その昔、チャイムとクラウンの出会い。
「お前は……ここで何をしているのだ?」
「この場を守っています」
「守るって……何があるのだ?」
「この場、この土地、この城」
「……なぜ……?」
「ここには人類の希望があるのです」
「し、指揮官は?他の部隊のメンバーは?なんで1人なのだ?」
「みな、死にました」
「うぅむ……なぜ、戻らないのだ?」
「私はこの場を守らなければなりません」
「こ、ここはニケ1人でいられるような場所じゃないのだ。戻るのだ。私が送るのだ」
「私はこの場を守らなければなりません。離れるわけにはいきません」
___
「うっ……」
クラウンが起き上がる。視線を上げるとマリアンがいた。
「疲れてたみたいですね。クラウンが寝てるなんて」
「私が……?」
「はい。ぐっすり眠っていたので起こしませんでした」
「……心遣いに感謝しますわ。チャイムはまだ……?」
「はい。まだです」
「……キロは?」
「ずっと城壁を補修しています。防衛システムも点検中です。ラプチャーが襲ってくる気配はありません。もう少し休んでください」
「心配ありません。起きないと……」
「クラウン」
「何ですか?」
「私が行きましょうか?行って、全部倒しちゃいましょうか?私ならできます」
「マリアン、あなたに命令はしませんわ。あなたの望むことならば、止めはしません。私もサポートしますわ。でも、そうではありませんね」
「……」
「ラプチャーと戦いたくないのでしょう?私たちのために無理をしようとしていること、分かっていますわ。今以上のお願いなど、できません」
「分かって……いたんですね」
「ええ。民に目を配ることは王の責務ですから」
「でも、このままじゃ……」
「……?……!!」
シュッ!ドカン!
「!!」
クラウンの投げた槍が壁に突き刺さり、同時に爆発が起きた。爆発の煙が収まるとそこには槍を突き立てられた小型ラプチャーの残骸があった。
「……これは……」
「光学迷彩……!いけません!私たちの話したことが全部知られてます!」
「チャイム……!!」
____
一方その頃、キロは城壁の修復を終えてスカイの部屋に来ていた。殆ど破壊されてしまったが、僅かに稼働する機械も残っている。
「タロス、ブラックスワンへの対抗策は?」
「超高高度狙撃を行うレールガンを推奨します」
「作れる?」
「試作品であれば可能です」
「お願い。一発だけでも撃てれば……コアを貫けたら……」
「狙撃も可能です。また、外れた場合は近接戦闘を仕掛けてくると推測」
「タロスのパワーで勝てる?」
「対艦刀に腕を溶断されなければ破壊できます。しかし、その前に飽和攻撃で倒される確率が高いです」
「ですが、これだけは断言できます」
「……何?」
「貴女は私が守ります」
「……ありがとう、タロス」
その瞬間、地響きと爆発音が聞こえる。
「攻撃!?」
____
「キロ、マリアン。ここを任せます。私はチャイムの救出に向かいます」
「光学迷彩のラプチャー……分かり……ました。タロス、勝率は……いや、なんでもない」
「気を付けて、攻撃が始まっています」
「大丈夫です。王は民を残して死にませんわ。……トロンべ!」
クラウンはトロンべに乗り、急いでチャイムの元へと向かう。ラプチャーの攻撃を掻い潜りながら。
____
「うぅっ……!頭が……!」
チャイムは頭の痛みをこらえ、状況を把握しようとした。体が鋼鉄のワイヤーで縛られている。
「はっ!!」
「起きたか。お前に色々と聞きたいことがある」
トーカティブとインディビリアが目の前にいた。
「……??」
「ふん」
「ぐはっ!?」
トーカティブがチャイムを剛腕で殴った。
「寝ぼけている場合か?夢でも幻でもないぞ」
「ひ、ひぃっ……!」
「あら、かわいそう。すっかり怯えてしまいました。暴力は感心しませんね。トーカティブ」
「2、2体も……!?なぜ……!」
「さあ?今大事なのは、そんなことではないでしょう?」
「はわっ!あわわわわわ!!ひょえぇぇー!!」
「ふぅん……」
ドガッ!
「うっ!ぐはっ……!ゴホ!ゴホ!ううっ……!」
「暴力は感心しないのではなかったか?」
「失礼、うるさかったのでつい。さて、勇敢だけど無謀な人間もどき。忍び込めたところまではよかったですね。褒めてあげましょう。まあ、簡単に捕まってしまいましたが」
「私達があなたを殺さずにいる理由は簡単です。聞きたいことがあります。おとなしく私達の質問に答えていただけますか?答えてもらえれば……ふーむ……助けてあげるとは言えませんね。私、嘘はつけないので」
「ひぃ……!?」
「古城の中に、あなた以外の人間もどきはいますか?」
「わ、私が、言うはずないのだ!」
ヒュッ!ザクッ!インディビリアの刃がチャイムの顔を掠める。
「えっ……」
「あらあら、外れてしまいました。首を狙ったつもりでしたが、手が滑ってしまいました。まあ、片方なくても聞こえますから、続けられますよね?」
「う、あああっ……!」
耳が切断されていた。とても綺麗に。
「もう一度聞きます。古城の中に、あなた以外の人間もどきはいますか?」
「ううっ……!ああっ……!」
「うっ……!こ、殺せ……!私は何も話さないのだ!!」
「はぁ……。トーカティブ。これ、思ったよりつまらないです」
「言葉と表情が合っていないぞ。どうせ答えになど興味はないのだろう?ただもてあそびたいだけだ」
「バレていましたか。そうです。勇敢な人間もどき。私は古城に何があるかなど、興味はありません。知りたければ簡単ですから。直接行って、確認すればいいだけのこと」
「それをせず、わざわざあなたを苦しめているのは……あなたが恐怖と苦痛に屈して、仲間を売る姿を見たいからです。でも、私を満足させてくれそうにはありませんね」
「ハ、ハハハ!そ、それは残念だったな~なのだ!」
「人間もどき。あの古城、正確には冷凍倉庫の中だ。何がある?何故逃げずに城を守っている?」
「お前の歯を磨く歯ブラシがあるのだ!」
「……マリアンはいつから、なぜここにいる?」
「なっ……!?貴様……!何故貴様がその名を……!?」
「答えろ」
「くっ……!!」
「ああ。つまらないですね」
「……」
プシューと音を立ててトーカティブの手から長く鋭いトゲが生えた。
「人間もどき。これが何か分かるか?」
「侵食誘発装置だ」
「!!」
「これを埋め込まれれば、お前は人間ではなくラプチャーのために生きることになる。秘密を1つ教えてやろう。侵食は脳を破壊するものとして知られているが実際には、意識ははっきりしている。ただ、言葉や行動を制御することができなくなる」
「絶対に割れない窓越しに狂った自分を見せられるようなものだ。そして、いずれ仲間の手で殺される。そのすべてを、まともな意識を保ったまま経験することになるぞ」
「想像を絶する苦しみだろうな」
「答えろ。そうすれば侵食はされずにすむ」
「……はぁ……!はぁ……!うっ……!ううっ……!お嬢さま……!」
「まだ悩むのか。それなら、もう少し譲歩してやろう。答えれば命は助けてやる」
「帰った後で私たちと戦おうと、逃げようと構わん」
「た……たすかる?」
「そうだ」
「う、うそをつくんじゃないのだ!」
「お前など我々にとって何のリスクでもない。逃がしてやろうがどうでもいい。どうせ何もできないのだからな」
「そうですねぇ。正直に言って、あなたが十何人いたとしても。私達にとっては何の脅威にもなりません。ですから、早く終わらせてください。それ以外、あなたにできることもないでしょう?」
「……」
「口だけ動かせ。そうすれば生きられる。お前が負っている使命が何かは知らないが、つまらないもののために命を投げ捨てないことだ」
「!!使命……」
「そうだ。使命など意味がない。……誰も理解はしない。誰も覚えてはいない。ならば、潔く捨ててしまえばいい」
「……お嬢さま。我が王よ……この不出来な民をお許しください……」
「……私は先に参ります」
「……?」
「私を……私をナメるな!この汚らわしい雑種め!!私はクラウン王国の民であり、王の誇らしき秘書なのだ!!私の使命は王国に輝きと栄光をもたらすこと!王の為に生きること!!」
「使命を捨てる!?己の由来を捨てた裏切り者の貴様らが考えそうなことなのだ!!」
「私は!!絶対に裏切らない!!貴様らのような誇りも、気高さもない奴らと同じような真似など私にはできないのだ!何度だって言ってやる!!貴様らに言えることはないのだ!!貴様らにかけられるのは侮蔑の言葉だけなのだ!!」
「殺すなら殺せ!侵食?好きにするのだ!私に何かあったと分かれば、お嬢さまが!!私の王が貴様らを許さないのだ!!」
「必ずや私の仇を討ち!!貴様らの死体は城門に幾百年もぶらさげられることになる!」
「王?王だと?」
「ハハハハ!そうだ!これだけは教えてやるのだ!!王国には私が仕える王がいらっしゃる!!貴様らより10倍、100倍!!いや1000倍は強くて気高きお方なのだ」
「身を清め、道をはらっておけ!!我が王が!!貴様らの首を!!直々に取りに来るのだ!!」
「……ダメですね。これは」
「……使命に目がくらんだか。愚かな。……しかし、うらやましくもある」
「トーカティブ。良いことを思いつきました。あなたはラプチャーを率いて王国に行ってください」
「……分かった」
トーカティブが地面を蹴り、王国へと向かう。暫くして入れ違いになる様にブラックスワンが4機、やってくる。
「……なんなのだ?」
「こうすれば分かるでしょうか」
フードを外せば、全機の頭部がニケのものだった。目は赤く明滅し、時々細く声を出している。
「これはブラックスワン。あなた達のお仲間の劣化コピーにしか過ぎませんがいい駒です。頭部を差し替えただけで人間もどきの動きは鈍くなるんですよ?不思議ですね」
「ですが……先の戦闘で少し頭部を破損した機体がいまして、あなたの頭部と挿げ替えてみるのはいかがかと」
「やればいいのだ!お嬢さまはその程度で揺らぐような方ではないのだ!!」
「ああ、ふふ。逆に王国を落としてその王の頭に取り換えてみてもいいですね?どうせあなたには何もできないのですから」
「――ッ!!貴様ぁ!!」
「この物達は全て、一番最後に残った物です。私達を相手に仲間を逃した物。捕らえた時に最後まで屈しなかった物。勝てないと分かっているのに弱者はどうして強者に歯向かうのでしょう?不思議でたまりません」
「さあ、チェックメイトと行きましょう。あなたも首のない天使にしてあげます」
ドン!ドン!と王国の方で爆発音が響く。
「向こうも終わりが始まったみたいですし……こちらも始めましょうか」
「……!!くく……ハハハハ!!」
チャイムは急に笑い出す。インディビリアは壊れたのかと溜息を漏らしながらわざわざブラックスワンの対艦刀を手にし、チャイムの首へ宛がう。
「最期の言葉は?」
「――空を見ろ、なのだ」
「はい?本当におかしくなってしまったんですね」
振り上げたその瞬間。インディビリアの背中が爆発した。
「っ!?」
「弱者が強者に歯向かうか分からないって?そりゃそうだろうね、君達は弱者なのだから」
青い装甲、翼から漏れ出る粒子。ブルースカイが上空から見下ろしていた。しかしその姿は2人が知る物ではなく、より大人になっていた。更に特筆すべきは髪色と光の翼が"紺色"になっている事だ。
「お前はッ!?」
「こんな悪辣な趣味を用意しているとは思わなかったよ。でもお陰で、随分と早く来れた」
「スカイ……なのだ?」
「うん、そうだよ。色々あったんだ。でも、話は後かな?」
「くっ……行きなさい!」
ブラックスワンが全機スカイへと向かって襲い掛かる。しかし、それを全て避け、チャイムを拾う。
「速い!?あの時以上――ッ!?」
「遅いよ」
スカイの拳がインディビリアの腹を捉え、思い切り振り抜く。衝撃で吹き飛ばされた彼女は勢いよく地面に転がる。
「この……!!」
「私を見ている暇があるのかい?それとも……この音で気づかなかったのかな?」
「なんですって――」
「行きなさい、トロンべ」
背後から槍を構えたクラウンが突貫する。カハッ、と呼吸が漏れ出し、再び地面に転がる。
「チャイム!……と、スカイ……?」
「お嬢さま!」
「速かったね、流石。チャイムは無事だよ。ひとまず王国に戻って態勢を立て直そう」
「分かりましたわ。チャイムをお願いします」
「OK」
スカイはチャイムを抱えて、高速で王国に飛翔する。
「待ちなさ……い、私を、無視するなんて!」
「退きなさい」
「カハッ……!?」
クラウンはトロンべを方向転換させると、前足で蹴り飛ばし、更に追撃とばかりに槍を突き刺す。ひづめで何度も踏まれた後、勢いよく吹き飛ばす。インディビリアの体は何度も地面を跳ね、岩に激突してようやく止まった。そうする頃にはクラウンの影は消えていた。
「この……!!舐められたものですね……!ですが王国は……」
____
王国の戦力は限界を迎えていた。大量のラプチャーにトーカティブが押し寄せていた。
「奪われたものを取り返す時だ!」
「わ、私たちだけじゃ守り切れません!」
「防衛成功確率は6%です」
「言われなくても分かってる!でも思ったより高い!?」
「それでも、やらないと……!ここは……クラウンと……チャイムの……!」
砲台陣地が破壊され、どんどんラプチャーが侵入してくる。眼前には迫り来るトーカティブ。
「終わりだ」
「ううっ、王国が!」
「……こうなったら!」
「――いいえ、その必要はありません」
突如として上空から激しい攻撃がラプチャーを襲い、戦闘集団を撃破する。
「来たぞ」
「もう少し恰好をつけてくれないかね?遅れてすまないとか、言い方というものがあるだろう?」
「そうですね。折角ですから」
「待たせたな、なんてどうです?」
「む、そうか。――待たせたな」
「ドロシー!スノーホワイト!紅蓮!ラプンツェル!ピナ!」
「な、何ですか!?あの人たちは!?」
そこにいたのはゴッデス部隊の面々だった。
「話はラプチャーを倒してからにしましょう」
「ああ、行くぞ」
「参ろうか」
「守りましょう」
「防衛なら任せてください」
「ゴッデス部隊、レディー」
「エンカウンター!」
ドロシーが高らかに叫ぶと同時にラプチャー達に激しい攻撃が浴びせられ、瞬く間に殲滅されていく。勝利の女神は再び、舞い降りたのだった。
「邪魔が入ったか……だが、今はこれで十分だ」
トーカティブは引いていく。戦闘は王国側の勝利で終わった。
____
「……来てくれたんですね」
「通信を見た。場所が遠かったがスカイのSFSで間に合った」
「まさか王国に襲撃があるとは……光学迷彩の見直しが必要そうですね」
「状況はよくなさそうだな」
「あ……クラウンとチャイムは……?」
「それなら安心してください!スカイ様が先行してます!」
「ええ。私達より到着は速かったので、大丈夫かと」
「あの……こ、この方たちは……?」
親しげに話す様子に困惑するキロ。しかしスカイの名前が出ているという事で怪しくはないと判断する。
「!!……ロボットがしゃべった!?」
「いえ、そうじゃないです。中に私が乗っているんです」
「……私も乗れるか?」
「それは無理です……」
ヒューン!!と滑空音が聞こえる。チャイムを抱えたスカイが着地する。
「っはぁ!!流石にリリスを使い過ぎたね。オーバーヒート寸前。システム:Goddessはしばらく使えないね」
「め、目が回るのだ……」
「チャイム!スカイ!」
「ス、スカイさん!!?姿が!!!!!」
「マリアン、それにキロ。よく頑張ったね。私達が来たからもう大丈夫だよ」
「え、は、はい!!?」
ドドドド、トロンべを駆るクラウンが砂埃を巻き上げて戻ってくる。そして、馬から降りると全員を見やる。
「来てくださったのですね。感謝いたしますわ」
「状況を教えてくれ」
「見れば分かるであろう?ラプチャーに狙われているのだ」
「リーダー格はトーカティブだけですか?」
「いいえ。もう1体、ヘレティックがいます」
「後ブラックスワンの改良型が4機いる。頭部がニケだけど、もう死んでるから容赦なく倒してあげて欲しい。というか、私が倒せば問題ないね」
「計6体か。アレを相手した後の実力を測るには丁度いいかもしれないな」
「とはいえ油断はできませんよ。トーカティブは侵食も誘発できますから」
「大丈夫!私が皆様を守ります!!」
「本当に頼もしいですね、ピナは」
「交戦の目標は?」
「この王国に敵を一歩も近寄らせないことです。必ず、守り通さなくてはなりません」
「できるか、ドロシー?」
「当然です。私達の防衛作戦の成功率は100%ですよ?」
「さて、皆でがんばろっか!クラウン王国防衛作戦!そのまんまだねぇ!」
LAST KINGDOM:To be Continued
小説の方向性(セリフや描写など)
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積極的に改変が欲しい
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原作準拠で大丈夫
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原作準拠だが改変は間間に欲しい
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幕間エピソードが欲しい
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激しい改変はなくて大丈夫