魔界にやって来た元神   作:さすらいの旅人

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二回戦

 蔵馬が化石化された億年樹に種を植え付けて融合させた事で状況が一気に変わった。

 

 億年樹その物を自身の武器に扱う事で隆誠が驚いている中、結果として蔵馬が勝利を得る。次の試合で勝てるのかと不安を抱くほどの重傷だが。

 

 それとは別に、蔵馬が億年樹に植え付けた種の元が桜であった事に目を奪われた。あの桜には人間として生きる大切な思い出があるのだろうと察しながら。

 

 素晴らしい物を見せてくれた礼として蔵馬に傷の治癒をしたいところだが、それをやったら色々不味い。敗北した修羅や陣と違って、彼は隆誠と直接戦っていない。加えて次の試合が控えている為、手助けをすれば不正行為と見なされて失格になる恐れがある。

 

 もし幽助から治癒して欲しいと頼まれても隆誠は断らざるを得ない。そう思いながら、彼は二回戦の準備に移ろうとする。

 

 

『次の試合はBブロック二回戦、兵藤選手 対 飛影選手の戦いになります!』

 

 

「それじゃあ二人とも、俺は行ってくるから黄泉の所へ戻るんだぞ」

 

「隆誠様、どうかお気をつけて」

 

「お前に言われなくてもそのつもりだ!」

 

 小兎のアナウンスを聞いた隆誠は、迦楼羅と修羅に戻るように言った後、転移術を使って闘技場へ向かった。

 

 それとは別に――

 

「蔵馬、医務室に行った方が良い」

 

「凍矢の言う通りだよ。こりゃ即入院ものだぜ」

 

「さぁ、行くべ」

 

 試合に勝利した蔵馬は会場に辿り着くが、仲間の協力が無ければ戻れないほど傷が深かった。

 

 身を案じる凍矢に鈴木、医務室へ行かせようとする陣だが、蔵馬は拒否しようとする。

 

「いい、このままにしておいてくれ。飛影と兵藤隆誠の戦い、どうしても観ておきたいんだ」

 

 蔵馬はこれまで隆誠の試合は欠かさず観ている。

 

 修羅や陣を圧倒する実力とは別に自分と共通している何かがあると、初めて会った時からそう感じていた。早い話、彼も隆誠と同じく他人とは思えなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

「早いな、もう来ていたのか」

 

「………………」

 

 転移術を使って闘技場に辿り着いた隆誠の眼前に飛影がいた。

 

 隆誠が気安そうに声を掛けても、飛影は口を開かず無言のまま。

 

 相も変わらず素っ気ない性格だと思っている中、ある物が目に入る。飛影が手にしている鞘に収まった剣を。

 

 

『それでは兵藤選手 対 飛影選手の試合開始です!』

 

 

 小兎が開始の宣言をした直後、飛影は鞘を抜いて放り投げた後、抜き身となった剣を持ち構える。

 

 対して隆誠は構えを見せず、興味深そうに眺めているだけ。相手を甘く見ているように思われるかもしれないが、実は全く隙が無い。もしあれば飛影が即座に動いているから。

 

「俺が幽助の知り合いだからって、手心を加える必要はないぞ。殺す気で掛かって来い」

 

「初めからそのつもりだ」

 

 飛影は幼い頃から過酷な人生を送っており、相手が誰であろうと容赦はしない。蔵馬や幽助と出会った事で多少丸くなっているが。

 

 だがそれとは別に、隆誠は非常に甘い人間だと見ている。その気になれば今まで戦った修羅や陣を簡単に殺せる実力があるのに、敢えて不殺を貫く姿勢に、昔の自分だったら酷く嫌悪しているだろう。

 

「貴様こそ、俺を殺す気でやれ」

 

「君がそうせざるを得ない相手だったら、な」

 

 暗に本気を出せと言う飛影に、隆誠も自分に本気を出させてくれと言い返した。 

 

 蔵馬とは違う意味で嫌な性格をしていると内心思いながらも、飛影は剣の切っ先を隆誠に向ける。

 

(ほう、中々良い剣だ)

 

 刃に触れただけで簡単に斬れてしまいそうな鋭さを見せる剣だと考察する隆誠。

 

「行くぞ」

 

 そう言って飛影は突進した。隆誠を斬る為に。

 

 一瞬で間合いを詰めて斬撃をする飛影に、全く問題無いように紙一重で躱そうと跳躍する隆誠。

 

 飛影が逃がさんと言わんばかりに跳躍し、空かさず斬撃だけでなく刺突をやるも隆誠は悉く躱すだけ。

 

 足場のない空中でありながらも攻防を繰り広げる二人だが、漸く地面に着地して再び対峙する。

 

「良い太刀筋だ。我流でありながらも一切無駄が無い」

 

「……お喋りが好きな野郎だ」

 

 称賛する隆誠だが、飛影にはお気に召さなかったようだ。それどころか不快な表情になっている。

 

「実は俺、こう見えて剣も使えるんだ。こんな風に、ね」

 

「ッ!?」

 

 すると、隆誠の開いた右手から突然光が集束していき、剣の形となっていく事に飛影は目を見開いた。

 

 『ドラグ・ソボール』を参考に無手での格闘戦を一番好む隆誠だが、他の漫画やアニメを見た事で剣技も一通り学んでいた。元の世界で最上級悪魔クラスの実力を持つ木場祐斗やゼノヴィアに、剣の講師役をやれるほどの腕前を持っている。

 

 いつもであれば木刀にオーラを纏わせて相手をするが、今は真剣勝負の大会な為、そんなおふざけは一切許されない。それ故に隆誠は木刀を出さず、オーラを集束させた光の剣を作る事にした。木刀を纏わせるより威力や切れ味は非常に高いが。

 

(つくづく嫌な野郎だ。あの桑原(バカ)と同じ技を使いやがる)

 

 隆誠が作りだした光の剣を見た飛影は、(決して認めたくないが)思わず戦友の桑原和真を思い出す。

 

 桑原も隆誠と同じく霊気を物質化して作り出す『霊剣(れいけん)』を得意としている。剣技は余りにも拙いが、それでも切れ味だけは飛影の剣に匹敵する程だ。更には『()元刀(げんとう)』と言う次元ごと断ち斬ることの出来る剣もあり、それだけは飛影でさえも非常に厄介極まりないと認めている。

 

「折角そちらの剣技を見せてくれたんだ。ならば俺も見せるとしよう」

 

 作り上げた光の剣の形状が十字架のような大刀となった瞬間、隆誠は途端に両手で振りかざす。

 

「全力で躱す事をお勧めする。じゃないと――真っ二つになるぞ!」

 

「!」

 

 隆誠が構えるのを見た事で、飛影は全身に悪寒が走った。

 

 そして思いっきり振り下ろすように袈裟斬りをした瞬間、衝撃と思われる何かが飛影の横を通り過ぎる。

 

 直後、飛影の背後から何かを破壊する音がしたので思わず振り向いたその先には――木々だけでなく岩山すらを抉るように切断される光景が目に映っていた。

 

 

 

 

『こ、これは凄い! 兵藤選手が作り出した霊剣は、時雨選手の燐火円礫刀以上の破壊力を秘めている模様です!』

 

 会場では小兎が冷や汗を流しながら実況をしている中、モニターで試合を観ている者達は開いた口が塞がらない程に驚愕していた。

 

 彼女は以前の暗黒武術会で桑原の霊剣を見た事もあってか、隆誠が作りだした光の剣を霊気だと勘違いしている。

 

「おいおいリューセーの奴、あんな事も出来るのかよ!」 

 

「か、彼は本当に人間なのでしょうか……?」

 

 半年近くも一緒にいた幽助や北神は、隆誠が剣を使うのは初めて見た。無手を主体としている所為もあって、見る機会が無かったのだろう。

 

 余りにも出鱈目過ぎる実力を持つ隆誠に、誰もが飛影の敗北を想像してしまうのは無理もなかった。




アニメ版で飛影は軀と戦っていましたが、此方では隆誠と戦う展開にしました。
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