時が流れて
レッドフードが居なくなってから。正確には人類がアークへの移住を決定したのが2ヶ月前。秘密裏が当然の如くラプチャーに見つかり、アークの入口を攻撃されている。戦況は芳しくない。それでも、やれる事をやるだけだ。
『ブルースカイ、ラプチャーを発見。撃滅するね』
『了解した。何かあればすぐ逃げるように』
量産型ニケの損耗を減らす為、ゴッデス部隊の疲労を軽減する為に僕は僕を単独運用で行使する事にした。正確には量産型ニケと合同で、か。ゴッデス部隊には大きな戦いの為に控えておいて欲しいから、こうやって雑魚との戦いは僕の出番だ。
「さ、量産型は下がってて。君達はうち漏らした敵を倒せばいい。出来るよね?」
「は、はい!!蒼き翼!ブルースカイ!」
蒼き翼、なんて、人類は地下に行って青空を見る事なんてないというのに。皮肉めいた名前だな、と思いながらビットを操り敵陣を撹乱、いや、虐殺する。装甲を引き裂いて、ビームで焼いて、潰す。大型のラプチャーはソードビットで武装を壊し、関節を破壊した後にビームを叩き込んで沈黙させる。傷付いた仲間が入ればシールドビットとヒールドローンを派遣させて傷を癒しながら後退させる。
ヒールドローンはシンデレラとの戦闘の後に開発できた代物。ラプンツェルの技術を元にしたコピー品だが、応急処置には持ってこいの出来になった。これで量産型ニケの損耗率もかなり減った。……僕が戦線に出てる内は、だが。
『スカイ!ウルトラが来る!狙いは――』
『僕だよね、知ってる』
そんなニケをラプチャーが狙わない訳がない。自分達の物とする為に侵食型のラプチャーを派遣してくるようになった。
『量産型は全員下がって、侵食されたら敵わない。割れない鏡越しに狂う自分の姿を見るのは嫌でしょ?なんてね』
そういいながら遥か上空に飛翔。ラプチャーが豆粒だ。
「マルチロックオンシステム起動。狙いはウルトラ、塵一つ残らず撃滅してよ」
上空からビームの雨が降り注ぐ。シンデレラに対抗する為に改良を施した。勿論数では敵わないが、威力は格段に上昇した。
ウルトラの装甲を貫き、コアを破壊する。しかし終わらない。ウルトラの装甲が1つと残らないまでに徹底的に破壊する。侵食型はしぶとい、これはいつだってそうだ。お前達はいつだって。
最後にビームを収束させながら、ラプチャーの群れに向けて放つ。周囲の隙はシールドビットとソードビットを残して、狙いから逸れた敵は余りのソードビットで破壊する。
『センサービット展開……付近にラプチャーの影なし。一旦は大丈夫そう。このままビットを防衛ラインに配置しておくね』
『了解した。帰還して休むように』
『了解。地上部隊の様子を見て帰還するよ』
『お前は……』
指揮官に呆れられながらも地面に降り立つ。量産型ニケの様子を見ないと。
「あ、ブルースカイさん!ありがとうございました!」
「もう終わりかと思ったのに、いつもありがとうございます!流石ゴッデス……!!」
「東部での防衛戦覚えてますか?あそこで私は助けられて……!」
やいやい、ガヤガヤ、集まってくる。けど、悪くない。完全記憶能力も、こういう、良い記憶は大事だ。辛く苦しい時に楽しい記憶は心を支えてくれる。
「損耗率は……そう、想定より抑えられたみたいでまだ良かった。チームワークも良くなってるし火力を集中させれば問題ないと思う。後、角とかは気をつけて、待ち伏せされてるかもしれないからグレネードとか投げるように。……あぁ、君は迂闊だった子だね。良かった、生きててくれて嬉しいよ。それじゃあね、次も生きて会おう」
仲間と会話をしながら手を振り、機体を可変させて上昇。帰投する。
「あ〜〜〜疲れた。糖分……糖分……」
ポケットをまさぐるけど補給用のラムネがない。装甲を収納してこれから自室に向かわないと行けないの面倒臭いなぁ、なんて思ってたらぽい、とラムネが放り投げられる。
「お疲れ様、よくやってくれた。ラムネだ」
「ありがとう指揮官……もっと頂戴……」
もぐもぐ、足りない。ビットの操る数が増えたから補給品が足りないのだ。自分で調合するからマシとはいえ、追い付いていない感がある。
「残りは自分の部屋に取りに行くんだな。その後にブリーフィングを行う」
「ん、僕以外のゴッデスは休息取れてる?」
「……そうだな、少なくとも戦闘面での疲弊はない。だが……むぅ……」
指揮官は隠すのが下手だ。というか分かりやすい。レッドフードの抜けた穴、そしてスノーホワイトの一件だろう。ムードメーカーだった彼女が居なくなってから飛空挺は寂しさを感じさせる。
「ちゃんと休息取れてるならいいよ。……レッドフードに関してはその内戻ってくるよ、大丈夫、あの人そんなダサい別れ方しないでしょ」
「ははっ、見てきたような物言いだな。でも"知ってる"んだったか」
「……人を未来予知みたいに言わないで欲しい〜〜それじゃ、また後で」
ヘロヘロになりながら別れて、自室に倒れ込む。補給用のラムネを何個か食べれば頭がスッキリする。んーーー!と大きく背伸びをしながらシステムのアップデートと補給品の調合を行う。調合って言っても必要な全部の栄養を固めて、ブドウ糖をめちゃくちゃ入れて甘さで抑えた擬似パーフェクトみたいな物だけど。
「ぶっちゃけここでの損耗率がOVERZONEに関わる……気はするんだよなぁ。戦力は残ってた方がいいし。でもその後をどうするか、だよな」
最重要なのはドロシーのメンタルケア。ピナの生存。スノーホワイトは……どうしようもない、というのが事実。紅蓮も同様に。僕はOVERZONEでドロシーを支えて、ピナを生存させて、できるなら量産型も何体か生き残らせたい。…………問題なのはその後、裏切られた後の不和。量産型を生き残らせたら間違いなく爆発する。けど、ドロシーにはエデンを作ってもらう必要がある。ピナを生かしたまま。そしてゴッデスのリーダーとして。
いや無理だが?無理だろ。助けてレッドフードッ!!でもお前がいないとラピが……問題。確かコアが2つあって、入れ替わった後も残滓が残ってる…………ん、てことは。ボディを用意して、そこにレッドフードの残留思念を抽出する?できるのか?そんな事が。それができたら、意志を受け継いでラピは覚醒したままになる。そしてゴッデスも恐らく、再会できる筈だ。
「…………レッドフードの素体はフェアリーテールモデル第2世代。ぶっちゃけ僕はフェアリーテールモデルじゃないんだけど、自分のボディのコピーは2.3体作れてるからな……一体を完全空白として用意しておくか。何かあってもいいように」
設計図は頭の中。パーツは自作。科学技術者舐めんな。誰にも邪魔はさせないね。侵食されたら溜まったもんじゃない。……リリスのコピーだけは絶対に作れないが。
「恨まれるかなぁ」
なんて言いながら部屋を後にする。ラプチャーはデータ侵食もしてくる可能性がある、というかほぼしてくる。でも残念。このデータを閲覧したいなら画面の向こうの知識を持ってこないと行けない。この世界の知識で僕の研究は止められないし、邪魔はさせない。
ーーーー
数日後、ゴッデス部隊ブリーフィングルーム
「大量のラプチャー部隊がアークの入口に進撃中という情報です。現在の速度なら、5日後には入口に到達されます」
「迎撃する必要があるな。要注意対象は?」
「ありません。旧型モデルのみの編成です。大型ラプチャーも2機しかいません」
「昨日の戦いで随分数を減らしたし、その前は全滅させたからねぇ」
リリーバイスと指揮官の発言にスカイがくぁ、とあくびをしながら割って入る。レッドフードが抜け、戦力的に厳しい状況をブルースカイが単独で埋めているのだ。
「量産型の皆さんの損耗率もかなり抑えられていると聞いています。ありがとうございます、ブルースカイ」
「とはいえ、無理のし過ぎはよくありませんよ。疲労の蓄積は身体を壊します」
「どういたしまして、ラプンツェルにドロシー。元々こういう運用方法は慣れてるから、大型ラプチャーと侵食型を優先に破壊してるから平気な筈。昨日みたいな大きな戦いの時は後方支援と背後からの奇襲で敵戦力を削ってるから頻度は減ってる……よね?」
「……そうだな。公的な記録によれば200だったか?」
「そうですね。その内ブルースカイが単独で担当したのは50回以上。皆は休息を取りながらローテーションはできてる……けど」
リリスがタブレットを見つつ、心配そうな表情を浮かべる。
「あまりにもブルースカイに負担を強いてるのう。大丈夫なのかい?それで侵食されてしまっては困るのだがね」
攻防備えたビットに回復役、索敵役も彼女はこなしているのが現状。その上敵の進行方向に爆薬を仕込んだり不定期に空爆まで行っているのだ。ブルースカイ以外は休息も取れてはいるが、肝心の彼女が疲れきっているのが現状だ。
「へーきへーき、侵食された時の為にクローンを用意………あ」
「……なんだと?」
指揮官の視線が刺さる。いや、全員だろう。当の本人はやっちゃった〜という表情である。
「元々用意はしてたんだ。身体がいくつあっても足りないから、資材がある内にコツコツとね。予備パーツだったりで組み上げてるから多少性能は落ちるかもだけど、問題は無い筈。だから侵食されたら撃ち抜いてくれればOK」
「……リリス」
「はい、指揮官。スカイ、貴女は今回の作戦に連れて行きません。ゆっくり休みなさい。かなり頑張っているけど、それで本当に何かあったら大変だもの」
ポン、と頭を撫でられる。不服そうにしつつ、眠たそうにうつらうつらとしている。スカイの稼働時間は48時間を超えている。
「じゃあ、スリープモードに入ります。ビットは自立支援が可能になったので、援護は問題ないと……思い……ます……」
すぅ、すぅ、と寝息を立てる。そんな彼女を皆が皆心配そうな面持ちで見ている。
「確かに休息は取れるが、これは健全とは言い難いだろう?」
「……ですが、彼女が望んだ事でもあります。実際士気も損耗率も下がってはいません」
「それは彼女がいるからだ。何かあって抜けられたら極端に下がってしまうだろう?」
「それは……そう、ですが……」
言い争い、ではなく心配の掛け合い。実際ゴッデス部隊の面々、量産型の面々は原作よりも損耗率、疲弊が低い。ブルースカイの運用によって休息を取れているのが事実。当の本人もそれでいいと思っているし、この時間稼ぎが役に立っていると感じている。
「それで、指揮官。作戦行動は?」
「1時間後だ。ブルースカイは置いて行く。少しでも休ませたい。旧型しかいないのなら尚更……向こうにも我々が出てくるのは新型ばかりではないと知らしめないとな」
「この前の戦闘では獅子奮迅の大活躍をされてしまったからな。青く輝くとは思いもよらなかった」
「システムOVERLOADですね。機体の能力を限界まで引き出しながら戦う切り札と仰ってました。しかし、無理をさせ過ぎなのでは……と」
「仕方あるまい。奴らはアークの入口を塞ごうと必死だ。だからこそ人類の全戦力はアークの入口に投入されている。絶対に崩されてはならないんだ」
「スカイを含め、無理をさせている事は分かっている。だが、私達が動かなければ人類はここで終わってしまうかもしれない」
「他の部隊も全力で戦っている。これもスカイがスノーホワイトと共に現地改装を行っているが力不足だ。私達が動くしかないんだ」
「勝利の女神、ゴッデス部隊が」
指揮官が締め括る。ドロシーがラプンツェルとスノーホワイトを呼びに行く為に退出する。
「研究室に私が運ぼう」
「あ、ううん。私が運んでおくね」
紅蓮を遮り、リリーバイスがスカイをお姫様抱っこする。そうして退出して行く。
研究室。あまり使われた形跡のないベッドにスカイを寝かせながら、リリスは呟く。
「……起きてるんでしょ?スカイ」
「バレた?流石に狸寝入りは誤魔化せやしないか」
呆れたようにリリスは溜息を漏らす。そしてデコピンとは思えない威力のデコピンを放つ。
「〜〜〜ッ!!!」
思わず蹲るスカイ。
「それで、スカイはどこまで視えてるの?」
真面目な顔。冗談めかしではない事は分かっていた。どうしようか、と思いつつも言うしかないかと諦める。
「全部。リリスはこの後指揮官と共に呼び出されるけど帰ってこない。……何でかは分からないけどリリスは死ぬ。原因はボディの限界かも。短期決戦用だから尚更……なんとかできないかなって思ったんだけど、無理だね。流石にリリスのコピーは作れなかった」
「……それで?」
「作れたのは自分のコピーが2体。空のボディが1体。これは……未来への投資。賭けに近い。だから何があってもコレは保管しておかないとダメなんだ」
「そっかぁ。前にも聞いたけどやっぱり私死んじゃうんだ。ちょっと……ううん、かなり残念かも。みんな落ち込むでしょう?」
「落ち込む所じゃないよ!スノーホワイトは思考転換起こして合理的になるし、リーダーになったドロシーはメンタル終わりだし、ラプンツェルはスケベになりつつ死者に囚われるし……紅蓮は飲んだくれになるし……」
「あははっ、何それ、見てみたーい」
「……何とかしたいんだけどね、こればかりはどうにもできない。知ってる事しかできないってのも辛いもんだよ。あー、だからさ、こう、未来のみんなを励ます動画を撮ってよ」
「今?いいけど……間に合う、かな」
「うん。多分、辛い記憶になるけど役に立つ。支えになる。だからお願い。できれば100年後のみんなに向けても」
「100年も!?……そっかぁ、そんなに戦うんだね、大変だ」
心中は伺い知れず。でもあの遺言だけがいい物ではないだろう。これは後々、レッドフードにも頼む事になるけどね。
「じゃあ、撮るね」
「うん」
そう言って録画が始まった。
ーーーー
ゴッデス部隊が戦闘に出ている間。飛行艇の研究室でスカイは補給食品の改良を続けていた。
「戦闘面以外だとメンタルと食事が思考転換に直結する。クッキー味、和菓子味、1個で満腹になる味……色々用意はできてる。量産体制も機材があればよし、電源は太陽光。機材はバラしてケースにしまう。研究室はホログラム化してデータ収納。後は……クローン達は冷凍室に保存。OVERZONEの時なら地下室がいいかな。脳の老化による記憶に関しては定期的なデータ保存で保管しておく事にして……我ながら多機能過ぎるな。扱う前に僕が死ぬんじゃないのかコレ」
もぐもぐとクッキー味の固形物を口に放り込む。アークではパーフェクトと呼ばれる代物だが自分が作った方が美味い。それにドロシーはいい思い入れはしないだろうし。これがあれば缶詰探しで時間を割いたりしなくてもフレーバーで楽しめる。溶かしてもそのまま飲めるし、なんとかなる。後はこれを毎日作って備蓄すればOVERZONEで食料不足になる事もない。
「今できることはしてもらった。リリスからもメッセージをもらった。うん、寝よう。シンデレラが出た時に役立たずじゃ申し訳が立たない」
そうやって今度こそスカイはスリープモードに入るのだった。
ーーーー
誇り高き思い出
「状況終了。ラプチャーは全滅しました」
「ご苦労だった。すぐに戻ろう」
「前回よりも数が少なかったか。そして、ヤツは出なかったか」
「シンデレラの事ですか?」
「ああ。早く雪辱を果たしたくて体がウズウズしているよ」
「勝つ自信があるのですか?スカイですら敵わなかったというのに」
「さぁね。それでも、全力でぶつかればどうにかなるだろう」
「シンデレラって言葉はもう禁止。正式なコードネームがついたの。「アナキオール」だって」
「…アナキオール」
「今はどこかに消えたのかい?」
「まさか、防衛戦を中心に作戦を実行してるから会えないだけでアナキオールの「活躍」は大きな話題ね」
「出現した場所は全部焦土化。まともに抵抗もできないらしいの。それから必ず1人、人間だろうとニケだろうと、生かしておくんだって。まるで自分の実績をみんなに知らせろとでも言わんばかりに」
「……シンデレラはどうしてこんなことに?フェアリーテールモデルの第2世代として、人類の味方になって戦うはずだったのに」
「前にエリシオンの研究所で見たでしょ?ラプチャーとニケが融合してたあれ。あれが成功してたってこと。スカイはちょっと違う分析をしていたけれど」
「フェアリーテールの第2世代は一度も実戦投入されていない。作成者はエイブと呼ばれるニケで、ラプチャーとの交戦記録もなし。お互い科学者だったから知り合いではあるそうよ」
「それなのに侵食されたって事は……テスト段階で何かがあったって事」
「……つまり?」
「スカイはこう言ってたの「人類に、アークに裏切り者がいる」って。多分戦争は終わらないし、長く続くだろうともね」
「……」
一行に沈黙が流れる。少しして、紅蓮が「このまま放っておくのかい?」と告げる。
答えは当然ノー。作戦はリリスとアナキオールを1対1の状況を作り出して戦わせる。少し紅蓮が反発したものの、全員戻ることとなった。
リリーバイスと指揮官を除いた全員が背を向けて歩き出した。
彼女はその後ろ姿を見ている。指揮官、と呟くと彼はリリーバイスの肩を支えた。
「ごめんなさい。1分だけこうさせてください。すごく重いでしょう?」
「羽根のようだ」
「あら、本当ですか?」
「鋼鉄製の羽根だがな」
ぎゅっ、とリリーバイスが抱き着く。ポツリ、と「そろそろ限界みたいです」と呟く。
「いや、大丈夫だ」
「私もそう願っていますが。最近、やけに多いので。……スカイにも見越されていました」
「……会った時もそうだが、彼女はどこを見ているんだろうな」
「さぁ……果てしなく遠くを視ているのは確かです。100年後、なんて言ってました。みんなにメッセージをお願いしますって言われたんですよ?」
「縁起でもない。と言いたい」
「私もです。あの子達が戦えるようになるまで見届けるつもりです。……でも、保険は多い方がいいって、心の支えになる為にって」
「私にはないのか?」
「さぁ、どうでしょう。秘密です」
「……」
「もうっ、そんな顔しないでください。行きましょう?」
ーーーー
スリープモードに入ってから何日経っただろうか。思ったより疲弊していたのだろう。目覚めると飛行艇内は慌ただしかった。慌ててブリーフィングルームに顔を出す。
「ブルースカイ、遅れました……」
「上層部からの緊急の呼び出し、ですか?」
入った瞬間に悟った。とうとうこの時が来たのか、と。
リリスと指揮官だけ、そして帰ってこない。いくら何でもタイミングが悪過ぎる、最悪だ。スキャンの結果からして3日程度は襲撃がなくなるというシュミレーションが出ているがそんな事は全くもってない。これが、今生の別れになるかもしれない。
「すぐ戻ってくるから、あんまり心配しないで」
「えっと……ドロシー」
「はい?」
「私と指揮官がいない間は、あなたがリーダーになって」
だろうな、と思う。ああ、嫌だ。
「それでね、ブルースカイ」
「ん、何?」
「貴女がサブリーダーになって、ドロシーと皆を支えてあげて。やっぱり心配だから」
「……了解。紅蓮も僕の言う事は聞けるでしょ」
「何だと?」
「だって飛べないじゃん」
「……………」
ぐぅの音も出ない、と言った様子だ。
「ドロシーは何かあったら僕を頼って、人に頼り慣れてないでしょ?だから、頼って」
「え、あ、はい……?」
まさか、自分がサブリーダーか。……そう思うとリリスに打ち明けて良かったのかと思う。彼女達の背中を見送る。二度と帰ってこないと理解しているのは自分だけ。それが、凄く悲しい。
「…少し怖いですね」
「大きな問題はないはずだ。弱音を吐きたくなる気持ちは分かるがな」
「……レッドフードの気持ちも、ブルースカイの気持ちも分かる気がします。見えてるのに何もできない、なんて残酷なんでしょうか」
そう会話を交わしながら2人は歩みを進めて行く。そんな時。スカイが追ってきた。
「スカイ?どうしたんだ?」
「僕は未来を知ってる。でも無力で何にもできない。でも、これだけは言わせて」
「後は、任せて」
ーーーー
レッドフードは過去を回想していた。仲間と出会った時の事、最後に出会ったのはブルースカイ。ヒーロー的な意味で2号だ!!なんて盛り上がったっけ。
「ハカセ、何してんだ?」
「未来への投資。後々必要になるからさ」
アイツは暇さえあれば研究に没頭していた。なんでも見たもの全てを記憶できる能力を持っているとか。アイツ1人だけ、今じゃなく未来を見ていた気がする。
「レッドフード、過去に生きるのもいいよ。古いものほどいいのも否定しない。でも、未来を諦めるな。未来で戦っている仲間もいる。……だから何があっても諦めないで、例えそれが100年先だろうと」
「100年……なっげぇなおい。ハカセはそこまで見てて偉いな〜大人みてぇ」
「大人だよ。でも、大人になってもできない事の方が多い。……ねぇ、レッドフード、約束してくれない?」
「あ?なんだよ」
「君がもし、未来で生きた時、過去で死んだままじゃなく、未来でちゃんと生きれる可能性があるなら、それに賭けて欲しい」
「……?わかっ……た?」
よく分かんなかったけど、あの時のハカセの目はマジだった。
更に回想する。
「行くな……とは、言わない…けど……ね、……別れ方が選べるんだから、後悔しないように……すれば、いい、でしょ……」
これすら見越してたのか、と思う。確かに後悔ばかりだ。
レッドフードは自分の頭を地面に打ち付けた。
「このバカ!マヌケ!どうして!どうして…っ!あんなカッコ悪い別れ方しやがって!もっとカッコよく別れろよ!」
「なんであんなカッコつかない…!いい思い出にするどころか…あいつらの…!」
「あいつらの顔に…泥を塗っちまったじゃねえか…!!」
「……帰ろう……帰るんだ……!あたしは…!まだ…!あいつらに…!」
「ちゃんとアイサツも…!できてねえんだ…!」
「それに…あたしは!」
レッドフードはその場から立ち上がった。
「あいつらにとって!誇らしい仲間でありたい!バカみたいにダサく別れた仲間じゃなくて!最高に素敵な仲間でありたいんだ!」
ーーーー
赤い軌跡
ラプチャーが4つに分かれた部隊で進撃してきた。僕は上空から迎撃しつつ、ゴッデス部隊の援護と補給部隊、量産型ニケの援護をこなしている。
「フルバーストッ!!」
地平線を覆い尽くすラプチャーを消し飛ばしてもまた覆い尽くされる。キリがない。
『補給部隊は援護するからゴッデス部隊に補給を!それ以外はトラップを使って後退して殲滅!』
慣れていないドロシーの代わりにあちらこちらに指示を飛ばす。
『ドロシー!デカイのは僕が引き付ける。その間に補給を!早く!』
『ッ……分かりました!皆さん、補給を急いで!』
「こっちはストームブリンガー3機かぁ、多いなぁ」
通信を切断しながら弾幕を避ける。手元に残るのはヒールドローン1つ、ビット各種5つ、サーベルとライフルのみ。
「いや、充分か」
今まで距離を取っていたが、スラスターを吹かして急接近。ラプチャーは近接戦闘に特化していない。その隙をついた物。足先からサーベルを展開して羽根を切り払い、頭部を抉ってからコアに突き刺す。そのまま遠心力で盾にしながら2機目のストームブリンガーに叩き付ける。
「こっちも学習してるんだよ!くらいな!」
全方向からのビーム砲撃、ソードビットで羽根をもぎながら地面に広がるラプチャー部隊に向けて落とす。
「そんでもって、最後ッ!!」
マルチロックオンシステムを起動。相手の弱点目掛けて一斉掃射。更にサーベルで切り払い、コアを貫いてコイツも地面に叩き落とす。
『ストームブリンガー撃破……他の部隊の援護に回る!!』
戦線のあちこちを駆け巡りながら3時間以上が経過。エネルギー量は芳しくない。ヒールドローン1機の回復量だと消費に追い付かない。
「残りは――ッ!」
センサービットに反応。アナキオール、シンデレラだ。ゴッデス部隊に倒される為にやってきた堕ちた英雄。このままだと量産型部隊とぶつかる……なら。
『量産型は下がれ!勝てない!僕がやる!!』
全ビットを集めながらの飽和攻撃。それでもガラスの靴にいとも容易く弾かれる。
「僕はゴッデスじゃないからってさぁ!」
両脚のサーベルを展開、ビームライフルを放ちながら接近。ビームの雨が降り注いでくるが、上昇して躱す。アナキオールより下にいたら被害が広がる。常に上を取らなきゃいけない。
「僕はキミに勝てない!所詮贋作だからねぇ!でも、時間稼ぎぐらいはするさ……!!」
ガキン、ガキン、と攻撃が弾かれる。まるで効いていない。アナキオールは薄らと微笑みながらビーム攻撃をしてくるだけ。
「舐められた物だね……」
エネルギーがレッドラインに到達。もう少しで稼働限界に達する。
早く、早く来い、遅いぞレッドフードッ……!!
その時、遠くから銃声と爆音が響いた。
遠くからでも分かる。赤い軌跡だ。
「ははっ、やっと主役が来たようだ。でも、まだ遠い。ゴッデス部隊は補給中なのが通信越しに伝わってくる」
「はぁ……王子様って柄でもないんだけれどね。1曲踊ってもらおうか、シンデレラ」
「……?」
「システムOVERLOAD、起動」
ドクン、とコアが脈打つ。青く光り輝く、鮮明に景色が見える。身体が軽い。一時的にエネルギーが飛躍し、青い軌跡が奔る。
「あの時は力及ばなかったけど、今なら時間は稼げる……!!」
アナキオールの腕輪が輝き、ビームが放たれた。それが盾に当たり、数十本の筋となり反射される。光に身体が貫かれながらも接近する。
「ゴッデスの端くれとして、贋作だとしても、盾の1枚は……貰って行く!!」
ザン、とすれ違いざまに盾を切り落とした。けれど、その瞬間、ビームによって叩き落とされる。
「ブルースカイッ!」
ドロシーの声が聞こえる。動きたい、けど稼働限界だ。システムがオーバーヒートしてる所為でまともに動けない。
「後は頼むよ、勝利の女神」
そう、瞳を閉じた。
ーーーー
目を開ければ飛行艇の中だった。
「!!気づきましたか?」
「ラプンツェル、ありがとう。レッドフードは……?」
「よ、調子はどうだ?ハカセ」
元気そうなレッドフードが立っていた。
「はぁ、最悪だよ。全身ボロボロ、結局贋作は勝てないってね……そっちは?」
「仲良くやる事にしたんだ」
「スノーホワイトとは?別れのアイサツは済ませたの?」
「ああ、後はハカセだけ」
見ればリリスと指揮官以外全員揃っていた。スノーホワイトとの別れも済ませたのだろう。
「んじゃ、研究室に来て欲しい」
「……ん?まぁ、いいけど」
ぐったりと重たい身体を動かして研究室に行く。
ドサッと椅子に座りながらふぅ……と息を吐く。
「前に言った事、覚えてる?」
「……どれの事だ?」
きょとん、とされる。まあ覚えてないよな。
『次、もし、何らかの形でもいいから侵食を克服していた場合、ゴッデスの面々が生き残ってたら会え。多分その時は大変になってるだろうから』
「……今回会っただろ?」
「侵食を克服してない。だから今じゃないんだ。別れの挨拶を済ませても、また出会いがある」
「どういうことだよ、スカイ。侵食は治らないんだろ?」
「キミはちょっと特殊なの。その時が来たら分かるさ。……具体的にはリリスが死ぬ、指揮官は行方不明。ドロシーが任を継いで、それでも結局ゴッデス部隊は散り散りになる。その期間は凡そ100年間」
「おい、縁起でもない事言ってんじゃ……まて、リリスと指揮官がいないのって、じゃあ……!!」
怒りから一転、ハッとしたように気が付く。
「そういうことかもね。でもキミは故郷に帰れ。そのまま、真っ直ぐ。僕が伝えるのはそれからの事だ。単刀直入に、ビデオメッセージを撮って欲しい。それぞれに、心の支えとなるように」
「特にドロシーは……深い傷を負うから、それで、戻れない所まで。ケアはするけどね、いつでも仲間の声は聞き返せた方がいいでしょ?」
「まぁ、それは確かにそうだけどさ」
「その後はさすらった仲間に向けて。普段の感じでいい、昔話でもなんでもいい。思い出になるように、お願い」
「そういう事なら分かったよ。じゃ、撮るぜ。……こういうのクソ恥ずかしいんだけどなぁ」
「……そういえばレッドフードの故郷ってどこだっけ?」
「ん、あぁ、それはな――」
布石を整える。今できる事をする。ビデオメッセージを撮った後、選別のカセットテープを渡した。
「次会った時、過去で死んだままじゃなく、お願いだから未来に生きてくれ」
「……そう言われたんじゃな、説得されちまった。でもま、生きてたらそうするさ。約束だ」
「うん、ありがとうレッドフード。元気でね」
そう言って僕らは別れのアイサツをした。
みんなで見送った時、彼女は人生で1番満足したというような微笑みを浮かべていた。
ああ、故郷は遠い所
青い空が眩しい場所
甘いパン屋の香りが漂い
友の笑い声が響く場所
強い風が吹いている
我が友に教えて
この魂がまた
故郷の空に戻るのだと
白い雲が見える
我が友に伝えて
この体があなたと同じように
故郷の土に埋められるのだと
ーーーー
赤と赤
レッドフードは民家の中で目覚めた。
「ああ、よく寝た。久しぶりにぐっすり眠ったなぁ。……あと3時間ぐらい歩けば着くか?」
「途中で倒れたりしなきゃいいが」
レッドフードは辺りを見回した。そして、何かがおかしい事に気づいた。
「…ここ、こんなにボロボロだったか?」
「まあ、ヘロヘロでよく見ずに入ったからな」
レッドフードは立ち上がった。
大量のホコリが舞い散った。
「…こんな酷い所でよく寝てたな。んじゃ、行くか、相棒?」
カチカチッ。カセットプレーヤーは動かなかった。
「…どうしたんだ?はぁ、また故障か?」
そう言いながら外に出る。日差しで目が眩んだ。
「……何だ?何か変だな」
「……外の景色って、…こんなだった…か?」
全てに違和感を覚える。侵食の状態にも。
思い出すのはセンセ、ブルースカイの言葉。
『次、もし、何らかの形でもいいから侵食を克服していた場合、ゴッデスの面々が生き残ってたら会え。多分その時は大変になってるだろうから』
その時、銃声が鳴った。
ウルブズベインは錆びていて、戦闘で役には立たなかったが勝ったのは量産型のニケだった。
「今、何年か分かるか?」
量産型ニケが不思議そうな顔で携帯端末の画面を見せた。
レッドフードはしばらくの間、画面に表示された数字を見つめていた。
「……はぁ。こういう事かよ、スカイ。30年だと……?」
「ちょっと話さないか?お前名前は?」
「量産型ニケ…RR-15436?これが名前だって?」
量産型ニケは頷いた。けれどレッドフードはけげんな顔をする。
「こんなのが名前のわけないだろ」
「量産型に、名前はありません」
「ウソつくなよ。それでもなんか、本名があるんだろ?あたしはレッドフード」
「それは実名ですか?」
「まあ……そうだな」
「お前の名前は?」
「……ラピ」
こうして、赤と赤は無事に邂逅を果たした。
近くの瓦礫の隙間、光学迷彩の施されたセンサービットがその光景を見つめる。
どこかの地下研究施設。ラプチャーにも気付かれない秘匿された施設。白衣を纏い、電子タバコをふかしながらその光景を見ている者がいた。彼女はその光景に安堵の息を漏らす。
「長かった。第1段階はクリア。後は……進むだけだね」
最奥の扉、開くとそこには誰かの素体があった。まだ製作途中のそれは、ニケのボディだった。
「早くコレも、施設も完全に完成させないとなぁ。あーー、やる事いっぱいだよ本当に。次の会合までスリープモードに入っていいかなぁ」
なんてぶつくさ言いながら、彼女は1人で作業を進めている。
RED ASH END
小説の方向性(セリフや描写など)
-
積極的に改変が欲しい
-
原作準拠で大丈夫
-
原作準拠だが改変は間間に欲しい
-
幕間エピソードが欲しい
-
激しい改変はなくて大丈夫