それから、キロとタロスは様々な仕事をこなした。足のマッサージ機を持ち帰ったり、玉座を直したり。少しずつ、けれど穏やかにキロを含めた日常が過ぎて行った。そんな中で、キロを歓迎する会が始まった。
鹿のステーキ、魚のソテー、サラダ、スープにデザートも有り。更にエデン製のワインを飲みながら楽しんでいた。が、キロが酔いつぶれてしまった。
「うーむ、私も強いとは言えないがキロは特に弱いみたいなのだ」
「……ヒック」
「お嬢さま。お部屋に戻って休まれますか?」
「いいえ。王として、民より先に下がるわけには……ヒック。行きませんわ」
クラウンは明らかに酔っている。チャイムはそんな彼女を心配し、次にキロに起きるように促す。そんな様子をマリアンが見ている。すると突然。
「そうですよ!私は~弱いんです!得意なことだって何一つありません!本当に!一つも!」
「なんなのだ!驚いたのだ!」
「わたしがぁ~~今まで何回部隊を異動になったかわかりますかぁ~?」
「32回ですよぉ~32回!……あはは~なぜかニケになれたまではよかったんですけどぉ~量産型ニケ以下のスペックにぃ~なぁんにも特別な能力がないからってぇ~あっちへ飛ばされ~こっちへ飛ばされ~」
「そして結局ぅ~あの、外にあるあれ~、見えるでしょ~?タロスって~あのロボット。あれのパイロットになったんですけどぉ……あははっ、パイロットって言えば聞こえはいいですがぁ~」
「私はただの部品なんですよぉ~、部品~……タロスを動かすための、部品!」
「ぶ!ひ!ん!」
「役立たずの私にはタロスの部品になるしか存在意義がなかったんですぅ~」
「何を言い出すかと思えば使い道がないとは何なのだ?王国の優秀な民として立派に働いているのだ」
「タロスがすごいだけで、私がすごいわけじゃないですもん!全部タロスがやったこと!私は何にもしてません!ううっ……!タロスがいなきゃ私は何もできないんです!どうせ、私は……心の拠り所がない、どこにも所属できない……!」
「だと思ってたのにスカイさんがぁ~~!!」
ふぇぇぇんと勢いよく泣き出すキロ。マリアンがそっと背中を摩る。
「いきなり現れて、私の胸の内全部解き明かすような事言って、こんな素敵な居場所を用意されてるなんて聞いてないですぅ~!!」
「せめて感謝するのか文句を言うのかどっちかにするのだ!!」
「だってぇ……タロスのサブコンセプトとして、ブルースカイのような万能型としての機能が求められてるんですぅ~~~!私にとってぇ、スカイさんは憧れなんですよぉ~~!でも彼女みたいにはなれなくて……届かないのに、なんでぇあの人はぁ……私なんかを……」
「まったく、酒癖が最悪なのだ」
クラウンは急に立ち上がると槍を空中に放り投げた。
「お、お嬢さま!?」
「ひっ」
ザクッ!空中に浮かんだ椅子に槍が突き刺さった。
「お、お静まりください!キロは私が落ち着かせますので……!」
「キロ。私が持っている槍は、強そうに見えますか?」
「えっ?は、はい。強そうです」
「では、こうすればどうでしょう?」
クラウンは手にした槍を壁に立てかけ、下がった。
「壁にかかっているだけの、持ち主のない槍は、強そうに見えますか?」
「なんだかそれ、スカイさんにも似たようなこと聞かれましたぁ……」
「うー、強そうに見えない、です。武器であれ、道具であれ、使い手次第で価値が変わるって話ですかぁ……?」
「ええ、その通りです」
「お前のタロスは、お前がいるからこそ力を発揮できているのだ!つまり、お前はただの部品じゃないのだ!そもそもスカイなら"キロの能力を発揮できないアークが悪い"と言うに決まっているのだ!」
「うぅ……言われましたぁ……人には適材適所があるって……」
「タロスを動かせるのは貴方だけだと言ってましたわね。つまり、切り離しては考えられないという事ですわ。貴方はタロスであり、タロスは貴方なのですわ。私とこの槍が一体のように」
「ふぇぇん!みんなが優しいよぅ~~~!」
「本当に酒癖が悪いのだ!!」
ドサッ……キロが酔いつぶれて倒れた。チャイムが部屋まで彼女を運ぶ。
____
「う……ぅぅ、頭が」
「お目覚めですか?」
「ふえっ!?ど、どうかしましたか?何もしてませんよ……!?」
起きたら目の前にマリアンがいた。驚き、思わずベッドから飛び退く。
「キロ。心のよりどころが欲しいですか?」
「……はい」
「自分の居場所が欲しいですか?」
「……はい」
「自分が一体なんだと思えばいいのか、わからないですか?」
「……はい」
「私もそうです。頑張りましょう」
「……ありがとうございます」
ゴーン!ゴーン!ゴーン!
大きな鐘の音が王国全体に響き渡った。
「!?」
「な、何の音ですか!?」
「行きましょう」
広場に向かうと既にチャイムとクラウンが待っていた。
「た、大変なのだ!ラ、ラプチャーが王国に集まってきているのだ!」
「数は?」
「相当なものです。以前のように偶然迷い込んだ様子ではありませんわね。王国を攻撃しようとしていると考えて間違いありませんわ」
「え、だって王国って一応秘匿されてるんですよね!?」
「それも完全ではないのだ!だから何度か迷い込んだラプチャーがやってくるのだが、この規模は初めてなのだ!お嬢さま!急ぎ連絡を……!」
「すぐにでも。全員、戦いの支度を。王国の防衛システムを起動してください。この地は必ず守らなければなりません」
「はい!」
「お嬢さま、私は連絡を……!」
「お願いします、チャイム」
「キロ。いけますか?」
「やってみます」
「恐れる必要はありません。私の背中だけを見て、ついてこればよいのです」
「タロス、勝率はどれくらい?」
「99%です」
「……えっ?」
「スカイの制作した防衛システムに加えて、自戦力およびヘレティックモダニア、正体不明のピルグリム。計算しましたが負けることはありません」
「なんだ……怖がって損した」
戦闘はあっさりと終了した。大型ラプチャーがいないという事もあり、数だけの雑兵だった。
「素晴らしいですわ皆様。よく防ぎましたわね」
「ふぅ、お疲れ様でした」
「お、お疲れさまでした」
「……しかし、これほど多くのラプチャーが集まったのは一体……王国の防衛システムに問題があったのでしょうか?」
「いいえ、そうではなさそうですわ」
____
遠方。インディビリアとトーカティブが立ち並んでいた。
「面白いことになりましたね」
「そうだな」
「群れが急に動き始めたから何かと思ってついてきてみたら、こんな古風で美しい建築物があるとは思いませんでした」
「美しいと言うのか、ただ古いだけだ」
「あなたはもう少し美的センスを磨いた方がいいですね。いずれ、最も美しいものになるのですから」
「冗談はよせ」
「あなたも気づいているのでは?火竜を取り込んでからとても美しくなりました。力は明らかに強くなり、外見にも変化の兆しが……楽しみです。これからもっと同族を喰らっていけばどのような変化が訪れるのか。どれほど美しくなるのか」
「同族食いではないと言ったはずだ」
「ああ、失礼しました。単なる捕食としておきましょう」
「人間もどきどもが、あの城にいるようだ」
「ええ。少数ですが、それなりに組織的なようですね。距離があるので詳しくは確認できませんが人間たちからピルグリムと呼ばれているものでしょう……久しぶりにこの刃を血で染められそうです」
「……」
「あの時、常識はずれの人間もどき2体にやられた傷も治りましたし……楽しみです」
「今、全滅させるつもりか?」
「もちろんです」
「少しは頭を使え。何の価値もない古城に人間もどきがいる。捨ててもかまわないはずの拠点をわざわざ守るために応戦した。その意味が分からないか?」
「何かがある?」
「そうだ。あの城には何かがある。人間もどきどもが命をかけてでも守ろうとしている何かが。それが何か知りたくてたまらない」
「捕らえて吐かせればいいでしょう。適度な苦痛を与えればいいだけです」
「お前は人間もどきを理解していないな。そんなやり方では、何も得られない。ああいう奴らは使命を盾にして、己の頭を欺いている。力では解決できない」
「ふふ、人間もどきについてずいぶん詳しいようですね。やはり……というべきしょうか」
「……」
「わかりました。あなたの助言に従いましょう。人間もどきの大事にしているものなど、私たちにとってどれほどの価値があるのかはよくわかりませんが……最も美しいものになる方の願いですから」
インディビリアが手を上げると周囲の空気が揺らめいた。
「……ほう、光学迷彩搭載型か」
「やはり、よくご存じですね。その通り、光学迷彩を搭載した小型ラプチャーです。まだ小型のものしか使えませんが偵察には向いているでしょう」
「完全に透明というわけではないのか。単独で侵入させることは難しそうだな」
「ええ。ですので隠し玉を用意しています」
インディビリアの背後。空に揺らめく影が4つ。ニケのようなそれは黒い外套のようなものを身に纏っている。
「ブラックスワンか」
「地上進行の際に使われた旧式を集めて改良したものです。さしずめMK.Ⅱといったところでしょうか。これで万が一、あの青いのが来ても問題ありません。戦闘データは残っていますから」
「上空からの攻撃に交えて偵察機を侵入させる。いい考えだ」
「ふふ、実に人間くさい戦術ですね。それでは……あの古城に何が隠されているのか、確かめてみましょうか」
5つの影は揺らめく。周囲のラプチャーに紛れ込んで。
____
スカイが駐屯地01を飛び去ってから少し、通信が入ったのを確認する。もうか、と思いながら進路をクラウン王国に合わせている中、空中から何者かに射撃をされた。
「ビームに、ジャマー!?」
振り返れば、そこにいたのはブラックスワンだった。かつてアークガーディアン作戦で自分を瀕死に追いやった存在。しかしここ100年は見ていなかった存在。何故、今?と思考する。
「インディビリアの作戦……まさか!そうなると王国の対空兵装だけだと……!?」
横から、突如としてビームが飛んでくる。咄嗟に回避をすれば、小さなそれはブラックスワンの周囲に浮かぶ。
「ビット兵器……いつかは出るかもしれないと思ってたけど、噓でしょ?」
自分と似たような兵装。ラプチャーははっきりと、自分の存在を脅威だと認知した。
「悪いけど時間がないんだ。もしかしたら王国が落ちる可能性もある。援軍は行ってるけど、君みたいなのがいると困るんだ」
敵は背中に装備された対艦刀を手にし、ビームを放ちながら接近してくる。
「対艦刀はこっちにもあるし、強化されたのは君たちだけじゃないってね!」
光の翼で高速回避。残像越しにビームライフルを乱射する。ヂュン、と当たった音がするが……弾かれた。
「!?」
スカイは驚き、2,3度射撃を別の角度から行う。しかし、すべて弾かれた。
「ビームが効かない……完全に無効化する為の手段って訳ね。シンデレラみたいな飽和型は無理だろうけど、私のビットはそれで充分って事か……!!」
一瞬先を対艦刀が掠める。スカイは空中で翻りながら背中に装備された自身の対艦刀を手に取り、腰のレールガンを構える。
「悪いけど、それも見越してるのよ!こっちは!」
残像で翻弄しながら近接射撃。スワンを蹴り飛ばして更に追撃。途中でビットのビームが蜘蛛の巣上に広がってくるが、それを搔い潜る。
「私を倒したいんなら!もっと数持ってきな!」
「……けて」
「命乞い?今更?」
対艦刀で薙ぎ払って武装を破壊。とどめを刺そうとコアに刃先を突き刺そうとした時、顔を覆っていたフードが捲れた。
「……は?」
「たす……けて……」
それはニケだった。量産型の誰かなのだろう。原型までは分からない。しかし、その顔は確かにニケのもので、人に似すぎていた。赤く明滅した目から涙を流し、か細くたすけてと言う。だから、鈍ってしまった。動きが止まる。ドン!ドン!と背中が爆発し、攻撃されたのだと理解する頃には地面に滑落していた。
「くっっっそ……!!最悪!誰の趣味だよコレ!!」
「ごめん……なさい……たすけて……」
「"頭"だけニケのラプチャーなんて!さいっっあくだなぁ!!?オイ!!」
よく見ればコアはラプチャーのもので、頭だけニケのものだった。処理した浸食個体の頭だけを切り取って活用したのだろう。理屈は分かるが、スカイは頭を掻きむしりながら苛立ちを露わにする。
「マジで話が変わってくる。チャイムの救出に間に合うか……?いや、間に合わせる」
「悪いけど急いでるんだ。誰かは分からないけど、せめて安らかに眠ってくれ」
スカイは羽を広げ、急上昇していく。シールドビットを持ち、相手の対艦刀を弾くとすぐさま2本目の対艦刀を手にし、右腕を切断。最期の抵抗とばかりに放つビームを無視するように、コアに向かって投げて突き刺せばブラックスワンは沈黙した。
「あり……がとう……」
「音声は生前の物。声紋が全部一緒なんだよ。それを良いように操って……クソ」
次は使い回されないように頭部も含めてバラバラに破壊する。そして武器をしまい、変形し、大急ぎでクラウン王国へと向かう。チャイム救出の為に。
実際こういう展開があったらどうしよう。嫌すぎる。リリスの顔したヘレティックとか登場したらみんな死ぬけど?っていう所を考えてブラックスワンに採用しました。
小説の方向性(セリフや描写など)
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積極的に改変が欲しい
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原作準拠で大丈夫
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原作準拠だが改変は間間に欲しい
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幕間エピソードが欲しい
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激しい改変はなくて大丈夫