「か、完成した……」
1週間かけて新たな翼を作った。装甲を展開すればビット兵器に割いていた分散脳が楽になった気がする。白と青を基調とした装甲はそのまま、武装のシンプル化と火力の増加、更に高機動を目指した。
その間に大きなラプチャーの襲撃はなかった。小さな襲撃はゴッデス部隊が担当。余りを量産型が殲滅する、という作戦方針に変わりはなかった。自分達は生存の為に活動していた。
狩りをして、料理をして、畑を耕して。
「そのレシピ途中から他のレシピが混ざってない?」
「え……あっ。すみません、確かに途中から他のレシピが混ざっていたようです。忙しい中だったので間違えてしまいました」
「やっぱりねぇ。緊張でもしてる?」
「ははっ、そうかもしれません」
オスワルドと会話をしたり。彼に関してはまだ分からない。でもゴッデスファンボーイというのは確かだ。僕はエプロンをしながら料理を作ってる。レシピをオスワルドに教えてもらいながら。
「……この通信って第三者に聞かれてたりしない?」
「しませんよ、それは保証します」
「そう。ありがとう、オスワルド」
「――!!」
通信手、オスワルドの息を飲む声が聞こえた。RED ASH、OLD TALESを見ると彼の印象は全然違う。私人と公人の間でできることをやり、未来に託した人間。OVER ZONEでの行動もアークへのヘイトを少しでも自分に集める為、というのが今の僕の見解。ぶっちゃけ今のアークにゴッデス部隊が降りて行ったら勝利の女神所の話じゃないだろうし。
「何故……私の名を?」
「君がゴッデスのファンであるように、僕は君のファンなんだ。デビュー戦は、僕も見たけど素晴らしかっただろう?」
「……」
「何、熱狂的ファンの独り言だと思って欲しい。君も彼女にそう言った、でしょ」
「流石、話には聞いていました。ですが、まさか私の事も知っているとは。では彼女とのやり取りも?」
「あぁ、君が何をしてくれたのかは僕が知ってる。第二世代の事もありがとう、失敗に終わったけど、未来に託してくれて」
「……」
「ゴッデスは素晴らしい。そうでしょ?」
「……はい、ゴッデス部隊は素晴らしいです。それは貴女もです、ブルースカイ。貴女は元々ゴッデス部隊ではなかった。けれど各戦線に投入され味方を救う姿、アレは素晴らしかった。今までラプチャーに制空権を奪われ続けていたのに、急に来た空からの援軍。私はあぁ、彼女もゴッデスになるな、と思いました」
「僕への評価も入るの?それ」
「勿論。貴女もゴッデスです。それからゴッデス部隊を縁の下で支えるだけでなく、量産型も守りながらの大活躍。スターライトブリッジを覚えてますか?」
「大変だったって事はね。多くを守れたのも嬉しかった」
「空中に貴女が居る事の喜びは数知れませんでした。戦場を分かったように包み込む、素晴らしい活躍です」
「気恥しいって!僕以外を上げて欲しいんだけどなぁ」
「レッドフードはブルースカイは自己肯定感が低いから褒め過ぎるぐらいが丁度いいと言っていました」
「……次会ったら怒っとく。忘れないからね……」
「……生きていると信じてるのですか?」
「侵食されてなお、最後まで戦った彼女が侵食に負けて終わりでは、あまりにも悲しすぎる。君の言葉だったでしょ?」
「!!やはり、貴女は……全てを見ている様だ」
「ファンに過ぎないって。君の活躍に免じて1つ言っておく事がある」
「何ですか?」
「僕達はもう、未来に向けて準備をしている。地上奪還の為の、その布石を。既に変わった部分もある。未来で物語を書き直す為にね」
「そうですか……いや、信じましょう。彼女もブルースカイの言う事は信じた方がいいと言っていました」
「うん、彼女も未来で生きてる。ちょっと複雑な事情だけどね。だから、安心して」
「それは……安心しました。やはりゴッデスは」
「素晴らしい」
「できれば、貴女と直接お話をしてみたかった。いいお話ができたかと、思います」
「僕もだ。……アークでのゴッデスの事、頼むよ。よく頑張った、オスワルド」
「……ありがとうございます。さて、レシピの続きですが――」
物体X、ではなく、ベストセラーな料理が完璧にできた。ゴッデス部隊の面々から量産型部隊にも好評だった。流石。
そして、2週間後。
「始めます。3...2...1...」
地軸を揺らすような轟音とともに、アークの封鎖は終わった。
「「「……」」」
「……終わりましたね」
「お疲れ様でした」
「ピナも」
「現時刻をもって、アークの封鎖が完了しました。ゴッデス部隊に、改めて感謝申し上げます」
「お疲れ様でした。それで、この後はどうなるのですか?」
「みなさんの功績を称え、アークには巨大な勝利の女神像が建てられるでしょう。そして、みなさんを神格化した書籍や広告を作り、アーク内で積極的に展開して行く予定です。みんながゴッデス部隊を崇めるでしょう」
「……やはり、そうなりますか……オスワルド、でしたか」
「はい。そちらにはブルースカイがいるので、恐らく大まかな情報は伝わっていたかと思います。これは……アークの選択です。予め黙っていた事、申し訳ありません」
「……構わない。分かっていた事だ」
「しかしまぁ、直接言われると少し来る物がある、というのも困り物だ」
「そうですね……アークは私達を見捨てたのでしょうか?」
「逆だと思うけどね。指揮官も戻ってこないって事はアーク内で何かあったのは明白。そこに勝利の象徴であるゴッデス部隊が帰ったらアークの人間は反発する。勝利の女神が敗北して帰ったんだから。それよりは死んだ事にして神格化した方が……後のニケの為になる。それに下手したら解剖なんて事にもなりかねないし」
「!!それは、嫌ですね。折角皆で生き残ったんですから……」
「そういう事。それにオスワルドは色々助けてくれてたみたいだから、恨むのはお門違い。彼個人の意思ではないのなら尚更」
「ご理解頂き、ありがとうございます。それでは、通信を切ります」
「……分かりました。ご苦労様でした」
「……ご武運を」
通信が切れる。張り詰めてた空気が少し和らぐ。さて、これからどうするか。
「改めて、どうする?ドロシー」
「事前の協議通り行きましょう。私、ピナ、量産型の皆さんは移動して"エデン"の座標で拠点を作ります。皆さんはそれぞれクイーンの情報を集めてください」
「通信装置は渡しておく。よっぽど濃いエブラ粒子の中じゃなきゃ平気だよ」
「ありがとう」
「助かるよ」
「ありがとうございます。それでは……荷物を纏めましょうか」
「私とピナは量産型の皆さんに話を通します。……よければスカイ、貴女も来てくれませんか?」
「拠点の輸送準備は整ってるから、いいよ、行こうか」
僕はこの後の地獄を知らない。僕らは大丈夫だったけど、量産型はどうなのだろうか。野営地に向かうとざっと取り囲まれる。
「あ、アークの封鎖は終わったんですよね!私達は、どうなります……か……?」
「これから移動ですか……?」
「……単刀直入に申し上げます。アークからは見捨てられました」
ざわざわと動揺が広がる。これは、まずいか。
「裏切られた、命を賭けて戦った人類に見捨てられた。足元に楽園があるのに、……正直、私も言われた時はその心境でした。死んで行った仲間は無駄死にだと」
「ですが、違います。死者に意味を持たせるのは生者の役割です。彼女達の犠牲を無駄にしない為にも、私達は生きる必要があります。それに……楽園がないのであれば作ってしまえばいいでしょう?私達だけの楽園を」
「そ、そんな事が可能なんですか!?」
「可能です。私達はゴッデスなのですから。明朝までにここに残るか、私達に付いてくるかを選んでください。忘れないで欲しいのは、貴女達も共に戦った大事な仲間なのです。既に楽園の基礎構造はブルースカイが考えてくれています。50年も経てばアークより更なる発展を遂げる事でしょう」
「本当に、本当なんですか……?」
「勿論。私達はゴッデスです。アークは信じられなくても、私達は信じてください」
「……そこに行った後は、何をすれば……?」
「好きに過ごせばいいじゃないですか。畑を耕すも、料理をするも、戦いから離れても」
「では、失礼します。ピナ、様子を見てあげてください」
「分かりました」
ドロシーとピナは別れ、野営地を後にする。様子を見ていたが思考転換する子は見られなかった。ただちょっと、皆疲れたんだろう。
「……どうでしたか、スカイ。私の……その……」
「よかったと思うよ。少なくとも僕が知ってる時は挫けてたから。君は胸を張って私に付いて来いって言えばいい。その隣をピナが守ってくれるだろうし」
「ありがとうございます。正直、皆さんの気持ちもよく分かりますし、抑えるので一杯でした。いくら劣悪だと知っていても、戦わなくて済む環境があるのです。それをみすみす捨てるなんて、と」
「一見するとそうかもね。でもアークは酷いよ?人間もニケを差別する奴はいるし、スラム街みたいなのは存在するし、上流階級だけが富を独占する。その上技術もね」
「そうですか……となると、アークを探るのも仕事の内になりますね」
「……なんか、楽しそうだね?」
「ええ、楽しみでもあります。自分達で築き上げる楽園がどんな姿なのか、という。ピナにも約束をしましたから、頑張らないといけませんね」
「そうだね……じゃあ、僕は輸送機の準備をしてくる」
「大丈夫なのですか?」
「自動運転かつステルスに優れてるから平気な筈。途中までの安全な道順をオスワルドに貰ったから。秘密だって」
「……なるほど」
それから、輸送機を準備した。研究室1つを格納しても余りあるスペース。ニケも全員格納できる。自分の装備を後回しにして何を作ってるんだかって話。量産型ニケは生き残り総勢40名程、全員が付いてくる事になった。
翌朝。
「そろそろ別れの時間か。見送る立場になるとはな」
「名残惜しいが、1ヶ月後にまた会えるのか、ふぅむ」
「皆さんお元気で、無事でいてくださいね」
「そちらもくれぐれも無理はしないように」
「何かあったらいつでも呼んでくださいね」
「緊急事態に陥ったら通信機を壊して。その最終座標が伝わるから」
僕、ドロシー、ピナは輸送機に乗り込み、他の3人はそれを見送る。
「じゃあ、発進するよ」
輸送機は自立飛行で空中を浮遊し、一気に飛翔する。そのままスノーホワイト達の姿は見えなくなって行く。
「……なんだか、こうなるとあっという間でしたね」
「そうですね。この後は?」
「周囲のラプチャーを警戒しつつ、座標に移動する。その後は簡易拠点を作って光学迷彩で隠す。彼女程じゃないけど雛形はできてるかなって」
そのまま輸送機はエデンの座標へと赴く事になる。
「行ったか」
「では、我々も行くとしよう」
「はい。皆さんもお気を付けて」
こうしてスノーホワイト、紅蓮、ラプンツェルも別れる事になる。絶望を乗り越えて、未来への希望を確かに。彼女達は生きていく事になる。
個人的にOVERZONEのオスワルドはヘイトをアークではなく自分に向けさせたかったのかなと。復讐を目的に生きていて欲しかったのかもしれない。そんな風に感じ取れました。実際振り返って聞いてみるとゴッデスと話をしてる時はどこか楽しそうだったんですよね。その終わりが恨まれて終わりでは悲しいので、少しでも苦労が報われるように……と。
量産型達の前で話をする時にブルースカイを連れて来たのは彼女が知っている自分とどうだったかを比較してもらう為でした。
という事で次回はOVERZONEの最終回です。
小説の方向性(セリフや描写など)
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積極的に改変が欲しい
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原作準拠で大丈夫
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原作準拠だが改変は間間に欲しい
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幕間エピソードが欲しい
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激しい改変はなくて大丈夫