魔界にやって来た元神   作:さすらいの旅人

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今まで短かった分、ちょっと長めに書きました。


隆誠 対 修羅③

「幽助、あの人間は一体何者だ!?」

 

「うっせぇなぁ。俺だってそこまで知らねえよ」

 

 幽助と再会したコエンマは、ぼたんと秘書の青鬼ジョルジュを連れて一緒に観戦していたが、隆誠が全身から放出した闘気を見て一気に変わった。それどころか焦り始めている。

 

 修羅が放った魔円咬を無効化するように消失させた闘気は、仙水が使っていた『聖光気』を遥かに上回っていたのだ。明らかに人間が扱えるモノではない他、霊界側であるコエンマとしても到底見過ごせない為、彼と仲良く話していた幽助を執拗に問い詰めている。

 

「リューセーは親父が死ぬ数ヵ月ぐらい前、突然魔界に現れたんだ。今でもよく分かんねぇけど、アイツは『平行世界』って言うところからやってきたとか」

 

「平行世界だと!?」

 

 聞き慣れない単語を口にする幽助に、コエンマは敏感に反応した。

 

 彼は幽助と違って知っている。霊界、人間界、魔界の三世界とは別に、相違関係があっても交わらないのが平行世界だと言う事を。今までは本当に存在しているのかと疑わしい古い知識の一つに過ぎなかったが、その関係者が魔界にやって来たなど誰も予想など出来ないだろう。

 

 隆誠が本当に平行世界から来たとなれば、コエンマとしては霊界側の代表として釘を刺さねばならない。言い方は悪いが、彼はこの三世界からすれば異分子同然の存在なのだ。今は魔界に留まっているが、これでもし霊界や人間界にも干渉してしまえば様々な影響を及ぼす可能性が生じてしまう為に。

 

「幽助。この試合が終わった後、一度あの者と話がしたい。構わんな?」

 

「お、おう、別にそれくらいは……」

 

(まぁ、そうなるでしょうな)

 

 今までおふざけな会話をしていたのとは一変して、真面目な顔で言って来るコエンマに幽助は頷かざるを得なかった。会話に加わっていない北神も内心当然だと思っていながらも、試合の方へ目を向けている。

 

「そう言や、リューセーがいる平行世界には冥界があるみたいだぞ」

 

「何!?」

 

 幽助がとんでもない情報を口にした事で、益々会わなければいけない事になるコエンマだった。

 

 

 

 

(隙だ。あの人間の隙を見つけるんだ……!)

 

 負けん気を見せる修羅だったが、内心焦りながらも何とか隆誠に隙がないかを観察していた。

 

 しかし、全身を隈なく見ても一向に見付からない。それどころか不可思議な気を感じ取ってる所為もあって、彼が見た目以上に大きいと錯覚させられてしまう。

 

(だ、ダメだ。奴には全く隙が無い!)

 

 修羅は思わず打つ手がないと悲観しそうになる。

 

 隙が無いと思った瞬間、途端にある会話を思い出した。大会が始まる前、妹の迦楼羅と一緒に戦闘訓練している事を。

 

『あ~もう酷いや! パパには隙が無いんだもん!』

 

『わたくし達が必死に探してるのに、全然見つかりませんわ!』

 

『ハッハッハッハ。一流の戦士を相手にする時に、隙など探しても無駄な事だぞ二人とも』

 

『じゃあどうすれば良いのさ!?』

 

『それではお手上げではありませんか?』

 

『相手に隙が無ければな、こっちが作れば良い。とは言え、そんな簡単なモノではないが』

 

 隙が無ければ作れば良い。父親の黄泉は確かにそう言っていた。

 

 その事を思い出した修羅は今まで全然分からなかったが、隆誠と言う一流の戦士を相手にそうしなければならないと漸く理解する。

 

 改めて思い知った。あの人間は自分より実力が遥かに上で、自分をいつでも倒せるにも拘わらず手を抜いていると。今も非常に腹立たしいが、最高の技の一つ(・・)である筈の魔円咬を簡単に防いだ時点で格の違いを見せられたので認めざるを得ない。

 

 しかし、それでもまだチャンスはある。いくら格上でも隙を作ってダメージを与えれば、たとえ僅かでも勝機を見出せる筈。

 

(相手に隙が無ければこっちから作ってやれば良い、か。分かったよ、パパ)

 

 父親からのアドバイスを実行しようと修羅は漸く動き始めた。全身に妖気を纏いながら跳躍する。

 

 それを見た隆誠はまた放出系の技を使う気かと思いきや、今度は全く異なる動きをしている為に訝ってしまう。修羅が勢いよく降下しながら地面に拳を当てたから。

 

 妖気を纏った修羅の拳によって地面は瞬く間に罅が入り、その範囲は隆誠にまで届く。直後、罅だらけとなった地面が爆発して崩壊する。

 

(気配を消しながら岩の破片を隠れ蓑にして、俺の隙を伺うと言ったところか)

 

 単純(おバカ)な幽助と違って、我武者羅に突っ走るタイプじゃなさそうだと失礼な事を考える隆誠。

 

 隙を作るのであれば背後に仕掛けるのが定石であり、案の定と言うべきか、突然後ろから修羅の気配がした。

 

「そこか!」

 

 振り向きながら攻撃を仕掛けるも、それは修羅じゃなくて岩の破片だった。隆誠の手刀に当たった瞬間、岩の破片はすぐに粉砕される。

 

 どうやら一杯食わされたようだ。背後から攻撃すると思わせる為の誘導をしたに違いない。

 

 隆誠の予測は的中し、別の方向から本物の修羅が現れて、両手にはいつの間にか妖気が集束されていた。

 

「行けぇぇ! 『()()(こう)』!」

 

 修羅が放った放出系の技は大きな虎の頭を模しており、まるで噛み付くように口を大きく開けて隆誠に襲い掛かろうとする。

 

 彼は他にも大技があり、妹の迦楼羅の協力によって、もう一つの奥の手として()()(こう)を編み出した。これは本来黄泉と戦う為に使おうとしていた最大の切り札だが、隆誠と言う強敵を倒すにはどうしても必要である為に使わざるを得なかった。

 

 魔虎咬は一点集中に凝縮された妖気の塊で、当たれば相当な大ダメージを受けることになる。確実に当たる分散型の魔円咬を好む修羅としては不本意であっても、隙を作って当たりさえすれば問題無いと考えて放つ事にした。

 

(今度こそ当たる!)

 

 完全に不意を突かれた隆誠を見た事で修羅は確信した。もし不可思議な気を出して防いだところで、妖気を一点集中に凝縮された魔虎咬を受ければタダでは済まないと。

 

「ほいっとな!」

 

 あと少しで当たろうとする瞬間、隆誠が突然血迷った行動をする。気を帯びた両手の二本指を虎の口にねじ込んだのだ。

 

 そんな事をしたところで勢いは止まらないと思いきや、何と凝縮されている筈の魔虎咬が左右に引き裂かれてしまい、まるで分解されるように霧散していく。

 

「そ、そんなバカなッ!?」

 

 当たれば確実にダメージを与える筈の切り札があっさりと対処されてしまった事に、混乱状態に陥った修羅は着地しながらも尻餅を付いてしまう。

 

 魔虎咬を分解し終えた隆誠はクレーター状となっている深い地面に着地し、尻餅を付いてる修羅を見下ろしている。

 

(僕の、僕の切り札が、あんな簡単に……!) 

 

「どうした。もう攻撃しないのか?」

 

 混乱中の修羅に話し掛ける隆誠は次にこう言った。

 

「その様子を見る限りもう打つ手は無さそうだから、今度は此方から行くぞ」

 

「う、うわぁぁぁぁ!」

 

 ゆっくりと近付いてくる隆誠に、修羅は途端に恐怖して、一刻も早く脱出しようと跳躍する。

 

「あっ!」

 

 難なく脱出に成功して安堵する修羅の前方には、超スピードを使って先回りした隆誠が即座に攻撃を仕掛けた。

 

「ぐあぁぁぁぁ!」

 

 隆誠の前蹴りを喰らった修羅は凄まじい衝撃を受けた事で上空へ舞い上がった。

 

「ごふっ!」

 

 しかし、それだけでは終わらない。またしても先回りした隆誠は、吹っ飛んでいる修羅の腹に拳を当てた後、今度は地面目掛けて回し蹴りをする。

 

 急速で地面に落下する修羅は地面に激突するだけでなく、木々に当たっても止まる事無く抉りながら吹っ飛んでいく。

 

「これはオマケだ」

 

 そう言いながらゆっくりと降下していく隆誠は人差し指を向けていた。その先からピカッと光り何かが通り過ぎた瞬間、修羅が吹っ飛んでいる方向から突如大きな爆発が起きる。

 

 

 

 

『み、皆さん、ご覧頂けましたでしょうか。兵藤選手の一方的な攻撃に加え、止めと言わんばかりの一撃による大爆発が起きました!』

 

 今までの甘さとは打って変わるように、情け容赦の無い隆誠の攻撃に会場の誰もが驚きの声を上げていた。誰もが修羅を本気で殺す気でいると分かってしまうほどに。

 

 そんな事をしたら彼の父親である黄泉が絶対黙っていないだろう。国家解散したとは言え、魔界三大妖怪の怒りを買ってしまえば命は無い。

 

「お父様、このままでは修羅お兄さまが……!」

 

「……死ぬだろうな」

 

 慌てている迦楼羅とは別に、黄泉は黙って見守っているだけだった。

 

 大事な息子であっても、魔界統一トーナメントに参加した以上は死ぬ事も考慮しなければならない。修羅はそれを覚悟した上で参加したのだから、如何に父親でも今更どうにもならないのが実状だった。

 

 全ては修羅が招いた結果である為、隆誠に殺されても一切文句は言えない。自らそう言い聞かせる黄泉は、拳を握りしめながら見守っている。

 

 

 

 

 爆発の中心地には、仰向けに倒れている満身創痍の修羅がいる。

 

 隆誠がある程度加減したのか、彼が身に纏っている道着はそこまでボロボロになっていない。

 

「うっ、ぐっ……ち、ちくしょう……あいてて……!」

 

 道着は無事でも、身体の方はそうでもなかった。

 

 隆誠の攻撃はかなり重く、特に腹部は未だに鈍痛が響いている。初めて味わう痛覚に泣きそうになる修羅だが、それでも何とか堪えようと上半身だけ起き上がる。

 

「ここまでのようだな」

 

「ッ!」

 

 何とか起き上がろうとしてる最中、声が聞こえた方へ視線を向けると隆誠がいた。

 

「修羅、いい加減負けを認めろ」

 

「……い、嫌だ!」

 

 隆誠からの勧告に修羅は拒否。意地でも降参したくないのだろう。

 

「さっさと殺せばいいだろう! これは真剣勝負……え?」

 

 修羅が言ってる最中に何かが頬を掠めた。その数秒後には後方から凄まじい爆発が起きる。

 

「どこまで己惚れていれば気が済むんだよ」

 

 大爆発が起きた原因は隆誠だった。いつの間にか人差し指を自分に向けて何かが光っていたから。もし態と外していなければ、修羅は間違いなく死んでいただろう。

 

「お前みたいな未熟な子供が真剣勝負とは笑わせる。俺が一体どれだけ力を抑えて戦っていたのかも把握してないだけでなく、さっきの光も全然反応出来なかった。ここまで力の差を教えてやったと言うのに、まだ分からないのか?」

 

 修羅は黄泉の息子で妖力が如何に高いと言ったところで、何もかもが経験不足だった。魔円咬や魔虎咬は威力があっても、妖気の練り方が余りにもお粗末だった為、隆誠は簡単に対処する事が出来たのだ。

 

 そんな中途半端な実力で真剣勝負を口にする修羅に、隆誠が怒るのは無理もない。もしもこれが(イッセー)だったら、もっと苛烈に攻めていただろう。

 

「それでも意地を張って死を選ぶのであれば、お前は所詮その程度の器だ。黄泉や迦楼羅に恥を晒す事になるが、な」

 

「……う、ひっく……!」

 

 ここで決定打になったのか、泣きべそを掻いていた筈の修羅の双眸から本気の悔し涙を流していた。

 

 少し言い過ぎたなと思いながらも、隆誠は心を鬼にしながら再度勧告をする。

 

「これが最後だ。拒否したら今度こそ容赦無く殺す。修羅、負けを認めろ」

 

「ひっく、うぐ、ひっく……」

 

 本気でやると言う姿勢を見せようと、隆誠は殺気を放ちながら右の人差し指の先端からキルビームの光が集束していた。拒否した瞬間、その光が一瞬で修羅の頭を簡単に貫けるほどの威力を持っている。

 

 それを見た修羅は完全に吞まれており、号泣する寸前だった。

 

 そして――

 

「……ま、参ったよ。僕の負けだ」

 

 漸く修羅の口からギブアップを宣言した事で、隆誠は内心安堵する。

 

 会場側も修羅が負けた事を認識したようで、71ブロックは兵藤隆誠の本選出場が決定した。

 

「全く、ここまで手を焼かされるとは」

 

 黄泉が悪戦苦闘の毎日だったと言っていたが、確かにその通りだった。ここまで反抗的な子供を躾けるのはさぞかし大変だろうと隆誠は痛感する。

 

 隆誠は泣いている修羅に近付くと、急に開いた掌から光が集束される。

 

「な、何を……!?」

 

「慌てるな。これは君を殺すモノじゃない」

 

 そう言った隆誠は光を放った。

 

「ひぃっ! ………え、あ、あれ……傷が」

 

 直撃した修羅は咄嗟に両腕でガードするも、光が全身に隈なく行き渡っても消えない。それどころか、彼が負っている傷が見る見る内に癒え、ボロボロになった服も修復されている。

 

 一瞬で戦う前の姿となった修羅の姿に、中継機を通して観ている会場の者達から驚愕の声を上げるのは無理もなかった。

 

「もう痛い所は無いだろう?」

 

「……う、うん」

 

「それじゃあ戻るぞ」

 

「え?」

 

 隆誠がパチンと指を鳴らした瞬間に地面から転移用の魔法陣が浮かび上がった途端に輝き出し、修羅と一緒に姿を消した。

 

 

 

 

『兵藤選手が魔法陣らしきモノを展開したと思いきや、修羅選手と一緒に消えてしまいました! 二人は一体何処へ!?』

 

 実況の小兎がありのままを伝えるも、会場では隆誠と修羅が突如姿を消した事に大騒ぎとなっている。

 

 二人は一体何処へ行ったのだと困惑する中、それはすぐに見つかった。黄泉と迦楼羅の目の前に魔法陣が突如現れた為に。

 

「はい到着っと」

 

「あ、あれ? 何でパパと迦楼羅が……?」

 

「修羅お兄さま!?」

 

 魔法陣からは、先程まで会場から離れた億年樹の上にいた筈の隆誠と修羅が現れた事で、会場は違う意味で再び騒がしくなる。

 

 目の前に兄が突然現れたら、黄泉の隣にいる迦楼羅が困惑してしまうのは無理もない。

 

「申し訳ない、黄泉。大事な息子を甚振る光景を見て気分の良い物じゃ無かっただろう。せめてもの詫びにはならんが、傷は此方で治しておいた」

 

「……変わった奴だ。人間のお前が妖怪の俺に、そこまで気を遣う必要は無いと言うのに」

 

「妖怪だろうと、貴方はこの子の父親だ。家族を大事にする俺としては、貴方に謝罪するのは当然でしょう」

 

「此方としては寧ろ感謝したい気持ちで一杯だよ」

 

 ルール有の大会とは言え、ここまで面倒を見てくれる選手はいない。なのに隆誠は息子の未熟を指摘した上にアフターケアまでしてくれたから、父親の黄泉としては本当に感謝に尽きない。

 

「じゃあな、修羅。次に会えるかどうか分からないが、今まで以上にもっと腕を磨いておけ」

 

「………こ、今度はお前なんかに絶対負けないからな!」

 

「ふっ、楽しみにしてるよ」

 

 憎まれ口を叩く修羅だが、隆誠は単なる照れ隠しだと見抜いており笑みを浮かべながら去ろうとする。

 

 幽助のいる所へ向かおうとするも――

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

 突如声を掛けられた為に脚を止める隆誠。

 

 振り返ると、自身に声を掛けて来たのは修羅の妹である迦楼羅だった。

 

「しゅ、修羅お兄さまを助けて下さり、ありがとうございました。このご恩は一生忘れません」

 

「気にするな。これは単なる俺の気まぐれだからさ」

 

「それと、此方が本題なのですが……」

 

 礼を言った迦楼羅は、頭を上げた途端に顔を赤らめながら隆誠に向かってこう言った。

 

「修羅お兄さまの魔円咬を防いだ時に使ったあのオーラ、やはり貴方でしたのね! わたくしの運命の人!」

 

「…………………………は?」

 

「か、迦楼羅?」

 

「迦楼羅、お前は一体何を言って……」

 

 途中から迦楼羅の言ってる意味が分からない隆誠は目が点になってしまう。それは彼だけでなく、一緒に聞いていた修羅や黄泉、そして周囲にいる者達も同様に。

 

 そして彼女はこう発言した。

 

「隆誠様、どうかわたくしと結婚を前提に付き合って頂けませんか!?」

 

 その直後、迦楼羅のプロポーズによって会場全体が絶叫を響かせたのは言うまでもなかった。




迦楼羅が隆誠にプロポーズしたのは一応理由があります。

ついでに修羅の必殺技の「魔虎咬」は、SFC版「幽☆遊☆白書ファイナル 魔界最強列伝」の超必殺技です。大変古いゲームですが、幽白を知ってる世代の方でしたら分かるかと。

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