この世は今日も愉快かな   作:上条信者

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その芯の強きかな~サギソウ~

「・・・来ないな」

「・・・ああ、来ないな」

「来ないね~」

「・・・・・・」コクコクッ

 

クラス代表者を決める模擬戦の当日。

どこからか今日男性IS操縦者の模擬戦が行われるという情報が漏れ、アリーナには既にクラス以外にも多くの生徒が詰めかけていた。

一夏さんの注目度がどれほどものかというのが見て取れると言うものだ。

しかし予定の開始10分以上過ぎても模擬戦が始まらないとあってか、疑問の飛び交いがざわめきとなって広がりつつあった。

一夏さんの情報収集のために用意されるはずだった専用機が未だに届いていないのだ。

代わりに練習機を申請しようにも、この時期はタッグトーナメントに備えて2、3年がそれぞれの集大成を披露しようと燃えている為、予約は連日いっぱいいっぱいで空きがない。

必然的に専用機の到着を待つしかなくなる訳だが、そろそろ何か放送でも入れなければセシリアさんのこめかみがすごいことになっている。

その様子を箒さんに誘われたので、通訳の本音さんと共に一夏さん側のピットで眺めている。

 

「うわっ、セシリアめちゃくちゃ怒ってるな・・・」

「あれだけ啖呵切っておいて直前になって待ち惚けではな・・・」

「このままだとおりむーのシワ寄せが凄いよ~」

「・・・・・・」コクコクッ

 

ここは時間稼ぎの意味で何か余興でもしないと本当にセシリアさん置いとくにしても興味本位の生徒達が帰ってしまうかもしれない。

それは織斑先生の狙い的にも彼の事情的にもあまりよろしくない。

ISを動かせるとはいえ、まだ学園の生徒達の中には一夏さんが“男性”であるということでどこか軽視している節がある。

先日、クラスの一人がこう言っていた、『今からでも遅くないから降参すれば?男が女より強いなんて昔の話だよ?』。

この意識がある限り、彼の立場は“見世物パンダ”の域を出る事はできない。

唯一の男性IS操縦者に物珍しいという評価では、今後の一夏さんが自分の身を護るには足りない。

一夏さんに集まる人達が、皆“善意”を持っている訳ではないのだから。

なら手っ取り早くその評価を覆すにはどうするか?

織斑先生の狙いはそこにあるんだろう。

眠りこけた瞼を盛大なデスメタルで叩きで起こすように、実力を魅せ付けることによって彼女達に知らしめるつもりなのだ。

お前達が強いのは“女”だからではない“IS”があるからだ、と。

そのためにも観衆は多ければ多いほど良い、実感は噂となって広がり、噂は評価となって繋がる。

なら私にできることは?

・・・・・戦闘は禁止されてるけど起動くらいなら何とかなるし、それに一つの余興にはなるかもしれない。

 

「・・・ッ・・・ッ」

「へ~クルルーの専用機ってそんなこともできるんだ~。でもクルルーは大丈夫なの~?」

「・・・ッ!」コクコクッ

「ん~一応織斑先生に聞いてみるね~?」

 

本音さんにはホントお世話に成りっぱなしだ。

中々思いを伝えるのが難しい私の頼みに、いつも二つ返事で通訳を買って出てくれるのは心苦しくもあるが素直に嬉しい。

今度おいしいケーキでも買ってきてあげよう。本音さんはお菓子類が大好きだし。

 

「織斑先生、クルルーからの伝言です~」

「・・・なんだ、言ってみろ」

「『時間稼ぎに、余興を一つお披露目してもよろしいでしょうか?客寄せもできますよ?』です~」

「・・・ふむ、いいだろう。ただしISの起動は部分展開だけだ」

 

・・・ばれてる~。

やっぱり織斑先生はすごいな、色も感情を抑えてるから普段はまったく視えないし。

最強と呼ぶに相応しい壮大さだ。

この人にとっては頂きに立つ為の大会すらも些事に過ぎなかったのだろう。

唯一の家族である弟については、かなりの愛情を注いでいるに違いない。

・・・私も姉妹達を可愛がっていたので実感がないが、織斑先生ってやっぱりブラコンなんだろうか?

 

「・・・エレフセリア、余計なことを考えている暇があったらとっとと行け」

「ッ!?ッ!?」ビクゥッ!

 

思わずビシィッ!っと敬礼した後、一目散にピットからアリーナへと駆けだす。

なんでESPもないのに心が読めるんでしょうか?

あれですか?最後に愛は勝つんでしょうか?

私も見習いたいです。

 

「クルルー頑張ってね~」

「のほほんさん、クルヴィは何をするつもりなんだ?」

「時間稼ぎと客寄せだって~。やったねおりむー!乙女が増えるよ~!」

「これは良い方に受け取っといた方がいいんだろうか?」

 

 

 

 

喧騒に包まれるアリーナに、気付けば静かな音色が響いていた。

空耳にしては耳障りのいい、細く、金属が共鳴して浸透いくような音。

セシリアはその音色をハイパーセンサーによってすぐさま拾い上げると、その出所を探ろうと視覚を強化して音源に耳を澄ました。

一人の見知った少女、先日友人としての握手を交わしたクルヴィ・エレフセリアが、ピットの入り口付近で何かを触れているような動きをしている。

 

「部分展開・・・?アレは何かの武装ですの・・・?」

 

薄紫色の花弁のような形をした浮いた何かを部分展開した腕部の指で撫でるように触れる度、反響する薄く儚い音色が拡散して、セシリアの苛立っていた心が静められていく。

 

「綺麗な音色・・・しかしこの聞き覚えのない曲は・・・?」

 

いつしかアリーナはこの音色だけが響いていた。

目を閉じながらゆったりと椅子に座って思い出を追想するような、そんな情景と共にセシリアは一つの記憶を思い出していた。

あれは自分がまだ幼く、事故で他界した両親が健在だった頃・・・。

父は婿養子で、いつも母の実家に対して強い引け目を感じ卑屈な態度ばかりとっていた記憶しかない。

そんな父に呆れたように、母はまるで諦めたかのように家を切り盛りしていた。

だが追憶の中の自分に向ける父の顔は、まるで誇りを持った母の顔となんら変わりない力強い笑顔だった。

 

『セシリア、よく聞きなさい』

 

小さい、本当に小さい自分の目を見つめながら話しかける父。

知らない、こんな父の顔は見たことがない。

 

『父さんは母さんに惚れただけの、レストランでバイトをしていたしがない店員だった。高いスーツを着こなす自信も、家を護るだけの才能も、上流階級で生きて行くだけの教養もない』

 

言っていることは記憶の中で聞き慣れた、酷く情けないことばかりだ。

だけど、何故か誇りに満ちていて、父は確かに“男”の顔をしていた。

 

『それでも母さんに愛して貰えたことは父さんの誇りだ。だけど父さんは母さんに迷惑掛けてばかりだから、唯一労ってやれるとしたら中途半端に磨いた料理の腕前ぐらいだな』

 

そういって父は苦笑いしながら私の小さな手の上に自分の手を乗せた。

冷たい水や火の熱などでボロボロになった、貴族には相応しくない下々の身分の手だ。

 

『会食の料理と比べるべくもなく劣る料理を、母さんはおいしいと言ってくれる。それだけは父さんの自慢なんだ』

 

ああ、そんなことも言っていたかもしれない。

何故忘れていたんだろう。男は、“父”は、情けない人だけど、ちゃんと母と自分を愛していたのに。

確かこの後父はこう言ったのだ。

 

『いつか・・・お前に大切な人ができて、辛さを顔にこぼしていたなら、自分の願いをそっとしまって、黙って隣で労ってあげなさい』

『だまって・・・?』

『そうだ、夫婦円満の秘訣さ。何も言わないのが夫婦の心遣いだ。黙って・・・願いだけを込めて・・・』

 

情けなくなんてない、父は立派な紳士(ジェントルマン)だった。

ちゃんと戦っていた、ちゃんと家族を愛していた。

自分は・・・そんな大切なことを忘れていた・・・。

 

「お父様・・・」

 

ふと気付くと、静かに響いていた音楽は終わっていた。

目を開くと歪んだ視界が広がっていて、自分は泣いているのだと理解した。

慌てて涙を拭うと、いつの間にかクルヴィは部分展開を解き、一礼のあとにピットの奥へと戻っていくところだった。

今の音楽はクルヴィの専用機から出ていたのだろう、しかしそんな機能を持ったISなど聞いたことがない。

体調不良のためクラス代表者から辞退したらしいが、もし戦うことになっていたらどんなISが飛び出していたのか想像もできない。

先程の追憶を踏まえてそんな考えに耽っていると、歓声と共にピットからISらしき機影が飛び出してきた。

確認するとそれは先程から待ちに待った今回の模擬戦の相手、そして男の分際で自分に交友を求めて来た同い年の男性。

家の財産を目的に近づいてきた有象無象の輩と同じ男であるクラスメイト。

いや、それを今からそれを見極めるのだ。

彼が今の時代であっても、父のように“男”として生きているのかを。

 

「日本の男性は随分と淑女(レディ)を待たせるのがお好きなのですわね?」

「勘弁してくれよ、スーツが決まらなきゃ淑女(レディ)にも失礼だろう?」

「あら、お上手ですわね。なら一曲ご一緒してくれませんこと?私とブルー・ティアーズが奏でる円舞曲(ワルツ)を!」

「悪いがフォークダンスしかやったことねぇよ!」

 

彼がこのセシリア・オルコットの友人足り得るかを。

 

 

 

 

ISを触れた時理解した、これがどんな目的で造られたのか、千冬姉ぇがどんな景色を見ていたのか。

自分は護られていた、3年前のあの時も、それよりもっとずっと前から護られていた。

箒が渡してくれたクルヴィの作ってくれたというISやセシリアに関するノートの最後にこう書かれていた。

 

『ISは力です。己の道を駆け抜けるための力です。織斑先生はその力を、あなたの為に使い抜きました。あなたもどうか、自らの力の使い道を見つけられるように考えてみてください』

 

その意味がようやく解った。

偶然だろうが必然だろうが、俺は“織斑千冬の弟”という手に余るネームバリューに組み込まれている。

同時に期待されていて、それを裏切ることは千冬姉ぇの名誉を傷つける事になるのだ。

こんなプレッシャーを受けてもなお、千冬姉ぇは俺を救うために駆けつけてくれた。

なら今度は俺が家族を護る番だ。

俺は魅せなきゃいけない。

織斑千冬の弟は、伊達じゃないってことを!

だからこんなところで負けられない!

 

「よく避けますわね!素人にしては上出来ですわ!」

「そいつはどうも!!」

 

くそっ、表示される攻撃警告は正確だ、俺が白式の反応に追い付けてない!

勉強してそれなりにいけるんじゃないかって意気込んでたけど、やっぱ視るのとやるのとじゃ大違いだ。

このままじゃ削られるだけで何もできずに撃墜される、何か装備はないのか?

パラメーターなどが映る網膜ディスプレイに、展開可能な装備が表示される。

そこには近接格闘用のものとおもしき太刀の形をした剣、これだけか!?

・・・このまま無様に落ちるよりはマシか、ちょうど箒のしごきで木刀振ってたしな。

 

「遠距離射撃型のわたくしに近距離格闘装備で挑もうなんて、度胸は買いますけど無謀と言わせて貰いますわ!」

「やってみなくちゃわからねぇ!!」

 

セシリアのスターライトMK.3から放たれるレーザーを、空中で身体を転がすように動かして避ける。

空を飛ぶという馴れない動きに戸惑いはあるが、徐々にマシになっていくのが解る。

勉強してなかったら未だにおぼつかない動きをしてたかと思うと、クルヴィの予習ノートには感謝しても仕切れない。

距離を取り過ぎないよう中間距離で弧を描くように上下左右に動き回りつつ、砲身の狙いが定まって止まった瞬間に下に潜り込んで一気に詰めた。

目を見開き驚いているセシリアの顔がはっきりと確認することができた。

よし、これならイケる!

解りやすく説明された対策の内の一つに、射撃装備の特性として遠距離での修正は容易く行えるが、近・中距離での突発的な動きには修正が難しいということが書かれていた。

もっと詳しく説明されていたのだが、とりあえず理解したのは後ろに下がらず動き回って近づけってことだ。

これはなんかお礼しないとダメだな、女の子の喜ぶものってなんだろうな?

 

「せいっ!!」

「くぅっ!?」

 

余計なことを考えていたのがいけなかったのか、ブレードはとっさに構えられたスターライトMK.3で防がれてしまった。

 

「もういっちょお!!」

 

今度は雑念を振り払い、防御ごと叩き斬るつもりでブレードを振り上げる。

その瞬間、まったく意識していなかった衝撃が横っ腹に直撃し、大きくバランスを崩した俺は錐揉み状態になりながら吹き飛ばされた。

 

「な、なんだぁ!?」

 

なんとか姿勢を整えて停止すると、距離をとったセシリアが感心したような表情でこちらをみていた。

 

「初見以前に素人同然のあなたが、私の攻撃を避け続けた上にまさか近づかれて攻撃を受けるとは思ってもみませんでしたわ」

「優秀な先生とインストラクターが鍛えてくれたんでね」

「あら、やっぱりクルヴィさんが何かしたんですのね。インストラクターの方はご存じありませんけど、今のあなたをみるにそれなりに優秀なようですわね」

「それだけじゃないさ」

「?」

「俺は千冬姉ぇの弟だからな、姉の名誉を俺が汚す訳にはいかないんだよ!」

「・・・・・どうやら見誤っていたようですわ。あなたは紳士じゃなくて騎士の方がお似合いでしてよ!」

 

俺の宣誓を聞いたセシリアは、ニヤリと笑いながら再びライフルを構えた。

それに応えこちらもニヤリと笑い返しながら中段にブレードを構える。

素人が代表候補生に喰い付くという、緊迫した予想外の展開にアリーナの歓声は大きく沸いた。

だけど俺は余計な音を意識から外し、ただ目の先にいるセシリアへと集中していく。

初めて話した時とは違う。男と見下し驕っていた時の眼ではない、同格の相手として認めた微塵の油断のない強者の眼。

これがセシリアの本気か。

冷や汗が止まらない、俺は彼女の射撃を掻い潜って近づけるのか?

いや、近づくのだ。千冬姉ぇの名誉のためだけではない、セシリアの期待や協力してくれた箒とクルヴィに報いるためにも、なんとしても近づいて斬る!

 

「ここからは手加減なしですわよ!!」

「上等っ!!」

 

膠着した戦場は、互いの意地をかけて終幕へと近づいていた。

 

 

 

 

「はぁ~すごいですね織斑くん、あれで起動が2回目とは思えません」

「当然だ、何せ私の弟だからな」

「織斑くんを信頼されてるんですね」

「知っているんだよ、あいつが今浮かれていることもな」

 

確かにそんな感じの色がちらほらと・・・、織斑先生は一夏さんのことを良く観てるんだなぁ。

やっぱり家族だからかな?

さっきの一夏さんの言葉も、隠しきれないくらいすごく嬉しいみたいだったし。

 

「エレフセリア、一応言っておくが私は家族の事でからかわれるのが嫌いだ」

「ッ!!?」ビクゥッ!

 

織斑先生並みの達人になると、心を読むのはディフォルト装備なんだろうか?

研究所を出た時に感じた世界の広さを改めて思い知らされた。

 

「クルルーは喋れない分顔に出やすいから~」

「まぁ・・・確かにそうだな」

「ッ!?」ガーン!

 

本音さんと箒さんからもそんな評価だった。

・・・・・想いを伝えるのに必死になってから解らなかったけど、隠したいこともバレるくらい表情に出るって不味い気がする。

これは直した方がいいんだろうか・・・。

 

「そこがクルルーの可愛いところだよ~」

「そうだぞ、それに悪いことでもないしな」

「・・・・・ッ」ジーン

 

面白がってる色が透けてる本音さんはともかく、真剣な色で受け答えてくれた箒さんの言葉に感動した。

うん、そんなに無理矢理変わらなくてもいいかもしれない。

 

「それにしても・・・・・一夏め、中々やるじゃないか」

「そうだね~ISに乗る前と今じゃ別人だよ~」

「・・・・・ッ!」コクコクッ

 

模擬戦前の一夏さんは落ち着きはしていたものの、未だISに乗るということに関して現実味を感じていないようだった。

しかし到着したISに触れた途端、塗り替わったように彼の色が輝いた。

こちらに『行ってくる』と言った時の声と表情はとても凛々しくなっていた。

専用機持ち同士の試合の情報収集のために目の洗脳は解かれていたので、私はその姿をモロに凝視し惚けしまい機能停止。

本音さんと箒さんに話しかけられるまで彼の出て行ったピットの入り口を眺めて顔を赤くしていたそうだ。

ううぅ・・・黒歴史だ・・・。

それはさておき、現在の一夏さんの動きは時間が経つ毎にどんどん良くなって行く。

山田先生が言っていたように、起動が2回目とは思えない。

・・・・・・織斑先生の発言も正しく、若干ハイになってるみたいだが。

 

「わぁ~BT装備を2機も瞬殺しちゃった~!おりむーさっすが~!」

「ふん、私が鍛えたのだから当然だ」

「・・・ッ」タラ~ッ

 

ああ・・・一夏さんの色、どんどん油断が濃くなっていく・・・。

だ、大丈夫かな?逆にセシリアさんは火薬(おもわく)の匂いがするし・・・。

心配しても観てることしかできないわけだけど、やっぱり視えてると状況が違った情報と一緒に解っちゃうからドキドキするなぁ。

 

「・・・ッ・・・ッ」ドキドキ

「クルルーはやっぱり心配~?」

「・・・・・ッ!」コクコクッ

「素直で可愛いなぁクルルーは~!」むぎゅ~

「ッ!?」

 

本音さんが抱きついてきた。

時々脈絡なくそれらしき兆候を匂わせずに抱きついてくるので非常に驚く。

ふと視線を感じてそっちを向くと、慌てて箒さんが目を逸らしたのが見えた。

同時に、顔を少し赤くして俯き、柑橘類(こんわく)の香りを漂わせているのが視えた。

 

「・・・やはり素直にならなければダメなのか」ボソッ

「しののんなんか言った~?」

「な、何でもない!」

「むふふ~素直じゃないしののんも可愛い~!」むぎゅ~

「こ、こら!やめないか!ちょ、どっこ触ってぇ――――――――――ぁんっ!?」

 

必死に誤魔化す姿がツボに入ったのか、本音さんは私から離れて今度は箒さんに飛び付いた。

その時ちょっと描写に困るところをくすぐる様にソフトタッチすると、箒さんが甲高い嬌声がピットの中に響いた。

わ、わぁ・・・!わぁ・・・!箒さんの大きいのがあんなにぐにゅぐにゅってなってる・・・!

 

「しののんのってすごいおっきいね~」

「だ、だからやめろ!ゃっ!?これ以上は本気で怒るぞ!?」

「よいではないか~よいではないか~!」

「・・・ッ!・・・ッ!」ドキドキッ

 

わぁ・・・すごいなぁ・・・大きいなぁ・・・気持ちよさそうだなぁ・・・!

あ、気が逸れてる内に模擬戦の方に動きがあったようだ。

いつのまにか一夏さんの白式が一次移行(ファーストシフト)が終わってその姿が変化していた。

加えて手に持った太刀から光のツルギが伸びている。

あれって・・・・・・もしかして零落白夜ですか!?

確か織斑先生の愛機である暮桜の単一仕様(ワン・オフ・)能力(アビリティー)だったはずだが・・・。

姉と弟とはいえ、同じ能力が発動することなどあるのだろうか?

こことは違う前世の記憶があるとはいえ、“原作”と呼べる知識に関して私の有している記憶はかなり曖昧だった。

むぅ・・・役に立ちそうなものは全然覚えてない。記憶しているのは精々今思い出した事と一夏さんのことくらいだ。

まぁ・・・覚えてないなら仕方ない。知っていたとしてもできることがあるかも解らないしね。

そう考えを締めて再び画面を見上げようとした時、後ろから誰かの手が私の胸を鷲掴んだ。

 

「――――――――――ッ!!?」

「おお~クルルーも中々・・・!」

 

ほ、本音さん!?

ひゃあっ!?そ、そこは・・・!?

このままではまずいと先程戯れていた箒さんの行方を捜すと、胸を腕で抱えながら床に座ってすすり泣いていた。

なるほど、私も箒さんと同じ運命を辿るらしい。

自らの身体を他人に弄ばれるという恐怖に耐えながら、私はせめて優しくしてくれるように本音さんに目で懇願した。

 

「うわぁ・・・!そ、そんな目で見られたらゾクゾクしちゃうよ~!」

「~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!!!」

 

あ、あう、ひゃうぅ、だ、だめぇええええええええええええええええええええええ!!!

 

「・・・・・・千冬姉ぇ、一体何があったんだ?」

「・・・知らん。あと織斑先生と呼べ」

「み、みなさん・・・若いですね・・・。うう~、学生時代のトラウマを思い出しそうです・・・」

 

私達を救ったのは、織斑先生の出席簿による教育的指導だった

 

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