この世は今日も愉快かな   作:上条信者

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ダメだ……今日の俺は本当にダメだ……


かくも炎がごとき輝き~アンスリウム~ 3

 「……」

 「まあまあ、次があるよクルルー」

 

 ありがとう、本音さん! あなたがお友達で良かったです……!

 

 「やだなぁ~、大げさだよ~。それにしても、今日だけでお友達がいっぱいできたね~」

 「……ッ」

 「何故かおりむーに話しかけようとする人とお友達になっちゃって、そのまま本来の目的を忘れちゃうんだよね~」

 「……ッ」

 

 そうなのだ。

 結局放課後までに彼と勉強するという誘いを告げる事ができず、部屋に運び込まれているはずの荷物などの整理の為彼と別れのあいさつを交わして寮に来てしまった。

 世界で唯一の男性IS操縦者ということが彼の注目を引いていたのだろう、休み時間に話しかけようとすると、オルコットさんと同じように誰かしらが先に彼と話している後だった。

 しかも皆似たように彼にISの勉強の誘いをかけるので、その度に会話の流れに割って入ってお友達の握手を求めて行ったのだ。

 その数はクラスの半分以上に昇り、皆こちらに好意的な印象を抱いてくれたのか、それとも慌てる私に嗜虐心を擽られたのか、今日だけで私の立ち位置はすっかりイジられキャラとして定着してしまった。

 クラスに早く馴染めたことや、多くの友人を得られたことは嬉しいのだが、意図したことと違うお友達の増え方にどうも釈然としない気持ちになる。

 それに本来の目的は未達成なのだ。

 喜んでいいのか落ち込めばいいのか、複雑な心境というものを久しぶりに感じていた。

 姉妹達から『お母さん』と呼ばれた時の心境と似てた気がする。

 

 「…………」

 「明日があるさ~、悩んでてもしょうがないよ~」

 

 今日の出来事を思い出して再びブルーになっていると、本音さんがニコニコと笑いかけながら慰めてくれた。

 ……そうですね、いつまでも落ち込んでても時間が勿体ないですもんね。

 うん! そうと決まれば頑張るぞー!

 ふんすっ!

 

 「おお~! 元気になったクルルーって可愛いね~」

 「ッ!?」

 

 ど、何処が可愛いかったんですか?

 自分ではよくわかんないんですが……。

 

 「も~その反応も反則だよ~!」ムギュー!

 「ッ!? ッ!?」オタオタッ

 

 本音さんがからかっては私が恥ずかしがり、私が逃げたしては本音さんが抱きついて捕まえる。

 そんなお友達とのじゃれあいを楽しんでいる内に、寮に着くまでにはすっかり日が暮れたのだった。

 

 

 

 

 「……」

 「クルルー、謝るから機嫌直してよ~・・・」

 「ッ!」

 「ああ~……」

 

 始め私は、正直クルヴィ・エレフセリアという少女を怪しんでいた。

 今年簪お嬢様のメイドとして一緒に入学する時に、盾無お嬢様やお姉ちゃんから渡された重要人物に関する情報。

 その中の一つ、“要注意”と書かれた項目に記された人物が、クルヴィ・エレフセリアだった。

 ツァラストゥラ・プランク進化人類学研究所、ISの登場から様々な新機軸の発見を世に送り出してきた学会や世間にも有名な研究機関である。

 特定の機器を使って遠くの物や固定の難しい物などを念じるだけで制御できるという“キネシス”や、記憶野の情報をある程度転写することの可能な“メトリア”など、今までオカルト分野とされてきた超能力を理論的に科学応用するという偉業を可能にした初の研究所であり、その技術は現在のISにも応用され、イギリスの軍事会社と合同開発も行ったというのも業界では有名だ。

 社会的貢献や世間からの支持は測り知れず、その規模は個人研究所でありながら強大なシェアを誇っている。

 |表の話では≪・・・・・≫。

 

 「クルルぅー……」

 「ッ!」ピクッ

 

 情報によれば、かの研究所はIS登場前のロシアから支援を受けていた頃から、まったく情報を洗えない子供達が収容されていたらしい。

 人種はバラバラ、経歴を追えるような共通の特徴もなく、そして集める目的も不明。

 これだけでも十分怪しいが、情報にはまだ先があった。

 クルヴィ・エレフセリア、この人物の個人情報が偽装されていると|断定≪・・≫されたことだ。

 怪しい、これはもはや真っ黒だ。

 あの時のお嬢様やお姉ちゃんは眉を顰めて辛そうな表情だった。普段は真意を曝さないお嬢様ですらそうだったのだ、私に伝えていない情報があるのだろう。

 もしかしたら、わざと伝えていないのかも。2人とも優しいから、私には荷が重いと気遣われたのかもしれない。

 とにかく、それだけでも私が彼女に対して警戒心を抱くには十分な情報だった。

 

 「クルルーに嫌われちゃったよ~せっかくお友達になれたのに~」

 「ッ! ッ!」ピクッピクッ

 

 しかし、教室に入ってきた少女は、あまりにも純粋だった。

 

 「悲しいよ~もう生きていけないよ~」

 「ッ!?」オロオロ

 

 生まれ付き声を出せないというハンデを抱えていながら、怪しい研究所で恐らくまともな扱いを受けたとは思えない境遇にありながら、彼女が伝えてくる胸の内に、静かに心を打たれたのだ。

 みんなと仲良くなりたい、みんなと対等でありたい。

 普通ならば特に意識することはないが、心のどこかでは皆が密かに願っている想い。

 だけど、彼女は一般的な意味以外での願いがあるように感じられた。

 多分彼女は、友達というものについてある程度のイメージがあるのだと思う。

 そうでなければ、恥ずかしがったり時折大げさだったりする所はあるが、ここまで自然に溶け込むことはできないだろう。

 彼女は友達ができたことを喜びはするが、友達に対して依存はしていないのだ。

 まるで互いの距離の取り方を知っているかのような対応。

 始めはぎこちなかったものの、初日にしてクラスの中でイジられキャラとして君臨する程周りに受け入れられていたことから、私よりも適応力があるかもしれない。

 警戒心を持っていた私も、今や彼女がお友達であるということに違和感を感じなかった。

 それだけ彼女の周りは居心地が良く、そして彼女は普通よりも純粋に感情を現わしていた。その裏表ない態度での恐らく無意識での行動が、これまた純粋で穢してみたいようなイジめてみたいような小動物の赤子のような可愛らしさを感じる。

 今みたいに、どこかからかわれていると感じながらも、必死に手話で謝罪をしてくるところとか。

 

 「ッ!!」ワタワタッ

 「あはは~大丈夫だよクルルー、クルルーの可愛いところを堪能したから元気いっぱいだよ~」

 「ッ!?」ガーン!

 

 ようするに、私の中のクルヴィ・エレフセリアは、これが相手を欺く演技でない限り、とてもじゃないが悪い事ができそうな娘には観えなかった。

 お友達としてそう言い切れるものも、彼女の魅力の一つだった。

 今度簪お嬢様に紹介してみようかな?

 

 

 

 

 「…………」

 

 一夜明けて、今日も元気にみんなと勉強を頑張ろう! ……とは行かなかった。

 昨日は彼との勉強の為に色々と準備をしていたのだ…………徹夜で。

 いそいそと、その内は今日のことを振り返ったり彼との勉強を想像しながらワクワクと、準備を進めていたらいつのまにか朝になっていたのだ。

 

 「おはよう、クルヴ、ィ……?」

 「………………」

 

 そういえば、彼は名前でいいぞって言ってたけど、まだ恥ずかしいなぁ。本音さんとは同じ部屋だったから嬉しいなぁ……でも彼が女の子と同棲だったなんて驚いたなぁ……彼は年相応な感性をしてるら吃驚しただろうなぁ……彼が女の子だったら大丈夫なんだけど、女の子の彼は可愛いのかなぁ……織斑先生が綺麗だからきっと可愛いんだろうなぁ……それでも彼の色は変わらないんだろうなぁ……えへへ、準備も納得いくできだったしいっしょに勉強できるかなぁ……女の子だから話題が弾むだろうなぁ……あれ? 彼は女の子だっけ? 男の子だったけ? ……まぁ、いっしょに勉強できるならどっちでもいいやぁ。

 

 「……ッ~♪」

 「お、おい、クルヴィ? どうした? 大丈夫か?」

 「……ッ。……ッ~♪」

 「明らかに緩みまくってるぞ!?」

 「……ッ。…………ッ!?」

 

 眠気で若干思考が変なところに向かってた気がする。危ない危ない。

 あれ? いつのまにか彼が目の前にっ!?

 ええっと……! おはようございます!

 

 「ッ!」

 「あ、ああ、おはよう」

 

 えっと、ここまで近くに居るってことは、もしかして今までの状態を観られていたのだろうか……?

 …………わ、わぁ!

 

 「~~~~~~~~~~~~~~ッ!!」

 「おおっ!? ものすごい赤くなってどうした!? 熱でもあるのか!?」

 

 彼が心配してのか顔を覗きこんできた! さらに羞恥心を加速させた私は、顔を見られないように必死に腕で顔を覆い隠す。

 

 「ッ! ッ!! ッ!!!」

 「お、おい? 本当に大丈夫か?」

 「ありゃりゃ~これは厄介だね~」

 「あ、のほほんさん、おはよう」

 「おはよう~、それはさておき、おりむーここは私に任せて~もうすぐ授業だし~」

 「えっ? 恥ずかしがり屋ってことは昨日で解ったけど、ボーっとしてたし風邪でも引いてるんじゃないのか?」

 「いや~、むしろおりむーがここに居る方が原因かな~?」

 「……俺、なんか悪いことしたか?」

 「ん~、まぁ大体おりむーのせいかな~?」

 「マジか」

 「あ、でもクルルーの自業自得でもあるから~。そんなに気にしないでも大丈夫だよ~」

 「そうなのか? まぁ、よくわかんないけど、のほほんさんに任せるよ」

 「はいは~い」

 「ッ!? ッ!!? ッ!!?!?」

 

 わ、わぁ! わぁ! ううううううう、どうしてこんな役回りばかり……。これからも私はこの立ち位置なのだろうか?

 ……姉妹達が感情豊かになってからは一番下の私がイジられ役だったなぁ。もはやこういう星の下に産まれたと諦めるしかないのだろうか?

 

 「クルルークルルー」

 「ッ!」

 

 本音さんの声が聞こえるが、今は恥ずかしくて堪らないので放っておいてほしいです……。

 

 「クルルー、昨日はずっとおりむーとの勉強会のために頑張ってたよね?」

 「……ッ」

 「それでちょっと疲れちゃって、おりむーに恥ずかしいところ見られて、どうしようもなくなちゃった?」

 「……ッ」

 「クルルーのそういうところが可愛いんだけど、ちょっと気にし過ぎかな~。私だって今日起きた時に寝ぼけて壁にぶつかっちゃったしね~」

 「…………」

 「もちろんその時私も恥ずかしかったよ~? でもね~、失敗しない人なんていないよ? おりむーだって昨日大失敗してる訳だし~。だけど、私もおりむーもあんまり気にしてる様に見えないでしょ~?」

 「……ッ」コクッ

 「それはね、『次は気を付けよう』って思ってるからだよ~」

 「ッ!」

 「失敗しても、次に活かすために、むしろその場で失敗を利用するくらいの気持ちで頑張ればいいんだよ~」

 「ッ!!」

 

 衝撃だった。本音さんの言葉の一つ一つが確実に心に沁み渡る。

 私は少し肩意地を張っていたのかもしれない、そう反省することができた。

 人は完璧にはなれない。一つの研ぎ澄まされた完璧な力を持った者は、もはや人間としての摂理や倫理観から外れてしまっている。

 私は久しぶりに味わう友達という関係性に、どこか神聖なものを感じていたのかもしれない。

 前世の記憶が喚起されて、親友と呼ばれる人物と自分の付き合いを思い出した。

 友達とは心を許し合う物、言いたいことは踏み込んで、言いたくないことは気遣って、ここまでと思える姿を曝しあう。

 気安い、とはちょっと違う。そこにある種の信頼を抱きながら、あくまで素っ気なく、近しい関係。

 そっか、そうだったね……。

 また一つ、学んだ気がする。ああ、姉妹達が居たら教えてあげたいなぁ。彼女達とは家族だったから、お友達のことはあんまり教えてなかった。

 そのことを少し後悔した。

 だけど、もしまた会えることがあるなら、彼女達に聞いてみることにしよう。

 ありがとう、本音さん。

 そう手話を返す。

 

 「ッ!」

 「どういたしまして~」

 

 うん、今考えたら、彼の為に頑張ったんだからあんまり恥ずかしがるような事じゃない気がする。

 うんうん、そうだよ。彼との勉強の為の準備を――――――――――――――

 

 「…………ッ!!」

 

 あ、また誘うの忘れてた。せっかく朝から彼と話せたのに。

 

 「…………」

 

 ……頑張るもん、次は頑張って誘うもん…………多分。

 

 「その意気だ~勝機はあるぞクルルー!」

 「ッ!!」

 

 本音さんの言葉に拳を握り、次のチャンスへの意志を固めるのだった。

 

 

 

 

 「それではこの時間は実戦で使用する各種装備の特性について説明する」

 

 織斑先生の授業は真面目に聞かないと、容赦なく出席簿で教育的指導を施されるので皆緊張感を持って臨む。

 私も眠気で少し頭がボーっとするけど、出席簿の教育的指導は勘弁してほしいので必死に目を擦り、聴覚を研ぎ澄まして織斑先生の言葉を待ち構えていた。

 

 「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出す代表者を決めないといけないな」

 

 そう言うと織斑先生は、クラス代表者の努める役割を簡単に説明する。

 どうやらクラス代表者は、普通の学校で言うクラス委員長のようなものらしい。

 クラス代表戦以外にも、生徒会への会議や委員会への出席など細々とした仕事があるようだ。私は喋れないから、会議とかそういうのは無理だろうなぁ。

 イジられ役だからみんなをまとめられるかも解らないし。

 セシリアさんなら、まじめだし代表候補生だからリーダーシップを発揮できるんじゃないかな。

 

 「はーい、織斑くんを推薦します!」

 「私も彼がいいと思いまーす!」

 「では候補者は織斑一夏。他にはいないか? 自薦他薦は問わないぞ」

 「ッ!?」

 

 え゛? 彼がクラス代表者?

 ……う~ん、まだ実力や意識としては不十分かなぁ? だけど成長の幅や彼自身の性格的にもそんなに悪くないかもしれない……?

 

 「お、俺!?」

 「織斑、席に着け、邪魔だ。さて、他にはいないのか? いないなら無投票当選だぞ」

 「ちょ、ちょっと待った! 俺はそんなのやらな――――――――」

 「自薦他薦は問わないと言った。他薦された者に拒否権など無い。選ばれた以上覚悟しろ」

 「い、いやでも―――――」

 

 あ、でもそうなると彼の負担が増えちゃって一緒に勉強できる時間が減っちゃうかも……。

 だ、だめっ! だめ、だけど……。

 ……彼の立場を考えると、早急に実力を付ける必要があるというのも解る。

 世界で唯一の男性のIS操縦者、その肩書きは世界を揺るがしたと言っていい。

 少なくても、各国はどのように起動させることができるのか徹底的に調べ尽くそうとするだろう。

 ……私のように常識非常識問わずに、だ。

 だけど、彼はブリュンヒルデ、織斑千冬の弟だ。彼女がそんなことを許せるはずがない。

 たぶん、彼がIS学園を入学させたのも、国際IS委員会の出頭要請から自分の手元で護るためつもりなのかもしれない。

 そう考えると、彼に実戦経験を積ませ、自衛できるようになってもらう機会を多く得られるだろうクラス代表者の立場は非常に魅力的に思えた。

 でも、それではセシリアさんは納得しない。

 

 「待ってください! 納得できませんわ!」

 

 ダンッ! と机を叩きながら立ち上がり、大きな声を出して異議を出した。

 やっぱりぃ……。

 

 「そのような選出は認められません! クラス代表者とはクラスの顔ですわ! まだISに乗って幾ばくも無い素人に任せるなど言語道断です!」

 

 わぁ、セシリアさん、結構日本語が達者ですねぇ……。

 ……現実逃避するな、私。愚痴は墓場で言えばいい。

 だから今は、どうすればいいか考えなくちゃ。

 

 「負けでもすればそれこそ、代表候補生としての私のプライドが許しません! そ、それに……」

 

 セシリアさんの色は黄色以外に青とコンプレックスの濁色などが混ざり合って非常に見えにくくなっていた。

 代表候補生としてのプライド、男に対するコンプレックス、だけど友人として受け入れた人物への侮辱ともとれる発言に対する苦悩。

 それらがせめぎ合っていて、素直になれなくて、彼に対するきつい態度に変わっているのだと思う。

 どちらとも大切なお友達だ。それにセシリアさんは、予想外だったが初めて私が自主的に作ったお友達なのだ。

 だから彼の事情と彼女の心境、両方を満たせる解決策を出さなければならない。

 なぜなら私は2人のお友達なんだから。

 

 「い、いち・・・ッ! 極東の無知な男なんぞでは恥さらしです! 物珍しいからと曲芸を仕込むためにクラス代表者の枠に推薦するのは私にとってあまりに屈辱ですわ!」

 

 言えば言う程漂ってくる|香辛料≪こうかい≫の匂い。

 ダメだ、このままどっちも傷ついて、擦れ違ってしまう。

 何か、何か解決策を……!

 

 「大体、こんな男が転がってる様な文化としても後進的な国で暮らすこと自体、耐えがたい恥辱で―――――――――――――」

 「イギリスだって、大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

 「ぁっ……。お、おいしい料理は沢山ありますわ! あ、あなた、私の故国を侮辱しますの!?」

 「先に侮辱したのはそっちだろ」

 

 売り言葉に買い言葉。引っ込みの着かなくなった2人の良い争いはますます激しくなっていく。

 そして遂に、セシリアさんが決定的な行動に出た。

 

 「決闘ですわ!」

 「おおいいぜ、四の五の言うより解りやすい」

 

 わ、わぁ! どうしよう、このままじゃダメなのに、ええっとええっと、ああもうなんだか解らなくなってきた!

 あああああああああああああああああああもう! もうもうもうもうもう! いっちゃぇえええええええええええええええええええええ!!

 

 「わざと負けたら私の小間使い、いえ、奴隷しますわよ!」

 「ッ!!」

 

 私は2人が言い争う中、なるべく注目を引くように音をたてながら立ち上がった。

 

 「どうした、エレフセリア。貴様もクラス代表者に立候補するつもりか?」

 「……ッ」

 

 織斑先生は静かに笑っていた。

 やはり、彼に経験を積ませる意味でクラス代表者に選ばせるつもりだったのだろう。

 セシリアさんの行動も、ある程度予測していたのかもしれない。

 納得のいく計略だったし、そこにさらに私が加わればまさに棚から牡丹餅だったはずだ。

 これが織斑先生の思い通りだとしても、私は賛成する。

 だけど、2人は私のお友達だから、こんな風に傷つけあうのは見たくない。

 彼には経験を、彼女には謙虚を、なら私は2人に踏み込む覚悟を。

 

 「よろしい、ならば織斑、オルコット、エレフセリア。この三人で模擬戦をやってもらう。次の月曜に第3アリーナにて決着をつけろ。3人は各自準備しておくように」

 「……解りましたわ」

 「解りました」

 「ッ!」

 

 これからのために、これまでの関係を壊そう。

 先へ進むために、今までの彼等を変えよう。

 ここにいるために、それまでの自分に別れを告げよう。

 

 「……ッ!」

 

 恐いけど、無くしてしまうのが怖いけど、それでも眺めるだけじゃダメだから。

 余計なおせっかいかもしれない、ただの自己満足かもしれない、もしかしたら私が何もせずとも納まるかもしれない。

 だけど決めた。私は2人と戦う。お友達として、これからもお友達でいるために。

 私は、自分を曝け出すことで、自分を変えよう。

 

 『…………』

 

 3人の視線が静かに交わる。

 しかし私を見る2人の色には、動揺と困惑が刻まれていた。

 それに対して私はペコリと頭を下げる。

 そしてしっかりと決意を伝えるために、言い争いでお互いの近くに居た2人の手を強く握った。

 

 「ッ!!」

 「ッ! ……解りましたわ、クルヴィさん。このセシリア・オルコットの誇り掛けて、全力でお相手いたしますわ!」

 「……よくわかんねぇけど、クルヴィがやるってんなら俺も手加減はしないぜ」

 「ッ!」

 

 2人から闘志を示す輝く炎のような紅が燈される。

 私もそれを見て、決意と覚悟を固めたのだった。

 さぁ、互いを認め合うためのOHANASHIを始めよう。

 




明日は寝よう……泥のように……
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