大会主催者である幽助の挨拶が終わった後、本戦の組み合わせが早々に行われた。
予選で多く数を減らしたとはいえ、本戦に進出する128名も相当な人数である事に変わりはない。A~Dブロックに分けられたトーナメント戦となり、優勝するのは非常に難しいと言っても過言ではなかった。
隆誠はBブロックとなっており、それには黄泉だけでなく幽助も含まれていた。子供達の件(特に迦楼羅)で敵対視される事になった黄泉、強くさせる為に指導した幽助、どちらも彼にとっては非常に戦い辛い相手であっても、この大会で余計な事を考えずに戦おうと決めている。因みに北神がこの組み合わせを見た時に『何て事だ……!』と嘆いていたが、それはもう今更なので隆誠や幽助は完全にスルーしている。
しかし、彼等以外も予選を勝ち抜いた選手達は強敵揃いなので気を抜く事は出来ない。隆誠が
そんな思惑を余所に、本戦が始まった。
各ブロックで選手達の試合が開始されて名勝負を繰り広げている中、隆誠が戦う一回戦の相手は、嘗て暗黒武術会で幽助が戦った風使い『陣』だった。
『さぁBブロックの第二戦では、兵藤選手 対 陣選手の試合が今まさに始まろうとしています!』
会場ではまるで注目の試合と言わんばかりに実況をする子兎によって、それを聞いた選手達の殆どがBブロックの方へ視線を向け始めていた。
彼等が主に見ているのは隆誠だ。予選では黄泉の息子である修羅に圧倒的な強さを見せつけて降参させたのが印象強かったようで、人間の身でありながらも黄泉や軀に並ぶほどの強者と認識している。
そして闘技場は予選と同様に億年樹の上となってるが、今までと違って中央には小型の円闘場が設置されている。隆誠と陣はその上に乗って対峙しているが、億年樹の上その物が闘技場となっており、戦ってる最中に場外となっても敗北にはならない。
(コイツは予選で黄泉の息子を圧倒した相手だ。最初から全力で行くべ!)
「………ふっ」
対峙している陣は一切手を抜かずに本気でやろうと決意しており、それに気付いたように笑みを浮かべている隆誠。
『それでは始め!』
中継カメラを通じて実況の子兎から開始の合図が宣言された。
直後、陣の全身から途端に風が纏い始める。
「風使い、か」
幽助の知り合いは中々楽しめそうな相手だと思いながら、隆誠は更に笑みを深くした。
陣が全身に纏っている風は、まるで彼を持ち上げるように足が浮いている。
「魔界の風は暴れん坊だぜ」
そう言った瞬間、陣は突然遥か上空へと飛んでいった。丁度真上には中継カメラがあって素通りされた事で、それに乗っている女妖怪は落ちそうになるも何とか事なきを得ている。
一体何処まで飛んでいくのかと隆誠は少々呆れながら見守っているが、漸く止まったのを視認する。億年樹を見渡らせるほどの位置で止まった為、常人の肉眼では見えたところで米粒のように小さいだろう。
数秒後、陣は急降下してきた。真っ直ぐと隆誠の方へ向かい、落下スピードを利用した拳を繰り出そうとしている。
「にゃろう!」
陣の先制攻撃が当たるかと思いきや、隆誠は寸でのところで軽々と拳を左手で受け止めた。
「な、なに!? ぐぁっ!」
攻撃を防がれた陣が戸惑いの表情を見せるも、その所為で隙だらけとなってしまい、隆誠は即座に反撃をしようと彼の頬を右の拳で攻撃した。
見事にクリーンヒットした陣は反撃出来ず、そのまま軽く吹っ飛んで仰向けに倒れてしまう。
「いちち……! おめぇ本当に強ぇな」
「そう思っているなら、早く本気を見せてくれ」
「言ってくれるぜ! オラの『飛翔術』を存分に見せてやらぁ!」
そう言いながら陣は再び風を纏い、再び上空へと飛んでいく。先程以上に凄まじいスピードで。
しかし、彼は気付いていない。空を飛んでいる間、いつの間にか隆誠が姿を消している事に。
「さぁて反撃開始……なっ!」
億年樹の遥か上空で止まった陣は小型の円闘場へ視線を移すも、そこに隆誠がいなかった。
「い、いない! アイツ、どこへ行っちまったんだ!?」
「これはこれは、お久しぶり。お早いお着きだったな」
「!?」
背後から声がしたので陣は振り向くと、自身を見下ろすように眺めて浮遊している隆誠がいた。
空を飛べることが全くの予想外だったのか、陣がこれまでに無いほど目を見開くばかりだ。
「お、おめぇも飛べるのか!?」
「一応な。言っておくが俺以外にも飛べる奴がいて、この大会に出場しているぞ」
隆誠が言っている飛べる奴とは、雷禅の旧友である『
前に手合わせした際、彼は飛翔術を披露していた。隆誠が彼以上の飛翔術を見せた事でムキになって敗北してしまい、煙鬼達に笑われていたのも含めて鮮明に憶えている程だ。その後に『もう一度俺と戦え!』と執拗に再戦する事になったが。
「まぁそれは良いとして、だ。さぁ、お得意の空中戦をやろうじゃないか」
「ッ! やってやらぁ!」
隆誠が挑発するように指をチョイチョイとやった瞬間、ソレを見た陣は乗ってしまうように突撃を仕掛ける。