「・・・ッ・・・ッ」カタカタカタカタッ
模擬戦の結果は一夏さんのエネルギー切れによる敗北で終わった。
しかしセシリアさんがその結果を不服として、クラス代表者から辞退することで一夏さんの不戦勝となり、結局は一夏さんがクラス代表者の座に納まることになった。
問題はそれからだ。
翌日、クラスに入って来た一夏さんに近づいたセシリアさんは、今までの発言に対する謝罪と改めて友人としての握手を求めた。
一夏さんはそれを快く承諾し、自らの失言を謝罪した上でその手を握った。
その時、セシリアさんが私と箒さんに意味あり気な流し目を送った後、再び一夏さんに満面の笑みを浮かべながら一言。
『これから末長く(・・・)お付き合いしていきたいですわ』
これは・・・挑戦だ・・・。セシリアさんからの一夏さんを巡る乙女の戦への挑戦だと、私は受け取った。
そう、あの時一夏さんを見ていたセシリアさんからは溢れだしていた色。
私や箒さんと同じ恋の色だった。
それから一夏さんの訓練に積極的に参加するようになったセシリアさんは、模擬戦中に説明を入れたりしながら着実に一夏さんとの距離を縮めて行った。
箒さんも負けておらず、同室というアドバンテージを有効利用する為に必死に勉強して一夏さんの知識面をフォローするようになった。
しかし、私に関しては大きく後れを取ることになる。
「・・・ッ!・・・ッ!」カタカタカタカタカタカタカタカタッ!
注釈入れようにも一夏さんは手話が解らないので、訓練にしろ勉強にしろ情報の伝達にどうしても時間がかかってしまう。
仕方ないことではあるのだが、その差がこうして如実に現れると焦らずにはいられない。
そこで私は思い付いた。
私が声を出せないなら別のもので声を代用すればよいのではないか?
さっそく私はネットを漁った。
システム構築などの知識はIS訓練の際に研究所で教わっていたのだが、今回は質より早さが重要なので贅沢は言わない。
「・・・ッ!」カタタッ!
色々試してみたけど、簡単だしISの機能として保存しておいた方が便利そうだ。
抑揚がおかしい部分もあるけど、そこは聞き慣れると逆にツボになりそうな声だった。
流石はニ〇ニ〇の実況動画でよく使われるだけの事はある。
どんな場面もこの声で喋るだけであっという間にコメディになってしまう。
「クルルー・・・?日曜の朝から何やってるの~?」
「ッ!」
そうだ、一夏さん達の訓練に参加する前に本音さんで試してみるとしよう。
文章は・・・・・・こんなものだろうか。
『本音さん、おはようございます。今日は昼食も作って置きましたから、ゆっくりしていってね!』
「え?クルルーが喋った?え、ええ~?あれぇ~?」
よし、うまく行ったようだ。
これで一夏さんや他の人達とのコミュニケーションも簡単になる。
さっそく一夏さん達と合流しなければ!
『それでは、私は一夏さん達と訓練してきます』
「う、うん、いってらっしゃ~い・・・」
部屋を出る時本音さんが呆けた顔でこちらを見ていたが、意志の伝達には問題なさそうだったので、私は頭を下げてから一夏さん達の元へ向かった。
★
クラス代表者を決める模擬戦からあっという間に週末になったものの、次に迫るクラス代表戦に向けて休日であっても訓練と勉強の束縛は重く圧し掛かってくるのだった。
身体を鍛える為に箒と共に朝から軽く運動し、アリーナの方ではセシリアと模擬戦を繰り返しながら基礎的な練習、そして労いにクルヴィが作った昼食をみんなで食べる予定らしい。
まぁ、強くなるためには日々の鍛錬が必要な訳だし、何よりクルヴィの料理ってのも気になる。
ちょっと挫けそうになる精神を叩き上げ、地面に倒れた状態から再び立ち上がる。
「よし、もう一回だ!」
「一夏さん、そろそろ補給しないとエネルギーが切れますわ。ここら辺で一度休憩しましょう」
「え?お、おう・・・解った・・・」
言われて確認してみると、確かにエネルギーゲージが真っ赤になっていた。
ものっそい出鼻を挫かれた感がやる気を削ぎ、その為か今までの疲れがどっと出て身体が重くなった気がした。
『どうぞ、タオルとドリンクです』
「ああ、ありがとう・・・?」
エネルギーを補充のためにピットに戻って白式を待機状態に戻すと、目の前にタオルとドリンクが手渡された。
何の疑問もなくそれらを受け取るが、そういえばさっきの聞き覚えのない声は誰なのかという考えに行き着く。
慌てて汗を拭っていたタオルを顔からとって確認すると、そこに居たのは大きなバスケットを持ったクルヴィだった。
「あれ?今の声ってクルヴィか?」
『そうです。ネットにあったフリーの合成音声ソフトをダウンロードしました』
「へぇーそんなのがあるのか」
『はい、これで皆さんともお喋りできますね!贅沢言えば、この抑揚はどうにかならないかと思いますが』
「まぁ、確かに違和感あるけど、聞き慣れたらそうでもないんじゃないか?」
『そうでしょうか?それなら箒さんたちともお話してみましょう!』
「ああ、多分向こうのピットにいると思うぞ。箒は今から部活だってさ」
『解りました、ありがとうございます!』
そう言ってクルヴィはピットの入り口へと去って行った。
エネルギーを補給しながらその後ろ姿を眺めていた俺は、しばらくした後喉につっかえていた言葉をポツリと呟いた。
「なんつーか・・・なんでそれを選んだ?って感じかなぁ・・・」
クルヴィの健気さと天然な不憫さに、なんとなくやるせない気分になって天井を仰ぐのだった。
★
『セシリアさん!セシリアさん!』
「え?誰ですの?」
『私です!クルヴィ・エレフセリアです!』
「く、クルヴィさん?・・・・・・その声は一体どうしたんですの?」
『ネットにあった合成音声ソフトをダウンロードしたんです!その・・・皆さんとお話したくて・・・』
「くぅ・・・!何故ですの・・・!こんなにも可愛いのに・・・・何かが残念ですわ・・・!!」
『うぬぬ・・・セシリアさんにも不評ですか』
「え?私以外にも誰かに聞かせんたんですか?」
『ええ、一夏さんに・・・・ってあれ?おかしい、なんで考えたことまで音声に出てるの?』
「・・・もしかして、そのソフトISにダウンロードしたんですの?」
『は、はい・・・色々便利そうだと思って・・・』
「つまりそれが原因ですわね・・・」
『えっ?あっ、も、もしかして・・・!』
「ダウンロードしたソフトを、ISが使いやすいように設定し直したんですわ!」
『な、なんだってぇーーーーーー!?』
「多分そのソフトもクルヴィさん用に最適化(フィッティング)したんだと思いますわ」
『な、なんてことでしょう・・・これでは一夏さんの前で下手なこと考えられませんよ・・・!』
「そういえばこの前一夏さんとキスしたらしいですけど、その話本当ですの?」
『柔らかくて気持ち良かったです・・・・・・ぬわーーーー!?やめてぇええええええええええええ!!』
「ホホホホホホ、そうですの・・・本当でしたのね・・・」
『こ、怖いですよセシリアさん!何故銃口をこっちに!?』
「クルヴィさん、体調を崩されて模擬戦が流れてしまいましたから、ここで一つその持ち越し戦と行きましょうか?」
『ウ、ウソダドンドコドーン!!』
★
結局ISスーツに着替えさせられた私は、セシリアさんと一夏さんの補給を待って二人との模擬戦に参加することになりました。
訓練以外で戦闘経験無しの私が、2人相手にこの先生き残れるのか!?
それにしても、まさかあのソフトをISが取り込んでしまうとは予想外でした・・・。
私のことを考えてくれた結果なのでしょうか?そうなら嬉しいっちゃ嬉しいんですけど・・・。
後で早急にプログラムを書き換えておく必要がありますね。
『はぁ・・・書きかえる前に一夏さんにバレなければいいんですけど・・・』
「何がバレるんだ?」
『何でもありません』
無心・・・無心だ・・・目的以外のことは何も考えるな・・・。
私の目的は一夏さんとセシリアさんの専用機を模擬戦によって情報収集すること・・・それ以外は余計なんです・・・だから考えるな・・・。
『もしバレたら・・・その時は襲うしかない』
「・・・純情な割に意外と大胆ですわね」
『だから早く終わらせましょう!今日はもう部屋に戻りたいんです!』
「ええ、流石に可哀想ですから、私か一夏さんのどちらかと戦ってくださればよろしいですわ」
『・・・いえ、2人同時でお願いします』
「え?」
「あら・・・言ってくれますわね」
短時間で情報をできるだけ集めて置きたいというのもあるが、私の専用機は多対一の方が得意だ。
情報処理と武装に容量割きすぎて、その他の性能が低いから本当は戦闘向きじゃないんだけどね。
それでも立ち回り次第で結構やれるんじゃないだろうか、そう思ったからこその発言だ。
それぞれ2人は既にISを展開しているため、私も開いた目を閉じ、起動のためのイメージを思い起こす。
私の起動イメージは、空に拡散していく花火のような光だ。
『拓いて、可能性の巫女(ミリャ・メディウム)』
それと同時に私のISが展開され、網膜ディスプレイにパラメータなどの表示が浮かぶ。
「へえーそれがクルヴィの専用機か、なんか全体的に俺達の機体よりちっちゃいな」
「そうですわね。腰の花びらのような武装は、あの時音楽を奏でていたものですわね?」
『そうです。本当は盾に使うんですけど、近接武装用に常に振動してるので、軽く触れると反響して音が出るんです』
「そういう仕組みだったんですか、それにしては見事な演奏でしたわ」
『これに気付いた時から、合間合間にちょっと練習してたんです。変な趣味だと思ってましたけど、お眼鏡にかなって光栄です』
まさかこの特技があんなところで活きようとは思わなかった。
本来の活用法とは大分違うしね。
しばらく私のISを観察していた2人は、やがて大体のあたりを付けたのか試合開始のため距離をとった。
「それでは始めましょうか?わたくしと一夏さんというベストパートナーを相手にして、どれほど持つか見せてくださいまし!」
「えっと、やるからには手加減しねぇぞ!」
『はい!頑張ります!』
どこまでやれるか、自分の力を見極めるにはいい機会だと思って頑張ろう。
★
開幕早々、クルヴィさんは何かを広範囲に射出した後、腰部の花びらのような武装を展開し自らの周りに待機させた。
多目的汎用型シールドBT武装・獅指(ダクティラ)、わたくしのブルー・ティアーズと同じ第3世代の特殊武装。
開発会社が我が国のIS・システムズ社だというのは前に伺ってましたけど、同じタイプの機体で挑まれるとなると改めて対抗心が沸きますわね。
ダクティラはクルヴィさんを覆い隠すように規則的に動き回りながら、こちらからの一切の攻撃の隙を見せない。
これでは遠距離からの狙撃は無理ですわね。
「一夏さん!あの花びらを撃墜しないと射角を取れませんわ!」
「任せろ!」
まずは一夏さんがダクティラを破壊し、同時に私もブルー・ティアーズで死角からの援護射撃が定石ですわ。
先程のお話から推測するに近接武装用の加工も施されているようですけど、一夏さんの零落白夜なら問題ないですわね。
このままクルヴィさんが大人しくしていれば、の話ですが。
『させません!』
ダクティラの上下左右から飛び出してきたように見えた何かが、かなりの速度で一夏さんの方へ向かっていく。
やはり来た!だけどそれくらいなら予想済みですわ!
「それはこちらのも同じでしてよ!」
ハイパーセンサーで強化した視力を元に、飛来する物体の未来位置を予測して正確に撃ち抜く。
あの動き・・・もしかしてアレもBT兵器ですの?
スコープから視線を外して、一夏さんの支援のためにブルー・ティアーズを展開させながら今の武装についての予測を建てる。
予測していたから撃ち落とせたとはいえ、かなりな速度と狙い辛い小さなサイズ、油断はできないがあの程度の数なら撃ち落とせば脅威にはならない。
数瞬でそう結論を出すと、一夏さんへ警戒と共に作戦続行の指示を出す。
「一夏さん!邪魔なものは私が落としますけど、クルヴィさんはまだ何か隠してますわよ!」
「解った!頼むぞセシリア!」
「ぁっ・・・ま、任せてくださいな!」
ああ・・・キリッとした表情でわたくしに“頼む”だなんて・・・。
い、いやですわ・・・今の音声ちゃんとログに残ってるかしら・・・?
「ちょっ、セシリア!?どうしたんだ!?」
「ハッ!い、いけませんわ、わたくしとしたことが」
一夏さんへの雑念を振り払い、一夏さんの方へ視線を戻した。
「・・・・はい?」
一瞬、状況を理解できずに思わず呆けてしまう。
一夏さんを追っているのは先程撃墜した武装なのは解る、おかしいのはその数だ。
最初の攻撃の時の5倍・・・いやまだ増え続けているので正確な数は解らないが、とにかく大量のBT兵器が一夏さんを執拗に追いまわしていた。
画面に情報が映し出されたのですぐに確認してみる。
強襲用群体杭型BT武装・執磔(エモニ)。
数による連続的な追突ダメージを打ち込むことで、対象に浸透性の衝撃を与える事が可能な近接格闘用BT兵器。
しかしあのサイズからしてそれほど強力なダメージにはならないだろう。
一つ一つが重なって黒い霧のように見える程の数で襲ってこなければ。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!?これ死ぬだろおおおおおおおおおおおおおおお!?!」
「ちょっ、一夏さん!?そのままこっちに来ないでくれます!?」
混乱して周囲を確認していなかったのか、一夏さんが物凄い数の黒い濁流となったエモニを引きつれてこちらに向かってきた。
こうなったら支援どころではない、慌ててブルー・ティアーズを呼び戻し全力で一夏さんとは別方向に逃げようとする。
しかし中途半端に視界に入ってしまったのがいけなかったのか、一夏さんは再びこちらに向けて直進してきた。
「セシリア!支援!支援を要求する!!」
「非常に遺憾ですが、支援は不可能と判断して自力での生存を望みますわ!?」
「せめて半分持っていってくれえええええええええええええええええええ!!?」
「断じてお断りしますわぁあああああああああああああああああああああ!?!」
2人並んで必死に追撃から逃げ回るが、どれだけ急な方向転換で凌いでも次々と現れる別のエモニの群体に執拗に追い回される。
しかも時間が経つごとにその数は増していき、遂にエモニの結界と呼ぶべき空間の中心に追い詰められた。
ザザザザザザザザザザザザザ、とエモニが高速で空気を裂く音が全方向から鳴り響き、逃げ道がもはやどこにも残されていないのだと悟らせる。
台風の中心にでもいるような光景が、絶望感をひたすら煽って戦意を根こそぎ削いでいく。
「・・・・・これまで、ですわね」
もう溜息交じりにそう呟くしかない。
どこを攻撃しようにも、撃墜したエモニの穴を即座に他が埋める。
その攻撃は単純なパターンによってできていたが、圧倒的な数と執拗な追撃で戦略的にじわじわと逃げ場をなくしていくのだ。
本体であるクルヴィさんに攻撃しようにも、周囲に展開されたダクティラがそれを許さない。
あの標準よりも小柄で貧弱そうな機体の相貌は、おそらく武装の制御するために情報処理能力を上げ、極限まで他の要素を削った結果なのだろう。
じわじわと縮まっていく包囲が、撃墜までの僅かな猶予だった。
せめて少しでも多くのエモニを道連れにしようとライフルを構えようとするわたくしに、一夏さんが背中を向けながら通信を入れてきた。
「セシリア、賭けに乗ってみないか?」
「賭け、ですの?」
「ああ、一か八か、包囲を突破してクルヴィを仕留める」
その声は凛としていて、こんな状況にも関わらず胸が強く締め付けられる。
自分が惚れた男は、こんな状況でも真っ直ぐに勝利を見つめることができるのだと、その強さを改めて惚れ直した。
ならばこれ以上情けない顔を見せられない、オルコット家の淑女としてこの急場も華麗に脱して魅せよう。
「・・・どうするつもりなのか教えていただけるかしら?」
「乗ってくれるのか?」
「愚問ですわ、私の誰だとお思いで?イギリスの国家代表候補生、セシリア・オルコットでしてよ?」
「・・・そうだったな、ならお前の全てを俺に預けてくれ!!」
「はい!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」
「じゃあまずは・・・・・おい、セシリア聞いてるか?」
「あ、え、ええ!もももももちろんですわ!」
「そうか?最初はだな・・・」
も、もしかして、今のってぷ、プロポーズですの?
い、いやまさか、でもあの言い方は確かに・・・・・いやいやいやいやいや!
い、いけませんわ、一夏さんの作戦概要は何とか頭に入ってますけど、先程の発言が気になって仕方ないですわ!
これは後できっちり問いただすべきですわね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うふふ。
★
『・・・・なんかまずい事態が起きてる気がする』
エモニの群体に囲まれた一夏さん達の方を見ながら、どこからか電波を受け取りそんなことを呟く。
その嫌な予感を確認するため、最初に展開した全ての“私”からの観測情報を視る。
感覚同調観測機(ヌス・ヴレポ)に同調し同感覚を持った複数の“私”が、様々な角度から注意深く一夏さん達の動きを知覚する。
火薬(おもわく)の匂いに決意の炎・・・何か仕掛けてくるのか?
攻撃の意志は真っ直ぐ私に向いているようだが・・・。
ドグォオオオオンッッ!!!
そこまで観測した時、特大の爆発がエモニの包囲に穴を開けた。
『ッ!?』
まだ納まらぬ爆炎の中から何かが飛び出してきた。
この色は彼だ、こんな無茶な方法で特攻を仕掛けてくるなんて・・・!
まずい、早くエモニを戻さないと・・・!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
『くぅっ!?』
真っ直ぐに突っ込んでくる一夏さんの正面に、8枚すべてのダクティラを重ねて大きな花のような形の盾にする。
同時にヌス・ヴレポとの同調を切ってすぐさま横に全力移動した。
「ちぇえええええええええすとぉおおおおおおおおおお!!!」
多種に渡って強力な盾となるダクティラを、零落白夜を発動した一夏さんの雪片弐型が一気に両断した。
なんて出鱈目な威力・・・!
だけど先読みした私より一手遅い!エモニは既に一夏さんの避けられない距離に戻している!
しかし私は視た、いや視えた(・・・)。
一夏さんの動作から聞こえた(・・・・)言葉。
『かかったぞセシリア・・・!!』
次の瞬間、特大のレーザーが胴体に突き刺さった。
2度、3度と繰り返し撃ち抜かれると、全てのシールドエネルギーを削り取られる。
射撃位置をみると、僅かにできたエモニの包囲の隙間から、ライフルでこちらを狙うセシリアさんが見えた。
なるほど、見事に嵌められた。
『私の、完敗です』
絶対防御が発動して地面に落下する私を、一夏さんがお姫様だっこで優しく受け止めてくれた。
「どうだ、勝ったぜ?」
『はい、負けちゃいました』
子供っぽい笑顔でこちらを見つめる一夏さんに、私はちょっとドキドキしながらそう返した。
上空からセシリアさんが何やら叫びつつ急接近してくる。
短い間だが、セシリアさんに止められるまで彼の色と体温を感じる事としよう。
『いい匂いです・・・』
「そうか?汗臭いと思うけど・・・」
『えっ?』
あれ?もしかして、また考えてたことが勝手に音声に出てた?
・・・・・・・・・・・・・・わ、わあ!わあああああああああああああああああああ!!?
『離してください!離してください!』
「うおっ!?急に暴れるとあぶねぇって!?」
「一夏さん!私にあんなことを言っておきながらどういうことですの!?」
最近良くオチに使われてる気がするが、この騒ぎの収拾は一つの名状しがたき出席簿のようなモノによって成されたのだった。