魔界にやって来た元神   作:さすらいの旅人

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今回は読み飛ばしても問題無い内容です。


意外な事実

 陣以外にも、予選で敗退した酎を除いた凍矢、鈴駆、死々若丸、鈴木も全員一回戦で敗退という結果になる。しかし、悔いが残らなかったのか、誰もが完全燃焼したかのように吹っ切れていた。

 

 隆誠と同じBブロックにいる幽助も二回戦進出しており、彼の仲間や雷禅の旧友達、そして黄泉と軀も同様に勝ち進んでいる。

 

 予選を通じて一回戦で戦った者達も充分に強い猛者の集まりだが、二回戦に進んだのは残るべくにして残った者達と証明される事になった。

 

 A~Dブロックで行われている全ての一回戦が終了し、次に各ブロックの二回戦が始まろうとする。

 

 

 

 

 

「隆誠様、お疲れではありませんか?」

 

「大丈夫だよ。それより迦楼羅、此処に来て大丈夫なのか? 確か君は黄泉と一緒だった筈じゃ」

 

「もう、隆誠様ったら。そんな他人行儀な呼び方ではなく、『お義父様』と呼んで下さいな」

 

「いやいや、そんな呼び方したら俺が殺されてしまうから」

 

 二回戦が始まるまでの間、他の試合を観戦していた隆誠に迦楼羅が突然やって来た。会って早々に引っ付かれるも、子供相手に手荒な事をしないようやんわりと離れながら話し相手をしている。

 

 因みに迦楼羅からプロポーズされても即座に断ったのは言うまでもない。しかし向こうは一向に諦める気配が一切無いどころか、あたかも恋人のように振舞う所為で、父親からの(目が見えずとも)鋭い視線がグサグサと突き刺してくる始末で手に負えない状況だ。

 

 その黄泉は何か用事でもあるのか、今は別行動をしている。故に迦楼羅はその隙を狙い、こうして隆誠の元へ来た訳であった。

 

「迦楼羅! 何処へ行ったかと思えば此処だったか!」

 

「あ、修羅お兄さま」

 

 すると、妹を捜していたと思われる兄の修羅が声を荒げながら二人の元へ近付いてきた。

 

 その後はお決まりの行動で、隆誠に寄り添っている迦楼羅を引き剥がそうとする。

 

「ちょっと修羅お兄さま、何をするんですの!?」

 

「パパが言ってたじゃないか! 勝手にコイツの所へ行っちゃダメだって!」

 

「隆誠様はわたくしの恋人なのですから、一緒にいて当然ではないですか!」

 

「だからそんなの僕だけじゃなくパパも断じて認めないって言ってるだろう!」

 

 ギャーギャーと騒ぎ出す幼い兄妹に隆誠が思わず嘆息してしまう。周囲は騒がしいと思いながらも、相手は黄泉の子供だからか抗議する様子は一切無かった。

 

 彼も修羅や黄泉と同じく恋人になる事を何一つ了承してはいないが、もう敢えて何も言わない事にしている。ここでムキになって否定すれば、それこそ迦楼羅を深く悲しませて父親の怒りが殺意に発展させてしまいかねない。

 

 隆誠は一方的に求愛してくる女性相手(特にエリーやフレイヤ)は基本的に断固お断りな姿勢を見せるも、流石に幼子相手にはそこまでやらない。いずれ元の世界に戻る予定だから、それまでの間は迦楼羅の好きにさせておこうと放置してるだけに過ぎないのだ。

 

『それではAブロック二回戦第三試合、蔵馬選手 対 時雨選手の準備OKの模様です! 始めて下さい!』

 

 そんな中、実況のアナウンスからAブロック二回戦開始が耳に入った。

 

 戦う選手が蔵馬だと分かった瞬間、隆誠はすぐにモニターへ視線を移す。

 

 二人はそれぞれ武器を使って戦うタイプで、蔵馬は植物を利用した鞭、時雨は巨大な円形の刀。

 

 隆誠が驚いたのは時雨が扱う武器の方であった。投擲した事で円闘場の一部を斬り裂くどころか破壊するほどの攻撃力を誇っており、更にはその先にある木々を薙ぎ倒した後に持ち主へ戻っていく。

 

(破壊力だけで言えば光円斬(こうえんざん)以上だな)

 

 時雨の刀――『(りん)()円礫刀(えんれきとう)』を見た隆誠はそのように評価していた。

 

 隆誠が言った光円斬とは、光を回転する円盤状のカッターのように練り上げ、それを投げつけて対象を切り裂き、『ドラグ・ソボール』でツリリンが使う代表的な技。切断力が非常に優れており、格上の相手にも十分通用する強力な技の一つでもある。しかし切断力はあっても、燐火円礫刀の破壊力には敵わない。尤も、切れ味だけの勝負であれば光円斬の方が確実に上だが。

 

 対して蔵馬の鞭――薔薇棘鞭刃(ローズウィップ)は如何せん攻撃力が足りない。投擲した燐火円礫刀を阻止する為に鞭で巻き付いても切断されてしまう為、相性が悪いと言わざるを得なかった。

 

 武器の勝負で言えば確実に時雨の方に軍配が上がっている。得物で振り回す遠心力で自身の周囲に竜巻らしきモノを発生させながら、隙を晒した蔵馬に突撃して地面ごと破壊する程の凄まじい威力を見せていた。

 

「す、凄まじいパワーですわね……」

 

「あんなのまともに喰らったら流石に死ぬな」

 

「………………」

 

 凄まじい破壊力を見た迦楼羅と修羅は、思ったまま口にしていた。

 

 二人の感想は隆誠も内心同感だと思いながらも無言のまま観ている。

 

 蔵馬の姿が土煙の所為で見当たらないと思いきや、すぐに異変が起きた。時雨の周囲には凄まじい妖気が出た後、煙が消えた先には蔵馬ではない銀髪の妖怪が出現した。

 

『出ましたぁ! 伝説の妖狐蔵馬!』

 

(何だと!?)

 

 銀髪の妖怪が蔵馬と同一人物なのを知っているのか、実況の小兎の台詞に隆誠が目を見開いた。

 

 観客達もどよめいている中、実況側が解説をしようとする。

 

『解説の妖駄さん、ついに蔵馬選手が妖狐になりましたね!』

 

『ええ。蔵馬選手は憎しみや怒り、あるいは感情の高まりによって何かにキレた時、妖狐の姿に戻るようです。妖気の桁も比べ物になりません。伝説の極悪盗賊、妖狐蔵馬。あれが本来の姿です』

 

(成程、そう言う事だったのか)

 

 隆誠は数ヵ月以上前、初めて蔵馬を見た時からずっと気になっていた。初対面の筈なのに何故か他人の気がしなかった事に。

 

 この大会で話した時に何か分かるかもしれないと思って、幽助を通じて会話に参加しても判明しなかったが、妖駄の解説を聞いた事で漸く氷解する。立場は境遇は違えど、蔵馬は自分と同じく転生した存在だったのだと。

 

 もしも自分がこの世界で転生し、蔵馬に出会っていればどうなっていたかと隆誠は思わずそう考えてしまう。

 

 蔵馬が妖狐の姿になった事で試合の勝敗が全く分からないと思いきや、またしても異変が起きる。蔵馬が人間の姿に戻ってしまった為に。

 

(そうか、君はその生き方を決めたのか)

 

 何故元の姿に戻ったのだと観客達の誰もが疑問を抱くも、隆誠だけはすぐに分かった。妖怪(むかし)ではなく、人間(いま)として生きる為の決別しようと。

 

 その所為で圧倒的に不利な状況となる蔵馬だが、それでも勝つ為の策を考えていたかのように、またしても状況が一変する事になった。




本当は隆誠と蔵馬の試合をするつもりでしたが、別の相手に変更する事にしました。
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