魔界にやって来た元神   作:さすらいの旅人

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今回は幕間な内容です。


本戦開始前

 大会が始まる約三ヵ月以上前の話になる。

 

 癌陀羅のとある一室に二つの培養器があり、それらの中には小さな男の子と女の子が成長している。

 

「経過はどうだ、妖駄?」

 

「黄泉様の御子息『修羅』様はあとニ、三日でお目覚めになられますが、御息女の『迦楼羅』様が目覚めるのは十日になるかと」

 

「ふむ。迦楼羅の目覚めが少々遅いのは致し方あるまい」

 

 幽助の提案によって魔界三大勢力が国家解散した他、魔界統一トーナメントを行われるが魔界全土に知らされている中、黄泉の勢力では二人の子供が誕生間近となっていた。

 

 本来であれば黄泉は軀に勝つ為の切り札として修羅をぶつける予定だったが、それだけで確実に優勝は出来ないと危惧していた。隆誠と言う人間の存在によって、予定が大きく狂わされてしまったから。

 

 妖気や霊気でもない異質な力を持っているだけでなく、隆誠の実力は間違いなく浦飯幽助よりも強いかもしれない。そう考えた黄泉はもう一つの切り札として、迦楼羅を用意する事となった。

 

 女として生まれた故かは不明だが、迦楼羅は修羅より目覚めるのが遅かった。黄泉としては二人同時に目覚めて欲しかったが、こればかりは流石に無理なので諦めるしかない。

 

「迦楼羅も目覚め次第すぐに戦闘教育を施す。二人の今の妖力値は?」

 

「修羅様は80000Pを超えており、迦楼羅様は75000Pに到達寸前です。どちらも末恐ろしい御子達ですよ」

 

「フ。何しろ俺の切り札だからな」

 

 この時の黄泉はまだ野心家であった為、修羅と迦楼羅を自分の子供でありながらも兵器のように見ていた。二人の妖力値を何とか600000P以上まで上げれば、軀や隆誠を確実に倒す事が出来ると。

 

 しかし、その考えは数時間後に断念してしまう。雷禅の旧友達が発した妖気の柱だけでなく、隆誠が発した黄金の闘気の柱によって。

 

 直後、ソレ等を感じ取った修羅はクスクスと笑っている中――

 

(なに、このキは? すごくキレイで、あったかい……)

 

 迦楼羅が兄と違って全く異なる反応を示していた。

 

 荒々しい複数妖気と違って、隆誠のオーラは神々しいと思えるほど穢れが一切無い。妖怪である筈の迦楼羅は心が清らかになってしまうほど魅了されている。

 

(このヒトのキ、もっとかんじたい。ちかくにいたい。このキレイであったかくて……ダイスキ♪)

 

 まだ目覚めていないのに、まるで恋する乙女のような気持ちになる迦楼羅だった。

 

 

 

 

 

 

 迦楼羅のとんでもない発言によって周囲が騒然としていたが――

 

「フ、フフフフフフ……兵藤、お前は俺の娘をいつの間に誑かしたんだ?」

 

「待つんだ黄泉、一旦落ち着け。そして冷静になれ」

 

 黄泉が全身から凄まじい殺気混じりの妖気を放出した事によって一瞬でシーンと静まり返った。それどころか周囲にいる妖怪達は巻き添えを喰らわないよう離れる始末で、一切茶々を入れることなく黙っている。

 

 普通ならそんな恐ろしいモノをぶつけられたら恐怖してしまうのだが、隆誠は冷や汗を掻いてるだけで何とか宥めようとしている。魔界三大妖怪に対して僅かな動揺だけで済ませている事に、周囲の妖怪達はこの瞬間、彼に対してある意味英雄だと認識することになった。

 

「おい迦楼羅! あんな人間と付き合うなんて僕は絶対認めないからな!」

 

「邪魔しないで下さい、修羅お兄さま! あの方はわたくしの運命の人なのですから!」

 

 先程まで隆誠に引っ付いていた迦楼羅を、兄の修羅がすぐに引き剥がして兄妹仲良く(?)騒いでいた。

 

 実のところ、修羅は兄が妹を守るのは当然と言う考えを持ってる所為か若干シスコン気味になっている。迦楼羅は子供でありながらも端整な顔立ちで上流貴族のお嬢様みたいな性格なのだが、隆誠に求婚したのを見た事で修羅が暴走気味になってしまうのは無理もない。

 

「ダハハハハハ! おい見ろよ北神、黄泉の娘がリューセーにプロポーズしやがったぞ!」

 

「あ、いや、その……」

 

 大爆笑してる幽助に北神は彼を咎めるべきか判断に迷っていた。

 

 幽助がこうなっているのは、自身の喧嘩仲間である桑原和真を思い出したからだ。

 

 人間の桑原は現在も飛影の妹である氷女(こおりめ)の『雪菜』に恋をして熱烈なアタックを続けている。尤も、恋愛感情に疎い雪菜は全く理解していないので実る事は無いが。

 

 妖怪が人間に求婚する迦楼羅が桑原の逆バージョンだと認識した事で、大爆笑する幽助の心情は分からなくもない。

 

 しかし、それは他にもいた。

 

「……どこかのバカを思い出しそうだ」

 

 幽助と違って笑ってはいない飛影だが、熱烈な求婚をした迦楼羅を見た事で桑原を連想していた。

 

 彼は妹の雪菜を害する存在がいると分かれば消そうとするが、彼女にアプローチしている桑原に対しては何もせずに見守っている。妹が恋愛感情に疎いだけでなく、氷女が男と恋仲になる事は決して無いと理解してるから、敢えて放置しているだけに過ぎない。もしも本気で手を出すような愚かな行為をしたとなれば話は別になるが。

 

 幽助や飛影とは別に、本気で求婚されている隆誠を見て面白くなさそうに見ている者がいる。

 

「……あの迦楼羅って子、見た目とは裏腹に随分なマセガキね」

 

「おいおい棗、あんな子供(ガキ)に嫉妬するなんてみっともいでぇ!!」

 

「九浄、足に蚊が止まってたから踏み潰しといたわ」

 

 雷禅の旧友である棗が不機嫌そうな表情になっているところ、双子の兄である九浄が揶揄ってきたので思わず足を思いっきり踏ん付けた。

 

「兵藤の野郎、棗さんにあんな表情させやがってぇ……!」

 

「酎、悪いことは言わねぇ。お前じゃアイツに勝てっこねぇから」

 

 予選で棗に敗北した事で完全に惚れてしまった酎は、子供とは言え他の女に求婚されてる隆誠に対して怒りを燃やしていた。一緒にいる鈴駆は別の意味で隆誠に全く勝てないと理解して諦めさせるも、当の本人は聞く耳持たずだが。

 

 そして――

 

(これはほとぼりが冷めるまで待つしかなさそうだな)

 

 隆誠と話をする予定のコエンマだが、迦楼羅がとんでもない事をした所為で今は控えておくことにした。

 

 この何とも言えない空気は暫く続くが何とか収まり、大会主催者である幽助の本戦開始前の挨拶を無事に終えたのであった。

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