「あそこが黄泉の国、
「へぇ、魔界にも近未来な都市が存在してるんだな」
北神の案内により、幽助に同行している隆誠は黄泉が建てた国を大変興味深そうに見ていた。
今まで雷禅の国にいた為に文明レベルは低いと思っていたが、それは大きな間違いだったと内心反省する。統治している君主によって大きく異なっているのだと。
そう考えると軀が統治してる国はどんなモノなのかと少々気になってしまう。雷禅のように石造りの建物が多いのか、黄泉のように設備が充実してる都市型なのか。どちらにしても、今の状況で軀の国に行く機会は皆無だが。
「サンキュ、北神。リューセーと一緒に、もう戻ってもいいよ」
「いえ、私も行きます」
「此処まで来てそれは無いだろう、幽助」
幽助は話し合いをする為に来たから、此処からは一人で充分だと北神と隆誠を帰らせようとした。
しかし、二人は拒否して最後まで付き合おうとする。
「恐らく黄泉は、雷禅様の死に気付いているでしょう。そうなると癌陀羅に入る貴方の命が危ない」
「その護衛として俺と北神さんも一緒に行くんだよ」
隆誠は雷禅から黄泉は相当頭が切れる上に狡猾な男だと聞かされている。
それが確かであれば、幽助を一人で行かせたら出方次第で殺そうとする筈だと隆誠は予想した。逆に都合の良い話であれば、上手く利用しようとするかもしれない。
「バーカ。だから一人で行くんじゃねぇか」
何一つ警戒していない幽助の姿勢に、隆誠は嘆息してしまうほど呆れていた。
やはり
「幽助さん、貴方は既に我々にとって国王なのです。私には、貴方を守る義務があります」
「修行相手を務めて強くさせた俺としても、此処でお前に死なれたら困るんだよ」
「ちぇっ、仕方ねーな。だが手は出すなよ。今日はあくまで話し合いだからな」
最後まで付いて行く理由を述べる北神と隆誠に、幽助は折れざるを得なかったので、一切手出し無用の警告だけに留めた。
同行の許可を貰えた事で、二人は漸く安堵の表情となる。
「それを聞いて安心しました」
「? どういう事だ?」
北神の台詞の意味が分からなかった幽助が訊くと、彼はこう答えた。
「ここから先はヤバい会話は避けましょう。黄泉は光を失った分、耳と鼻が利きます」
その情報も雷禅が言ってたなと隆誠は思い出す。
黄泉は凄まじい聴力を持っている事もあって、国の民達の会話を把握出来ると言っていた。それを聞いた隆誠は思わず、『放浪する
「よし分かった」
北神の忠告に幽助はすぐに頷いた後――
「黄泉ィィィーーーー!! 聞こえっかコラァーーー!! 今から行くから、お茶用意して待ってろォーー!!」
(ああ、そう言う事か)
黄泉に聞こえるよう思いっきり叫んでいた。
妙に聞き分けがいいなと疑問を抱く隆誠だったが、その叫びを聞いたことで途端に納得する。
確かに話し合いとして来たのであれば、別に何の小細工もせず堂々と行けば良い。
「よし、行くべ」
「あは、あははは……何てお人だ」
「如何にも幽助らしいな」
やる事はやったと行こうとする幽助に、苦笑するしかない北神と隆誠。
「ところで幽助、ずっと気になっていたんだが」
「ん?」
「その荷物には一体何が入っているんだ?」
幽助は黄泉の国へ行く前から、大きな風呂敷を片手に持っていた。
北神も気になっていたのか、不安そうな表情で問おうとする。
「幽助さん、私は何か嫌な予感がするんですが」
「へへへ、秘密」
幽助が悪戯小僧のような笑みを浮かべながら答えない為、北神はどうか杞憂であって欲しいと願うしかなかった。
(絶対何か仕出かしそうな気がする)
隆誠は北神と違って、幽助の話し合いはとんでもない内容ではないかと思いながら後を追うのであった。
既に幽助達が来るのを察知したのか、待ち構えているように黄泉の門兵達が立ち並んでいた。
案内するのが目的みたいで、一人の門兵が此方へ来るよう先導する。
何の疑いもなく付いて行く幽助とは別に、北神と隆誠は周囲の門兵達を警戒していた。向こうから手を出した場合、いつでも動けるように。
一つの建物の中に入ろうとする途中、出入り口付近には老人らしき妖怪がいる。門兵達が何も言わないのは、間違いなく黄泉の部下だと幽助達はすぐに察した。
その老人は幽助達を探るような目をしながら、片手には妙な機械を持っている事に隆誠は気付いた。幽助に向けて数値が表示されてるのを察するに、恐らく相手の強さを測る計測器なのだろうと。
魔界にもドラグ・ソボールの『ディテクター』みたいな機械がある事に、中々面白い世界だと彼は改めて痛感する。
☆
(さて、どれほどの力を持っておるかのう)
老妖怪――
彼は雷禅の国でNo.2と既に判明している事もあって、実力は軍事総長の蔵馬、もしくは新たに配下として迎え入れた100000
もし戦う事になっても此方が圧倒的有利な状況なので、妖駄は一体どれだけの力があるのかと計測した結果、とんでもない数値が表示されていた。
(530000Pじゃと!? 蔵馬より遥かに上ではないか!)
蔵馬の最大妖力値が約160000Pに対し、幽助は彼の三倍以上の妖力を持っていると判明した事に言葉を失う妖駄。
自身の国王には遠く及ばないとは言え、これ程の力を一体どうやって身に付けたのかと驚愕するしかない。もし戦う事になれば黄泉が無事でも、彼以外の部下達は大きな痛手を被るのは確実だろう。
(もしや、あの人間の仕業か!)
妖駄は思い出した。雷禅の国で突如現れた人間の事を。
その人間は幽助や北神と一緒に歩いており、チラリと彼と目が合う。同時に妖力値測定機の数値が見えたのか、思わずクスリと笑みを浮かべる。
妖駄からすれば、不敵な笑みにしか見えなかった。
(こ、これは大至急黄泉様にご報告せねば!)
幽助達が建物の中に入ったのを見送った妖駄は、大急ぎで黄泉の元へと向かうのであった。
因みに隆誠が幽助の妖力値を見て笑みを浮かべたのは、普段愛読している極悪人キャラと同じ戦闘力だったからと補足しておく。
☆
その巨大虫の正体は『移動要塞 百足』で、三大妖怪の一人である軀の所有物。
雷禅の死を察知した軀は飛影を筆頭に、直属の戦士達を連れて黄泉の国へ向かい全面戦争を仕掛けようと準備をしていた。
その途中、幽助達三人が黄泉の国へ向かっていると邪眼で知った飛影は、ある事に驚いていた。
「どういう事だ? 幽助の実力が俺以上だと……!?」
飛影は軀の国で過酷とも言える実戦訓練を受け続けて強くなり、更には直属戦士である
幽助を見付けたついでとして実力も図ろうと邪眼を使ったのだが、予想以上に強くなっていた事に驚きを隠せなかった。
「それにあの人間は一体何者だ……?」
「やはり飛影は知らなかったみたいだな」
飛影の呟きに隣の人物が納得の言葉を口にする。
丸く大きく開いた右目のみを残して顔全体を包帯で巻き、その上から数多くの呪符を貼り付けているのが『軀』だった。その所為で性別は分からないが、配下である飛影達しか知らない。
「どういう事だ、軀。何か知っているのか?」
主に対してタメ口や呼び捨てにするなど無礼極まりないのだが、軀はそれを気にしている様子は一切無かった。
「その人間の男は、数ヵ月前に雷禅の国に突如現れたと報告があった。同時に浦飯幽助を鍛えていたらしいぞ」
「何故俺に黙っていた?」
「訊いても素直に教えてくれないと思ってな。仮に知り合いだったとしても、お前は適当な嘘を吐いて誤魔化そうとする」
「………ちっ」
見透かされているような言い方に飛影は何も言い返せず、ただ舌打ちしか出来なかった。
「それはそうと飛影、浦飯幽助はお前より実力が上みたいだが、人間の方はどうなんだ?」
幽助が想像以上の実力者になったのであれば、報告にあった人間はそれ以上に強いだろうと軀はそう予測していた。
飛影としては答えたくないが、仕方ないと言った感じでこう言った。
「……分からん。あの人間からは妖気や霊気を全く感じ取れない」
「そうか。飛影の邪眼を使っても判明出来ないとなれば、相当厄介な相手と見るべきだな」
飛影の見解に軀は人間――隆誠に対しての警戒度を上げざるを得なかった。もしかしたら黄泉や幽助以上に危険だと警鐘を鳴らす程だ。
だがそれでも黄泉達と戦う事に変わりない為、このまま
アニメ版では幽助の妖力値は約200000Pでしたが、此方では隆誠が強化した事で倍以上の強さになりました。
感想お待ちしています。