魔界にやって来た元神   作:さすらいの旅人

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隆誠 対 黄泉②

(如何に黄泉と言えども……)

 

 滅空包囲弾が全て黄泉に命中したのを視認する隆誠だが、一切気を抜いた様子を見せていない。寧ろ、あの程度で倒せる訳がないと初めから分かっている為に。

 

 相手は数多の妖怪達から恐れられている魔界三大勢力の一人として君臨者なのだから、これで倒せば余りにも滑稽と言わざるを得ないだろう。

 

 倒せてはいないにしろ、咄嗟に防御してダメージを最小限に抑えている筈だと隆誠はそう見ていた。もしくは自分と同じく全身に放出した気を纏わせて防いだりとか。

 

 その答えを示すように、覆われていた煙が霧散したその先には――

 

「やっぱりそう来たか」

 

 妖気の膜と思われる防御壁を展開させた無傷の黄泉がいた。アレで滅空包囲弾を防いだのは言うまでもない。

 

(れん)()(はん)(しょう)(へき)。お前も俺と迦楼羅の戦いを見た筈だ。俺の防御は完璧だ」

 

 先程までの焦りが全く無いように毅然と言い切る黄泉に、隆誠は予選での戦いを思い出した。放出系の技を得意とする迦楼羅の技を悉く防ぐと同時に吸収した彼の防御技――『魔古忌(まこい)(りゅう)(れん)()(はん)(しょう)(へき)』を。

 

 黄泉の技は放出系の技を得意とする者からすれば天敵だろう。それは幽助も当然含まれているから、得意の(妖気を使った)霊丸(レイガン)など撃っても吸収されてしまうのがオチだ。

 

(完璧、ねぇ)

 

 隆誠も放出系の技は得意で、普通なら得意技を封じられた事で口惜しがってもおかしくない。のだが、今の彼にそんな様子は全く見受けられなかった。

 

「だったらその完璧な技を粉砕して……ぐっ!」

 

「?」

 

 煉破反衝壁を攻略しようとする隆誠だったが、突如苦しみだして左胸を片手で押さえた。それを見ていた黄泉は怪訝な表情になっていく。

 

(奴の心拍数が急に上がっているな……)

 

 黄泉が異変が起きたのに気付いたのは、隆誠の心拍数が高まったのを耳にしたからだ。

 

 戦闘の最中は感覚を最大限に研ぎ澄ませおり、彼の聴覚はどんな微弱な音でも拾える状態になっている。もし隆誠に僅かな動揺が感じた瞬間、即座に隙を突くように攻撃する事も考慮して。

 

 しかし、先程まで正常だった隆誠の心拍数が途端に激しく鼓動した事で、黄泉は思わず戸惑ってしまった。端から見れば完全に隙だらけなのだが、もしやこれは自分の油断を誘う為の縁起でもしているのかと考えているのだ。

 

「く、くそっ! こんな、時に……!」

 

 隆誠が正常に戻る気配を見せないどころか、益々苦しそうな表情になるばかりだった。

 

 状況に付いて行けない黄泉は全く不明でありながらも、自身の周囲を覆っていた煉破反衝壁を解除する。

 

「お前の身に何が起きたのかは知らんが、生憎俺は見逃す気など無い。悪いが好機と見させてもらうぞ!」

 

「ぐっ!」

 

 そう言って黄泉は隆誠の動きに警戒しつつも、一瞬で接近して懐に入った。

 

 それを見た隆誠が迎撃しようとするが、まだ苦しんで思うように動けない状態の為に無防備となってしまう。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

 隙だらけとなる隆誠に、黄泉は自身の目の前で妖気の塊を発生させ、それを発射した。

 

 発射された妖気弾は複数となり、全て隆誠の上半身に全て直撃。

 

「ぐぅぅぅぅ……!」

 

 黄泉の攻撃を受け続けている隆誠は一切防御出来ず、左胸を片手で押さえたままだった。

 

 いつもならオーラを全身に纏わせて防いでいるが、今は完全に無防備で闘気を一かけらも放出していない。余りにも様子がおかしい事に攻撃している黄泉の疑問は更に深まるばかりだが、隆誠に大きなダメージを与えれる最大の好機なので、手を緩める事は一切しなかった。

 

「そりゃぁぁぁぁぁ!」

 

 複数の妖気弾を発射させる黄泉は一旦止めて、両手で一回り大きな妖気球を集束させた瞬間、それを隆誠に当てた。

 

「うぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 大きな妖気球に直撃した隆誠は勢いよく吹っ飛んでいき、その先にある岩山へ激突する。凄まじい威力だと証明するように、岩山は大きく崩れ落ちて彼を生き埋めにする程だった。

 

 

 

『兵藤選手、黄泉選手の攻撃をまともに喰らったぁぁぁ!!』

 

 今までの試合で全く無傷で勝利していた筈の隆誠が、此処に来て予想外の展開を見せている事で、小兎だけでなく会場にいる者達も目を見開いていた。

 

「リューセーの奴、一体どうしちまったんだ!?」

 

「何故か急に苦しんでいたみたいですが……」

 

 隆誠と半年以上の付き合いがある幽助と北神達だが、あんな苦しそうな表情を見たのは初めてだった。同時にあそこまでの隙だらけな姿を晒して攻撃を許してしまうなど、彼等からしたら全く信じられないだろう。

 

 岩山が崩れて埋もれたところで、少なくとも生きている筈と確信している。黄泉の攻撃を直撃したからと言っても、アレくらいで死にはしない筈だと。

 

 二人だけでなく、隆誠の異変に誰もがおかしいと疑問を抱くのは当然であった。その中で一番に反応しているのは――

 

「う、嘘ですわ!? わたくしの旦那様が……!」

 

「おい迦楼羅! 何でいつの間にか旦那になってるんだよ!?」

 

 先程まで恋人と言っていた筈の迦楼羅が錯乱しているのか、急に旦那と呼んでいる事に兄の修羅は鋭い突っ込みを入れていた。

 

 因みに彼女がそう呼んだのは、隆誠が黄泉に向かって『お義父さん』と挑発したからだ。それを聞いた事で迦楼羅は自分を受け入れたと都合の良い解釈をして、いつの間にか旦那扱いする事になった。もし彼に今も求婚している女神と女悪魔が知ったら、絶対黙っていないどころか殺すかもしれないが。

 

 モニターでは崩れた岩山が映されており、そこに埋まっている隆誠は一向に姿を現わさない。

 

 数分以上経っても全く反応が無い事に、もしかして死んでしまったのかと一部がそう考えた瞬間、突如異変が起きた。

 

 崩れた岩山の隙間から金色の光が勢いよく噴き出た後、その周囲が爆発して吹き飛んだ。

 

『おっとぉ! 兵藤選手、どうやら生きているようです! あれだけの攻撃を喰らえば流石にダメージは……あ、あれ?』

 

 隆誠が生きていると判明した小兎は、放出される光が収まって改めて姿を確認するが、途端に目が点になっていた。それは彼女だけでなく、会場にいる全員も同様に。

 

 モニターに映っているのは兵藤隆誠ではない者がいた。白いローブを身に纏い、頭には王冠を被った美丈夫が黄泉と対峙している。

 

 会場全体があの男は一体誰だと疑問符が浮かんでいる中――

 

「ま、まさか……!」

 

「コエンマ様、どうされたのですか?」

 

「急に顔を青褪めちゃってますね」

 

 咥えていたおしゃぶりをポロッと落としてしまうコエンマに、ぼたんとジョルジュは一体何事かと心配そうに上司を見ていた。




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