「お、お嬢さま!またラプチャーが集まってきました!」
「……全員に防衛戦の準備を」
「か、かしこまりました!皆に伝えてまいります!」
チャイムが素早く駆けて行った。その後姿をクラウンは沈黙して見ている。
ラプチャーの攻撃の感覚が短くなっている事を察知した一行はマリアンの提案でタロスに戦闘データを記録する事になった。今回も規模は大きかったが苦戦する程でもない。凌いだ後、クラウンが告げる。
「みなさん、お疲れ様でした。……城壁の損傷は――」
その言葉を遮るようにドン!ドン!と破壊音がする。
「何なのだ!?」
「タロス!どこから!?」
「――上です!」
マリアンが叫ぶ。城壁に備えられた兵装が上空を向いている。しかし次々に破壊されてしまう。そのまま4体の"人型"のラプチャーは狙いをクラウン達に定めた。
「これ……は!」
「チャイム、下がりなさい!」
振りかぶられた対艦刀とクラウンの槍が鍔迫り合う。その隙を2体が横から、残る1体が上空から追い詰める。
「クラウン!」
「タロス!」
マリアンが上空に向けてガトリングを斉射し、キロがタロスを操作して2体の対艦刀を受け止める。しかし
「当たらない……!速い!」
「うぅぅぅぅ!!タロス!」
「装甲が焼き切れています。このままでは耐えられません」
「弾いて!」
「了解」
タロスの剛腕が振るわれる。それを華麗に回避しながら黒い人型ラプチャーは"可変"した。
「「「「!?」」」」
その姿はブルースカイの飛行形態時によく似ていた。何故、と疑いたくなる程に。
「データ照合。ブルースカイとの類似率76%。過去の情報を元にするとブラックスワンで間違いありません」
「ブラックスワンって何!?」
「かつてアークガーディアン作戦の際に観測されたラプチャーです。しかしそれ以降の目撃談はありませんでした」
「そのようなものが……何故……!?」
ガキン、とクラウンの槍が弾かれる。ブラックスワンは彼女の首元に刃先を当てた後、まるで感情があるかのように少しだけ対艦刀を動かし、いたぶる様に切る。つー、と少量だが血が溢れる。そのままゆっくりと離れ、同じように可変する。
「タロス!狙って!」
「射程圏外です」
更に驚くべきことにブラックスワンの機体から装備が外れ、自立稼働をして砲台へと攻撃を行う。それはまるで、スカイのビット攻撃そのままだった。
「タロス!!」
「狙えません。我々にブラックスワンを対処できる武装はありません」
「それじゃあ見てろって言うの!?皆死んじゃう!」
「……いいえ、殺しが狙いなら今ので私の首を斬り落とせた筈ですわ。それがないという事は……」
「別の狙い……陣地破壊、ですか」
「まずいのだ、今の兵装が破壊されると旧式のものしかないのだ……!それに奴等が毎回出てくるとまともに機能しないのだ!」
あらかた破壊し終えるとブラックスワンは可変して飛行形態になり、後方へと下がって行く。勝利とは言えない、苦い敗北を味うのだった。
スカイが作製したブリーフィングルームにて。
「タロスの計算した所……いいえ、言わなくても分かると思いますが……ラプチャーの動きが前回と比べて統率が取れていました。それにブラックスワンの感情があるかのような戦い方……タイラント級、もしくはヘレティックがいます」
「相手が誰か、までは分からないのだ?」
「……分かりません」
「どうしますか、クラウン」
「この場を守り、防ぐしかありませんわ。城壁の修復を最優先で、兵装は持久戦を見越して少しずつ出しましょう」
「分かりました」
____
3日後。
「……今回の襲撃で西門・南門が半壊しました。残存兵装は残り2割を切っています」
「3日で5回……加えて夜間のブラックスワンの襲撃。あまりにも多すぎますね」
「物資はスカイさんの残した機材類で制作していますが……もう底をつきそうです。王国の外に出られれば、色々と補給もできるんですが……」
「無理ですわね」
クラウンが空を見ている。適当な間隔と高度で飛行形態で待機しているブラックスワンがいる。更に地上にはラプチャー達もおり、包囲されている。
「嬲り殺し、ですか。あまりにも悪辣ですね」
「な、なんでこんな回りくどいことを……」
「回りくどいからこそ、私達はまだ生存しているのですわ。きっとチャイムが策を練って――」
「お嬢さま!!宝物庫とスカイの部屋が!!」
「――!!」
急いでその場を離れるクラウンとチャイム。それに続いてキロ、タロス、マリアンも移動する。その様子を、偵察型ラプチャーがしっかりと映像に映しており、静かに移動するのだった。
一行の前には巨大な扉が存在していた。クラウンが扉に近づき、何かを調べるように立っていた。
「幸い、扉は無事のようですわね」
「よ、よかった……」
「チャイム、キロと協力して扉の前のバリエーションの補強を」
「ははぁっ!バリケードを更に強固にバリエーション豊かにいたします!」
「……この扉、何ですか?」
キロが尋ねる。
「電子式ですよね。なんでこんな古いお城、いや王国に……」
「キロ。私達が何故ここを守っていると思いますか?」
「この扉の向こうにあるもののため、なんですね。ずっとおかしいと思っていました。ラプチャーの群れが襲ってきたならここを捨てて逃げるのが一番いいはずなのになんでそうせず戦っているのか。この古城は単なる観光地……それ以上でもそれ以下でもないはずですから、何か理由があるはずだと考えていました」
「その通りですわ。そしてその答えが、この扉の奥にあります。確かめる気はありますか?」
「お嬢さま!それは……!」
「見れば、あなたの選択に役立つかもしれませんわ。色々と考えることになるでしょう」
「お気持ちは?」
「……はい、見たいです」
クラウンは何も言わず、目の前の電子盤を操作した。扉がゆっくりと開き、白い煙があふれ出した。
「……これは、冷気?」
「どうぞ、中へ。寒いですからお気をつけて」
「ずいぶん広い冷凍庫ですね……この積み上げられている箱は何ですか?」
クラウンは空いている箱に手を伸ばし、何かを取り出した。それはコブシ程の大きさを持つ種だった。
「ハイパーフード、なのだ」
ハイパーフードに疑問を持つキロに対してチャイムが説明を行う。
「人類を救う種なのだ。地面に植えるだけで。3か月後には収穫できる穀物なのだ。土を傷めないから連続で何度でも同じ場所に植えられて……病気や虫にも強くて、最低限の水と日差しだけで育つのだ。収穫までが簡単で、収量もとても高くて……どんな地面でも育つのだ。ハイパーフードは人類にとってこの上ない次世代食品なのだ」
「ウェイクアップ、タロス」
「再起動完了。こんにちは、キロ様」
「ハイパーフードについて何かわかる?」
「人類の次世代食品として注目を集めた、理論上は完璧な食品です。あらゆる食糧難を解決し、未来の人類の食文化自体を変えるものとして多くの期待を集めました。ただし、農業関係者たちによる過激なストライキが多数発生し……完成したという記録はあるものの、それ以降の情報は何もありません」
「それが……これ……?」
「種の外見はわずかに残存している資料と一致します」
「分かった。待機して」
「了解、待機します」
「……これ、アークに持っていきましょう。そしたらみんな、凄く喜びますよ……!」
「……アークは信じられ……あああ、いやいや。アークにはパーフェクトという代替食品があるのだ。だから今のアークにはハイパーフードなど必要ないのだ。それに、こいつは育てるのに広大な土地が必要なのだ」
「……じゃあ、どうしてそんなものを守って…」
「……!!」
「まさか、違いますよね?」
「間違いではありません」
「め、めちゃくちゃじゃないですか」
「なぜでしょう?」
「だって、今までの状況だけでも……可能性なんてないですよ」
「私はあると信じていますわ。それに、身近にいませんでしたか?決して諦めない方が」
「それ……は……!!」
「どれほどかかろうと、関係のないことです。この倉庫にあるハイパーフードは……いつか再び地上を取り戻した時、人類のための食料となるはずですわ。何があっても守らなければなりません」
「ち、地上でもパーフェクトを食べていればいいじゃないですか」
「最初のうちはそれも仕方ないのだ。しかし、地上ではあんな得体のしれない物ではなく、地上の物を食べるべきなのだ。それでこそ、真の地上を奪還したと言えるのだ。ここは、そのための場所なのだ」
「あは、ははは……お、お二人は、本気で信じているんですか?じ、人類が、地上を取り戻せるって」
「もちろんなのだ」
「一瞬たりとも疑ったことはありませんわ。ですから、ここが私の守るべき場所。私の居るべき場所なのですわ」
「……」
「……冷えました。そろそろ戻りませんこと?」
____
「お嬢さま。ラプチャーの様子を確認してまいります」
「敵陣に潜伏するってことですか?チャイム、それはあまりにも危険が……」
「マリアン、心配ないのだ。作製途中だった光学迷彩があるのだ。サイズ的に私にしか合わないのだ」
「危険すぎます。相手にはヘレティックがいるんですよ?」
「いたらなんだというのだ!このチャイム、素早さと賢さでは右に出る者がいないのだ。絶対に大丈夫なのだ!」
「お嬢さま、お許しをお願いいたします」
チャイムはクラウンへと向き直る。
「……構いませんわ。気をつけなさい」
「もちろんでございます」
____
「ふふふ……あははは!あんなもののために、ここを守ってるんですって。本当に?あははは!」
インディビリアは笑う。
「面白いですね。どんどん面白くなってきました。しかも身の程を知らない人間もどきが忍び込んでくるそうですよ。面白いことになりそうですね。ふふふ、向こうから来てくれるなんて」
「トーカティブ?」
「ふ……ふ、あははははは!」
「あら、あなたが笑うなんて珍しいですね。私も笑いたいので、理由を教えてもらえますか?」
「ここにいたのか……!こんな所に……!!そうだ、アークが放っておくはずがない!」
「マリアン……!いや……――」
「!!」
かつて奪われたマリアン。最期の抵抗であった浸食さえもあのスカイに邪魔をされてしまった。しかし、今はいない。奪い返すには最善の機会だった。
「ブラックスワンは何機いる?」
「合計4機です。探せばまだあるでしょうが」
「青い人間もどきに勝てるか?」
「間違いなく。戦闘データは揃っていますし、優しい人間か人間もどきの"誰かさん"が機体のスペックを残してくれています。今までなんで放置していたんでしょうね?不思議です。まるで、最初から私達の脅威になるのを知っていたかのように」
「我々にとっての"赤い靴"だな」
「……童話、ですか?随分と人間らしい言い方ですね。確か……幸運の靴でしたか?確かに私達にとって、ブラックスワンは赤い靴のように幸運を運んでくれました」
「さて、おもてなしと行きましょうか」
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Q:なんでブラックスワンがブルースカイにこんなに似ているんですか?
A:優しいレッドシューズさんが脅威かなと思って詳細を残してたよ♡
Q:なんで今までブラックスワンが出てこなかったの?
A:地上を制覇したから空中用ってそんなに必要ないから……かな……。
小説の方向性(セリフや描写など)
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積極的に改変が欲しい
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原作準拠で大丈夫
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原作準拠だが改変は間間に欲しい
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幕間エピソードが欲しい
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激しい改変はなくて大丈夫