魔界にやって来た元神   作:さすらいの旅人

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今回はフライング更新で、原作の流れと大して変わりません。


黄泉と対談

 幽助達が案内された建物の中は上品な和室。畳や座卓は勿論のこと、襖や掛け軸なども高級感が溢れており、人間界でも簡単に揃える事が出来ない品揃えばかりだった。

 

 黄泉の意外な一面に隆誠は、別世界の種族でも人間の文化に興味があるのだと改めて認識した。冥界にいる悪魔のサーゼクスやその父親であるジオティクスも、日本の食べ物や酒が好きなのを知っているから余計に。

 

 因みに幽助は正座に慣れてないのか胡坐をかいており、北神と隆誠は彼の後ろに控えるよう正座で座っている。

 

(一、二、三……全部で七人いるな)

 

 黄泉が来るのを待っている間、隆誠は右にある隣室の方へ意識を向けていた。相当な妖力を持つ七人が此方の様子を窺っているかのように潜んでいる事に、黄泉の部下の中で最も手練れな者達を連れて来たのだろうと隆誠はそう考えていた。

 

 実力で言えば幽助未満、北神以上と見ている。仮にその七人が襲い掛かってきたとしても、隆誠一人だけで倒すのは造作も無い。彼にとって一番警戒すべき相手は黄泉一人だけだが、状況次第では戦わずに転移術で退避する事も考慮しなければならないのだ。

 

 この時点で黄泉は初めから波風を立てる気だと隆誠は察した。既に部下を隣室に配置させている時点で、油断の出来ない相手と見ている。幽助から手を出すないよう釘を刺された以上は何も出来ないが、それでも用心をしておく事に越したことは無い。

 

 隆誠が後々の展開を考えるも、隣の襖が開く。

 

 入って来るのは和服を身に纏う男性の妖怪。彼がこの国の主である黄泉であった。

 

(この男が黄泉、か)

 

 初めて見る妖怪に隆誠は思わず目を細めていた。盲目な為に双眸は閉ざされており、長い黒髪や額からは複数の角が生え、両耳にはそれぞれ三つある。

 

 光を失っても位置を正確に把握しているのか、彼は幽助と対面するように正座していた。

 

「粗茶ですが」

 

「あ、ども。おかまいなく」

 

 後から入ってきた和服の女性は幽助にお茶を用意していた。明らかに人間と思わしき姿だが、それはあくまで見た目だけに過ぎない。

 

 女性が一礼しながら退室した後、黄泉は前置きも無しに用件を尋ねようとする。

 

「早速だが用件を聞きたい。率直に言って頂こう。腹の探り合いは苦手でね」

 

「雷禅が死んだ」

 

「「ッ!」」

 

 はっきりと答える幽助に北神と隆誠はピクリと反応するも、敢えて黙っている。

 

「そんで俺が国王になっちまったんで、その挨拶と、この目で敵の大将を見ておきたくてな」

 

「ほう……」

 

 余りにも正直過ぎる返答に、黄泉は思わず感心してしまう。

 

 頭が切れる者であれば、幽助は殺してくれと言っているようなモノだった。

 

「では折角の機会だ。私の願いを聞いてもらえるかな?」

 

 黄泉が妖気を解放しようとするのを察知したのか、隣室にいる七人もそれに反応している。

 

 しかし、幽助は微動だにせず、突如笑みを浮かべながら包まれた風呂敷を座卓の上にドンッと置いた。その音を聞いた黄泉は忽ちに怪訝な表情になっていく。

 

「その前に土産があるんだ。受け取ってくれや」

 

(土産って、コイツまさか……!)

 

 和睦を結ぶつもりかと隆誠はそう結論する。

 

 幽助なりに考えたのかもしれないが、正直言ってそれは非常に不味い。しかも和睦を結ぶ相手が黄泉であれば猶更に。

 

「それはありがたい。開けてみてはくれないか? 音から察するに石のようだが」 

 

 黄泉は隆誠と同じく気付いていながらも、敢えて意図が読めないような言い方をしていた。

 

「ちょっと散らかるが構わねぇよな?」

 

 幽助が風呂敷の結び目を解いた瞬間、その中身は一気に散乱した。

 

「そ、それは我が国の国宝石『瑠璃(るり)(まる)』! 幽助さ……国王! 一体!?」

 

 今まで見守っていた北神が土産の正体を言いながら幽助に問い詰めた。

 

 彼が此処まで焦るのは無理もないだろう。和睦を結ぶためとは言え、国の重要な資源である筈の国宝石を土産として渡すなど、降伏して傘下に入ると言っているも同然なのだから。

 

(一体コイツは何を考えて……ん?)

 

「これはこれは、高価な品をかたじけない」

 

 隆誠が内心呆れながら散らばっている瑠璃丸を見た瞬間ある事に気付くも、黄泉は座卓の上にある一つの石を拾う。

 

「ほう。この手触り、正真正銘の瑠璃丸。で、この贈り物の真意は……っ!?」

 

 手触りを確かめながら幽助に問おうとする黄泉だったが、途端に表情が訝った。

 

「名前が彫ってあるね、これは『軀』。そっちは『蔵馬』、『東王』、『北神』、そして『隆誠』……まさか全ての石の?」

 

「読めたか、流石だ。俺のやりてぇことが分かるか?」

 

 黄泉は光を失っている筈なのに、石に刻まれている名前をどうやって見ているんだと思わず考えてしまう隆誠とは別に――

 

「国宝石にキズをオォォーー!? あんた、なんばすっとねーーー!!」

 

 完全にキャラ崩壊しているとしか言いようのない北神が仰天していた。

 

 そんな彼に幽助は全く気にせず、黄泉に自分の考えを打ち明けようとする。

 

「雷禅が死んで、色々考えてみた。でも俺はバカだから、国の頭なんて器じゃねぇ。だから自分のやりたいようにすることにした。それは抽選のクジの代わりだ」

 

 全く考えが読めないのか、黄泉は困惑するばかりだ。

 

 しかし、隆誠だけは段々分かってきた。

 

「ただのケンカをしようぜ。国なんぞ抜きでさ」

 

「な……」

 

 ケンカ、と言う単純な言葉に黄泉が言葉を失う。

 

「一度みんな、ただの一人に戻ってよ。クジで組み合わせ決めてトーナメントやろうじゃねぇか。最後に勝ち残った者が魔界の総大将だ。負けた奴は全員そいつに従う。何があろうがな」

 

(そう言う事だったのか)

 

 隆誠は幽助の考えが此処で漸く理解した。

 

 自分が国王になっても魔界三大勢力の黄泉や軀と全面戦争しても無意味な上に、どうせならトーナメントで頂点を決めるのが最も分かり易い。幽助は自分なりにそう考えて、こんな大胆不敵な行動を取ったのだろう。

 

「そんなバカな案に応じると思うのか!?」

 

 しかし、黄泉からすれば決して容認出来ない内容だった。

 

 魔界三大勢力の一人として君臨する為に長い年月を掛けてきただけでなく、漸く魔界全土の支配が目前に迫っているのを、幽助が全て白紙にしようとしている。いくら我慢強く耐えてきた流石の黄泉でも、余りにも馬鹿馬鹿しくて受け入れられないのは明白だった。

 

 交渉決裂になるかと思いきや――

 

『のった!』

 

 突如、隣室の襖が開きながら幽助の案を受け入れようとする者達が現れた。

 

「あーー!! オメーら何でェ!?」 

 

 漸く気付いた幽助が振り向いた途端、彼等を見た途端に立ち上がり、忽ちに嬉しそうな表情になっていく。

 

 反応を見る限り、全員知り合いだと隆誠は察した。

 

「よぉ(じん)! 元気かよこらァ!」

 

「幽助ェェ!」

 

 まるで感動の再会と言わんばかりのやり取りだった。

 

 それを見ていた隆誠は警戒するのは全くの無意味であった事に内心嘆息している。

 

 すると、赤髪の男が黄泉に向かってこう言った。

 

「黄泉、悪いが今からオレはただの(くら)()だ。但し、幽助の案にお前が応じなければ、この場でオレ達は幽助につく」

 

「蔵馬、貴様……!」

 

 余りにも予想外だったのか、黄泉は赤髪の男――蔵馬の発言に引き攣った笑みを見せる。

 

 ここまで来れば全員を皆殺しにしてまで阻止するかもしれないので、隆誠は黄泉が動いた瞬間に全力を出そうと、ほんの一瞬だけオーラを解放しようとする。

 

「ッ! ――仕方あるまい」

 

 感知した黄泉が隆誠の方へ振り向きそうになるも、致し方なしと言わんばかりに幽助の提案を吞む事にした。

 

 これによって僅か半日で雷禅の死と、黄泉と軀の国家解散の報せが魔界全土に行き渡る。

 

 

 

 

 

 幽助達は用が済んだと言わんばかりに帰還しようとする。

 

 国家解散したとは言っても未だ黄泉の国である事に変わりない為、下手に留まり続ければ何をされるか分からない。反旗を翻した蔵馬やその仲間達も、客間で話を終えた早々に姿を消したのだから。

 

「幽助。いくらトーナメントをやりたいからと言って、国宝石をクジ代わりにするのはどうかと思うぞ」

 

「そうですよ! いくら国王だからって、やって良い事と悪い事があります!」

 

「ったくもぉ、一々うるっせぇな」

 

 幽助と北神の小言に幽助は殆ど聞き流しているのであった。

 

 その途中、黄泉の国の関係者と思えない二人組が幽助達の前に現れようとする。

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