1000001回生きた男   作:61886

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これで鈴編は終了です!


5話

 

 

その後は簡単であった、教師陣が残骸をかき集め一夏と鈴はお説教を山田先生から頂きその場で解散となった。

山田先生は普段の姿からは想像できない程の大声を張り上げ、一夏と鈴に詰め寄り涙混じりの声でどれだけ心配したのかを二人に説明していた。…本当にこの時代だからこそ必要な人の一人なのだろう。生徒の安全を第一とし危ない事に首を突っ込んで欲しくないという事を心から思いながら口に出していた、

…それは重たい言葉であった。

千冬自身からは何も言われず、ただ一言微笑みながら『二人共ご苦労…』それだけ言い残しその場を去っていった。

 

 

二人は一夏が何時もいる岬に来ていた、

 

 

「んでどうするの一夏、賭けは?」

 

「賭け?…そういやあったなそんな事」

 

失念していたが、二人は試合前に勝った方のいう事を一つ聞くと言う約束をしていた。

 

「そういやどうするか、次の再試合決まってねんだよな?」

 

タバコの火を付けながら鈴に尋ねた。

 

「そ、その事なら良いんじゃないもう」

 

「はあ?何でだ…別に構わねえけどよ」

 

「そうよね……ねえ一夏、この場でいう事じゃ無いと思うけど、聞いてもらってもいい?」

 

「…なんだ?」

 

一呼吸置き、鈴は一夏に隠していた事を話し始めた。

 

「…あたしが国に帰ることになった理由ってね、両親が離婚しちゃったからなんだよね…」

 

「……………」

 

鈴の表情が暗く沈んでいき、一夏は何も言わずただ鈴の顔を見つめていた。

 

「一応、母さんの親権なのよ。ほら、今ってどこでも女の方が立場は上だし、待遇もいいしね。……それで」

 

さらに声が沈んでいき、目には涙を浮かべていた。

 

「お父さん…半年前に亡くなったらしいの」

 

「!?」

 

「…お酒の飲み過ぎで病気持っちゃってさ。離婚したのも理由がそれみたいだけど…ごめん、詳しくは知らないんだ」

 

「…そうか」

 

「あたしもここに戻る前にお婆ちゃんに会って一緒にお墓に行っただけでお父さんには会っていないから良く知らないんだけど…お婆ちゃんが言ってた、『鈴音に会いたい…一夏に会いたい…』って死ぬ前までずっと言っていたらしいの…だから、落ち着いたらお父さんのお墓に参りに行ってあげて……」

 

既に鈴の目には大粒の涙が溢れていた。

 

「…分かった。ありがとな、…なぁ、さっきの賭け…使わしてくれねえか?やっぱ…」

 

一夏は立ち上がり地平線の彼方を見つめて話しかけた。

 

 

「…どういう事?」

 

「俺もお前のいう事一つ聞くからよ…後で俺の部屋に来てくれ…時間は後で知らせる」

 

それだけ言い泣いている鈴を置いていき一夏は一人岬を後にした。…少しの間そっとしといてやろう…。

 

……………………

 

 

「…千冬姉、・・あるか?」

 

一夏は千冬の部屋である寮管室に一人で来ていた。

 

「?・・なら貰い物で一応あるが…一体何に使うんだ、理由が無ければ渡せん」

 

「あぁ………」

 

……………………………

 

「…なるほど、分かった。今日だけ目をつむってやろう」

 

「…礼を言うぜ」

 

紙袋に入っていた品を一夏は千冬から受け取り、部屋を後にした。

 

「そうか、如苑さんがな……」

 

千冬は一人部屋の隅に移動し、タバコに火をつけ、窓の外を深く見渡していた。

 

…………………………………

 

部屋に戻ると千冬から渡された品を部屋の自分の机に置き、同居人である箒に声をかけた。

 

「箒、悪いけどよ…一時間位部屋を開けてくれねえか?」

 

「…理由を聞かせて貰ってもいいか?」

 

「あぁ…………」

 

…………………………………

 

「…そうか、分かった。なら一時間程何処かで時間を潰しておくぞ」

 

箒は何かを察した様な顔つきになり、一度だけ頷いた。

 

「悪いな…箒」

 

「なに…気にするな。気持ちは理解できる…明日の昼を奢ってくれればそれで良い」

 

「あまり高くない物にしてくれよ…」

 

「フッ、その位の常識はあるさ…」

 

読みかけの文庫本を手に持ち、箒は部屋を後にした。

 

「さて…鈴に連絡をいれるか」

 

ポケットから携帯電話を出し、鈴を部屋に呼び出した。

 

…………………………………

 

時間にして5分も掛からずに鈴は一夏の部屋の前に来ていた。

 

「(何なんだろう本当に…)」

 

二回ノックをし、ドアを開けると一夏が目のテーブルの前に座っていて、対面と横に一つずつ椅子が用意されていた。テーブルの上には紙袋とカットレモンの入っているグラスが3つ置いてあるだけであった。

 

「早いな、まあ座れよ」

 

一夏が引いた椅子に鈴は座り、一夏は置いてある紙袋から一つのボトルを取り出した。

 

「一夏、それって…老酒?」

 

取り出したボトルをよく見ると、自分の父が生前良く呑んでいた老酒であった。一番好きな銘柄では無かった筈だが、味は悪くは無いと言っていたな。

 

「あぁ、…せめてもの手向けだ。一緒に献杯してくれねえか?」

 

「…あたし飲めないわよ」

 

「舐める程度でいい…せめてもの手向けだからよ…」

 

蓋を開けて一夏は、置いてあるグラスに注ぎ始めた。注ぎ終わると目の前のグラスを手に持ち、顔の前まで上げた。鈴もそれを見真似し、同じ高さまでグラスを上げた。

 

「…献杯」

 

「け、献杯っ」

 

鈴は一口だけ舐めてグラスをテーブルの上に置いた、すると

 

「うっ、うぐ……おとう…さん……」

 

あれ程泣き、枯れたはずの涙が再び鈴の目から一筋流れ、テーブルの上に零れ落ちた。

 

「……………」

 

一夏は何も言わず、ただグラスの中身を一気に喉に流し込んでいた。

 

「鈴…お前の分貰うぞ」

 

「……………」

 

鈴も何も言わずにただ静かに頷いた。

 

「…如苑、美味いか?あんたの好きな物では無いが、味は確かだぜ…」

 

誰も座っていない…いや如苑が座る筈だった席に一夏は語りかけ、タバコに火を点けた。

 

「医者に止められてたんだろが…もう心配は必要ねえか……

好きなだけ吸ってくれ…」

 

灰皿をテーブルの真ん中に置き咥えていたタバコを一本置いた、フィルターを誰も居ない席の方に向けて。

 

「悪いな、俺のやつでよ。今度墓にはカートンで好きだったやつ置いておくよ…」

 

 

 

……………………

 

「ねえ一夏、…お父さんは喜んでくれたかな…」

 

泣き止んだ鈴は目を赤く腫らしながら一夏に聞いた。

 

「喜んでくれるさ、何せ約束してたからな…」

 

「約束?」

 

「前にお前が俺に約束したろ?その後にな如苑と約束したんのさ…二人でな」

 

確かに鈴は小学生の頃に一夏に約束をしていた『料理が上達したら毎日酢豚を食べてくれる?』と言う約束を子供ながらにしていた。ほぼプロポーズと言っても過言でない告白であったが、一夏は約束できないと断っていた。

 

「そう言えば一夏、何で約束出来なかったの?あの時…」

 

理由を聞いても当時の一夏は答えてくれず、ただ静かに枕を濡らす事しか出来なかった。

 

「……悪いな鈴、心に決めた女がいるのさ。だからお前の好意に答える事が出来ねえんだよ……」

 

遠いい目をし、一夏は手に持っている飲み干したグラスを見つめながら答えた。

 

「そう…誰なの?あたしが知っている人?」

 

「悪いが言えねえ、…時が来たら話してやる、だから今は聞かないでくれるか?」

 

「そう…分かった。でもあたし諦めないからねあんたの事」

 

鈴は優しい目をしながら一夏を見つめた。

 

「話を戻すけどよ、その後に如苑に謝りに行ったのさ。『娘さんの好意に答えるられ無くて済まない』ってな…」

 

とくとくと空いたグラスに一夏は残りの老酒を注いだ。

 

「あいつは気にするなって言ってくれてよ…代わりに鈴と俺…あと如苑の三人で時間が経ったら老酒でも飲もうって約束したのさ…その時の如苑…親父さんの顔ったらよ、子供みたいに輝いてたぜ…」

 

「そうだったんだ……なら喜んでくれるよね、お父さん」

 

「違いないと思うぜ…」

 

一夏が最後の一滴をグラスに注いだ瞬間、灰皿の上に置いてあったタバコは、最後の灰を落とし…付いていた火が消えていった。

 

 

…………………………………

 

学園の地下50メートル。そこはレベル4権限しか持つ関係者しか入れない、隠された空間であった。

 

部屋で一服を終えた千冬は扉の前にある暗証番号を入力し、カードキーを挿し込み、部屋に入った。

 

「山田先生、解析結果は出ましたか?」

 

「お疲れ様です織斑先生、…まだ殆ど分からない事だらけですが…分かった事が幾つかあります」

 

「そうですか、コアはどうだ?」

 

「…それが、登録されていないコアでした」

 

「…そうか」

 

「…心当たりはありますか?」

 

「いや、ない。…今はまだ…な」

 

千冬は鋭い瞳で、ただ映像を見続けていた。

 

…………………………………

 

暫くすると、腫らした目を擦り涙を拭き鈴は笑顔で

『ありがとう一夏、お父さんの為に呼んでくれて』これだけ言い残し部屋を後にした。

 

出していたテーブルを片ずけグラスを流しに置いていた時、箒が帰ってきた。

 

「一夏、もう大丈夫か?」

 

「ああ、悪いな」

 

読み終えただろう文庫本と飲みかけのお茶を自分のベッドに放り投げ、箒は台所に立った。

 

「夕食、まだ食べてないのだろう?…偶には作ってやる、何がいい?」

 

笑顔でエプロンを制服の上から着て、一夏に尋ねた。

 

「珍しい事もあるもんだ…そう睨むなよ。…酢豚にしてくれねえか?お前が和食好きなのは知っているが、作れるか?」

 

一夏の疑問に箒は鼻を鳴らしながら答えた。

 

「なに食の道に国境はない…問題ない、だが、豚肉が無いぞ」

 

「豚肉が無くたって今日はいい。材料が無い日と金がない時は酢豚って言っても良いんじゃねえか?」

 

ニヒルに一夏は笑いながら呟いた。

 

「?…まあお前が良いなら良いが、美味いかどうか分からんぞ」

 

「偶にはそんな事があってもいいさ、あと鈴が言っていたぜ、箒に伝えて置いてくれってな」

 

「なんだ?」

 

「今回は一夏の勝ちでいいって、それよりも大切な物を貰ったからってな」

 

一夏の言葉に疑問を抱き首を傾げたが、まあいいか…と納得し、箒は調理を始めた。

 

 

 

 

 

 

 




やばいな、どんどん原作から離れてきてる…大丈夫かな。

執筆する前にTHE REAL FOLK BLUES(cowboy bebopのED)を久しぶりに聞きましたが、いい曲ですね。まるでスパイクの人生を歌っているような曲で。



次からはオリジナルの過去と閑話を入れていき、シャル ラウラと話を戻していきたいと思います。
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