とある原子崩し(偽)の英雄学園   作:NEAR LIGHT

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二話 エレクトリックな独断場

 

 

上鳴と別れたあと、試験会場の大講堂にすぐに到着し、試験開始時刻までは時間があるので指定された席にリラックスした姿勢で深く座る。

 

暇なので目を閉じて精神統一を行うと同時に義眼を休めて試験に備えていると、横から肩をつつかれたので目を開け振り向く。

 

「こんにちは。私、蛙吹梅雨っていうの、梅雨ちゃんって呼んでね」

 

「ん…?あぁ、私は麦野沈利よ」

 

声を掛けてきた相手は隣の席の可愛らしい雨蛙を連想させるような少女であった。

 

「よろしくねシズリちゃん。ところであなた、随分余裕そうね」

 

「……はっ!喧嘩売ってるならもっと言葉を選んだ方がいいわよ…!」

 

「あっごめんなさい……私、思ったことをなんでも言っちゃうの………」

 

「………それで?」

 

喧嘩を売ってきたのかと思ったのだが、いきなりしおらしくなってしまったのでめちゃくちゃやり難い。

 

「実は…あなたが微塵も緊張していない様子だったから、そんなに平然としてられる秘訣を聞きたかったの」

 

「あぁ…そういう事ね」

 

周りのライバルである他校の生徒共の空気は大変ピリピリしていて、一見すると余裕そうにしてる私は場違いに写るだろう。

 

まあ、周りの目など気に留める必要も無いが

 

「勘違いしてごめんなさい。えーと、梅雨ちゃんだったかしら?秘訣なんて別に無いわよ。

 

ただ、この試験に落ちる気がしないだけね」

 

自信過剰にもとられるかもしれないが、これが麦野沈利(偽)であり、私という個人なのである。

 

「凄いわねその自信、なんだか私も安心してきちゃったわ」

 

「そりゃなにより。蹴落とし合う関係だけど、お互い頑張りましょう」

 

「ええ!」

 

明るい笑顔で少し控えめに拳を突き出して来た梅雨ちゃんに応じて私も拳を優しく突き合わせる。

 

それと同時に、梅雨ちゃんの身体構造からその個性を予測する。

 

カエルの様な顔と体格、それに柔らかい拳に水かき、個性は大方「蛙」ってところね。

 

『さぁ!静粛に!!』

 

そうこうしていると講堂全体が暗くなり、恐らく試験官でありおよそ教師の格好をしているとは思えない女、18禁ヒーロー「ミッドナイト」がマイクで注目を集める。

 

『倍率三百倍のこの雄英高校に無謀にも挑む受験生共!試練の時間よ!!』

 

これまた挑発的なリリックで受験生達を、反骨精神で奮い立つ者と、怯えて萎縮する者に二分させる。

 

パッと見で殆どの奴が前者で後者は少数なのだが、この程度の修羅場で怯えて全力を出せない奴は要らないという、試験は既に始まってる的なやつなのだろう。

 

『時間押してるからサクッと言うけど!あんた達を待ち受ける試験の内容は、ロボットをぶっ倒してポイントをゲットすることよ!!』

 

ミッドナイトの背後にあるデカイモニターが四種類のロボットのシルエットとそれぞれのポイントを映し出す。

 

「イイねぇ…!私に相性抜群な試験じゃんか…!」

 

「シズリちゃん…すっごく悪い顔をしてるわね………」

 

対人戦闘でも多少は問題無かったが、相手が幾ら傷付けても問題無いロボットなら、一撃一撃が即死級のメルトダウナービームを直接ぶち込んでも問題無い。

 

「………あなたの個性、そんなにロボット対しての相性が良い個性なの?」

 

「えぇ、そりゃもう良いわよ…!」

 

『それじゃあ!更衣室で持参した服に着替えて試験会場に向かってちょうだい!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうしてやって来たスタート地点でジャージ姿になった私は軽い準備運動をしながら試験開始の合図を待つ。

 

デカイ壁に対して扉の幅が小さい、先頭に立つ程人も密集するので、スタートダッシュを切るのにも他の受験生を観察するのにも不利、という事で私は集団の最後尾へと移る。

 

ほとんどの奴は背格好から個性は予測出来ない、それでもここまで来てしまえばライバルの個性は関係ない。

 

『それじゃ、私が三つ数えたら試験開始よ!』

 

スピーカーからの電子音声に皆が身構えて静まり返えり、ミッドナイトの声に耳を澄ます。

 

『ひと〜つ!はい。スタート!!!』

 

勢い良く開いた扉と突然のスタートの合図に全員が硬直してスタートダッシュを切り損ねる。

 

「2と3は!?!?」

 

『若人は1と0だけ覚えてれば良いのよ!さぁ行った行った!!』

 

「クソが!!」

 

みんなと足並み揃えて走り完全にスタートダッシュには失敗したが………ここから挽回してけば良いだけだ。

 

光球を私を支点として背中付近に出現させ、メルトダウナービームを放射した時の反動を利用し、前方の集団を飛び越える大ジャンプを披露する。

 

強烈な反動を発生させるメルトダウナー、こいつは空間を支点にすると反動は受けないが、あえて自身を支点とすることで高速移動も出来るのだ。

 

『ニンゲンブッコロス!!』

 

「お出ましか!」

 

2m前後の1Pロボットが角から飛び出し私との距離を3m程に縮めるが問題無い。

 

「遅せぇよ!!」

 

西部劇の早撃ちなど比べものにならない速度で4本のエメラルドグリーンのビームを放射し、四肢を削り取った上で頭を消し飛ばす。

 

『シネ!ニンゲン!!』

 

わらわらと現れる10体のロボット共に対してこちらも10個の光球を浮かべて一体一体に照準を合わせ、たった一度の一斉射撃で全ての頭部を撃ち抜いてポイントに変える。

 

「ハハッ…!やっぱり相性抜群だなァ!!」

 

油断している訳では無いが、不思議と湧き上がる興奮を抑えられずに完全に悪党的な笑みを浮かべる。

 

『ブッコロス!』

 

路地裏の陰から飛び出したロボットの奇襲を純粋な身体能力で繰り出すサマーソルトキックで相殺、滞空している一瞬の内にメルトダウナーで真っ二つに。

 

連携もへったくれも無いロボット共の攻撃は単調ながらも数はあるので、身体能力とメルトダウナーの高速移動で攻撃を捌く。

 

いい具合に集まって来たところでメルトダウナーを背中からジェット噴射の様に使用して大きく飛び上がり、全てのロボット共を左眼の視界に収める。

 

「くたばれ鉄クズどもォ!!」

 

左眼と私の演算により最短の時間で消し飛ばす最適な射線と本数でロボット共は、砕けたアスファルト混じりの鉄クズになる。

 

「ヤバ…ちょっとやり過ぎたか………」

 

最後に華麗に着地を決めたところで、自分がテンションの上げ過ぎで少しハイになっていたことに気づいた………

 

「はぁ……こればっかりはどうしても直らない癖ね」

 

……まあ、元の肉体がヴィランみたいなものだし、しゃーないよな………?

 

「さて、切り替えて次を殺りましょうか」

 

ハイになってて気付かなかったけど、他の受験生の奴らも結構やるみたいね。

 

八本腕の奴に拳を巨大化させてる奴、体を鉄にしてフィジカルで戦う奴も居るし、これは中々見応えあるわ。

 

「私も負けてられな…っ!!」

 

突然地面が激しく揺れ出し他の受験生達は狼狽えて数秒動きを止めてしまい、私もバランスを保つために身構える。

 

『な、なんだ!?』

 

『何この揺れェ!?』

 

こんなのは隙にも入らないのに隙だと思ったのか、私を攻撃しようと飛び掛かって来たロボットを太いメルトダウナーで跡形も無く消し飛ばす。

 

それよりこの揺れだ、一瞬誰かの個性かとも考えたがこの規模の揺れを起こすなんてそれこそオールマイトだけなのでこの線は無い。

 

『お、おい!アレ!!!』

 

地震にしては余震も無く揺れが来やがった上に、緊急地震速報も私の義眼には届いていない、残された可能性は……

 

声の主の指差す先にはビルよりも高く見上げる程の‪”‬巨体‪”‬を持つ摩天楼の如きロボットが佇んでいた。

 

『これは0ポイントの巨大ロボット!受験生達!ステージギミックみたいな奴だと思って逃げ回りなさい!!』

 

嬉々としたミッドナイトの声が聞こえて巨大ロボットをステージギミックと称するが関係ない。

 

「さっきの揺れはアイツねェ……!!」

 

再び興奮が湧き上がって不敵な笑みが浮かび上がり、メルトダウナーのジェット噴射で飛び上がろうとした。

 

「きゃぁぁぁぁ…!!!!」

 

そのタイミングで視界の端で、揺れで固定が外れた落下する看板の下敷きになりそう耳からアンプが垂れた女が居るのを認識して………

 

「ったく…」

 

……私は自然とジェット噴射の方向を看板の方向に変更し高速で噴射した。

 

高速で空中を突き進み、女が下敷きになる前に看板を勢いのまま蹴り飛ばし、多少乱暴だったが見事に少女を助ける。

 

「ありが…「目の前で大怪我されるのは気分が悪いのよ!とっとと下がってな!!」…は、はいぃぃぃ!!」

 

完全に腰が抜けた奴を動かすのには、怒声で動かすのが合理的なので実践してみたんだが、案外上手く行くもんだな!

 

「シズリちゃん!!」

 

梅雨ちゃんの声が聞こえて身体はそのままに顔だけ向ける。

 

「おっ、ヤッホー梅雨ちゃん」

 

「さっきは凄かったわね!一瞬であの距離を詰めるなんてそうそう出来ることじゃないわ」

 

「ありがとね。ところであのデカブツぶっ潰すにはどうすれば良いかしらね?」

 

義眼を使って巨大ロボットの各部を観察して弱点を探る。

 

『あんなの勝てる訳ねぇだろ!!』

 

『に、逃げろ!!』

 

周りの群衆が逃げる中、唯一逃げない私と梅雨ちゃんをターゲットにして巨大ロボットは鈍重な動作で右腕を振り上げ、自身の足元に振り下ろして衝撃波と粉塵を撒き散らす。

 

「ケロォォォ………!!!」

 

蛙的な悲鳴を上げる梅雨ちゃんの前に出てメルトダウナーで壁を作り、飛んでくる小石や突風や粉塵等から身を守る。

 

「ケロ……?」

 

「梅雨ちゃんダイジョブ?」

 

「え、えぇ………大丈夫だけどこれは…?あなたの個性はビームじゃ…」

 

確かに私もたまにビームって呼ぶけど……メルトダウナーは厳密に言えばビームとは違うので、ビームと呼ばれたらそれはそれでモヤッとしてしまう。

 

「こいつは曖昧な状態で固定された電子を電子線でループさせて…ってこれは後にしておきましょう。

 

私はあのデカブツをぶっ潰して来るわ」

 

「ケロ!?ダメよ!早く逃げなくちゃ!」

 

「まあまあ、梅雨ちゃんはその辺で動けない人を助けててよ」

 

「いや…でも、これは試験だし。早く逃げて他のポイントを稼がなくちゃ………」

 

「梅雨ちゃん……

 

髪に付いた砂埃を払ってメルトダウナーの壁を消して梅雨ちゃんから二、三歩離れてから湧き上がる闘気に身を任せる。

 

…ヒーロー志望が逃げてどうすんのよっ!」

 

メルトダウナーのジェット噴射で今度こそ巨大ロボットに向かって飛翔する。

 

巨大ロボットは手を開いて左腕を振り下ろし虫のように私を叩き落とそうとするが、その指の間をすり抜けて二の腕付近に着地する。

 

「まずは…!一本…!!!」

 

真上に飛び上がって右腕を支点としてメルトダウナーを発動、全てを切断する刃渡り数十mメートルものロングソードとして一閃し、ロボットの左腕と二の腕から先を泣き別れにしてやった。

 

片腕を失いバランスを崩した巨大ロボットは大きく仰け反り反動で私も上空に投げ飛ばされる。

 

「なかなか根性あんじゃんか……!」

 

下手な姿勢で今にもぶっ倒れそうだが、巨大ロボットは意地でも私を倒したいのか残った右腕で私を殴ろうとしていた。

 

「それじゃ、こっちも……

 

 

義眼と私の演算能力で予め予測していた巨大ロボットの弱点である、胸部から頭部にかけて照準を合わせる。

 

続けて並列処理で光球を展開し、手を添えて慎重に制御しながら私の体を覆い隠す程の大きさまで拡大させる。

 

 

……全力でいくとしましょうか!!!」

 

指向性を与えられた大きな光球から極太のメルトダウナーが放射され、巨大ロボットの胸部はいとも簡単に融解して貫通する。

 

「まだまだァ!!」

 

それだけでは終わらせない。

 

メルトダウナーを天に向けて振り上げ、胸部から頭部までのロボットの巨大な体躯を真っ二つにした事で、エレクトリックな光の柱が摩天楼の如く打ち立てられた。

 

『試験終了ー!!!!』

 

最大火力をぶっぱなせて満足した私が着地地点を探していると、ブザーと共にミッドナイトが試験終了を伝える。

 

調整が難しいジェット噴射を細かく行って梅雨ちゃんの傍にヒーロー着地で舞い戻ると、梅雨ちゃんはポカンとした顔で迎えてくれた。

 

「お疲れ様、梅雨ちゃん」

 

「け、ケロ……ありがとう」

 

「そのケロ…って言うの可愛いわね。私も真似してみましょうかしら?」

 

「それは止めた方が良いわよ……」

 

「冗談よジョーダン」

 

5分の1くらい本気だったことは心にしまっておこう………

 

「さ。入試は終わった訳だし、早く帰って身体を休めましょ」

 

「………それもそうね」

 

どこか上の空な梅雨ちゃんと肩を並べて歩き、頭の片隅で上鳴の心配をしながら当然のように入学後のことに思考を巡らせる……………

 

 




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それでは次回!『とあるチャラ男の超電磁砲』

この小説の上鳴くんは物理的にも精神的にも原作より大幅に成長しておりますのでお楽しみに!

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