや様の振る舞いは目に余ります。それに人混みの中では付き人もかぐや様を見失う恐れがあります。かぐや様にもしもの事があれば、当主様になんと申し上げれば…どうかご留意ください。これもかぐや様の為です」
少しすると藤原さんのスマホから着信音が聞こえてくる。もちろん四宮さんからのメールだ。来れなくなったという内容のな…
「お?四宮来れねーのか?」
「どうしたんですかね…」
「…もしかして」
「藤原、何か心当たりがあるのか?」
「…この前、妹とかぐやさんと一緒に買い物に行くはずだったんですけど、かぐやさんが京都にある四宮本家に呼び出されて一緒に行けなくなったんですよ。まぁ買い物は延期したから良いんですけど…もしかしたらそれが関係してるのかも…」
なるほど…差し詰めあの執事は本家から来た見張り役といったところか。
「よくわかんねぇけどよ、来れなくなっちまったんなら俺っち達で迎えに行きゃいいじゃねぇか」
「お前藤原の話を聞いてなかったのか!?家から禁止されてる可能性もあるのに俺達でどうにか出来ると思ってるのか?」
確かにそうだ。こいつらが迎えに行ったところで追い返されるのがオチだ。
まぁいい…そもそもこの花火大会がきっかけで四宮さんの僕に対する好感度が上がる危険性がある。四宮さんには悪いがこのまま家に…
(みんなに会いたい…会長と…みんなと花火を見たい…っ)
…やれやれ。
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「早坂、本当に大丈夫なの?」
「ご心配には及びません…お気をつけて、かぐや様」
「…えぇ」
本家の執事から外出禁止を言い渡されたかぐや。しかし早坂の説得もありかぐやは別邸を抜け出して斉木達の所へ向かおうとしていた。かぐやが抜け出している間、早坂がかぐやの影武者として別邸に残っていた。
かぐやは抜け出した先に偶々停めてあったタクシーに乗せてもらい待ち合わせ場所に向かっていた。
しかし交通規制の影響で道路は渋滞しており、中々先へ進めずにいた。
「お嬢ちゃん、花火大会に行きたいんだよね?」
「は、はい」
「だけど見ての通りの大渋滞だ。このままじゃ間に合わないんじゃないかい?」
「…すみません。ここからは自分の足で行きます」
「その方が良いかもね。気を付けてな、お嬢ちゃん」
「はい」
タクシーを降りたかぐやはそこから徒歩で待ち合わせ場所に向かい始める。
「そういえば、もう花火が打ち上がる頃なのに全然花火の音が聞こえないなぁ…」
「はぁ…はぁ…!」
かぐやは走っていた。かぐやにとって初めて面倒を見た後輩。かぐやにとっての初めての友達。そしてかぐやにとって、初めて出来た気になる彼。みんなと会って花火を見る為に…
しかし、必死に走り続けたかぐやの体力は限界に近づいて来ていた。それでも痛みが走る足に鞭を打ち、かぐやは進み続けた。
やれやれ、花火くらいで頑張り過ぎだろ。
そんな声が聞こえた気がしたその時、かぐやの目の前に大型バイクが停まった。
バイクに跨っていた人物がヘルメットを取ると、かぐやの表情は一変した。
「会長…!」
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やれやれ…ようやく四宮さんを見つけることが出来た。
「か、会長…どうしてここが…?」
君を見つけるくらい(千里眼を使えば)僕には簡単だ。
「へっ!?そ、それって…(会長、簡単に見つけられるくらい私の事を!)」
話をしている暇はないんじゃないのか?
…早く乗れ。
「え?」
みんなと見たいんだろ?花火。
「…はい!」
四宮さんを後ろに乗せ、僕はバイクを走らせる。
ちなみに読者にだけ話しておくが、この如何にもヤンキーが乗りそうなデザインのバイクは僕のじゃない。停めてあったのを僕がコッソリ借りてきたのだ。今頃バイクの持ち主は慌てふためいてるだろうな。後でちゃんと返さないとな。
「バ、バイクがねぇ!?しっかり鍵しといたはずだぞ!」
その頃、紫色の髪の男が慌てふためいていたそうな…
「あ、会長と四宮先輩来ました!」
「かぐやさ~ん!会長~!こっちこっち~!」
「藤原さん、石上君…」
「お?待ってたぜオメーら!」
「フッ、よく来たな四宮さん」
「燃堂君に…えっと…?」
「俺さ、漆黒の翼こと海藤瞬だ」
「あ、そうでしたね。ごめんなさい海藤君(以前愚かにも私にラブレターを送ってきた生徒ね。虫ケラ程度にしか思っていなかったから忘れていたわ)」
やれやれ、さっきまでの必死さはどこに行ったのか?さっそく海藤に毒を吐いてきたな。
「にしても全然花火上がんねーな」
「花火が上がらない?」
「それがですね~。花火を打ち上げる道具に不具合が起きて花火を打ち上げられないってさっき放送で言ってたんですよ」
当然花火を打ち上げられなくしたのは僕だ。四宮さんを迎えに行く前に超能力で打ち上げ道具に細工をさせてもらった。ここに着いたタイミングで道具は直しておいたからそろそろ…
『大変長らくお待たせしました。只今より花火大会を開始します』
放送が終わると同時に夜空に花火が打ち上がった。
「お?花火打ち上がったぜ!」
「おー…綺麗っスね」
「た~まや~!!」
「フッ、こういうのも悪くない余興だ(わぁ~!すっごく綺麗だな~!)」
確かに、花火を見るのも悪くないな。
(綺麗…)
四宮さんはすっかり近くで見る花火の虜になったようだな。
(ありがとうございます、会長。私に花火を見せてくれて…)
やれやれ…結局四宮さんの僕に対する好感度がまた上がってしまったな…
良かったな、花火が見れて。