魔界にやって来た元神   作:さすらいの旅人

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隆誠 対 修羅①

「でやぁぁぁぁぁ!」

 

 隆誠が先手を譲ると言った事で、修羅は奇襲を仕掛けようと真上に向かって跳躍した。

 

 修羅が上空に舞い上がると、その周囲には彼の妖気と思われる無数の光弾の塊が形成されていく。

 

「喰らえェェッ!」

 

 一秒も経たない内に作られた妖気の光弾は、修羅が腕を振るった事で隆誠のいる方へ急速に降り注がれた。

 

 雨のように降り注ぐ光弾が地面に当たった瞬間に大きな爆発し、隆誠は白い閃光に包まれ消えてしまう。閃光が消えた後、隆誠がいた地面は大きく抉れながら煙を舞い上がらせていた。

 

「何だ、思ってたより弱っちいな」

 

 奇襲攻撃が成功した修羅は地面に向かって落下し、問題無く両足で着地する。

 

「いくらあの人間でも、さっきのをまともに喰らったら――」

 

「流石に死んでいる、か?」

 

「ッ!?」

 

 勝利を確信した修羅だったが、突如背後から声がした。

 

 修羅がハッと振り向くと、光弾に当たった筈の隆誠が笑みを浮かべている。傷が無いどころか、道着すら焼けた跡が一切無い為、簡単に躱されてしまったのだと理解させられる。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 後ろを取られた修羅は焦りながらも、その場から離れようとすぐに走り出した。

 

 そこら辺のS級妖怪でも追いかけられないスピードだが、隆誠は一切慌てた様子を見せる事無く追跡しようと超スピードを使って姿を消す。

 

「くそぉぉ!」

 

 逃げながら反撃手段を考える修羅は咄嗟に後ろを振り向くも、澄まし顔で見下ろしながら余裕で追いかけている隆誠がいた。

 

 思わず腹を立てそうになる修羅だったが、走行に集中しようと更にスピードを上げる。

 

 森林の中に入ってジグザグと方向転換しながら進み、更には樹の枝に乗って跳躍移動をしていた。

 

 高速移動をする両者に、空中から撮影している中継役の女妖怪達は追いかけきれず、会場側に設置されてるモニターでは風景だけしか映っていない。

 

 

 

 

「あのガキ、大したスピードだぜ」

 

「それに付いて行く隆誠さんも凄いですが」

 

 モニターで二人の姿は見えなくとも修羅のスピードに感心する幽助と、隆誠の実力を改めて認識する北神。

 

 会場にいる妖怪達は既に隆誠を格下の人間と見ていない。少し前までいた47人の妖怪達を一瞬で場外へ吹っ飛んでいく技を見た事で、もし軽い気持ちで手を出せば同じ目に遭っていたかもしれないと顔を青褪める程だった。

 

 殆どの選手達がそう思っている中、モニターをジッと見ている蔵馬は腑に落ちないように疑問視している。

 

(兵藤隆誠が勝利を掴むのであれば、もうとっくに終わらせている筈だ)

 

 もし隆誠が本気で戦えば、背後を取った瞬間に修羅を一撃で気絶させる事が可能だと言う事に彼は気付いている。

 

 一切攻撃しないどころか気付かせるように態とらしく声を掛け、まるで遊ぶように逃走する修羅を追いかける始末。何故こんな無駄な事をするのかと蔵馬の疑問が解けない。

 

 その疑問は蔵馬だけではなく、修羅の戦いを見届けている親子も同様だった。

 

「お父様、わたくしには理解出来ませんわ」

 

「何がだ?」

 

「あの兵藤隆誠と言う人間は、どうして修羅お兄さまと合わせるように戦っておられるのでしょうか?」

 

「それは父さんも分からないな。だが兵藤には何か考えがあっての事だろう」

 

 実力を自分の兄と合わせる事に疑問を抱く迦楼羅に、黄泉は試合をやっている本人にしか分からないと遠回しに答えていた。

 

 先程の予選では凄まじい戦いを繰り広げていた父と娘だったが、それが終わればいつも通り仲の良い親子となっている。

 

 迦楼羅は修羅と違って礼儀正しく、父親に対して反抗的な態度は取らない。黄泉としてはどちらも自分の愛しい子供達と思っており、片方だけに贔屓する事はせず平等に接している。

 

「でもあの方を見ていると……不思議な気持ちになりますわ。まるで運命の人みたいな」

 

「……迦楼羅、お前がその台詞を口にするのはまだ早過ぎるからな」

 

 隆誠が気になるかのように呟く迦楼羅の少々ませた発言に、黄泉は父親として嫌な予感が走り始める。もし万が一に娘が隆誠の恋人になりたいと言った瞬間、自分は一体どうなってしまうのかと。

 

 

 

 

 未だに追いかけっこは続いているが、途端に状況が変わった。逃げていた修羅が突如反転し、足を止めた隆誠に突撃を仕掛けようとする。

 

「でやぁぁぁぁぁぁ!」

 

 修羅の拳や脚を使っての猛攻に、隆誠は一切焦る事無く紙一重で躱している。否、既に見切っていると言った方が正しいだろう。

 

 全く当たらない事に修羅は内心歯軋りするも、絶対当ててやるとムキになりながら攻撃を続ける。

 

「ぶっ!」

 

 隆誠が修羅の拳を軽く受け止めた後、ここで漸く反撃の姿勢に移って修羅の頬に拳を一発入れた。

 

 相当な一撃だったのか、受けた修羅は一気に後方へ吹っ飛んで大木に激突するかと思いきや、空中で態勢を立て直しながら両足で着いた後、その反動を利用して再び隆誠へ突撃していく。

 

 今度は一直線の跳び蹴りを食らわせようとするが、これも見切っているように隆誠は修羅の片足首を右手で掴んだ。

 

 直後、蹴りの勢いが止まった修羅に再度反撃をしようと、右手を放した隆誠が即座に蹴り上げた。またしても直撃した修羅は放物線を描くように吹っ飛んでいき、受け身を取れないまま地面に当たる。

 

「う、ぐぅ……ちっくしょう……あっ!」

 

 必死に痛みを堪えながら立ち上がろうとする修羅だが、またしても隆誠がいつの間にか背後にいた事で思わず尻餅を付いてしまう。

 

「俺に勝てないのはもう充分に理解した筈だ。今すぐに降参しろ」

 

「だ、誰が降参なんか……!」

 

「ほう、父親と妹に惨めな姿を晒したいか?」

 

 意地を張ろうとする修羅に、隆誠は声を低くしながら問う。

 

 今行われている予選は、既に終えたであろう黄泉や迦楼羅が間違いなく見ている。

 

 家族愛を大事にしている隆誠としては、その二人の前でこれ以上の仕打ちはしたくなかった。彼がその気になれば一撃で倒して終わらせる事は出来るが、それだと修羅のプライドを傷つけてしまう為、実力差を悟らせようと向こうに合わせて戦っていただけに過ぎない。この大会でその甘さは命取りだと周囲に言われるかもしれないが。

 

「……分かったよ」

 

 脅しに屈した修羅は、先程までと違って素直になる。

 

 それを聞いた事で隆誠は穏やかな表情となり、ゆっくりと彼に近付いていく。

 

「悪かったな、痛い思いをさせてしまって。すぐに治癒してあげるよ」

 

 隆誠はそう言いながら片膝を付き、神の能力(ちから)で治そうとする。

 

「ありがとう……こんな簡単に騙されてくれて!」

 

「何?」

 

 修羅が突然残忍な表情になって片手を突き出した瞬間、そこから発せられる凄まじい熱のエネルギーは隆誠を吹っ飛ばしながら覆い尽くした。

 

 周囲の森も焼き尽くされる光景に、会場で見ている者達は言葉を失ってしまう。




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