「クソっ!!硬すぎだろ!バカみたいな攻撃にアホみたいな再生能力!キメラもこんなデタラメじゃなかったぞ!?」
「そうだねぇ。攻撃は何百回と届いているのだがっ!」
ザン!と紅蓮が刀を振るう。しかし、傷口は瞬く間に再生して行く。
「貫けぇ!!」
スノーホワイトのセブンスドワーフが火を噴く。致命傷になったであろう手ごたえを感じるが、その代わりにビームが迫り来る。
「通用はしている。しかし効いていないな」
「しかも一撃一撃が重いですよ!ラプンツェル様と交代交代で防いでますが……流石に辛いですね……!」
「はぁぁっ!」
スカイが上空から攻撃を行うが、それすらも片手間に相手をされている。
「ならこれはいかがでしょう!」
ドロシーが渾身の蹴りを放つ。ガラスの靴すら砕いた蹴りが胸部に命中するもクイーンは首を傾げるのみ。引き抜くとともに再生が完了していく。
「このまま長引いたらあたしらは消耗して単機ずつやられんな……スカイ!作戦は!?」
「再生とこの出力をなくせって言うなら策はある!でももっと最悪な事が起きる可能性があるから!それだけは覚悟しておいて!」
「オーケー!!」
その時、後方から爆音が響いてきた。誰もが音のする方向へ視線を向けた。それは地を這うように低空を滑り飛ぶ双頭の赤い竜だった。
「ニヒリスター!?」
スノーホワイトが叫ぶ。
ニヒリスターがクイーンに迫った。アンチェインドを噛み砕き、クイーンへ突進する。
「これでも喰っとけ!クソババアァァァァァ!!」
自ら毒の入った器と化し、クイーンのボディへと飛び込んだ。
回復の為か?と思ったのも束の間、クイーンの身体が崩れて行く。
「今のは……まさか!?」
「再生能力を封じました。今が好機です」
「ナユタ、どういうことだ?」
「自分の手を汚さない卑劣な手を使いました。貴女達に顔向けできません」
「そうか」
「いつまで続くか分かりません。今が好機です。今こそ全ての力を__」
『全員、動かないでください。射線クリア』
『2時間、時間が早まった。エデンの槍、発射』
彼方の空が輝いた。青い光がクイーンを貫いた。光の消えた後にはボロボロになったクイーンが残った。
『認めたくはありませんが、本当に怪物のようです』
『使える手段は全て使った。後は頼む。勝て』
「お任せを」
「遅参しておいて、返事は一番かね?」
「まったくです。最初から戦っていたような口ぶりですね」
「もっと早く動いてくれ」
「そもそもエデンのニケの隊長もゴッデスの隊長もドロシー様ですよ!なんで取るんですか!」
「いいえピナ、気にしていませんから」
「私が気にします!!」
「今まで遊んでいたとでも?これでも私なりに飛び回って……」
「戦闘中だ。私語は後にしろ」
「何言ってんだスノー。私語も必要だぜ?なぁスカイ」
「そうだね。リラックスも大事だよ」
「どちらなのですか……!!」
「まだまだ戦場には慣れておらぬようだ」
「遅れた分は取り戻してくださいね」
「当然です。最善を尽くしましょう」
「行きましょう。エンカウンター!」
ーーーー
「往生際が悪い奴め!」
「紅蓮!刀の精度が落ちています!少し休みなさい!」
「ほう?それを言うなら君だって動きに精彩を欠いているように見えるが?」
「なら!こちらに合わせてください!」
「笑止千万。そちらが私に合わせるんだね!」
ドロシーと紅蓮は連撃をクイーンに放つ。
「スノー!全火力を2人の当てた箇所に集中させろ!」
「了解!」
ドン!ドン!とセブンスドワーフとウルフスベインが火を放つ。
「クイーンの攻撃と回復は!」
「任せてください!」
ピナとラプンツェルが防御と回復支援を行う。
「ガンビット!フルバースト!」
スカイのガンビット、ソードビットが何度もクイーンを傷つける。
しかし、そのどれもが致命傷には当たらなかった。
「申し訳ありませんが、今しばらく時を稼いでください!」
「ねぇ!こんな時に休まないで!?」
「休んでません!時間がかかるのです!」
「なら!さっさとしてください!大体ナユタはいつもいつも!」
「ドロシー様!ナユタが超絶方向音痴で自然・田舎アンチなのは分かりますけど!抑えてください!」
「そんな風に思われていたのですか!?」
「田舎が嫌いだって!?!あたしの故郷を馬鹿にしたか!?今!」
「してません!!切り札があるのです!」
修羅場の喧騒の中で、ナユタは心を落ち着ける。目を閉じ、精神を集中させる。
「あなた方の命を……ここで燃やし尽くします。罪の意識は全て、この身で背負いましょう」
クイーンの攻撃が激しくなる。一度ゴッデスの攻撃が絶えた。その瞬間。
「お待たせしました」
ナユタの衣装が変化する。
「道を開く」
衝撃波がクイーンを襲う。クイーンの攻撃はナユタの攻撃で防がれる。
「よし、行こう」
「苦痛も絶望もない世界、ガーデンオブシャングリラ!」
「防御は任せてください!」
「セブンスドワーフ・レディ!」
「ウルフスベイン・レディ!!」
「ドロシー!」
「紅蓮!」
ドロシーの蹴りが胴体に命中する。ガクン、と揺れた衝撃で狙いが定まる。
「「貫けぇぇぇ!!」」
白と赤の閃光が迸り、クイーンのコアを貫いた。
「花無十日紅・満開!!」
最期に、紅蓮の刀がクイーンの首を切断した。クイーンの身体は沈黙し、静寂が辺りを包む。
「あ……あぁ……ついに……!」
「ついに……私たちが……」
歓喜の声を誰かが上げようとした。その瞬間、ポタポタ、と黒い液体がクイーンの首から流れ落ちる。
「あ……ぁ……」
「リリス……!」
「お姉ちゃん……!?」
「リリー……バイス……!私達の、勝利の女神……!」
「何故……」
何人かは、その光景を飲み込めないでいた。ラプンツェルは彼女に近付こうとした。その瞬間、ドロシー、レッドフード、ブルースカイが一斉にリリスへ向かって攻撃を仕掛ける。
「騙されんな!クイーンから出てきた以上コイツは敵だ!」
「リリーバイスは死にました!あの時確かに!頭をラプチャーに奪われて!貴女は誰なのです!?答えなさい!」
「ここで止めろ!損傷した奴は引け!あの"リリーバイス"だ!油断したら死ぬぞ!」
リリスがブン、と腕を振った先にはドロシーの頭がある。
「ドロシー!」
レッドフードが彼女の服を掴んで後方に投げ飛ばす。ドロシーは地面を転がるが、自分がいた場所が砕かれているのを見てそんな事気にしている暇はないと考えた。
「スカイ!余力は残ってるんだろうな!?」
「勿論!モード:リリーバイス!!」
「あたし達2人がコイツを引き付ける!隙を狙え!ここまで来たんだ!絶対に死ぬなよ!それと防ごうとすんな!とにかく避けろ!動けない奴と紅蓮は下がれ!」
蹴りを放ち、拳を振るい、バックステップを踏みながらウルフスベインを放つ。
「……何故ッ!」
「お前じゃ勝てない!刀を折られて頭ぶっ叩かれておしまいだ!地面に埋め込まれるだけですまねえぞ!」
「……くっ!」
「紅蓮……!」
「歯がゆいがね、事実だ。戦局を見極められない程愚かではないよ。……レッドフードがいなければ、判断を誤っていただろうがね」
紅蓮はナユタを連れて行く。
「私はっ!」
「ラプンツェル!君に何かあったら修復が無理だ!ピナと共に後退してくれ!」
スカイの懇願でラプンツェルは歯噛みをしながら引いて行く。
「援護する!」
スノーホワイトが射撃を行おうとする。しかし、指が震えて撃てない。それどころか、身体が強張っている。
「ッ!スノー!早く逃げろ!」
「バカ!」
リリスは赤い刃をスノーホワイトのいるビルへ向けて放つ。急いで避けようと上空へ飛ぶが、そこに更に刃が迫っている事に気付いた。
「……許せよ!」
ドン!とスノーホワイトの脚に痛みが奔る。片足をレッドフードに撃ち抜かれたが、リリスの攻撃は躱せた。
「このっ!いい加減に!」
スカイが拳を叩き込む。出力はリリスと同じはずだが、効いている気配がない。全て同じ出力で受け止められている。更に言えば、連戦で身体は悲鳴を上げていた。それでも、ここで手を緩めたら全滅する。その確信があった。
「出力最大……!レッドフード!ドロシー!一瞬動きを止めてくれ!」
「はい!!」
「任せろっ!」
ドロシーはリリスの足元に銃弾を放つ。リリスは右足が重い事に気付いた。スカイが何かをしようとしている。阻止しなければ。左拳を振るおうとすればレッドフードが全力で止める。ならばと、右拳を振るおうとすれば、ドロシーが全体重と出力で無理やり抑え込む。
「良いように操られてんじゃねえよバカリリス!指揮官が見たら泣くぞ!?なァ!メカゴリラァ!!」
「私達の勝利の女神を穢すなんて!!リリスはスノーホワイトを可愛がっていました!それを殺そうとするなど有り得ない!答えないなら!ここで死になさい!」
「スカイ!!」
「今です!!」
「はぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
スカイの拳から発されたエネルギーがリリスを中心に包み込み、大爆発を起こす。
「っぐ……」
「げほっ……」
損傷したレッドフードとドロシーは地面に倒れ伏す。
「はぁっ……はァっ……これで、かすり傷しか……つかないのか……」
スカイは地面に膝を尽きながら辛うじて立っていた。しかし、リリスは多少服が破けた程度で、傷らしい傷は頬の傷のみ。オーバーヒートを迎えながらの攻撃ですら、届かなかった。ドロシー或いはレッドフードが万全なら……と思ってしまう。
しかし、リリスは傷口に触れた後、自身の手袋が真っ赤に染まっている事を確認すると、地面を蹴ってどこかに消えた。
「……逃げた……のか……」
仕留めきれなかった。しかし、誰が死んでもおかしくない戦いだった。或いは誰かが欠けていたら結果はまた違っていたのだろう。
「あーーー……あたしはもう動けない。そっちは?」
「抑えつけた反動でボディフレームが歪みました……本当……有り得ませんね……」
「あたし達は勝ったのか……?」
「さぁ……少なくとも、無限修復と出力がなくなって、リリスが敵という……分かりやすいのにはなったでしょう」
「勝てるか?」
「……勝つしかありません。私達は……ゴッデス……なのですから……」
「……ははっ、なんか、ドロシーからそう聞けて……あたしは嬉しいよ」
それを最後に、2人は沈黙する。スカイは作戦終了を告げる信号弾を上げて、地面に倒れ伏した。
「リリスだって、救ってみせる……物語はハッピーエンドじゃないとね……絶望を希望に変える為に、私は……いるんだから……はは、やること……多いなぁ……」
スカイの視界は暗くなる。
GODDESS:FALL
ーーーー
「エデンの光学迷彩は正常に回復している。だが、これほどの騒ぎだ。ラプチャーどもが押し寄せてくるだろう。残存戦力でエデンの防衛を行う。2日しのぎきれれば問題ないはずだ」
ヨハンがそう話すも、エデンの士気は低い。
「リリーバイスが乗っ取られた?嘘でしょ……」
「ゴッデスが敗北したって……信じられない……」
「無理だよ、勝てる訳ない……」
悲観した空気に包まれている。
「お嬢さま……我々は……勝ったのでございますか?」
「まだ分かりません。極めつけるのははやいですわ」
「お嬢さま……決めつけるでございます」
「あれからみんな、どうなったの?」
「インヘルトは全員が出力限界を迎えて休んでいる。しばらくの戦闘行動は無理だろう。クローンスカイも同様の状態だ。何しろ数時間もの間戦い続けたのだからな。……マリアンは精神状態が芳しくない。いつ、何がどうなるかは予期できない。だが大きな損傷がないのは幸運だった。ヘレティックである以上治療は困難だからな」
「ラプンツェル、ピナは心労で倒れている。回復には時間を要するだろう。紅蓮とナユタの損傷は軽微だ。直に復活する。スノーホワイトは義肢の破損だけで済んでいる。……しかし、今危険なのはレッドフード、ドロシー、ブルースカイだ。3人ともオーバーヒートしている。話せはするが、指一本も動かせないだろう」
「死者は……?」
「仙人の分身だけだ。インヘルト・エデン・ヴァイスリッター・ゴッデスからは死者は出ていない」
「今後の方針を取りまとめたい。30分間の休憩とする。心が落ち着く者だけ参加しろ」
ヨハンは疲れた足取りで、どこかへと向かった。
ーーーー
「……ああ、そうか。なら……まだ、マシだったか」
目覚めたスカイは全てを視た。ミラーの存在。今回の結末を。明確なバッドエンドを回避できたのは幸運と今まで積み上げてきたものだろう。
「……それで、どうなっていたのです?」
隣のポッドからドロシーの声が響く。また、部屋にはカントリーミュージックが流れており、レッドフードもいる。
「インヘルトは全滅。ゴッデスも……紅蓮は作り直し、ラプンツェルは頭だけ、スノーホワイトはボディの両断。マリアンはコアを失った」
「……私は?」
「間に合わなくて地雷を踏んでエデンから追放された」
「そうですか。そうはならなくてよかったです」
「……ま、なにはともあれ全員無事でよかったって感じだよな。でもリリスが相手か」
「勝てると思う?」
「勝つしかないでしょう」
「どうやって?」
「うーん……第二世代、アークの戦力とカウンターズ……それからフォービースト……」
「アークには頼れないでしょう。ヨハンやセシルが許せるとは思えませんし、アークが彼女達を受け入れるとは考えられません」
「同意だ」
ウィーン、とヨハンが入ってくる。しかし、その顔には確かな疲労感を滲ませていた。
「だが、選り好みはしていられない。最強の部隊が敗れた今、そして明確に脅威が存在している現状を放置はできない」
「お告げでももらいにきた?」
「……どうすればいい?」
「そうだねぇ……少年に連絡を取りな。後、私達の強化プランを進めて。流石に限界だ。リリーバイスと戦うなら、用意は何をしても足りない」
「ふ……そうか。……ドロシー、見事な作戦指揮だった。エデンの量産型部隊が死ななかったのはお前の徹底的な指導の元だ。レッドフードの援護も感謝する。インディビリアらの襲来に間に合わなければ死者が出ていただろう。そしてスカイ、よく……やってくれた。インヘルトが無事なのはお前とお前の仲間達のお陰だ。エデンの指揮官として、礼を言う」
「ははっ!照れ臭い事言うんじゃねえよ。仲間なんだろ、あたし達は。あたしはエデンの事を知らないけどさ、皆に帰る場所を作ってくれてありがとな」
「……レッドフードの言う通りです。今回の作戦は各々がベストを尽くしました。ヨハン、貴方の作戦指揮も見事でした。……寧ろ、長らくエデンを不在にしてしまい、申し訳ありませんでした」
「そうそう。必要だったとはいえ……私達の参戦まで持ったのはヨハンの指揮があったからだよ。よくやってくれたね」
「……感謝する。」
「ま、今まで不明瞭だった絶望が姿形をはっきりさせてくれたんだ。後はそれをどうにかして、希望を取り戻そうじゃないか。それで皆、終わったら、好きに生きよう」
「そうだな」
ヨハンはふ、と微笑んだ。
GODDESS FALL:END
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改変に次ぐ改変。本編との温度差で死にそうになりながら書いていましたが、これが皆さんの傷を癒せたら幸いです。
いやでも命懸けの活躍と引き換えに生存させたはいいものの、見せ場を奪うと同義でもあるかなと思うので難しいですね。でもな……インヘルト組にも生きて欲しかったんですよ。
小説の方向性(セリフや描写など)
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積極的に改変が欲しい
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原作準拠で大丈夫
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原作準拠だが改変は間間に欲しい
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幕間エピソードが欲しい
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激しい改変はなくて大丈夫