魔界にやって来た元神   作:さすらいの旅人

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力の差を教えられる飛影

「う……ぐっ……ちぃっ……!」

 

 剣を手放してしまう飛影は岩山に激突した後、そのままゴロゴロと落ちて倒れるかと思いきや、そうさせまいと辛うじて両脚で着地していた。

 

 顔には出していないが、腹部に受けた衝撃はかなりの激痛だった。それを堪えながらも彼は何とか立ち上がり、ボロボロになった上着を破り捨てて上半身を露わにする。

 

「そうだ。そうこなくては困る」

 

「行くぜ……!」

 

 軽口を叩く隆誠に、飛影は苛立ちながらも握りしめた(包帯を巻いている)右手を見せ付けるように構える。直後、黒い炎が出現して右手を包み込んでいく。

 

(黒い炎、か。確かこの世界では『魔界の炎』だったな)

 

 飛影が発する魔界の炎を見る隆誠は、興味深そうに目を細めていた。

 

 炎の色を見て思わず『黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)』ヴリトラを思い出してしまう。黒炎を身に受ければ命を吸いとり燃え尽きるまで絡みつくとされるが、飛影のアレはそう言う特殊な物ではない。並みの炎とは比べ物にならないほど凄まじい熱さで、触れたら火傷どころでは済まないだろう。

 

 しかし、隆誠からすれば大して問題無い。彼はこれまで炎を使う者と戦った事があるだけでなく、正体がバレる前はライザー・フェニックスに火達磨にされた経験もある程だ。尤も、後者は全身にオーラを纏わせて無傷で済んだが。

 

「その炎は、何と言うか……今まで見た炎と違って異質なように思えるな」

 

「貴様の言う通り、コレは生まれた時に定められた俺の呪縛そのもの。どうする事も出来ぬ憎しみを糧に、ありとあらゆる物を焼き尽くしてやる……!」

 

「面白い。ならばその炎で俺を焼き尽くしてみろ」

 

 隆誠は飛影が何の憎しみを抱いているのかは知らないが、何故か虚言のようにしか聞こえなかった。まるで何かを隠しているのではないかと思うも、そう指摘したところで素直に答えないのが目に見えている。

 

 幽助、もしくは軀相手なら素直に答えているかもしれない。まだ会って間もない隆誠では無理だから、戦いの中で探るしかなかった。

 

「はぁぁぁぁぁ、たぁぁぁ!」

 

 飛影が右拳を前に突き出した瞬間、炎の妖気が塊となって前進する。

 

 対して隆誠は全身にオーラを纏わせたまま、そのままゆっくりと歩く。

 

 炎の妖気が隆誠に直撃するも――彼が纏うオーラによって防がれていた。

 

「っ! はぁぁぁぁぁぁ!」

 

 全く通じていない事に目を見開く飛影だが、炎の出力を上げる。

 

 しかし、隆誠は意に介さずと言った感じでゆっくりと歩き続けていた。

 

 攻撃を仕掛ける飛影、オーラを纏いながら進行する隆誠。試合を観ている者達からすれば、明らかに力の差が分かる光景と言えよう。

 

 そして隆誠が歩いていた脚を止めると、拳が自身の腹部に当たりそうなほど飛影に接近していた。

 

「はぁっ、はぁっ……!」

 

 拳から発する炎が消えて息が上がる飛影とは別に、隆誠はまるで防ぐ役目を終えたかのようにオーラを消失させた。

 

「さあ、お次はどうする?」

 

 オーラが消失しても全く焦りを見せていないどころか、いつでも攻撃しても構わない感じで問う隆誠。

 

 構えもせずに無防備な姿を見せられた事で、飛影は即座に攻撃に移ろうとする。

 

「だぁぁぁぁぁ!」

 

 飛影は炎の妖気『炎殺拳(えんさつけん)』を使わず、捨て身の肉弾戦に持ち込んで隆誠に挑んだ。

 

 両手を使う飛影の乱打を、隆誠は全て躱し続けている。まるで見切っているかのように紙一重で。

 

 一撃も当てられない事に内心辟易する飛影は、拳だけでなく脚も使い始めた。しかし、回し蹴りや前蹴りなどの追加攻撃をしても全く当たらない。

 

 ずっと躱し続けている隆誠だったが、突如飛影の拳を片手で受け止める。

 

「いつまでも無駄な攻撃ばかりしてないで、さっさと奥の手を出したらどうだ?」

 

「ぐっ……!」

 

「それに加え、一体何を迷っている? もしや君も蔵馬と同じく、自分自身の何かに決着を付けたいのか?」

 

 隆誠には今の飛影が何かを探している幼い子供のように幻視していた。同時に受け止めた拳からも思いが伝わった為、彼は無意識に訊いてしまう。

 

「黙れ!」

 

 答える気は無いと言わんばかりに、飛影は再度攻撃しようと跳躍して蹴りを仕掛けた。それを見た隆誠が即座に手を放して回避した後、距離を取ろうと瞬時に後退する。

 

「今のはちょっとばかりイラっと来た。少しばかり灸を据えてやる」

 

 そう言いながら隆誠は右手の人差し指と中指をくっ付けながら振るった。その瞬間、二つの指の間から鞭状となった光が飛影に襲い掛かる。

 

「ちぃっ!」

 

 隆誠が光を剣だけでなく鞭状にまで変化が可能な事に、飛影は本当に厄介な奴だと舌打ちをしながら躱していた。

 

 距離を取ろうとする飛影だが、隆誠の光の鞭は間合いなど関係無いみたいに長さを伸ばして振るい続ける。

 

 蔵馬が使う薔薇棘鞭刃(ローズウィップ)以上の長さであっても、腕を振るう動作と鞭が来る方向さえ分かっていれば躱す事など造作も無かった。

 

「そんな程度で――なッ!?」

 

 躱して反撃に移ろうと接近する飛影に、光の鞭が突然まるで蛇のように素早く動き始めた。身体を拘束される寸前に跳躍するも、逃がさないと言わんばかりに追跡して脚に巻き付く。

 

 その直後――

 

「ガァァァァァァァァ!!」

 

 光の鞭から流れる電撃が飛影の全身に襲い掛かって感電させた。

 

 

 

 

『兵藤選手の霊気で作られた鞭が、飛影選手の脚に巻き付いた瞬間に感電させました! じ、実況している私も鳥肌になりそうです!』

 

 感電する飛影の姿に、小兎は顔を青褪めながらも実況を続けている。

 

(リューセーの奴、嫌な事を思い出させやがって……!)

 

 試合を観ている幽助は腕を擦りながら思い出していた。

 

 人間時代に霊界探偵として活動したばかりの頃、コエンマの依頼で四聖獣のリーダー『朱雀(すざく)』と戦った事がある。その時に朱雀が使う『暗黒雷迅拳(あんこくらいじんけん)』を掠っただけでも凄まじい電撃が全身に襲い掛かった経験があり、飛影が隆誠の電撃を受けるのを見た所為で鮮明に思い出す破目になったのだ。

 

 幽助だけでなく――

 

「ジョ、ジョルジュよ、何だかあの光景に見覚えがある気がせんか?」

 

「は、はい。その所為で久々に全身鳥肌になっちゃいましたぁ……」

 

 何故かコエンマと秘書のジョルジュ早乙女も一緒になって顔を青褪めていた。

 

「いくら試合でも、ああ言うのは流石に勘弁して欲しいのぅ」

 

「全くです、はい」

 

「ちょっと! 飛影がやばいのに何そんな呑気なこと言ってるんですか!?」

 

 当時の事を思い出す二人とは別に、真剣に観ているぼたんは飛影の心配をしているのであった。




次回で飛影との戦いは終わります。
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