魔界にやって来た元神   作:さすらいの旅人

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フライング更新です。


雷禅の旧友②

 妖怪夫婦の登場に唖然としていた幽助達だったが、雷禅の旧友だと判明した以上丁重に迎える事となった。

 

 二人を先日完成した雷禅の墓へ案内させ、幽助が軀より受け取った一輪の花を添えた後――

 

「うわーーーん!! 何でよー! まだあたい一度も喧嘩勝ってねぇーっつーの! 約束したじゃんか、いつでも掛かってこいってよー!!」

 

 酔いが醒めて真面目な表情になっていた弧光だが、雷禅の名前をジッと見て数秒も経たない内に泣き喚いていた。

 

「あーあ、泣かないって言ったのに……」

 

 煙鬼はこうなる事を予想していたのか、困った表情をしながら嘆息していた。

 

 しかし、誰もが咎めようとする様子は一切ない。彼女がどれだけ雷禅の事を想っていたのかを理解しているから、隆誠や幽助達も何も言わないでいる。

 

「雷禅が喧嘩も人間食うのもやめて隠居すると聞いた時は、ワシ等も血の気が多くてな、どうしてもあいつと和解できなんだ」

 

 思い出すように語る煙鬼も、哀愁を漂わせていた。当時の自分達がやった事を後悔しているように。

 

「ただワシ等も何となく気が抜けてな、いつしか戦うことを忘れて暮らしとった。まさか、あいつがこれからの魔界のことまで考えていたとはなぁ。肝心なことはなーんも教えてくれん奴だった」

 

(確かに)

 

 聞いている隆誠も確かにと内心頷いている。

 

 雷禅との付き合いはたった数ヵ月程度だが、何か色々考えていそうな感じがしても誰にも話す事なく、塔の最上階で眠る日々を送ると同時に幽助の相手をしていた。隆誠が時折雑談しようと尋ねても、『人間のお前には関係無い事だ』と素っ気のない返答をされるだけ。

 

 せめて死ぬ前に幽助に伝えてくれれば良いと隆誠が願うも、その息子は誰に相談することなく、勝手に魔界全土を巻き込んだトーナメントを提案する始末。こう言う所は親子そっくりである事に苦笑せざるを得ない。

 

 

『たのもーーー!!』

 

 

 またしても新たな客人が来た事に、隆誠達は今度は誰だと思いながら振り向いた。現れたのは花束や酒を手にしている見慣れない妖怪達で、その中には人間そっくりの男女も含まれている。

 

「おお、そろそろ来ると思っとった」

 

 煙鬼は知っていたのか、彼等を見て笑みを浮かべている。

 

「迎えてやってくれ。みんな雷禅のケンカ仲間だった奴さ。皆、雷禅が好きだった」

 

 雷禅の死を聞いて駆けつけてくるのは煙鬼の言う通り、それだけ彼の事を慕っていると隆誠は察する。

 

「あんた、雷禅の息子だろ?」

 

「! 分かるのか?」

 

 すると、煙鬼の問いに幽助は驚いた。名乗ってもいない筈なのに何故分かったのかが疑問なのだろう。

 

「おお、そっくりだよ。自分では気付いていないかもしれんがな。それと……」

 

 幽助を見て懐かしがっているように見る煙鬼は、次に隆誠の方へ向ける。

 

「数ヵ月前に風の噂で雷禅が人間を保護してるって聞いたが、あんたのことだな」

 

「三大勢力に属してない貴方達も知っていたのですか?」

 

 黄泉や軀の部下と思わしき諜報員が、雷禅の国で密かに情報収集していたのを隆誠は勿論気付いていた。本当なら捕縛しようかと考えていたが、雷禅からは『放っておけ。今更そんな事をしたところで何の意味は無い』と言われた為に敢えて放置していたのだ。田舎で暮らしている煙鬼にも知られているとは予想外だったが。

 

「ああ、最初知った時は驚いたよ。人間を保護するなんて一体何考えてるんだと思ってたが……何となく分かってきた気がするよ」

 

 そう言いながら煙鬼は、ジッと隆誠を見ながらこう言った。

 

「兄さん、あんた相当な手練れだろ。そうでなけりゃ、あの雷禅が此処に居させたりしない筈だ」

 

 中々鋭い考察に隆誠は、流石は雷禅の旧友だと思った。

 

 そうして話している内に、いつの間にか雷禅を偲ぶ会が始まろうとする。

 

 

 

 

 雷禅の墓前には煙鬼達が集まって、酒を片手に当時の事をワイワイと語り合っていた。哀愁を漂わせ、涙を流しながら。

 

 彼等とは別に隆誠や幽助、そして北神達は彼等に混ざろうとはせず、少し離れて見守っている。あの場で語り合うのに相応しいのは雷禅の旧友達だから、自分達がいては窮屈にさせてしまうかもしれないと。

 

「北神」

 

「はい?」

 

 すると、見守っている幽助が北神に声を掛けた。

 

「俺さ、この一年雷禅と殴り合いしかしてねーしさ。正直言って親父なんて実感全くねーけど、なんか嬉しいんだ。今、すっげー嬉しいよ」

 

 今の幽助は心の底からそう思った言葉を口にしていた。

 

「雷禅が聞いていたら喜ぶかもしれないが、決して顔には出さないだろうな」

 

「あ、それ俺も何となく分かる。北神もそう思うだろ?」

 

「それは、まぁ」

 

 隆誠の言葉に、息子の幽助や長年仕えていた北神も頷いている。

 

 どちらも雷禅について語り合っている中、煙鬼達の方はもう終えたのか既に立ち上がっており、幽助達の方を見ていた。

 

「おーい、雷禅の息子よー! 俺達も大会に出るからな!」

 

「へ?」

 

 いきなりの発言に幽助はキョトンとなる。それは隆誠や北神達も含めて。

 

 彼等は雷禅の訃報だけでなくトーナメントを開催する事も知って、初めから参加する気で此処へ訪れたのだ。

 

「言っとくけど手加減しないかんね! 死んでも恨むんじゃないよ!」

 

 幽助達にそう言った弧光は夫である煙鬼にもこう言った。

 

「仮にあんたと当たっても本気でやるよ!」

 

「当たり前だ! 愛とケンカは別次元だ!」

 

 本気で戦う気でいる夫婦の会話に隆誠が色々な意味で凄いと思ってしまう。

 

「よーし皆、雷禅の奴が死んだことを後悔するくらい派手な大会にしようぜ!」

 

『おお!』

 

 彼等のやり取りを見ていた幽助が段々と楽しそうな表情になっていく。

 

「よし、錆びついたこの体、久しぶりに出してみるか」

 

『せーの!』

 

 円陣を組んでいる煙鬼達は構えた直後、全員の身体から凄まじい妖力を放出しようとする。

 

 突然の解放によって、彼等から発する凄まじい突風が幽助達にも襲い掛かって軽く吹っ飛ばされていく。

 

「ほう、これは凄い。黄泉や軀に匹敵、もしくはそれ以上じゃないか」

 

 唯一吹っ飛ばされていない隆誠は、煙鬼達の妖力を測っている。

 

 そして彼等から発している妖気は最大となったのか、一つの柱となって収束し、そのまま真っ直ぐ雲を突き進んでいく。

 

「すげぇ! すげぇぜこいつはぁ! リューセー以上じゃねぇか!」

 

(む?)

 

 自分以上の妖気を見せ付けられた幽助は恐怖しないどころか、満面な笑みを浮かべて喜んでいた。

 

 だが、聞き捨てならない発言に反応した隆誠は、少しばかりカチンときた。

 

 幽助の認識を改めさせてやろうと、少々大人気ないと分かりつつも隆誠は久しぶりに力を解放しようと決意する。

 

「はぁぁぁぁぁ……!」

 

「な、何だ! リューセーもだと!?」

 

『!?』

 

 隆誠が今まで抑えていた力を解放しようと全身から金色のオーラが放出した事に、幽助や北神達だけでなく、妖気を放出している煙鬼達も驚愕する。

 

 そして――

 

「だぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!!」

 

 隆誠が雄叫びをあげた直後、彼の全身から凄まじい暴風が吹き荒れ、地面も抉られるように爆散しながら、煙鬼達のようにオーラの柱が形成されて真っ直ぐ上へ突き進む。

 

 赤い妖気の柱、金色のオーラの柱の二本は、魔界にいる者達全てに知れ渡る事となった。

 

 

 

 

 

 

「ほう、中々のもんじゃないか。特に金色の方は……どうした飛影? 珍しく動揺しているじゃないか」

 

(バカな! あれは仙水の『聖光気』……!)

 

 色が異なる二本の気の柱を見た軀が感心する中、飛影は金色の柱に見覚えがあるかのように凝視していた。

 

 黄泉の元から去った蔵馬も、何処かで同じ事を考えている筈だと思いながら。

 

 

 

 

 

 

(あの力、やはりあの人間に間違いない!)

 

 部下の妖駄と一緒に煙鬼達の凄まじい妖気に驚愕する黄泉だったが、もう一つの気には覚えがある。

 

 幽助と対談を終える前、隆誠から妖気でも霊気でもない凄まじい力を感じ取った。幽助達の中で最も危険な存在かもしれないと警戒するも、彼が発している金色の気の柱を見た事で一気に確信する。自分以上の力を持った実力者だと。

 

 それが判明した時点で黄泉の計画は殆ど水泡に帰そうとする。隆誠と戦わせる為に用意したもう一つの切り札(・・・・・・・・)が無駄となってしまったから。だと言うのに、何故か落胆しないどころか、高揚感が湧き上がっていく。昔の血が騒いでいるのか、あの人間とは一度戦ってみたいと。

 

「黄泉様! 修羅(しゅら)様と迦楼羅(かるら)様が……!」

 

「何!?」

 

 兵の一人が異常事態と言わんばかりの報せに、黄泉は数日に目覚める予定の息子と()の確認をするのであった。




ちょっと無理があるかもしれませんが、黄泉に息子だけでなくオリキャラの娘を出しました。
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