魔界にやって来た元神   作:さすらいの旅人

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不覚を取る隆誠

(う~ん、あの斬撃を真似てみたけど意外と難しいな)

 

 隆誠が光の剣で袈裟斬りをした事により、巨大な斬撃は飛行するように真っ直ぐ進み、木々が薙ぎ倒され、その先にあった岩山も真っ二つになるように切断されていた。

 

 飛影や会場にいる者達は余りの威力に絶句しているが、隆誠だけは全く別の事を考えていた。

 

 隆誠は某海賊漫画に出てくる世界最強の剣士みたいな大刀、そしてあらゆる物を両断する斬撃を真似てみたが、久々に剣を振るった所為か威力にムラがあって失敗したと内心嘆いている。本物であれば無駄に破壊する事無く、通り過ぎただけで全て両断されるから。

 

 このところ無手の戦いばかりやっていた所為で、武器を使って戦う事がめっきり減っていると理解した隆誠は、元の世界に戻ったら剣の練習をする事を内心決意する。同時に祐斗を誘って手合わせの相手もしてもらおうと。

 

「どうだ飛影、躱して正解だったろ?」

 

 失敗した事を顔に出さないよう、してやったりと言ってのける隆誠。

 

「ちっ、ふざけた真似を……!」

 

 隆誠の斬撃に驚愕する飛影だったが、すぐに舌打ちをした。

 

 それとは別に、桑原の次元刀並みに非常に厄介な相手だと認識する。空間まで切断しないとは言え、斬撃を飛ばしてあらゆる物を薙ぎ払うなど、剣技に長けている飛影でも出来ない芸当だから。

 

「今度は連続で行くぞ!」

 

「っ!」

 

 大刀の形状となっている光の剣に重さが全く無いように軽く振り回す隆誠。

 

 それによって複数の斬撃が襲い掛かろうとするも、飛影は瞬時に高速で躱していた。

 

「そらそらぁ!」

 

 斬撃を躱されても全く気に留めない隆誠は、飛影を追跡するかのように遠距離用の斬撃を振るい続ける。

 

 隆誠が何度も斬撃を振るう所為で、大地が抉れ、木々が次々に薙ぎ倒され、無数の岩山もあっと言う間に斬り飛ばされてしまう。明らかに自然破壊をしているが、此処は億年樹の上で作られた偽りの大地となっている為、本物の地上とは全く異なっているので問題無いと補足しておく。

 

(何度も同じ技を使いやがって……!)

 

 躱し続けていた為か向こうのスピードに慣れ始める飛影。同時に隆誠が斬撃を振った瞬間、ほんの僅かに硬直しているのも観察している。

 

 大刀を振り下ろした一瞬の隙を突こうと、飛影は態と躱す速度を緩めようとする。

 

「隙有りぃ!」

 

 飛影の動きが若干遅くなったのを視認した隆誠は、見逃さないと言わんばかりに大刀を振るった。

 

 直後、放たれた斬撃は飛影に命中し――すぐに消えた。

 

「あ、しまった!」

 

 斬撃に命中したのが単なる残像だとすぐに分かった隆誠は、してやられたと眉をひそめた。

 

 その所為で動きが止まってしまうも、いつの間にか彼の懐に入った飛影が仕掛けようとする。

 

 隆誠の心臓を貫こうと剣が左胸に当たる寸前――何故か飛影が吹っ飛んだ。

 

「くっ……何だ、今の衝撃は……?」

 

 突然吹っ飛ばされたことで倒れてしまう飛影だが、瞬時に起き上がった。

 

「ふぅっ、危ない危ない。危うく致命傷を負うところだったよ」

 

 安堵の息を漏らす隆誠は、当たりそうだった左胸を片手で擦りながらそう言っていた。

 

 吹っ飛んだ原因は明らかに隆誠の仕業だと飛影は理解している。しかし、大刀状の光の剣を展開させながら一体どんな方法でやったのかが分からない。剣が左胸に当たる瞬間、隆誠が咄嗟に自分を睨んでいたことぐらいしか。

 

 隆誠が咄嗟に使ったのは『遠当て』と呼ばれる、目から衝撃波を出し相手を吹っ飛ばす技。これも当然『ドラグ・ソボール』の技の一つなのは言うまでもない。

 

「どうやら俺は君を少しばかり甘く見ていたようだ。その非礼を詫びよう」

 

 まだ本気でやっていないとは言え、隙を突かれた上に懐まで入られたのは隆誠からすれば不覚も同然だった。もし(イッセー)が見ていたら『油断しすぎだ』と突っ込まれているだろうと確信する程に。

 

「だったら、さっさと本気を出せ。これ以上舐めた真似をすれば本当に殺すぞ」

 

「……良いだろう。ならば望み通りにしてやる」

 

 あくまで試合用としてな、と内心付け加える隆誠は両手に持っている光の剣を消した後、拳を握りしめながら構え――

 

「はぁぁぁぁあああ~~!!!」

 

 雄叫びを上げた瞬間に全身から金色のオーラが放出し、同時に凄まじい暴風が吹き荒れる。

 

「ぐっ!」

 

 吹っ飛ばされそうになる飛影だが、片手に持ってる剣を地面に刺して何とか耐えていた。

 

 

「キャァァァァァァァァァァァッッ!」

 

 

 因みに中継機に乗っている女妖怪は撮影に集中していた所為で暴風に巻き込まれているが、試合に集中している二人はそんなの知った事ではなかった。

 

 そして隆誠から発する暴風が収まるも、全身から神々しいと言えるほどのオーラを纏っていた。

 

「ふぅぅぅ………待たせたな。さぁて、此処からが本当の第二回戦と行こうか」

 

「化物め。貴様、本当に人間か……!?」

 

 以前に隆誠が気を解放して感じ取ってはいたが、改めて間近で見た事に仙水が使っていた『聖光気』以上だと改めて思い知らされた。

 

 だがそれでも、飛影は負ける気など微塵も無い。それどころか更に闘志を見せようとする。

 

 気迫に飲まれない姿勢を見せる飛影に、隆誠は笑みを浮かべる。寧ろ、そうこなくては面白くないと言わんばかりに。

 

「折角力を解放したんだ。簡単にやられるなよ?」

 

「ふざけ――っ!?」

 

 目を合わせていた筈なのに、突如眼前から隆誠の姿が消えた。

 

 一体何処へと戸惑う飛影だが、背後から気を感じたので振り向くと、瞬間移動したかのように隆誠が立っている。

 

「どこまでもふざけた野郎だ。さっさと攻撃すれば――がはぁっ!」

 

「ではお言葉に甘えるとしよう」

 

 またしても気付かない内に接近され、腹部に強烈な一撃を喰らった飛影は勢いよく吹っ飛んで岩山に激突した。 

 

 

 

 

『ひょ、兵藤選手、一瞬で飛影選手に途轍もない一撃を当てました! 余りの早さに私の目では追いきれません!』

 

 飛影だけでなく、会場にいる者達も全く見えなかった。同時に本気となった隆誠がここまで凄いのかと何度も驚愕するばかりだ。

 

「あの飛影が速さで負けるなんて……!」

 

「とんでもない奴だな」

 

 観戦しているぼたんやコエンマも同様の反応を示しており、本当に隆誠は人間なのかと疑ってしまうほどだった。

 

 魔界で最高クラスの力を持つS級妖怪を圧倒する人間など普通はあり得ない。平行世界から来た人間となれば話は別だが、それでも隆誠は普通の人間とは大きくかけ離れた存在ではないのかとコエンマ達が疑うのは無理もなかった。

 

(それにあの黄金の闘気、やはり人間が使うにしては余りにも過ぎたモノだ。それを使いこなすなど神に等しい存在でない限り……っ!)

 

 コエンマは試合を観ながらある事に気付いた。隆誠が使っている闘気は、本来神のような超常的存在でなければならない事に。

 

(あ、あの人間、もしや……!)

 

 予想が外れて欲しいと心底願うコエンマだが、こう言う嫌な予感は必ず当たってしまう自分を呪うのであった。




隆誠の正体に気付いてしまうコエンマでした。

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