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EDEN SPEAR:他愛のない日常と終わり
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エデン、某所。
「聞いた?ニヒリスターを捕獲したんだって」
「あの火竜を?どうやって?槍は使ってないんでしょう?」
量産型ニケ……アークのそれとは違い、エデン&スカイ監修の元装備が変更されている。ここにいる量産型達はアークガーディアン作戦を生存し、100年経っても地上奪還を志す精鋭達だ。その数70名。研究職員や非戦闘要員も含まれている。その中にはインヘルトと同じ、アークへの復讐心を燻ぶらせている者もいるが、ゴッデスという存在がいる以上、それを表立って言うことはしない。
最もゴッデスは全員出払い、ドロシーとピナはアークにいるのだが。
「アークでニヒリスターの襲撃があった後、ドロシー様とピナ、スカイ様が行ったからそれで倒したとか?」
「有り得そう~~~!んでも、エデンがあるからアークなんて助けに行かなくてもいいのに……」
「フィル、ダメでしょ。人類の為にゴッデスは今も戦ってるんだから。それに前の指揮官とカウンターズはよかったでしょ?」
「ミラの言う通りではあるんだけどねぇ。やっぱりヨハンやセシルを迎えに行った時とか、インヘルト設立の時だって酷かったじゃん」
ぶーぶー、と文句を垂れるフィルは紅茶を啜る。ニヒリスターを収容しているとはいえ、エデンは平和そのもの。ただ、ゴッデスが全員不在というのは中々落ち着かないものがある。
「ねぇフィル、ミラ。冷蔵庫代わりに開けてくれない?」
「パピヨンじゃん。監視生活には慣れた?」
「慣れる訳ないでしょ!何よ冷蔵庫にもロックが掛かってるって!おかしくない!?」
「そりゃあアークのスパイだし」
「カウンターズと何が違うっていうのよ!」
「うーん……スカイ様がパピヨンは一旦監視しておいてって言うから……ごめんね?で、何飲む?」
「一番高いの」
「はいはい。んーーーじゃあリンゴジュースかな」
「ありがと」
ミラがせっせと冷蔵庫を開け、瓶詰めされたリンゴジュースを渡す。それを見たフィルは溜息を漏らしながら。
「お前らさぁ……もっと緊張感とかないの?いやまぁ、スパイって言っても本当に危険ならスカイ様が予め排除したりなんだりするだろうし」
「んぐ……あー美味しっ。そうその、スカイの予知?だかなんだか知らないけど、それも気になるのよ。全部見通してるみたいで気持ち悪くって」
「うーん、あの人のは精度は高いけど万能じゃないしなぁ。それに見たい時に見れるものでもない!重要な情報を取りこぼすって自己嫌悪してたりするし」
「それに必要だったら看過するタイプだからね。ヨハンとセシルもだけど。だからアークに情報わざと提供してるし。それが回り回って役に立つって言われたら納得せざるを得ないよ」
「……ねぇ、なんで貴女達はその、スカイを信用してる訳?そりゃあ100年の付き合いとかあるんでしょうけど」
リンゴジュースを半分ほど飲んでパピヨンが尋ねる。相変わらずエデンの物は美味しいなと絆されながら。
「んーーー本当は私達もピナも、100年前に死んでたんだよ。スカイ様がいなかったらね」
「えっ……この70人が!?嘘でしょ!?」
「本当本当。アークガーディアン作戦は大変だったよ。いつ死ぬか分からないなーって思ってたけど、スカイ様は私達が危機の時には必ず駆けつけて助けてくれたんだ。それでまぁ、生きてアークに行ける!って思ったら行けなくて、絶望したけど、あの人達は心折れずに私達だけの場所を作ろう!って」
「正直。生きる意味とかよく分からないし、アークに復讐したかった。でもさ、ゴッデスが折れてないなら私達が折れるのは違くないか?って思ったし、ここでの生活も悪くはなかったから。んまぁ、復讐心こそあれど、アークに害されないならいいやって感じ」
「へぇ……そんなに凄いのね。で、今ゴッデスって言ったけど……その情報話していいの?」
「アークではゴッデスの情報消されてるんでしょ?それにさぁ、スカイ様の活躍見たら分かる人は分かるよ」
「あそこまで露出した活動してたら無理無理。詮索は絶対入る。でもゴッデスの証明なんか無理だろ?」
「……むぅ、確かに。貴女達が実際にアークガーディアン作戦に参加してた証拠とかない訳だし……そもそも情報貰っても帰れないんだったわ……」
「ならもういっそエデンにいなよ」
「アークより住み心地は絶対いい。それは保証する」
「えぇ……それは……確かにそうかもしれないけど……」
「そうそう」
「あ、そういえば貴女達の量産モデルって何なの?」
「フィルはI-DOLL・サン。私はI-DOLL・オーシャンだよ」
「うーん、見れば見るほど原型が分からないわね」
そこでアナウンスが鳴り響く。
『あー、エデン。こちらクローンスカイC。マスターの代わりにエデンに駐屯する事になったよ~~~、着陸許可求む』
「わぁ!クローンでもスカイ様だ!迎えに行こ!フィル!」
「痛っ!引っ張んなよ!分かったって!」
「……ふぅん、大変そうね」
ぐい、とパピヨンはリンゴジュースを飲み干した。
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「っはぁぁぁぁぁぁ……疲れた……駐屯地01からここまで何気に距離あるよう……」
「クローンスカイ様ー!初めまして!お疲れ様です!」
「ありがとう……。あれ、ヨハンとセシルは?」
「今はちょっと、ナユタと一緒にニヒリスターを尋問してると思います」
「ん、んー、なるほど。ナユタがいるんだ」
「ええ、ここにいますよ」
声のする方を見てスカイはビクッと飛び跳ねる。丁度ヨハン、セシル、ナユタが入ってきた。
「クローンの方か。オリジナルはどうした」
「クラウン王国で一悶着あってからクリスタル地帯に行ってるよ~~~。向こうにも僕はいるからエデンに来た。一応備えの為にってさ……とほほ」
「そうか。今はパイオニアのメンバーは全員不在だからな、助かる」
「おっと、酷くないですか?ここにもパイオニアはいるのですがねぇ?」
「……」
「ヨハン。幾らナユタが苦手だからと言って数に入れないのはどうかと思いますよ?」
「……すまない、仙人」
「いえいえ、構いませんよ」
居心地が悪そうにしているヨハン。明らかにナユタの事が苦手だというのが分かる。
「それでニヒリスターは?」
「取引を行う事にした。内容は……その顔だと把握済みか?」
「まぁ……ね。でも他の皆には伝えてないよ。流石に反対されるだろうってね」
「だろうな。その方がいい。全てを知る必要もないだろう」
「流石の慧眼ですねぇ、スカイ。貴女のその能力は一体どこから来るのやら。何度話してもはぐらかされるものですから気になって仕方がないのですよ」
「それはさぁ、キミもじゃない?ナユタの事はよく分かってないんだよね。だからお互い様って言う事でさ」
「まぁ、似た者同士な面もありますし、よいでしょう」
「ふぅ……」
この時点でスカイが有している記憶はサイドストーリーのEDEN SPEARの途中まで。本編はchapter40までの記憶を有している。オリジナルは現在指揮官らと共にマザーホエールの方にいるだろう。つまり、この後に起こる惨劇は知らないのである。
全てを知っていたらまた違った選択をしていたかもしれない。あるいは犠牲を看過して未来に繋げただろうか。
最も、どちらにせよ絶望には変わらない。絶望に似た最悪を取るか、絶望を取るかの2択でしかないのだから。この物語には希望は存在しない。明確な絶望と敗戦が待っているだけだ。
雨がエデンを覆う。それがリバーレリオの襲来を告げる物であるとは、誰も知らなかった。
それまで、束の間の平穏の話をしよう。
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「スカイ!どう?私達のコンビネーション!クローンとはいえスカイに勝っちゃった~!」
「素直に負けた。そもそも僕戦闘らしい戦闘は長らくしてないからねぇ……?」
「そうやって言い訳するんだ!だっさーい!オリジナルもそうなの〜?」
半ば強引に付き合わされたシュミレーション終わり、クローンスカイCは元気いっぱいなノアに対してやれやれと肩を竦めている。インヘルトとの勝負は彼女の敗北に終わった。
「ふふ、ごめんなさいねスカイ。ノアはオリジナルに相手して欲しかったのよ」
「そうね。オリジナルに一泡吹かせたいみたいなの。強くなったらしいじゃない?色々と」
「マスターの方が遥かに強いよ~~~エデンにいた時の倍以上じゃないかな。単機殲滅能力も上がってるし」
「オーバースペックって奴ぅ?でも私達の方が遥かに強いし~~~~!」
ノアがくすくすと笑う。それを見たイサベルとハランは微笑ましく見ている。
「当の本人はまだ来れそうにないの?……愛しいあの方とずっと一緒なんでしょう?」
「そんなんじゃないって!向こうは向こうで忙しいの!今は大体クリスタル地帯じゃないかな。別のヘレティックと戦ってると思う」
「へぇ、偽物ってヘレティックとかトラブルとかそういうのばっかだよね〜命がいくつあっても足りなさそ〜」
「そんなこと言わないの」
「でも、実際はそうでしょう?従者も大変ね。それに付き合ってる貴女達も」
「地上奪還の為だからね。アークは嫌いだけどさ、めっちゃくちゃ嫌いなんだけど。必要な事だから」
「……そこまで割り切れるのもある意味狂気ね。思考転換してる訳でもないのに」
「思考転換できないのも辛いよ。正気を保ったままなのも、ある意味狂気だし」
「ふぅん。それもそうね。……お茶にしましょうか」
「確か今日の当番はエリーね。アップルパイですって」
「アップルパイ!やった〜!!」
切り分けられたアップルパイとティーポットをテーブルに並べる。ノアはルンルンと音符が見えそうなくらいに喜んでいる。
「ピナのアップルパイも美味しいけど、エリーの焼くアップルパイも好きなんだよね〜」
「あら、この前までピナのアップルパイが良いって駄々こねてなかったかしら?」
「んぐ……それを言うならハランだってドロシーの紅茶の方がいいって言ってたじゃん!」
イサベルとのやり取りを見ていたハランがくすくすと笑う。
「彼女の淹れる紅茶は絶品だもの。淹れ方は教えて貰っているけど、ああはなれないわね」
「そうね。帰ってきたらまた淹れ方を教えてもらいましょう」
「あーあ、アークなんか行ってないで早く帰ってくればいいのに!」
「(やっぱり、色々と違うなぁ)」
そんなやり取りを見てクローンスカイは思う。本来のエデンはこんな和やかな空間ではなかった。自分達以外にテーブルに座るニケはいなかったし、賑やかでもない。ドロシーがインヘルトと深く関わる事もない。でも、今の方が好きだと思う。心地が良くて、暖かい。思わず笑みが溢れてしまう。
「え〜?何笑ってるの〜?気持ち悪〜い」
「皆のやり取りが微笑ましかったんだよ〜」
「ふぅん?いつものなのにね、変なの」
「おや、スカイではありませんか」
丁度そこにナユタがやってきた。彼女の手には同じくアップルパイが乗った皿がある。
「めっちゃ馴染んでる……」
「いやはや、噂には聞いておりましたが実に楽園ですねぇ。席をご一緒しても?」
「構わないわ」
「ふぅ。座れる場所がなかったので困っていたのですよ。礼を言います」
「輪に入れなかっただけでしょ」
「酷いですねぇ。輪を乱さなかったと言ってください。歓談している所を邪魔する趣味はありません。ですが目の前のアップルパイが冷めてしまう前に食べたかったのですよ」
一切れ食べてもぐもぐ、とナユタは咀嚼する。呑気に美味しいですねぇ。と感想を告げれば紅茶を啜る。
「しかし雨が降り始めてしまいましたねぇ。1週間は続いてますか?」
「みたいだね。いつ頃晴れるんだろう」
「そうね……セシルの予報ではもう少し先になるそうよ」
「雨きらーい。装備も濡れるし泥は跳ねるし嫌な事ばっかり」
「あら、私は嫌いじゃないわ。雨音は好きよ」
「スカイは?」
「僕も嫌いかなぁ。視界不良になるから戦いにくくて。いやほぼ実戦経験はないんだけど」
「ふむ。クローンのスカイは戦った事がないんですか?」
「あぁ……うん。元々研究と管理が役割だったから。レッドフードの治療の為に」
「ははぁ、なるほどなるほど。無事成功したようで何よりです」
「うへぇ……全部知ってるじゃん。やめてよね、覗き見。えっち」
ぶふ、とナユタが目を閉じたまま吹き出す。
「失礼……髪長にでもなりましたか?」
「いやでもそうじゃん。常に見てたんでしょ。あんな事やそんな事だったり」
「そういう趣味はありません」
「少年と2人きりでデートしてたのに?」
「それは別の私ですから」
「……どういうことかしらナユタ」
ゴゴゴ……とオーラを発するイサベル。旗色が悪くなったと感じたのかナユタは食器を片付けて。
「そういえばヨハンに呼ばれてるんでしたねぇ。この辺りで失礼しますよ」
「逃げた!」
「立派な逃げね」
「だっさ〜い」
「次会った時また話は聞かせてもらうわ」
「おお、怖い怖い」
そんなほのぼのとした、平和な時間も過ぎ去って行く。
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『緊急通信!エデン内の全ニケに告げます!戦闘準備をしてください!クイーンが降下してきます!』
その日、平和だった楽園は終わりを告げた。
「クイーン!?嘘でしょ!?」
「ゴッデスでも敵わなかったのに?……マジかよ」
「ゴッデスはどこ!?」
『はい、通信変わって。こちらクローンスカイ。オリジナルじゃなくてごめんねぇ。現在スノーホワイト、ラプンツェル、紅蓮がエデンに向かってる。その他クラウン王国からも援軍が向かってる。こっちの通信が切れたから他のメンバーも気付いていると思う。だから無理なく防衛戦をすればいい。それは皆の得意分野でしょ?今回は援軍もいるから大丈夫!ぶっちゃけクイーンの戦力も敵戦力も未知数だけど、最善は尽くそう。はい、ヨハン』
『これよりブリーフィングを行う。招集している時間があまりない為、全体通信にて行う。各員は5人で部隊を組み、防衛戦に当たる様に。量産型の指揮はクローンスカイが取る。各員の奮戦に期待する』
「うわぁ……この規模ってアークガーディアン以来じゃない?」
「今回ばかりは死ぬかもね」
「でもまぁ、ここまで生きてこれたのが奇跡みたいだし?何よりクイーンに一矢報いれるかもしれないって最高じゃん!」
「頑張ろう!何人生き残るか分からないけど!」
「エデンを守ろう!私達の居場所を!」
エデンの士気は高い。その様子をナユタは一瞥し、外に出た。
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「……レッドフード、悪いけど全速力でエデンに向かう」
「それよりリバーレリオを追った方がいいんじゃないのか?男前も連れ去られたし」
「同意よ」
ホエリーの上でスカイ、レッドフード、ラピが話している。
「いや、セイレーンの液体金属の膜が破られた。クイーンが降下してくる」
「……何だって?」
「冗談でしょう?」
「だったら良いんだけどね、こればかりは事実だ。今すぐエデンに向かう。ラピ達はこのまま少年を追ってくれ」
「……分かったわ。……2人とも、どうか無事で」
「大丈夫だって。あたしがいるんだ。任せな!」
スカイは変形し、その上にレッドフードが乗る。高速で飛翔して行くのをラピは見送った。
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「エデンに……クイーンが?」
「スカイ様からの情報です。実際エデンとの通信は途絶しています」
「……なるほど。アークでの行動が一区切り着いたのは幸いでしたね。今すぐ向かいましょう、ピナ」
「はい、勿論です」
「全速で向かいます。間に合わせますよ」
ピナとドロシーは部屋を出た。そのまま地上エレベーターを使ってアークからエデンへと向かうのであった。
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「ほう?エデンにクイーンが?これはまた穏やかではないね」
「事実だ。スカイから連絡を受けたドロシーからの連絡だ。エデンとの通信も繋がらない」
「敵の規模は最大級でしょう。ヘレティックもいるかもしれません」
「大丈夫だ。私達は負けない」
「大層な自信だが、事実でもある。私達が負けだと思ってしまったら、それは人類の敗北でもあるからね」
「行きましょう」
「ああ」
スノーホワイト、紅蓮、ラプンツェルの3人もまた、エデンへと向かっていた。
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「果たして……時期尚早か、天の時か。できることなら、もう少し磐石の態勢で挑みたかったところ……いえ、今の戦力ではこれ以上を望むのは欲深いというものですね。第2世代の助力も欲しかった所……致し方ない」
「しかし、スカイの目は侮れないものがあるねぇ。これを予期して最初から動いていたのだろうけど。全てが視える訳でもない。もしや、彼女からしてもこのタイミングではなかったのだろうねぇ」
「私がこれから為す事も君の目には視えているのかい?……まぁ、分からぬものだね。彼女が自分の所為だと思い詰めなければ良いのだけれど」
「おおよそ世間の万事よろしく、ままならぬものだねぇ」
「ナユタ、何ブツブツ言ってるの」
「おや、スカイ。作戦会議はよろしいので?」
「ナユタが外に出てたのを見たから」
「……ふむ。今回、貴女はどこまで視えていますか?」
「な〜んにも視えてないよ。マスターが今向かってるから、その間のスリープモードで分かるかもしれない。でも、それじゃ間に合わない。僕も無理だ。何が起こるか分からない。誰が死ぬかもね。でも、現状出せる戦力は全部呼んだ」
「その上で勝てなかったら?」
「次勝つ為にできることをするよ」
「概ね、同意です。オリジナルの貴女と話したい事もありますからねぇ。生きて帰らないといけません」
「うん……何よりここにはみんなの思い出が詰まってるから。守らなくちゃ」
「では……お互い最善を尽くしましょう」
「よし、行こうか」
「いざや、迎えん」
ナユタの輪が回転を始めた。しばらくして、ナユタの身体から金色の光の柱が空高く立ち上がった。
EDEN SPEAR:END
本編準拠はカット。その代わりインヘルト組とのお茶会エピソードを入れてみました。ここのエデンは何倍も穏やかで楽しい場所なんだろうなぁと思いつつ、胸が苦しいですね……。
小説の方向性(セリフや描写など)
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積極的に改変が欲しい
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原作準拠で大丈夫
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原作準拠だが改変は間間に欲しい
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幕間エピソードが欲しい
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激しい改変はなくて大丈夫