絶望を希望に変える為に   作:スカイ⛅

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魔獣はここで終わりです。
茶番にならないようにするのって難しい。ここをなぁなぁで済ませる訳にもいかないので……。


chapter魔獣:ベヒモス、その力

 

「ここまで来れば安全か……?」

 

「分からない。ベヒモスは神出鬼没だから。マスター達が無事に離脱できているといいんだけど」

 

シンデレラが眠る棺を背負ったエイブとクローンスカイ__アッシュグレイは洞窟の中に避難していた。地上に出ようにもベヒモスの方が有利な地形であり、グレイの飛行機能は大きく制限されてしまっている状況だ。

 

疲労感と緊張感が場を支配する。殺し合いに発展せずともシンデレラを巡って争っているのだ。それも非戦闘ニケのエイブと装備更新が遅れている自分しかいない。

 

そんな時、洞窟のセンサーに複数の生体反応を感知した。

 

「どうした?」

 

「……複数のニケ……このパターンは……マスター!」

 

「無事だったか。合流するぞ」

 

「そうしよう」

 

二人が息を整えて歩き出そうとした時。

 

「よお、どこに行こうってんだ?」

 

ガツン!!背後から衝撃が迫った。壁面に叩きつけられたのだと一拍おいて理解する。

 

「スカイ!」

 

「余所見は厳禁だって~の」

 

ズガァァァ!!とエイブがアームの下敷きになる。

 

「センサーを張り巡らせてたみたいだけどよ~洞窟には複数の入り口があるんだぜぇ?油断したらダメだろ~」

 

「っぐ……ベヒモス……!」

 

「安心しろって。命までは取らねえからさ。んじゃ、棺は頂いてくぞ~」

 

ベヒモスがエイブの背にある棺を取ろうとした瞬間。

 

「ッ!?」

 

ズガァン!

 

ライフルの銃声が響く。銃弾はアームに突き刺さるもカラン、と歪んだ状態で地面に落ちた。

 

「……今のが貫通しないってマジかよ」

 

撃った張本人のレッドフードは冷や汗を滲ませている。

 

「指揮官!ベヒモスを確認!」

 

「閉所での戦闘には気を付けろ!アブソルートはカウンターズの援護を頼む」

 

「了解」

 

指揮官の指示にすぐさまウンファ達は隊列を組む。

 

「はあっ!」

 

ラピの髪が赤くなり、出力が向上する。その状態で肉薄するも。

 

「お、速いじゃん」

 

ガァン!アームに阻まれ、叩きつけられる。ラピのかかとがジリジリと地面に埋まる。

 

「撤退する時もソレ使ってたろ?スカイみたいな切り札なんだろうなぁ。でもさぁ……そう長くはもたねえ。そうだよな」

 

サイドアームが無防備なラピ目掛けて振るわれる。

 

「あたしの弟子をかわいがってんじゃねえよ!」

 

すかさずレッドフードが割に入る。ラピとは違い、拮抗かそれ以上の状態をキープしている。

 

「重い……!」

 

「重いだけじゃないぜ?」

 

ニタァ……ベヒモスがうすらと笑う。指揮官は何かに気が付いたのか手を横に出し、静止をする。

 

「……!全員射撃中止!レッドフードが射線に入る!」

 

「チッ!!」

 

「じゃあ肉薄するしかないってこと!?」

 

「肉薄したいのならいいけどさぁ。んじゃ、こっちから近付くぜ?」

 

「おわっ!?」

 

「くっ!?」

 

アームがレッドフードとラピを持ちあげる。宙に浮いた2人はそのままアームによって叩きつけられ、地面に倒れ伏す。

 

「くっ……そ」

 

レッドフードはまだ意識があるが、ラピは完全に気絶してしまっている。すぐさまアブソルートが2人のカバーに入るものの……。

 

「チッ、閉所だと展開ができない。向こうと合流もできない。数的有利だが立地は不利だ。どうする三流」

 

「……撤退、いや……集中攻撃だ!スカイ、頼む!」

 

「ごめん。無理だ。避けられたら奥の2人に当たるし、クリスタルに当たったらそこから寄生される。だからビットは使えないね」

 

「ハハハッ!さ~すがオリジナル。よく分かってるじゃんか……じゃ、これならどう?」

 

ベヒモスのアームが持ち上がり、地面に突き刺さる。そうして掘り出して来たのは視界に納まりきらないほど巨大なクリスタルの塊だった。

 

「おらおら、避けろ避けろー!叩きつけたらあっちこっちに飛び散るぞ~?」

 

「クソッ!伏せろ!」

 

攻撃態勢を取っていたウンファが全員に向かって叫ぶ。スカイは前面にシールドビットを展開し、防御姿勢を取る。

 

ガァァァン!!!!地響き、飛び散るクリスタルの欠片、巻き上がる砂ぼこり、爆弾が炸裂したような光景の中、ベヒモスのアームにつかまれたグレイブの棺がぼんやりと映る。それはまるで大切なものを丁重に扱っているようだった。

 

「はは!勝った!ついに!」

 

「返、せ……!」

 

「やらせ……るか!」

 

「や~だよ~」

 

起き上がったグレイとエイブがベヒモスに攻撃をする。しかし、効いている様子はない。

 

「はあっ!」

 

スカイがビームサーベルを引き抜き、ベヒモスへと肉薄する。が、

 

「ほら、感動の再会ってな」

 

「「ッ!!」」

 

目の前に向かってくるグレイをスカイは一瞬避けようとする。しかし、自分の後ろにあるクリスタルを確認すると動けなかった。ガツンとぶつかり、どちらも地面に倒れ伏す。

 

「マスター……ごめん……」

 

「私は大丈夫……だけど、これは……!」

 

「それじゃ、頂いてくぜ~」

 

「ま、て!」

 

棺を持ち、奥へ進んで行くベヒモスをエイブは傷ついた身体を引きずって追跡して行く。

 

追撃をしようにも、後ろには気絶や負傷している後輩達がいる。

 

スカイは少し逡巡した結果。

 

「グレイは皆をお願い。私がエイブの救援に向かう」

 

「……分かった。どうせ僕じゃ勝てないし」

 

ーーーー

 

「う……ここは……」

 

「目が覚めたか?男前」

 

「指揮官様!」

 

「レッドフード、アニス。どれくらい時間が経った?」

 

「あんま経ってないと思うぞ?ウンファの通信でまだ範囲内にはいるらしいけど、どうすんだ?」

 

「負傷者は?」

 

「全員無事です、指揮官。ですがスカイとエイブがベヒモスの追撃に出ています」

 

「合流は無理か……せめて棺だけでも奪還できれば……」

 

少し逡巡した後、指揮官はベヒモスの追撃を行う事を決めた。道中、シフティーやグレイからベヒモスの情報が入る。

 

「ダークマターと呼ばれる強固な装甲に神出鬼没のステルス性能か、厄介だな」

 

「火力で押し切ろうにもクリスタルが刺さったら死んでしまいます!!どうしましょうアニス!」

 

「しかもクリスタルを操れるんでしょ?……ホント、厄介事には愛されてるわね、私たち。狙撃班はどうなの?」

 

「狙撃自体は可能だ。だが装甲を貫通できるかは分からない」

 

「あたしもウンファに同意見。アームとかの間接なら狙えそうなんだけどな」

 

作戦会議をしつつ、一行は進む。一方その頃。

 

「なあ~?これどうやって開けるんだ?勝負はあたしの勝ちだろ?なあ~?」

 

「悪いが、負けたつもりはない」

 

「同じく、勝負はこれからだよ」

 

「仕方ねぇなぁ……」

 

ベヒモスは棺を守るように背後に置くと、戦闘態勢を取る。

 

「力比べは得意じゃないんだけどね!」

 

スカイは対艦刀を手に持ち、肉薄する。ガキン!とアームとぶつかり、鍔迫り合いを行う。スカイの影からエイブが銃撃を行うものの、それらもアームによって防がれる。

 

「くっ」

 

「遅い遅い~」

 

対艦刀がギギギ、と悲鳴を上げ、横腹に向かってもう1つのアームが振り払われる。咄嗟に刀を手放したが間に合わず諸に喰らってしまう。そのまま地面へ転がる。

 

「まだ__「終わりだよ」」

 

ズドン!とスカイの背中が押しつぶされる。エイブはクリスタルに囲まれて身動きが取れない。

 

「詰み、チェックメイトって奴だ。大人しく棺を開けろよ~?流石にレヴィの友達を殺すほどアレじゃねえんだけど」

 

「なら返してよ、友達なんだ」

 

「いやいや、そういう勝負だったろ?」

 

「返せ……!」

 

「だ~か~ら~、大人しくしろって言ってるじゃん。ま、このまま気絶だけで済ませてやるからさ、安心しろって」

 

「……わかった」

 

「……スカイ!」

 

突然スカイは身体の力を抜いてその言葉に従う。エイブは驚愕を示すが、更にクリスタルが肉薄し、何もできない。

 

「それにしても、キミのアームは頑丈だね。メンテナンスが大変そうだ」

 

「?」

 

「でもその分弱点も存在する」

 

「へぇ……?やっぱ科学者ってそういうの分かんのかね。でもその状態じゃ無理だろ」

 

「ああ、私はね」

 

ニヤリ。スカイが笑った瞬間銃声が轟いた。それはガキン!とアームの関節部分に直撃する。

 

「ッ!?」

 

的確に間接部分を狙う狙撃にベヒモスは段々と苦悶の表情を浮かべる。更に地面を駆ける足音が聞こえ、それと共に銃声は比例して大きくなる。

 

「移動しながらこれだけの射撃を!?一体どこのどいつだよ!」

 

飛び退こうとした腹に銃弾が直撃する。その間に彼女……レッドフードが勢いよく蹴りを放つ。

 

「ッッ!!」

 

「さっきのお返しだ!喰らいな!」

 

「やめ__」

 

ベヒモスの腹にウルフスベインの銃口が密着し、何度も火花を散らす。

 

「ぐ、が、あ!」

 

「おらよっ……と!!」

 

今度は逆にベヒモスが地面を転がるように後ずさる。それと丁度、指揮官らが現れた。

 

「レッドフード、ありがとう。流石凄腕狙撃手」

 

「スターライトブリッジに比べたら全然楽。寧ろ待たせて悪いな。さて……男前!仕上げだ!」

 

「ウンファ!ビーコンを!」

 

「了解」

 

少しして、構造物がクリスタルを破壊して地上に出る。ベヒモスは負傷した身体を修復しつつも眼前の光景に驚きを隠せない。

 

「な、何だよ、これ!?」

 

「知らなくていいものよ!」

 

アニスが寝そべるような低姿勢からベヒモスの足を払った。続けさまにベヒモスの腹部へ向けてネオンが距離を詰め、銃口を当てて引き金を引いた。

 

「かぁぁりょぉぉくぅぅ!!」

 

バン!バン!バン!バン!とショットガンの銃声が鳴り響く。

 

「チッ!気を取られ……!」

 

その隙をラピが跳躍し、蹴りを放とうとする。それに対してベヒモスはアームで掴もうとするも……2つの銃弾が間接に直撃する。

 

「関節には気を遣っておけ、バケモノ」

 

「ご忠告、どーも」

 

「そうそう、ウンファの言う通り。行きな!ラピ!」

 

ラピの後ろ回し蹴りがベヒモスの腹に命中した。更に追撃とばかりにベスティーが狙いを定める。

 

「直撃狙い!行って!」

 

「うりゃあああー!!」

 

「マジか、こいつはちょっと……!」

 

ベスティーが放った大量のミサイルがベヒモスに直撃した。爆発と煙と振動があたり一面に広がる。

 

「全員棺とグレイブを確保して退却だ!」

 

「オッケー!」

 

「ちょっと強盗みたいですね!」

 

「そういうこと言わないの!悪いことした気分になるでしょ!」

 

『確保した退却ルートに誘導します!』

 

「殿はあたしが努める!全員引け!」

 

「グレイは棺を!私はエイブを持つから」

 

「了解!」

 

一行は退却して行く。

 

ーーーー

 

「……あ~くっそ、奪還されたか。まあいいや、また奪えばいいだけだし?なーんか面白くなってきたじゃん」

 

ベヒモスは地面に寝そべり……いや、転がりながらくつくつ笑う。

 

「聞こえてるか~レヴィ。しんどそうな戦いになるから応援来てくれよ~」

 

『え!?無理無理無理!!レッドフードとかもいるんでしょ!?後他のニケ!別に負けるとは思ってないけどさぁ……いい加減諦めても……いいんじゃない?』

 

「おいおい、ここまで来たのに諦めるのかよ。そりゃあないぜ。あたしの苦労が水の泡ってね」

 

『ジズ!……は今いないんだった。も~!!バハムートは絶対ダメだし……分かった、行けばいいんでしょ!行けば!その代わり頑張って穏便に終わらせるから!』

 

「ええ~……もっと戦いを楽しもうぜ?」

 

『セイレーンに怒られるからヤダ!!嫌われたくないもん!!後死にたくない!!』

 

「ははっ。なんでそんなお前がフォービーストにいるんだか。ま、いっか。あたしはコアだけになっても戦うからよろしくな~?後の事も含めて頼むよ」

 

『い、胃痛……痛いのは嫌なんだけど……はぁ。分かった。穏便に済まなかったら私もちゃんと戦う。今のアイツらに勝てなかったら直系相手にも勝てないでしょ?』

 

「そうそう。その通り。アイツらにもあたしらにも必要な手順ってワケ」

 

ベヒモスは退却して行く彼女達を見ながらそんな雑談に興じていた。あんな戦いをしたのは久しぶり、いや、初めてかもしれない。もっと戦いたい。特にレッドフード。彼女と戦い続ければ、自分はもっと劇的な進化を遂げるに違いない。ああ、楽しみだ。悪魔の飢えはまだ満たされない。




ベヒモスの強さをちゃんと書けていたらいいな~と思ってます。
レヴィはセイレーンの件があるのでこっちに引き抜いたら絶対怒られる……!という感じなので慌ててます。大きな改変ポイントはやっぱりレヴィですね。原作とは真反対!

ここから本当に難産の予感です。
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