とある原子崩し(偽)の英雄学園   作:NEAR LIGHT

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二十七話 フィジカルにも限界がある

 

 

『爆破』の激しい衝撃が腕から伝わり一千万を掴み損ねる。

 

この威力を生み出す指向性の『爆破』は明らかに使い慣れた奴の威力、それ即ち……

 

「借りは返したぜぇ!ビーム女ァ!!」

 

「やっぱてめぇか、爆破野郎」

 

『爆破』で飛び己の騎馬に戻った爆破野郎こと爆轟、奴の手には緑谷から奪い取った一千万ポイントのハチマキが握られていた。

 

完全に意識から抜けていた、機動力は私達が一番だといつの間にか思っていた。確かに騎馬としての機動力は私達が一番だけど、単体の機動力としては、宙を単体で飛べるこいつにはどうしても劣る。

 

爆轟本人のセンスがあるとは言え、この状況を予想出来なかった私の失態ね。

 

「やったね爆豪、あとは逃げるだけだね!」

 

「まだだ!目指すは完全勝利、あのビーム女のポイントも取るぞッ!!」

 

 

「ごめんなさい、あなた達。油断したわ」

 

「ポイントに損失が無いなら問題ない」

 

「轟さんの言う通りですわ。それよりも右腕は…」

 

『爆破』が直撃した腕は細い裂傷や火傷に塗れていた。直撃でも喰らったのは末端の右腕、しばらくは痛みで使えないけど頭と左腕が無事ならまだまだ動ける。

 

「めちゃくちゃに痛いけど、一分あれば使えるわ。というか!私に構ってないで備えなさい!!」

 

ギラギラとした視線でこちらへ突撃して来る爆豪騎馬は、猪突猛進もさることながら、ついでの瀬呂のテープが牽制で飛んで来ている。

 

「ウザったいわね。迎撃は私がやるから、八百万は木刀を。他二人は温存して頂戴」

 

「それはありがたいが……麦野くんは平気なのか?」

 

「誰に聞いてんのよ。このくらい平気よ、だからしっかりどっしり備えてなさい!!」

 

 

『ポイントが大きく動き!結末が読めなくなって来たこの瞬間、残り時間が五分を切る!!』

 

 

 

「ポイント寄越せビーム女ァ!!」

 

爆豪の『爆破』を伴った右の大振りを素の身体能力で避け、右腕の代わりに左腕で木刀を、メルトジェットで加速させ大上段から脳天目掛け振るう。

 

「そんな木刀当たんねぇよ!!」

 

「当てるつもりねぇからなァ!!」

 

狙ったのは爆豪の脳天じゃない、その下の騎馬である切島だ。

『硬化』の上から叩き付けられた木刀、たとえ身体を固めていようともこれは効く。

 

切島がよろめくことで僅かに鈍った爆豪騎馬の動き、その隙を見逃さず胴を狙って右から左へ木刀を振るう。

 

「舐めンなァ!!」

 

動きは鈍っても上の爆豪は健在なのだから、『爆破』で防御され木刀はへし折れ飛ぶ。

 

「やっぱそう来るわよねッ!!」

 

『爆破』の爆煙、その中から右腕を伸ばし爆豪のポイントに手を掛ける。

 

奴は私の右腕がもう使えないと判断したからこそ、防御に右の視界を潰してしまうほど高火力の『爆破』を使った。右腕が健在なら距離を離してでも右腕を警戒するはずだからだ。

 

そこに爆豪の想定を超えた超ストロングなフィジカルが合わさった初見殺し、確実に掴んだハチマキを引き抜い…

 

「引っかかったなァ!!!」

 

直後、私の顔面を強烈な爆破が襲う。

 

脳へと深く響く衝撃で途切れそうな意識を繋ぎ止め、強引に体制を保って拳を強く握って引き戻す。

 

「…ぎ………

 

むぎの…

 

…麦野さん!しっかりしてください!!」

 

「だい…じょうぶ………大丈夫よ」

 

五秒で取り戻した正気を使って状況を把握する。

 

とりあえず、轟が氷を張って他の騎馬とは距離を取れたようね。ポイントの損失は大丈夫ね、一本取られたけどプラスね。なんなら爆豪の元々持ってたポイントを取れたのでバンバンザイ。

 

でも完全に私のフィジカルを読まれていた。あのくらいじゃ右腕が平気なのも込みでカウンター待ちをしていたのね…

 

「麦野さん絶対大丈夫じゃないです!身体を張りすぎですわ!?」

 

「そうだぞ!いくら君でも限界があるだろう!」

 

「五秒くらい意識が飛んだ程度問題ないわよ。なんなら、これくらいの被害でポイントを取れたのは儲けものよ」

 

二人には小言を一つ二つほど言われたものの競技中なので控えめにしてくれた。言ってる事が完全に田舎のオカンのソレなのよアンタら。

 

「にしてもどうしましょうか……悔しいけど、爆豪騎馬は鉄壁。その爆豪騎馬とやり合ってる緑谷騎馬も厄介…」

 

もともと四面楚歌ではあったけど、その内二面が死ぬほど破り難い壁になった感じね。まさかここまで手強いとわ。

 

「もう勝ち逃げで良いだろ。今のポイントでも二位にはなれる」

 

「ダメ、私は絶対的な一位になるって宣言したもの」

 

「ですが麦野さん。この状況ではそれがベストかと…」

 

それだけは絶対無しだ。戦って結果的に二位になるのなら良い、でも自ら一位を妥協して二位の順位になるのだけは絶対に無しだ。

 

最後まで抗ってこその麦野沈利だ。

 

だから、脳ミソの一部が八百万と轟の合理的な提案を肯定しているのが腹立たしい。

 

「全く………最終手段だ。僕の必殺技を解禁する、これ以降僕は使い物にならないと考えてくれ」

 

「…へぇ…切り札あったのね。その必殺技、どんな事が出来るの?」

 

「なに、僕に出来る事は一つと決まってる。

 

ただ速く走ることさ」

 

『残り時間三十秒ッ…!!まだ逆転は狙えるから抗って見せろよエブリバディ!!』

 

得意気に下から私を見上げる飯田。合理性をかなぐり捨ててまでの私の渇望に応えるかのような目、それがどうにも嬉しくて頬が緩む。

 

「良いわねその目。対応してやるから、後先考えず全速力で飛ばしなさい!!」

 

「正気ですか飯田さん!?」

 

「正気も正気だ!僕は麦野くんの勝気に応えたくなった!!それに僕も取りたいんだ、一位を!!」

 

「はぁ………やるしかねぇな」

 

「行くぞ!レシプロ・バースト!!!

 

意識を置いて行く加速。

 

一瞬でメルトジェットのトップスピード並の速度に到達したというのにまだ加速し続けている。

 

常人なら何が起こったか理解出来ない速度域、メルトジェットを日頃から使う私なら対応出来る。

 

併せて左眼の処理能力を全開にして軌道演算をしながら、電撃と爆破が飛び交う二つの騎馬の間を通り抜けた。その後も推進力は衰えずに大きく二つの騎馬から距離を離し停止する。

 

「ッ…!どうだ麦野くん!!」

 

飯田は自分の足よりも結果を心配して私に聞く。

 

通り抜ける間際、私の左眼は限り無く引き伸ばされた光景を見ながら正確に一つのハチマキを選び取って奪っていた。

 

「取ったわよ…!!一千万!!」

 

ニヤリと笑う私と、ホッと一息つく八百万、嬉しそうにガッツポーズする飯田、ほぼ無表情の轟。

 

反応は様々だが、皆一様に喜んでいた。

 

『このタイミングで麦野チームが一千万を奪取ゥ!!残り十秒、これは決まったかァァァ!?!?』

 

ガチギレの表情を顔だけでなく全身で表す爆豪が飛んで来るがもう遅い。爆豪が数十メートルの距離を縮める前に、けたたましいブザーが競技の終了を告げる。

 

「最後はどうなる事かと思いましたが…やりましたわね!」

 

「完全に飯田のお陰ね。ありがとう、私のヒジョーに珍しいお褒めの言葉よ感謝しなさい」

 

「あぁ!存分に感謝させて貰うぞ麦野くん!」

 

『タイムアップ!!!!』

 

浮かれていてツッコんでくれない飯田に苦笑しつつ、少し慣れた全方位からの歓声を受け騎馬を解体して地面に降りる。うんうん、やっぱ自負の足で地に足着けるのが一番ね

 

クッソガァァァァ!!!

 

流石の爆豪もこれ以上やれば失格と分かっているので、私達に向かって来る代わりに地団駄を踏みながら爆破を空中に放っている。

 

続けて行われたのは順位発表、次の競技への足切りラインで四位より下は自動的に脱落した。

 

一位は当然私達、二位は次点で大量得点をしていた爆豪騎馬、三位はなんと驚き緑谷騎馬だ。

 

実は最後の瞬間レシプロ・バーストで一千万を取った時、『ダークシャドウ』が私のハチマキを奪っていたのだ。それを確実な一千万のためにスルーしたのが高得点に繋がったらしい。

 

 

最後に四位は………心操人使?

 

 

スゥ……誰だっけ?

 

 

 

 




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前の二十話で麦野と心操は会っていましたが、麦野の中では割と印象に残ら無かったので忘れています!

二十話自体、半年前に投稿したので多分読者も忘れています!(本当にごめんなさい)

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  • ギャグ要素多め シリアス少なめ
  • ギャグ少なめ シリアス多め
  • どっちも同じくらい
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