『スターーーート!!!』
「みんな悪いが痺れてくれ!
無差別放電10万ボルトォ!!!」
ミッドナイトの高らかな宣言とほぼ同時に私達は動き出す。この場の誰よりも早く個性を発動したのは上鳴だ。瞬時に青白い電撃が上鳴の周囲に密集した奴らに伝わり、瞬間的に彼らの身体の自由を奪った。
集団の中腹部に居た上鳴は痺れた奴らを踏み越え一気に最前列へと躍り出る。
「こういう盤面なら俺はクソ強ぇんだよ!」
「そう来ると思ったよ」
突如、後方から這うようにして一面の地が冷気に包まれこの攻撃の”主”より前方の者の足ごと地面が氷結する。広範囲を即座に氷で面制圧する個性。
そんな個性を持つ奴など雄英で一人しか居ない。
「上鳴、お前は厄介だ。重点的に凍らせとく」
「ま、マジかぁぁ!?」
轟だ。アイツは上鳴が先頭の奴らを痺れさせるのを待ってから、個性で先頭集団を一網打尽にし上鳴ごと追い越して暫定一位となった。
ま、この一連の流れは何となく予想出来た事だ。上鳴と轟が初動で何かする事を薄々感じ取っていたクラスの連中も、続々と後方から追い上げて行く。
ついでに上鳴の首から下が氷漬けにされたけど、予測を怠ったアイツが悪いのとなかなか面白い光景なので放置とする。
「それじゃあ行きますかッ!」
そして、集団の最後尾から状況を俯瞰していた私は周囲に人が居ない事を確認してからメルトジェットを全力噴射し、前方の有象無象を飛び越えトップスピードで飛翔する。
『オォォッと!!ここで麦野沈利が飛び出したァ!!凄まじい加速力!!でもなんで最後尾からスタートなんだ?』
『あいつの個性は強力だが殺傷能力が高すぎるからな。人を巻き込まないよう考慮したんだろ』
一度目の噴射で轟がスケートリンク状態にした地面まで飛び、二度目の噴射で先頭集団に追い付く。
「マジかよ麦野!?」
「ヤッホー切島、んじゃバイバーイ!」
さながら超凄い走り幅跳びの形で跳躍する私は高速な上に凍った足場の影響も受けない。
これなら暫定一位の姿も………見えた!!
「来たかッ……!!」
「ハッハー!覚悟しな非対称イケメン!!
喰らいなッ!メルト…」
「どけ!メスゴリラ!!」
メルトジェットの加速技を叩き込もうと演算したら、後頭部に軽い痛みと衝撃が走り視界が一瞬にして爆煙に包まれた、確実にさっき追い越した爆豪だ。
「だァレがメスゴリラじゃぁ!!!」
こんな爆破程度では私は揺らがない、でもメスゴリラと呼んだならばぶっ殺す!!
「死ぬぇェェ!!!」
「てめぇがなぁぁ!!」
『早速足の引っ張り合いだぁぁ!!』
一度地面に降りてから演算し、体制を整えメルトジェットで加速させた飛び蹴りを爆豪の腹目掛けて繰り出す。いくら直線的な動きとは言えども、超スピードの攻撃はそうそう避けられず腹にめり込んだ足は爆豪を墜落させる。
「ハッ!そのままくたばっとけ!」
『これは酷い!』
『良い奇襲だったが、爆破に大した威力が乗っていない。動きの速い麦野を無理に落とそうしたのが良くなかったな』
『だが忘れるな諸君!この競技はあくまで”競走”!ライバルを蹴落とすだけじゃ勝てないぞ!!』
憂さ晴らしは出来た。でもプレゼントマイク先生の言う通り、轟に差を付けられてしまった。後ろの奴らも無視は出来ないし、これはもっと飛ばして行く必要があるわね。
『何だかんだ最初の障害物だ!!まずは手始め……第一関門!ロボ・インフェルノ!!』
視線の先では入試で出てきたゼロポイントヴィラン数十の巨体が完全に道を塞いでいる。
ほとんどの奴からしたら超えるべき壁または絶望的な壁、私からしたらデカイ的にしか過ぎない。
一度立ち止まって対処する轟と違い、私は仰角を上げてメルトジェットで跳躍し、手足を動かしてバランスを整えつつ十個の光球を生成する。
「メルトダウナーを味わいなッ!!」
光球と同数の光線が空間を走り、狂い無く着弾した複数のゼロポイント脚部の装甲が煙すら残さず溶断された。
それだけでなく、光線の熱量で周囲も破壊され着弾点以上の効力をもたらす。
「感想を聞くつもりは無いけどネ」
動きが鈍ったのを見逃さずに二射目、出力を向上させた五本の光線が二列目の五体の頭部を貫通する頃には、蒸発音と反射熱による爆音が第一関門を支配していた。
「ぬるいなァ!これじゃストレス発散タイムよッ!!」
崩れ落ちるゼロポイントの頭部に着地、再度飛び上がり右手首より先に束ねられたメルトダウナーは絶対溶断の長刀となる。
メルトジェットの加速力に任せて三列目の標的まで飛び、その頭部を長刀で一閃する。斜めに一刀両断された頭部は断面に沿って滑り爆散。
爆炎を背にして笑う私は三十秒も経たず第一関門を突破した。
「ふっ、チョロイもんよ」
「そーんな油断が大敵ぃ!!」
私の”能力”が背後数メートル先の電位の急激な変化を感知した。肉体に染み付いた経験が思考を省き演算を開始した直後、雷撃が身体を貫く。
『メルトダウナー』で鍛えられた体はこの程度で意識を失う事は無い。ても体の中枢から全身に伝わる痛覚が演算を邪魔して加速出来ず、私は重力に引っ張られ落ちて行く。
「悪いな麦野。お前の優勝を応援してやりたい気持ちはあるんだ……
ただ、それ以上に俺はお前に勝ちたい!!!」
逆さになった視界に映るのは磁力で砂鉄を操り、翼と見立てて宙を前へ前へと舞う上鳴の背中だった。
Side上鳴
「轟に氷に漬けにされた時は完全に終わったと思ったな……」
氷を砂鉄で削って砕いてスタートした時には皆から完全に出遅れてしまい、本選に上がらぬままあわや予選での敗退となるかと思ったが、なんとかなった。
想像以上に地面の砂鉄含有率が高かったのと、みんなが先に行っていて誰も妨害しなかったのが災い転じて福となり、この”技”がすぐに発動出来た。
『砂鉄の大翼』、俺に足りない力を考えてる内に辿り付いた、機動力を補うために開発した技、ではなく……!
…………ホントは麦野が空を飛べてるのに俺が飛べなかったのが、なんか悔しくて必死こき練習した技だ!!
『ここで氷漬けにされていたA組上鳴電気が麦野を抑えて一位に躍り出る!!というかソレなんだぁ!?』
さぁて、地上から相当距離があるここには地上組からの攻撃は早々届かない。
一番の懸念点の麦野には、A(エネルギー量)を増した雷撃を打ち込んだ、ズルズル尾を引く雷撃だから麦野もすぐにトップスピードを出すのは難しいだろう。
しかし人生ってのは、積み重ねて来た物でなんとかなるものだとつくづく思う、実際に今の俺は砂鉄の翼で一位を独走中だ。
『激しく順位が入れ替わるカオスな戦況!ロボットごときで退屈している少年少女!!これでもチョロいと感じるかぁ?
第二関門!ザ・フォーーール!!!』
見えて来たのは底が見えない程に深い穴に足場が乱立し、見た者に根源的な恐怖心を呼び起こさせる第二関門だ。第一関門を難無く突破した連中も、これには思わず足を止めてしまう。
「えぇ…落ちたら死ぬだろこれ……俺には関係ないケド」
うん、俺飛んでるから障害物にならないなこれ。下から吹き上げて来る気流が多少邪魔なくらいだ。
分子間相互作用を参考にして砂鉄の粒を配置し、剛性としなやかさを両立させた翼をたわませ羽ばたき、俺は軽々と第二関門を突破した。
「……そろそろ来てもいい頃合いだが」
後ろから追い上げて来るだろう三人の様子が気になって来た。速度は落ちるが不意打ちされるよかマシと、偵察のため振り返る。
「それで動くかお前…!!」
「はっ!腕凍らせただけで勝ったつもりかァ?」
「じゃあ俺が二人まとめてぶっ殺してやんよ!!!」
「「やれるもんならやってみなァ!!(みろ!!)」」
うわぁ……俺そっちのけで三つ巴でやり合ってんじゃん………それぞれ脅威になるから積極的に潰しておく目的だろうけど、あれはどっからどう見ても個人的な怨念混じってるな……
『一位が独走、以下三人が不毛な争いを続行中!エンタメ的にはまあ面白いが、お前らそれで良いのかぁ!?』
『あのバカ共…終わったら説教確定だな』
うーん、南無三。同情が心の底から湧き出るな()
「よし!今の内にゴールに……」
「オラァ!!乾坤一擲メルトジェットッ!!!」
麦野の空間自体を揺らすような怒声が聞こえた後、砂鉄翼の片側が凍り付き、非常に薄く作っていた翼は簡単に俺の制御から離れる。
内臓がフワリと浮遊する感覚と、久方ぶりに感じるY軸X軸方向への回転に仰天しながら、残りの砂鉄を集めて落下の衝撃を和らげて危うげに着地する。
「あ、あっぶねぇ!?」
何をされたかは着地後、顔を上げてすぐに理解した。
俺より少し先で受け身をとっている轟、若干引いたような爆豪の顔、満足気な麦野。
『首席麦野ォ!ここで移動技を推進力へと使い轟を背負い投げ!上鳴にぶつけ先頭への妨害と敵の排除を一石二鳥で行ったァ!!』
『空中に居たあの僅かな時間で上鳴の翼を凍らせて地面に引きづり落とした。今の流れ、轟の技量が上手く噛み合ったな』
『誰が勝つか分からなくなった!!エンタメ的に最高の展開だァァァ!!』
混沌とする戦況、『半冷半燃』『超電磁砲』『原子崩し』『爆破』四者誰しもが勝利を手にする可能性を持つ。
復讐を願う者、友を超える者、戦を求める者、勝利を目指す者、それぞれがそれぞれの目的や思いを達成しないがために力を振るい死力を尽くす。
それは、最高のヒーローを目指す者も同様に………
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それと、また他に書きたい事が出来ちゃったので二週間程そっちを書かせて頂きます!マジですみません!
どれが好き?
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ギャグ要素多め シリアス少なめ
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ギャグ少なめ シリアス多め
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どっちも同じくらい