元SRT特殊学園小隊長が行く! 作:SWAT
「今日は雨かぁ、傘待っていかないとなぁ」
いつものようにHK417の3点スリングのベルトを肩にかけ、VP9を入れたホルスターを左太ももにつける。カバンを左手で持ち部屋から出る。これがいつものスタイルだ。
傘を手に取り、外に出るときに傘を広げる。
SRTでは傘は普段からささずにカッパか濡れるままでありトリニティ総合学園で久方ぶりに傘をさした事になる。
「おっはよー、ユイちゃん!」
後ろから歩み寄ってくる音が聞こえる。この足音は最近私によく話掛けてくる少女である布由 サラさんだ。
私が居た中等部での知り合いは今の私のクラスでは誰一人としていない中、最近はこの娘も含めたグループでよく遊びに誘ってくる子だ。
「おはようございます、サラさん」
「学校今日も面倒だなぁーーーーーー!あ、そういえば、部活決めた?」
傘をさした彼女が隣に並ぶ。しとしとと降る雨が傘に当たる音が何処か心地良い。
サラさんは性格といえば普通の女子高生をしていると思える。そこまで政治に興味がある訳がなく、フィリウス分派の末席に椅子を置いている私にも分け隔てなく接している。
「サラさん、私この前TPT*1に入ったとお話しましたよ」
彼女からすればフィリウス?何それ美味しいの?みたいな感覚だし、ティーパーティの事もこの前言っていたが“えー?ティーパーティに入れるなんて所謂エリートじゃん⁉︎すっごーー!!”みたいなことを言っていた。
彼女の明るめの性格で心が洗われる気分だ。
「あーー、そういえばそんな話してた・・・かも?んーーーまぁいっか!今日授業終わったらこの前新しくできたパフェ屋さんにみんなで行ってパフェ食べに行かない?」
「良いですね、行きましょうか。今日は特にTPTの仕事はありませんし」
そういうと彼女はもうすでにパフェに意識が奪われているようで、パフェパフェ〜〜〜♪と言いながらスキップして行った。
「いくらなんでもパフェを楽しみにしすぎですが・・・」
まぁそういうところも彼女の性格の愛すべきところだろう。
ちなみに授業後のパフェは美味しかった。
書記の仕事は意外と面倒だが、意外と何とかなっている。この前の定例会議の録音を左耳に突っ込んだイヤホンで聴きながらひたすら文字起こしを行う。この程度であれば昔取った杵柄とばかりにサクサクと作成はできる。
「う〜ん、せっかく書記やっているんだし速記でも覚えてみようかな・・・?」
日本での生活で少しだけ聞いたことがある速記者は、裁判所や国会にて議事をとる重要な役割を持つ。であるから、会議の様子を聞きながらメモをとり、そして今のように会議の内容を録音して議事録を〜〜なんてのより確実に良い。が、そもそも速記は相当難しいと言う為今から始めても難しいかもしれないと思いながら、速記の本でも買おうかなと考えを及ばせながら議事録を書き進めていく。
「ユイさん、今日の会議の議事録できた〜〜?」
「あ、もうそろそろ作成終わりますよユキ先任」
「できたら後で見せてね〜?」
ティーパーティの書記官は4名となっている。各3派閥から1名ずつ書記官が選出され、さらにその3人を統括する先任書記官が3名の上司となる。
先任は書記の仕事を最も長くしていた者が選出される。
現在は3年生の現加藤 ユキ先任がフィリウス派閥であり、フィリウス派閥の空いた席になぜか捩じ込まれたのが私と言う訳である。なお組織内のバランスを限りなく近づけるため、先任を務めている派閥は通常の書記官に若手等の派閥内でそこまで力を持たない者を入れることが慣習となっている。
なお書記はそも割と地味なのでやりたがる者があまりいないと言うのはご愛嬌であるが、仮にもティーパーティの完全傘下であるため派閥内部における競走倍率は高いと言えるが、たまに派閥内の政争によりなかなか決まらない時が多々あるため、慣習的に派閥内幹部によって決められる。
「先任、議事録作成終了しました。こちらが議事録作成案になります」
「ん、ありがとう」
先任に議事録を渡す。後は総務部からぶん投げれた調査資料を作成しなければ。
目の前で書記の仕事をそつなくこなす後輩の姿に目を細める。
聖園ユイ、一年生。ナギサ様から話は聞いている。
元SRT特殊学園生徒でナギサ様の年下の幼馴染であり、かつ現パテル派閥の首長である聖園ミカの妹だ。
複雑な出自に頭が痛いというのはこのことだ。二つの派閥の長と極めて仲が良い関係であり、さらにもとは戦闘力に折り紙付きのSRT特殊学園生徒だ。
ナギサ様は一体書記官をなんだと思っているのか。
・・・もしかするとナギサ様はティーパーティ直轄の特殊部隊を作りたいと考えて居られるのでは?
・・・いや、流石にそれは無いだろう。先任である私も、パテル派から来たキクも、サンクトゥス派閥のハルも荒事にはそこまで慣れていない。
もしかするとナギサ様の幼馴染を手元に置いておきたいという思いから私情によって彼女を指名したのかと思うが、ナギサ様がそのような迂闊なことをするはずがない。
聖園ユイ書記官は文武両道と言えるほどの才能の持ち主と言える。テストの成績も上の中程度は維持しているらしく、さらには今までこういう事をやってきましたよと言わんばかりにそつなくこなすデスクワーク。
そして噂に聞こえる、その高い戦闘能力。それは実際には目にしたことはないが、SRTの元生徒という事からして高い実力を持っているだろう。
ナギサ様はもうすでに彼女を後継候補として育てる腹づもりなのでは?
そして育ち切るまではティーパーティの自由に動かせる戦力として保持する・・・という事だろう。
そして人数の割に仕事が少なく何でも屋となっている書記官をあわよくば特殊作戦部隊として手駒として動かしたいのでは?
そのうちナギサ様に確認を取らなければいけないようです。
彼女に議事録の内容に問題ないことを伝えると、ナギサ様に真意を聞くた執務室へ向かった。扉の前に佇む護衛に面会希望の旨を伝えると、すんなりと通される。
「ナギサ様、失礼します」
「おや、誰かと思えばユキさんではないですか。今日はどのような要件でしょうか?」
執務室にはティータイムを嗜むナギサの姿が、夕日に照らされて浮かび上がって見える。
彼女は桐藤ナギサ様。我がフィリウス分派の首長であり、体が弱めのセイア様に変わってティーパーティのホスト代理を務めるお方であり、私の直接の上司ということとなっております。
「ユイさんのことでご相談がございます」
「・・・ユイさんが何か失敗でも?」
ティーカップを持ちながら私に、まさかそんなことは言わないよな?というような無言の圧力を言外にかけてきた。
「いいえ、そう言う訳ではありません。ただ・・・」
「ただ?」
「ただ、彼女を書記官に任命した真意をナギサ様からお聞きしたいのです。彼女は書記の仕事をそつなくこなしておりますが、ユイさんは出自が特殊です。それこそ・・・護衛隊でもよろしかったのでは?」
「ユキ先任」
「はい」
「この件はこれ以上話題に出さないように」
「!!!!!!!!
・・・・・・分かりました。委細承知いたしました。書記官一同奮励努力いたします」
「えぇ。これからもよろしくお願いします」
ナギサ様は少し顔をほてらせていた気がするが、恐らくは紅茶で体が温まっていたからだろう。それより自分の考えが当たっていたとは。
恐らくはエデン条約に当たりティーパーティの直属の特殊部隊を秘密裏に組織し、考えられるであろう妨害を排除。さらにエデン条約が結ばれた以降においてこちらの戦力はゲヘナにだだ漏れとなる事となる。それはトリニティの戦力を現在の仮想敵国に知られるということであるから、ティーパーティの書記官という明らかな文官集団を隠れ蓑として戦力の隠し球とすることということだろう。
もしそうであるなら今の私の戦闘能力では生命がいくらあっても足りない。ユイさんに頼んで訓練つけてもらおうかと考えながら廊下を歩いて行った。
なおナギサはそんなことを一ミリも考えておらず、私情で自身の目に届きできる限り素で話せるような地位に捩じ込んだ事にただただ触れてほしくなかっただけだった。
ユキ先任は考える。
腰にぶら下げているのは護身用の拳銃のみだ。この貧相とも言える武装は、しかしティーパーティに所属している生徒ならば珍しくない。だが、いかんせん武装が頼りないとも言えるのでは?と。
「ユイさんのようにバトルライフルを持つのも有り・・・でしょうか?」
その声は長く続く、絢爛な装飾が施された廊下に静かに消えていった。
ーーーーーー1週間後ーーーーーー
「力ってすごい!暴力は全てってはっきり分かんだね!!!!」
「あぁ・・・ユキ先任が壊れてしまった・・・・・・」
ティーパーティの制服を纏った4人組。彼女らはいうまでもなくティーパーティの書記官4名だった。そして彼女たちの目の前でピクピクと痙攣しながら白目を剥き気絶している50名以上のヘルメット団だった。
盛大な勘違いをかました加藤ユキ先任書記官により、元から特殊部隊だったユイを教官として業務を片手間にこなしながら4人で訓練後訓練。
その成果及び実践訓練として正義実現委員会との調整の後に、ヘルメット団の拠点を強襲した結果がこれだった。
聖園ユイのワンマンかといえばもはやそうではなく、先任書記官を小隊長としその命令の通り拠点に流れるように浸透し、着実に無力化して行った。
時には部屋に立てこもったりもしたが、そんなことは関係無いとばかりにあっさりと制圧されてゆくーーーーーー
ヘルメット団のボスはだんだんと近づいて来る悲鳴と銃声に少しちびって立てこもりするべく机や椅子を倒してバリケードにし、ドアの内鍵をかけた。そうするといきなり、爆発音が響きドアが吹っ飛ばされ、瞬く間にフラッシュバンが投げ込まれて目が眩んだと思いきやそのまま意識が暗転してーーーーーー起きた時には豚箱に突っ込まれていた。
ヘルメット団を叩き伏せて正義実現委員会にヘルメット団を全員引渡した後、私たちはお茶会と称した打ち上げを敢行していた。
円卓に座る4人の淑女たち。その手には揃ってティーカップを持っているが、数時間前にはそれより更に重いものを持って振り回していたとは思えないほど細く長くそしてスベスベした指が煌めく。
左を見れば美少女、右を見れば美少女、前を見れば先任書記官という肩書きをつけた美少女。ビバ!有翼美少女空間にいるだけで幸せ!
これが楽園か・・・・・・*2
はい*3
ということで現在は、1週間同じ釜の飯を食った同志ということとなり、それなりに関係が深まった同僚*4とでさっきの戦闘の反省会をやっております。
「全体的な作戦については全く問題なかったと思います。特殊作戦において想定外はよく発生しますが、それにもうまく対応できていたと思います」
「そういえば最後の203号室の時突入の時、鍵がかかっていたからC4使ってしまったけど、あれで本当に良かったのかな?」
4人で囲っている円卓の真ん中には作戦立案の際に使った建物の見取り図。これに構造から最適な侵入経路を検討した線がいくつも引かれている。そう、戦闘の趨勢のほぼ全てが作戦に帰結するのだ。
「ですが先任。あの時は誰もマスターキーを持っていませんでしたし、使うしかなかったと思いますわよ」
そう話したのはハンドガンと盾を扱う、2年生でパテル分派の坂井キク書記官。結構なお嬢で箱入りだったが、目覚めてしまい盾をブンブン振り回す武闘派になってしまった娘。イジメを見たらとりあえず主犯格を偶然を装って殴っておく頭キヴォトスエキセントリック少女である。
「だが仮に今回が人質奪回作戦であった場合、部屋の中に人質がいた場合はどうなるだろうか」
セクシーフォックスみたいな厭世家のような話し方をするのは、MP5を使い順当に特殊部隊しているサンクトゥス分派の岩本ハルだ。3年生であるが書記官自体は2年生に入った先輩であり経験年数では1年生から所属していた現先任に勝てなかったため先任にはなれなかった。ちなみに有翼なのですごく可愛い。
「それは適切ではないでしょう。ですが・・・」
「いや、分かってるのだよ私も。今回はただの突入任務であるがゆえ」
「ですがハルさんの言う通りでも有ります。次回は私がショットガンを持っていきましょう」
反省会もこれにて締められ、いつも通りにお茶会でのんびり会話を全員で楽しんだ。
ティーパーティの書記官の4人が実はティーパーティ直属の特殊戦闘部隊だというのは知っているな?
そうなんですか?
あぁ。最近は専らの噂だぞ。
ヘー。
興味なさそうだな君。
そりゃあティーパーティの書記官とか言われてもエリートではあるんでしょうけど、誰がいるかなんて知らないんでそういう反応しか取れないですよ。
それもそうだな・・・・・・
しかも正義実現委員会とか自警団と違って会う機会も少ないのでしょう?
実はそうではないらしい。最近ティーパーティの制服を着た人に何かとよく助けられる人が増えているらしいけど、その人たちがティーパーティの書記官じゃないか、だって。
ふーん、そうなんだ。
・・・お前なぁ。まぁいいか、そんなしょっちゅう関わりができる訳でも無いしなぁ