1000001回生きた男   作:61886

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やっとセシリア編が終わる…

かなり今回は独自解釈が多いいです。


6話

 

 

 

 

「ふん、とりあえずご苦労、だがな私から言わせればまだまだだ。慢心せずに精進するがいい」

 

試合が終わり、唯一の身内から出た声は労う気持ちが一切こもっていなかった言葉であった。

 

「…千冬姉さんよ、もう少し何かあるんじゃねえのか?労うって言葉をしらねえのか?それじゃこの先苦労するぜ」

 

「だから言ったろご苦労と、お前は耳が聞こえないのか?それとも何だ?日本語が理解出来ないのか?私はただ優しく日本語でお疲れと言っただけだが…あと貴様に心配される筋合いはないな」

 

「言わねえよ!」

 

馬耳東風…よくできた言葉だ。

人の意見に耳を傾けず、聞き流すこと…まさに今の状況だな。

少しちがうか?…まあいい

 

「…何だ、文句でもあるのか?せっかく労ってやっているのに」

 

「…なんでもねえよ」

 

 

少し離れた場所で山田先生はその光景がほほましく思い顔が綻んでいた。

 

 

「ふふ、なんだかんだいっても姉弟ですね」

 

 

 

「…山田先生、なにやら面白い歌が聴けそうなのですが、歌ってみますか?貴女の悲鳴を…」

 

 

「!いえ、なんでもありません」

 

 

あの距離で小声が聞こえるとか、…人間辞めてるな、てか女が言う脅しじゃねえだろ

 

 

「まあいい、今日はこれでおしまいだ。とっとと帰って休め、これは命令だ」

 

 

「…はいはい、帰ろうぜ箒」

 

「おいまて、一夏」

 

残っていても恐らく進展が一切起こる気が知れないのでさっさと箒を連れて帰るか事にした。

 

………………………………

 

 

その日の夜、目が覚めたセシリアは自室でシャワーを浴びながら今日の事を思い返していた。

 

シァァァァ…

 

熱めの湯が絹のような白い肌に当たり、身体をなぞるように流れていく。艶やかかつ慎まれている胸に湯を浴びながら先程の光景が脳裏に焼き付いていた。

 

…織斑一夏

 

先程まで対峙していた男子を思いだす、

(彼は私にいない、いや存在しない筈の亡霊に取り憑かれていると言っていた。一体どう言う事なんでしょうか…途中見せたあの虚無的な瞳、あの哀しい瞳は何を見ていたのでしょうか?)

 

セシリアの頭の中にはもはや負けた感情など残っていなかった、それよりも彼の言葉と瞳が心に強く残っていた。

 

 

『…終わりにしようぜ』

 

(そして最後に見せた強い瞳、…途中見せた哀しい瞳と最後の瞳、貴方の瞳はどちらが本当の瞳なんですの?)

 

 

(不思議な人…知りたい、あの二つの瞳は何を見ているのか、そして私に掛けた言葉を…答えを)

 

 

あれ程までの嫌悪感はセシリアには既に存在しなくなり、織斑一夏への興味へと変わっていった。

 

 

………………………………

 

シャワーから出たセシリアは純白のバスローブに身体を包み、今迄出た事の無いバルコニーへ出て外の涼しい風を浴びていた。

 

「ふう、気持ちがいいですわね」

 

少し熱めの湯に長時間当たっていたせいか時折吹く夜風が心地良い、加えて海が近く潮の匂いがより心を穏やかにしてくれた。

 

視線を少しずらしてみると、森の先に太平洋を一望出来る岬があり、先にはベンチが見える、開けた場所で辺りには街灯なども無く星を見るのもいいかもしれない。

 

「あら、いい場所ですね、今度行ってみようかしら…!」

 

暗くて良くは見えなかったが、その岬に向かっている一つの影が見えた、先程と変わらない…スーツを脱ぎシャツのボタンを外し着崩しネクタイを緩めた姿の、今一番会いたい人。

 

セシリアは急いで自室を出て今バスローブのみという事も忘れ無我夢中で岬へと走って向かった。

 

………………………………

 

 

「ったくよ、部屋は禁煙とか面倒くせえな」

 

今迄は自室の換気扇の前で吸っていたのだが、同居人の箒により禁煙令が出されこうして外までわざわざ出ることになってしまった。

 

自動販売機でプルタブ式ではない缶コーヒーを買ったのはいいが、女子生徒しか居ないのか知らないがブラックが売っていなく仕方がなく微糖を買いベンチに腰を掛けた。

 

「ったく、…まあたまには悪くねえか」

 

たまたま見つけた場所ではあるが悪くは無いな、缶の蓋を開けてタバコに火を付けた

 

「ふう…」

 

吐き出した煙は星が輝く夜空へと吸い込まれていきやがて消えていった。

 

コーヒを一口飲むと香りが鼻から抜けていき心地良い香りと味が鼻と舌を刺激している、…ブラックでは無いのが唯一残念だな。

 

 

「一夏さん!」

 

「ん?」

 

静寂な森の中をバスローブを着たセシリアが目の前に現れた、風呂上りなのだろうか頬が若干火照っていて、より一層色気が増していた…それよりも"一夏さん"?。

 

「一体何の用だ?」

 

 

訳が分からない訪問者に対して強めに言うとまるで別人のようにたどたどしく

 

 

「まず謝罪させて頂きます、数々の無礼…申し訳ございません。謝って許して頂けるとは思っていません、ですが…」

 

セシリアの謝罪を聞き、タバコを下唇にくっ付けながら口を開き唖然し、そして

 

 

「ふっ、…ははは」

 

 

突然一夏は笑い始めた。

 

 

「どうかしましたの!?」

 

 

突如笑い始めた一夏にセシリアは困惑の色を隠せなかった。

 

「いや、なに。なんでもないさ…」

 

 

「はあー、そうですか。…それと、少しいいですか?」

 

セシリアは真剣な顔つきに変わり問いかけてきた。

 

「なんだ?」

 

一夏は付けていたタバコの火を消した

 

 

「貴方は先程私に見えない…存在しない亡霊に取り憑かれていると…一体どういう意味ですの?」

 

「………」

 

再び一夏はタバコを取り出し火を付けて一口コーヒを飲むと話始めた。

 

 

「あんた、自分の父が情けなくて男に失望していたって言ったっけ?」

 

 

「ええ…」

 

「本当に親父さんはただ情けなかっただけなのか?」

 

 

「どういう事ですの?」

 

「そのままの意味だ、思い直してみな、その目でおそらく見ているはずだ」

 

 

セシリアは思い直してみた、しかし思い直してみても情けない姿のみしか写ってこない、母に何かを言われてタジタジになっている姿しか、私に対しても…!

 

本当にただ情けないだけだったのか?

 

母に対してはただ情けなかっただけかもしれない、それが当たり前の姿でその光景が目に焼き付いていたが…本当に?

 

 

母に叱られて泣いている時、誰よりも早く慰めてくれたのは…

学校でいい点を取った時、褒めて欲しかった母に当たり前だと言われしょんぼりしている時に誰よりも喜んでくれたのは…

忙しく誰も構ってくれない時に仕事があるにも関わらず、一番に相手をしてくれたのは…

 

言うまでも無かった、…全て父だ。

……あぁそうか。父は情けないのでは無く………ただ優しかったのだ。

優しく虫も殺せない人、何時しか優しさを情けないと間違った自己解釈してしまい、わたくしは…

 

セシリアの瞳から一線の熱い涙が零れ落ちた。

 

 

「どうやら見ていたようだな、あんたは間違った自己解釈《存在しない筈の亡霊》にずっと踊らされていただけなんだ。…本当は見ていた筈なのに、その目で。ただ情けないだけならそんな思い出なんて存在しなかっただろうが、していたようだな。本当に弱かったか?むしろそれが出来るって事は本当は強いんじゃねえのか?」

 

 

「…………」

 

 

ただ静かにセシリアは頷いた。

 

 

自分はなんて愚かなのだろう、覆水盆に返らず…今の状況だ。

 

母は出来る人間だった、それは間違いない。しかし本当に学べき姿は父の姿ではないのか。

誰よりも優しく、力ではなくその心で人を温める生き方。…本当の強さを。

もしかしたら母もそんな姿に惚れたのではないだろうか。

 

だが、もう父は存在しない。列車事故で母と共に還らぬ人となってしまった。

 

「わたくしは…わたくしはなんて…」

 

その場でセシリアは泣き崩れてしまった、ただ一夏は優しい目をしながらセシリアを見つめていた。

 

「好きなだけ泣きな。あんたはただ悪い夢を見ていただけなんだ…」

 

一夏の優しい一言がセシリアの涙腺を一気に崩壊させた。

 

………………………………

 

 

「…ありがとうございます、一夏さん、数年越しではありますが、ようやく気が付けたと思います…ですが、どうして知らない父の本当の姿を知ることができたのですか?あんな少ない情報で」

 

目を赤くし、涙を拭き取りセシリアは一夏に尋ねた、最もな疑問だろう、会ったこともない人間なのにも関わらず何故理解する事が出来たのだろうか。

 

「っふ…」

 

タバコを咥えながら一夏は微笑んだ。

 

「知っているか?…親父って生き物は強いんだよ、古今東西どんな世界でもな。強さは違うかも知れねえが…」

 

「そうですか…」

 

一夏は吸い殻を集めて飲み終わったコーヒの缶に入れて蓋をし、近くの備え付けのゴミ箱に投げ込んだ。

 

「それじゃぁな」

 

後ろ姿から手を振りながら岬を後にしようとしたところ

 

 

「待って下さい!…最後に何故わたくしにそこまで、あんなにも酷い暴言を吐いていましたのに!」

 

 

「…………」

 

振り向き、ただ哀しそうな目をしながら

 

 

「あんた、少しだけ見た目が似ているからさ。…昔愛した女にな、…それだけだ。

じゃあな…"セシリア"」

 

一夏は再び来た道を戻るようにして闇へと消えていった。

 

残されたセシリアはただ呆然と空を見上げていた。

 

「一夏さん…」

 

本当の強さを教えてくれた人。普段は飄々としている姿は気に食わなかったのに決める所は決める、そんな人。気に入らない筈のわたくしをただ昔の恋人に似ていると言う理由だけで救ってくれた人。

 

 

 

 

 

何時しかセシリアの嫌悪感は興味に変わり、そして恋心に変化していた。

 

 

 

 

 

 




ふう。

次はお待ちかね鈴ちゃんが登場します!

…てか、スパイクっぽくなくなってきたな…スパイクさん!もっとらしくして下さい!
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