その記憶に――を:ドロシー
「……寝てしまいましたか」
紅蓮と交代した後、酔い潰れて寝息を立てているスカイを見る。彼女がスリープモードに入る事以外で寝るのは珍しい。彼女の本音を引き出させる事に成功した。でも、まだ正体は掴めていない。彼女が見ている物について理解はした。けれど、彼女が何故それを見れるのか、完全記憶能力だからで済ませられる問題では無い。
もし、ラプチャーと繋がっていたら?そんな不安がよぎる。自分達にとって都合が良すぎる状況なのだ、今は。
様々な事を教えてくれ、助けてくれ、共に戦った。それでも自分の行動全てが彼女の手のひらの上なのじゃないのか、そんな不安に駆られる時がある。戦況が酷ければ彼女の事を心の底から不信に思っていたかもしれない。
「……考えたくはありませんが、もしそんな事が起こるなら……私が」
もし、仮に、裏切り者だとしたらゴッデス部隊のリーダーである、私自身がやらなければならない。
「……けるな……」
ポツリ、ブルースカイが何かを呟いた。どうしたのかと近付いた時、彼女が勢いよく机を叩いた。
「なんでッ!なんで今なんだ!?なんだ今更"視える"!?お前が、お前がッ……全部、全部……レッドフードも、シンデレラも、リリスだって、これからの事も全部!!"侵食に関して"コイツを殺してたら終わってた!!人類は勝ってた可能性すらある!!なのにっ……なんで!なんで!?ふざけるなよクソ!!クソ!!」
はぁ、はぁと息を切らしながら癇癪を起こす。彼女は泣いていた。怒っていた。思考転換でも起こしたのか?声を掛けようとしても、声が出ない。内容が衝撃的過ぎたからだ。
「……レッドシューズ、赤い靴、裏切り者のニケ。今頃はもう……死んでるか、そして止められなかった。だから侵食型のラプチャーは量産されてて、は、それで今僕達は敗北してこんな状況に置かれている」
「……落ち着きましたか、スカイ」
彼女はハッと目を開く、けれどその次には俯いて気力を失ってしまう。
「落ち着いた」
「何が視えたんですか?」
「……諸悪の根源。侵食についての話。第二世代フェアリーテールモデルの中に裏切り者がいた。名前はレッドシューズ。彼女は侵食について研究していた。けれどその思想は"ラプチャーと人類が仲間になればいい"というおぞましい信仰心。立場を利用して侵食を発展させ、そのラプチャーを野に放ち、人類では理解しきれない物となってしまった。シンデレラ……アナキオールに侵食を施したのも彼女だ」
「……その、彼女は?」
「シンデレラに直接殺された。シンデレラは侵食から治った。アンチェインドという物質が作用して、元に戻った。けれど向こう100年は表舞台には出てこないだろうね。裏切り者と認定されてしまっているから」
情報量が、多い。それでも整理しなければならない。
「一先ず、その話は置いておきましょう。私が知りたいのはどうして貴女がそんな事を知っているのか、です。"視える"とは一体どういう事なのですか?」
「未来の話、過去の話、同時空で行われた話。所謂この世界の話、記憶が視える。まだ明かされて居なかった事はスリープモードに入った時に視えてしまう。言わば追体験に近しいね。皆1周目なのに1人だけ2週目をやらされている気分」
「それを信じろと?いえ、貴女自身何故その記憶が正しいと何故信じられるのです?」
「言葉が強いね。何故信じられる……か、うーん、難しい。確かに自分がこの世界の住人だったら信じられないと思うよ。でもね、違うんだ」
「……?」
どういう事?思わず首を傾げてしまう。
「僕はね、この世界に存在していなかったんだ。ブルースカイというニケは"存在しない"」
「そんな、筈。でも貴女はこうして……」
「それが違いなんだよ。僕の記憶に僕は存在しない。それが僕が自分の知識が正しいと思う証拠。それでも信じられないなら僕が居なかったらどうなってたか、を考えて欲しい」
改めて考える。ブルースカイという存在が居なければ、センサーは反応せずにラプチャーの奇襲に遭う。あの軍勢を相手にすれば量産型ニケはほぼ全滅。いやそもそも、量産型ニケが現在の数揃っていたかも怪しい。彼女達が生きているのは積極的にブルースカイが侵食型や脅威となるラプチャーを潰していたから。空からの援護がない。それだけで戦場は息苦しくなる。その状況で事前にアークに裏切られるという情報を知らなければ、整備や補給が届かないまま2ヶ月間戦い抜いて、その末の希望すら閉ざされたら。"ピナも死んでいたら"。そう思うと否定できなかった。今この空間は彼女が視た惨劇を回避する為に尽力した結果だと。
「……否定は、できません。信じろ、と言われたら信じられます。恐ろしいぐらいに貴女は未来を……いえ、私達の事を視ているんですね」
「だって、大好きだから」
笑顔が見えた。
その言葉は何ら嘘偽りのない感情。
「大好き、なんだ。皆が。人類は一部を除いてだけどね。それでもニケの皆は、好き。ゴッデスが好き、リリーバイス、レッドフード、ドロシー、紅蓮、ラプンツェル、スノーホワイトが、量産型の皆が、好き」
「好きな人達が傷付いたり、仲違いしたり、苦しむのって嫌だから。だからね、守りたいんだ。小さくても守りたい。些細な事しかできないけど守りたい。……さっきのは、それすら踏み躙られた気分になった、から」
気恥しそうに告げる彼女の姿、なんだろうか。先程の笑顔といい、眩しい。ここは地下で、夜なのに、眩しい。暖かい。これは、そう。例えるなら、そうだ。
「まるで日差しのよう」
青空の元、立っている自分を思い出す。日傘を差しながら、風が吹いて揺られる草花を見て、上空に確かな温もりを感じながら。
「貴女は青空みたいですね」
「え?」
「暖かい日差しと共にずっと私達を見てくれる。自身が曇っていても再び晴れるように。貴女の為ではなく、皆の為に。貴女はそういう人なのだな、と思いました」
「……買い被り過ぎだよ。僕が出来るのは細やかな希望を添える事、戦局を変えたり勝利に導く事じゃない」
そっと、彼女の手を取る。暖かいのに冷たい手。
「それをするのは私達の役目です。いつから私達が貴女に全てを望みましたか?勝利は全員で掴む物でしょう。貴女はその為に充分力を注いでいる。だから私達はまだ大丈夫だと、戦えているんです」
「…………その様子なら、大丈夫かな。ドロシー。君の誰かに愛されたい、認められたいっていう願いはどう?」
「それは……多分、ずっと貰っています。貴女と話して、考えて、そう思いました。アークに行きたいのも本音ですけどね」
「酷い所だよ。だって自分達が、って逃げてきた人間の集まりなんだからさ」
ふふ、っと2人で笑う。
そういえば、とスカイが言う。
「いつまで手を握ってるの……?」
「あ、す、すみません……つい」
言われてパッと手を離す。まだ彼女のひんやりとしたような温もりが残っている。
「いや、ドロシーならやらなさそうなのに。って思ってた……だけ、なんだけど。うーん、やっぱり悪女ムーブは向いてないよね」
「悪女……え?」
「こんなに綺麗なのに」
思わず照れる。やめてください、なんて言いながら言葉は嬉しかった。けど。
「ネットミームにされるとは思わないよねぇ」
「ネット……はい?」
「ほら」
スラスラとノートに何かを描いて行く。ゆるキャラ風にデザインされ、顔から下は四つん這いで白色の身体。Doroと呼ばれるデフォルメキャラだ。
「Doroってキャラクター。他の子もいるけど最初はドロシーなんだよね。それだけこう……色んな意味で愛されてるってこと」
「そう……ですか……?そう、なんですね……?」
困惑を隠せない。バカにされている、とも受け取れそうだが、何故かその絵が愛嬌があって憎めない。確かな愛を感じてしまう。
「まぁ、ともかく。ありがとうございます。こちらも納得できました。これからもよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、ありがとうドロシー」
不信感は、ない。手のひらで転がされているという感覚も。寧ろ彼女だって転がされて、懸命に足掻いているのだと知った。それが他ならぬ私達の為である事も。
渡された絵を受け取って、もう一度見てみる。可愛いは可愛いが、やはり何処か素直に受け入れられない。いっそ全員並んだら違和感はないだろうか?
書いてから思ったんですが中々酷くない!?と。オリ主の行動期間とレッドシューズの行動期間被ってるんですよね。その間記憶が抜けてて……もし記憶があったらレッドシューズをさっさと殺して、ラプチャー達も破壊しながらゴッデス達に殺される√だったのかなと。
ドロシーのメンタルと愛されたい、認められたいに関してはピナがずっと寄り添っている事、プレイヤーを代表してブルースカイが見ている事を伝えたので原作よりかなりマイルドになっています。
小説の方向性(セリフや描写など)
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積極的に改変が欲しい
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原作準拠で大丈夫
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原作準拠だが改変は間間に欲しい
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幕間エピソードが欲しい
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激しい改変はなくて大丈夫