とある原子崩し(偽)の英雄学園   作:NEAR LIGHT

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書きたいこと書いてたら遅くなりました………


二十三話 第一競技 決着

 

 

Side麦野、爆豪、轟

 

 

(さァて……この状況、どうしてやりましょうか)

 

「死ィねッ!!」

 

戦闘と逆境を楽しむ笑顔を浮かべながらも、私の内心は穏やかじゃない。

 

現在の私は『半冷半燃』と『爆破』に挟まれながら、断続的に続く攻撃を左眼と全身で受け流しているからだ。

 

さっきから鬱陶しく邪魔してくる爆豪と轟に対処するのは、残念ながら簡単ではなかった。メルトジェットを使おうにも二人が近過ぎ、脚力で振り切ろうにも氷と爆破で邪魔される。

 

主導権は何とか握り二人を常に振り回している状況だが、そう悠長にしていられないわ。

 

(上鳴が新技で飛んでいる以上は殆どの妨害は無視出来るし、現に第二関門の大々的な落とし穴は無力化されたからね)

 

恐らく磁気操作の応用だろうが今は情報があろうがなかろうが意味が無い。磁力操作に干渉出来ない距離な上、メルトダウナーで翼だけ撃とうにも二人が邪魔ね。

 

再び一位になるには、最低でも二人のどちらかを排除して演算の隙を作る必要がある。

 

「だったらコレね…」

 

「よそ見してんじゃねぇぇ!!!」

 

自己酸化性のニトロに酷似した汗が多量の熱とガスを生み出して連鎖反応から大爆発を起こし、その奔流が私の顔面に直撃した。

 

その威力は余波だけで後列のもの達に圧迫感を与える凄まじいものである。

 

「反応し切れなかったなゴリラ女ァ!」

 

ようやくブチ当ててやったと、一瞬で快感に包まれた彼は溢れる脳内麻薬で興奮しながら、次なる標的を轟に定めて個性を振るう。

 

同じように轟も意識を私から外して、黒煙を挟んで両者ともに向き合い個性を振るう寸前。

 

黒煙が内側から僅かに脈動して蠢いてシルエットが浮かぶ。

 

シルエットが黒煙の範囲を越えて伸びると、健康的な肌を被る剛碗が個性発動寸前の両者の手を掴み、引いて、交差させ、互いに向けさせる。

 

結果、爆破が轟へ、氷結が爆豪へと、両者共に体勢を崩させた状態で互いの攻撃が顔面に直撃してよろめく。

 

「オラァ!!乾坤一擲メルトジェットッ!!!」

 

轟が叫びを認識する頃には、その体は回転しながら宙を舞う。より正確に言うならば、シルエットによってジェットの加速を乗せて背負い投げられていた。

 

「てめぇ…!」

 

「あーあ、顔は防いだけど服がボロボロじゃない。」

 

 

シルエットの正体は当然ながら、数刻前と殆ど変わらない様子の私こと麦野沈利だ。

 

………変わった点と言えば、多少なりとも傷を負い服が裂けてセクシーになっている事だ。

 

爆豪の目は目一杯見開かれ驚愕を語る。無理もない、爆豪が放った大爆発は、素の肉体強度が高い私でも喰らえば気絶必至の一撃だった。

 

「てめぇどうやって…!!!」

 

「簡単な話、メルトダウナーで受けたのよ」

 

「んだとぉ…?」

 

私が操るのは電子であり、曖昧にな状態に‪”‬固定‪”‬された電子。それは同系統の能力者を除き、一切の干渉に反応を示さない存在となる。

 

オリジナルの電子を高速回転させ触れたもの全てを溶解させる”‬‪壁”‬とは違い、電子を前面扇状に展開して運動を止める事で演算の簡易化と防御性能の向上に成功させた‪不可侵の”‬‪壁”‬、絶対破壊から転じて絶対防御のメルトダウナーだ。

 

「アンタ達が今まで見て来たのは最強の矛のメルトダウナー

 

さっき防御に使ったのが最強の盾のメルトダウナー

 

二つ合わさって矛盾、物理法則を逸脱した私の能力にピッタリなテーマだとは思わない?」

 

「チッ、ムカつく奴だなおい。そんな長々と臭いセリフを吐く暇あるなら前行けや」

 

「無問題、上鳴なら轟を足止め出来る。アンタをノックする程度の暇は出来るわよッ!」

 

一コンマ単位の演算を踏まえ、メルトジェットで加速させ繰り出す回し蹴りは大口径の砲弾の如し。一直線に同担へ向かう右足はこれまでよりも強力だ。

 

「直線的なんだんよバァァァカッ!!!」

 

爆豪ほどのセンスの持ち主なら、一度や二度も技を見ればその軌道を予測するのも難しくは無い。

 

爆破で私の頭上に飛んで蹴りを避けると、すかさず両手から爆破を繰り出す。

 

「効きませーン!」

 

(チッ、牽制用の爆破だったから威力足りねぇな)

 

大規模な爆破をするにはある程度の溜めが必要だと踏み、メルトダウナーの盾を使わず肉体で攻撃を受け止める。

 

ただ受けただけでなく、その間にメルトジェットの演算を済ませ、最大出力のメルトジェットで加速して腰を入れ拳を繰り出す。

 

「メルト昇〇拳!!!」

 

「かハッ…!?」

 

爆破で迎撃する間も与えず、右の拳を爆豪の胸に打ち込むと肺の空気が押し出される音がハッキリ聞こえる。

 

常闇にも使った、最大出力を誤認させて油断させる戦法だ。一度しか使えないけど、やっぱし初見での効力はグンバツね。

 

「女子の服を破いたんだから、上着は貰って行くわよ〜」

 

「く……クソがァ…!!」

 

焦げと煤でボロボロの上着を捨て、綺麗な爆豪の上着を奪い取って羽織る。

 

ったく、コスチュームと違って破れ易いのにバカスカ爆破しやがって、私の美しい裸体が全国中継されたらどうするつもりなのよ。

 

にしても、あの加速パンチを受けてまだ眼光だけで人殺せそうな目を出来るとは驚きね。上鳴にやったらゲロ吐いて倒れたのに()

 

『先頭が激しく入れ替わり、それに追い付かんとする集団も続々追い上げてくる!!一位と二位は既に最終関門だが、まだまだ逆転の目はあるぞッ!!

 

何故かって?それはこの名前を聞いて想像してくれ!!

 

その名も、怒りのアフガンだァァ!!』

 

これは……不謹慎がギリ勝つダブルミーニングね。

 

ていうか不味いわ。あの二人、もう最終関門へ辿り付いたらしいじゃない。追い抜くこと自体は問題ないと思うけど、最終関門の競技内容によっては後ろの奴らに追い抜かれかねない。

 

「…っと、これはゴリ押しじゃ厳しそうね」

 

そこで、私は初めて自らの足を止める。

 

眼前に広がるのは、およそ500mのよく見れば分かる隠蔽を施された地雷原らしきものだった。ところ狭しと埋め込まれた大量の地雷は、踏んで転べば連鎖反応を起こして即あの世行きなりそうな多さだ。

 

「ぎゃぁぁ!!?!?」

 

「ぐぅッ…!!」

 

『怒りのアフガン中腹で地雷が炸裂ぅ!先頭二人が宙を舞ったぁ!』

 

『後ろも遊んでる訳じゃない。このタイムロスは痛いぞ』

 

『ちなみに地雷の威力は成人男性がぶっ飛ばされ音にビビる程度!よく見たら場所が分かるから、安心して進めェ!!』

 

(あらら、上鳴と轟がぶっ飛ばされてる…………って、足を止め過ぎよ私。さっさとアイツら抜いて進まなきゃ)

 

上鳴達が起こした爆破を、私の‪アナリティカルエンジン搭載の”‬左眼‪”‬は細部まで正確に捉えていた。

 

横に広がらず爆破の威力の殆どを指向性を与え真上に向けていて、作動方式は磁気でも赤外線でも無く、踏んだら即爆破の感圧式。

 

地雷の大方のスペックは予想出来た、爆轟やら後ろが追い付く前にとっとと行こう。

 

「さァ!跳んで行こうじゃないの!!」

 

大きく助走をつけてから、地雷原の縁でメルトジェットを噴射し高く跳び上がる。

 

最高点に到達して放物線を描き始めた。地面に激突するまでの僅かな時間で着地地点を割り出し、光球を一つ出現させる。

 

‪”‬左眼‪”‬で着地地点の地雷に照準を定める。

 

「照準完了、ファイア!!」

 

光球から伸びた光線は地雷が埋まっている地面ごと直径1mの物資を溶解させ、その場には円錐状に崩れた地面だけが残った。

 

爆発はしない、信管が作動する前に地雷ごと消滅したからだ。

 

「よっしゃ成功ッ!残り470m!!」

 

その後は簡単、地雷が無くなって安全な地面にジェットで着地して同じことを繰り返す。

 

 

地雷を突っ切るのは爆発を起こして時間的に無駄、チマチマ避けて行くのも無駄。

 

最大出力のメルトダウナーで地雷の一掃はわざわざ後続に隙を作ってしまう。

 

という事でこの作戦だ。

 

 

左眼で地雷の位置特定を行い、地雷のピンポイントな除去はメルトダウナーで、落下エネルギーはジェットで殺し、あとは身体能力と演算でゴリ押す。

 

「我ながら天才的な作戦ねッ!」

 

(残りは約100m…!轟と上鳴はあと一回の跳躍で追い抜ける!!これなら行ける!!!)

 

後方から地雷の爆発音と喧騒が聞こえた。後ろの奴らも関門に突入したらしい。

 

もう遅い、あの位置から推力の桁が違うメルトダウナー()に追い付ける‪”‬‪個性(奴ら)”は誰も居ない。

 

 

 

「さよならお二人さんッ!!」

 

(ここで抜かれたら…!!)

 

(負ける…!!)

 

自分達の前に着地地点を定めてメルトダウナーを放射し、追い抜かんとする少女を前にして、彼らの思考は一致した。

 

脳を物理的に繋いだように、彼らの目的は一致した。

 

一人はライバルに道を作ることも厭わずに、地雷ごと地面から氷塊を伸ばし妨害を図る。

 

一人は照準演算の工程を全て飛ばした、最大最速の放電で迎撃を試みる。

 

 

尚も彼女は強かった。

 

落下のエネルギーを使った踵落としで氷塊は砕け散り、放電は‪”‬‪電子操作”で弱め、‬電撃に高い耐性のある肉体で受け切った。

 

結果的に両者の前に麦野沈利は降り立った。

 

 

そして、空間を震わせ腹の底に響く大爆発が後方から届いた。

 

 

その場の三名全員が‪”‬‪爆破‬()‪”‬の襲来を予期して備え……

 

……予期より外れた‪”‬‪個性()”が三名の前を行く。

 

「緑谷ッ…!!」

 

超パワーという個性を持ちながらも、一度それを使用すれば四肢を破壊させてしまう彼は、‪”‬個性‪”‬を使わずに一枚の装甲板のみで彼ら彼女らの前に介在している。

 

こうして四名の意思が、一位への渇望へと完全に統合された。

 

 

電撃にも氷塊にも対抗手段を持たぬ緑谷は真っ先に狙われ、その隙に麦野沈利は前へと足を踏み出す。

 

緑谷が編み出した対抗策は、装甲板で地面を全力でぶっ叩くこと。この行動で状況は打開した。

 

地面をぶっ叩いた装甲板は地中に埋没していた三個程の地雷を起爆して、三名を後方に押し出した。

 

更には、緑谷を前へと進む推進力を与え、不格好ながらも彼を遥か前へと推し進める。

 

 

「邪魔ァッ…!!」

 

「「邪魔はお前だ!!」」

 

妨害に動き出した三者はそれぞれに攻撃をしつつも、既にスタジアムの入り口の影に足を踏み入れた緑谷に向け走り出す。

 

麦野沈利は近すぎる距離でメルトジェットが使えず、轟焦凍は度重なる氷結使用で身体能力の低下、上鳴電気も砂鉄の大翼を使用するには砂鉄不足。

 

全員がフルパフォーマンスを発揮出来ずに平行線を続けたまま、一位を目指す。妨害すらも、それぞれが見事に噛み合い潰してしまい叶わない。

 

脚力で劣る緑谷を目の前に据え、ゴールラインであろうスタジアム入り口の終端が見えた。

 

三者三葉にラインへと触れようと手を伸ばす、尚も緑谷出久より前へと出られない。

 

『前評判をひっくり返してゴチャ混ぜにしたこのレース!

 

激闘の末に勝利を手繰り寄せた男が帰還したァァ!!!』

 

雄英高校体育祭一年の部、第一競技はここに決着する。

 

『その名は一年A組ィ!緑谷出久ダァぁぁ!!!』

 

 




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勝者は麦野でも上鳴でも無く、緑谷!

ちなみに、先頭集団に麦野が居なければ上鳴に速攻でシビレさせられ、轟と上鳴が居なければ麦野にノックアウトされていました。

ですが、薄氷の上でスケートをするみたいな状況で、見事に氷上を滑り切った彼の勝利です!!


そして上鳴ファンの皆様ご安心下さい、彼の見せ場はまだまだ残されております!

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  • ギャグ要素多め シリアス少なめ
  • ギャグ少なめ シリアス多め
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