魔界統一トーナメントは、超巨大植物『
先ず行われる予選では各ブロック毎に、1ブロック49人の選手が最後の一人になるまで、億年樹の上で戦い続ける。
幽助、飛影、蔵馬は予選の中で強敵と呼べる相手がいなかった事で、問題無く予選通過。
死去した雷禅の元部下である北神、東王、西帝、南海は同じブロックで戦う事になった為、四人の代表として北神が予選通過となる。
蔵馬の勧誘で必死に修行して強くなった陣、凍矢、鈴駆、鈴木も一切苦戦せずに予選通過。死々若丸は敵の中にかなりの硬度を持つ妖怪と相性が悪いこともあって苦戦するも、結果的には勝利を飾っている。
一人一人確実に倒している酎は六人の中で一番時間が掛かるも、あと一人倒せば予選通過となるかと思いきや、予想外の強敵と当たる事になった。
その強敵は
妖気の桁が違うと圧倒的な力の差を教えられた酎だったが――
「なぁアンタ、今度いつ会える?」
「悪いけど、弱い男に興味は無いの」
「二年、いや一年待ってくれ! 必ずアンタより強くなってみせる! そしたら俺の女になってくれ!」
正気を失ったのか、負けた相手にナンパをするのであった。
因みにこの光景に実況席で見ていた小兎は、以前の暗黒武術会で口説かれた事もあって、棗に心変わりした酎を見て激怒していたとか。
突然の事にキョトンとする棗だが、呆れたようにこう言い返す。
「だったら最低でも、兵藤隆誠より強くなって欲しいわね」
「何! ひょ、兵藤って確か、この大会に出てるあの人間の事か!?」
「ええ、そうよ。大会が始まる前に彼と手合わせしたけど、凄く強かったわ」
彼女も含めた煙鬼達は、自分達と同じく気の柱を放出した隆誠を見た事で昔の血が騒いだのか、大会に備えて鈍った身体を鍛え直そうと手合わせをする事にした。
勝負の内容は割愛するが、全員が力を解放した隆誠と戦った事で、昔の雷禅を思い出すと言った感じだった。その中で棗は既に結婚してる弧光と違って、彼に対して強さとは別に、少しばかり他の興味も抱いている。
惚れた人物が既に気になる相手がいると判明した事に酎は――
「兵藤ォォォォォォォ!! この大会が終わったら一度俺と戦いやがれェェェェェェェェ!!」
隆誠を憎き恋敵のように見るのであった。
因みにその彼は予選を行っている最中で一切知らないが、もし知っていたら『やなこった』と言って即座に断るだろう。
棗以外に雷禅の旧友たちは、実力を隠したまま本戦への切符を手にしている。当然、実力を隠している事に気付いている者達もおり、黄泉や軀も当然その中に含まれていた。
優勝候補の一人、軀のブロックでは彼女以外の選手が全員棄権してしまった為、自動的に予選通過となる。
もう一人の優勝候補である黄泉も軀と似たような光景となるも、唯一戦う選手が娘の迦楼羅だけだった。
流石は黄泉の娘と言うべきか、並みの妖怪では太刀打ちできない程の凄まじい妖気を見せていた。もしも相手が幽助であれば苦戦を強いられていたかもしれないが、父親の黄泉相手には経験不足で全く歯が立たず、為す術がないと言わんばかりに降参する迦楼羅であった。
順調に予選が進んでいる中、まだ決着が付かずに残っているブロックがあった。隆誠、修羅のいる71ブロックが。
先程まで二人以外の選手達がいたのだが、隆誠によってあっと言う間に片付けられている。経緯が全く不明である為、少しばかり時間を遡らせる。
『これより71ブロック予選を開始します。気絶、死亡、あるいは降参した時点で失格です』
アナウンスによる説明がされている中、71ブロックとなる億年樹の上には49人の選手達が揃っていた。
選手の中に唯一の人間である隆誠は全く浮いた存在となっているが、周囲に気にせず準備運動をしている。
しかし、他の選手達は別の事を考えていた。幽助や蔵馬と違い、純粋な人間である隆誠を見ながら。
――先ずはあの人間を倒してからだ。
――そして奴が死んだら俺達の食料になってもらう。
――確実に仕留めるから『せーの』で行くぜ。
魔界の住人である妖怪達は主に人間を主食としており、隆誠は既に食料と見なされていた。この魔界の空気を吸っても生きていられるのは、相当活きの良い人間で美味いだろうと。
待ち遠しいと言わんばかりに、口元から涎が出ている者が複数いる事に隆誠は当然気付いている。
「そこのお姉さん」
『へ? わ、私の事ですか?』
すると、隆誠が突然上空に向かって、羽根が付いた飛行型カメラに乗っている中継車の女妖怪に声を掛けた。
「そうそう。もしかしたら巻き添えを喰らうかもしれないから、今の内に離れた方が良い」
『は、はぁ、分かりました』
人間からの気遣いに女妖怪は空返事をしながらも、準備を終えた選手達を見て予選開始の宣言をする。
『それでは試合開始です!』
宣言された直後、選手達は一斉に隆誠を囲み始める。全身から妖気を発しながら。
「せーの!」
一人の妖怪が開始の合図を口にした瞬間、他の妖怪達は一斉に突進していく。
久しぶりの獲物だと襲い掛かって来る妖怪達に隆誠は慌てた様子を見せず――
「ふ~っ……」
軽く息を吹きかけていた。
その直後、隆誠の周囲から強烈な竜巻が発生する。
『うわァァァァァァ!!!!』
『キャアッ!』
中心にいる隆誠を除き、竜巻の餌食となった妖怪達は空高く舞い上がっていき、そして上空でグルグルと激しく回っている。
突然の光景に、竜巻の範囲外だった中継役の女妖怪は巻き添えを喰らわないよう離れており、カメラを通して会場のモニターで見ている他の選手や観客達は唖然とした表情になっていた。
「ふ~っ……」
そして隆誠は上を見ながら再び軽く息を吹きかけた瞬間、竜巻が爆弾のように破裂した。それによって上空でグルグル回っていた妖怪達は分散し、凄まじい勢いで
彼が使ったのはドラグ・ソボールの極悪人キャラ『フリーズ』の技だが、これには技名が存在しない。原作には無いアニメオリジナル技であり、襲い掛かって来る敵を迎撃しようと、息を吹きかけて竜巻を発生させて瞬殺していたシーンがある。雑魚をまとめて片付けるには丁度良い技だと、隆誠は改めて理解した。
因みに隆誠によって吹っ飛ばされた妖怪達は、億年樹から離れた時点で場外と見なされて失格となることを補足しておく。
「さて……」
まるで先程までは前座で次が本番と言わんばかりに、隆誠は自身の技を受けていない一人の選手の方へと視線を向けていた。
その先に黄泉の息子、修羅がいる。卑しい事を考えていた妖怪達と違って、彼は参加する事無く黙って見ているだけだった。それどころか鬱陶しい連中がいなくなったと安堵したような顔になっている。
「てっきり君もあの中に含まれていると思っていたが」
「僕をあんな連中と一緒にするな」
「それは失礼した」
修羅からすれば、吹っ飛んだ妖怪達は卑しい雑魚妖怪としか見ていなかったのだろう。そんなのと一緒にされて不快になるのは当然だった。
隆誠は謝罪した後、改めて修羅と対峙する。
「ならばお詫びとして、先手は其方に譲ろう。さぁ、掛かってこい」
「人間風情が。その言葉、後悔させてやる!」
此処からが本番だと言わんばかりに、71ブロックでは隆誠の修羅の戦いが始まろうとする。