魔界にやって来た元神   作:さすらいの旅人

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雷禅の国で世話になる

 互いに話が通じる相手だと理解したのか、隆誠と(不満そうな幽助も含めた)雷禅達は一旦矛を収めることにした。尤も、警戒は一切緩めていない。

 

 隆誠は、この世界のについての情報を知りたい為、向こうが妙な真似をしない限り自分から仕掛ける事はしない。転生前の聖書の神であれば、人間に害をなす存在であれば問答無用で滅していたかもしれないが、人間に転生した事で先ずは話し合いが大事だと理性的になっているから。

 

 対して雷禅は、隆誠の事を得体の知れない人間でありながら、同時に未だに底が見えない危険な相手と見ている。もし戦えば自分の国に甚大な被害が及ぶどころか、下手をすれば黄泉や軀が動き出してしまう恐れがあると。

 

 雷禅は隆誠が放つ光弾を弾き飛ばした瞬間、全く勝てない相手だと悟っている。全盛期の頃であったら決して負けないかもしれないが、衰弱した今の自分では大して傷を負わせることが出来ないのだ。流石に息子や部下達の前で、そんな見っともない事を絶対口にしないが。

 

 魔界では普通に考えられないが、純粋な人間を三大勢力の一つの国に招くのであった。

 

 

 

 

 

 

 隆誠が別の世界から来たと言う事実を改めて知った雷禅達は、色々な意味で厄介な案件に関わってしまった事に頭を痛めていた。幽助だけは状況に全く付いて行けずに首を傾げていたが。

 

 彼が大して力の無い人間であれば、記憶を消して人間界の適当な場所へ放り込む、もしくは(人間をエネルギー源としている)北神達の食料になってもらうと言う選択肢になっていた。

 

 しかし、幽助を圧倒出来る実力者となれば話は全く別になる。もしも人間界に強大な力を持った人間がいると知れば、霊界が絶対に黙ってはいない。

 

 雷禅としては勿論関わりたくないが、既に幽助が彼と戦ってしまった為に無関係でいられなくなっている。恐らく黄泉や軀も既に察知して、隆誠を雷禅の関係者と見ているかもしれないから。

 

 死ぬ前に厄介事を抱えてしまう事に内心愚痴りながらも、雷禅は止む無く隆誠を客人として迎える決断を下した。向こうが元の世界に帰るのには時間が掛かるとご丁寧に話してくれた所為で、その時期が来るまで待つしかないと諦めざるを得なかったのだ。

 

 そこで雷禅は考えた。自分に不利益な行為をしなければ其方のルールに従うと言ったので、働かせる名目で未熟な息子のお守をさせようと。実力が圧倒的に上だけでなく、妖怪として転生した幽助は未だに人間としての感性がある為、同じ人間である隆誠だと何かと都合が良いから。幽助の対応を任せている北神達は難色を示すかもしれないが、そこは目を瞑ってもらうしかない。

 

 国王としての決定に北神達は受け入れるも――

 

「冗談じゃねぇ! 何で俺がコイツにお守されなきゃなんねぇんだよ!」

 

「そう言う台詞は俺に勝ってから言ってくれ」

 

「上等だコラァ!」

 

 幽助が当然文句を言い出すが、隆誠の安い挑発に乗ってしまった所為で相手をする事になった。

 

 

 

 

 そして約一週間後。

 

「ぜぇっ、ぜぇっ……! ぜ、全然リューセーに勝てねぇ……!」

 

 広場で戦いを繰り広げる幽助は、一度も隆誠に勝てなかった。

 

 因みに二人は既に自己紹介を終えており、互いに名前で呼び合っている。

 

「それでも諦めずに挑み続けるのは充分凄いぞ」

 

「だけど幽助、君の攻撃は余りにも単調過ぎる」

 

「その所為で動きが読みやすい」

 

「もう少し工夫を凝らしてみたらどうだ?」

 

 今日は戦い方の趣向を変えたのか、隆誠はドラグソボールのキャラ――天津丼が使う秘奥義『分身拳』を使って四人で幽助の相手をしていた。一人の人間がいきなり四人なった事で、初めて見た幽助だけでなく、見守っている北神達も目が飛び出るほど驚愕している事を補足しておく。

 

 幽助は今まで修行相手をしてもらっていた北神達よりも、非常に厄介な相手だと心底思い知らされた。元々が同じ人間だからか、まるで意思疎通が出来るように絶妙なコンビネーションで翻弄されていたのだ。

 

「おいリューセー! 四人になったからって同時に喋るな! せめて一人だけにしろ!」

 

「「「「確かに」」」」

 

 同じ顔をした四人の隆誠が喋っている事で一種の不気味さがあるのか、幽助はすぐに突っ込みを入れた。言われた本人も同感だと思ったのか、途端に四人から一人の人間に戻っていく。

 

「にしても、君は一体何を焦っている?」

 

 この一週間、ずっと相手をしていた隆誠は疑問を抱いていた。

 

 まるで時間が無さそうな感じが見受けられたが、それが一体何を指しているのかは分からない。何か事情があるにしても、焦りを見せる幽助に隆誠が気にするのは当然だった。

 

「クソ親父の命が残り僅かだから、その間にどうしても勝ちてぇんだよ!」

 

「幽助さん!」

 

 あっさりと理由を白状する幽助に、見守っていた北神が咎めるように叫んだ。

 

 隆誠が客人として扱っているとは言え、極秘情報として扱われている国王の死期を知られてしまうのは流石に不味かった。

 

「雷禅が死に掛けているのは俺も気付いていたが、そもそもあの男、何故死ぬのが分かってるのに今も断食を続けてるんだ?」

 

「んなもん俺が知りてぇくらいだ」

 

「ふ~ん」

 

「「「「………………」」」」

 

 幽助の返答を聞いた隆誠は思わず北神達の方へ視線を向けるも、四人は無言になっている。

 

 答える気が無い、もしくは彼等も知らない。どちらなのか不明であっても、隆誠がどうにが出来る問題ではないのは確かだろう。

 

 一刻も早く強くなって父親を倒したいと言う幽助の心情を察した隆誠は、幽助にある提案を出そうとする。

 

「雷禅に勝ちたいなら、手っ取り早く強くなる修行をしてみるか?」

 

「何?」

 

 いきなりの内容に幽助は目を見開くも、聞いている北神達も不審な目を向けていた。

 

 しかし、隆誠は気にする事無く説明を続ける。

 

「勿論生半可でやれるものじゃないし、俺の事が信用出来ないなら別にやらなくてもいい。だが一つだけ言わせてもらうと、今の幽助の力が何倍にも高まる事は保証するよ」

 

「…………本当なんだな?」

 

 考える素振りを見せた後に幽助は確認するように問う。

 

「別に嘘は言ってない。結構きつい修行だから、幽助が付いて行けるか少しばかり不安だが」

 

「ならすぐにやってくれ!」

 

 受けるか受けないか迷って時間が掛かると思っていたが、幽助は素早く決断を下した。

 

 返答を聞いた隆誠は苦笑するも、向こうの気が変わらない内に修行道具を用意する。(イッセー)を鍛える為に使った両手足用の修行用バンドを。

 

 それを見た幽助は最初不審そうにしながらも、両手足に装着した瞬間――

 

「どわっ! な、何だこの重さ……ってかコレ、幻海(げんかい)婆さんの『(じゅ)(れい)(じょう)』みたいじゃねぇか!」

 

「おや、この修行は既に体験していたのか」

 

 以前に師である幻海からの試練を与える前に付けられた呪霊錠だと判明するも、それ以上の重さが全身に襲い掛かるのであった。

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