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「なによ、アンタから触れてくれても良かったのよ?」
「事情知ってててもデリケート過ぎて触れれねぇよ」
「盗み聞きとは、感心しないな」
マズったわね……上鳴と顔を見合わせて言葉を交わさずとも伝わる失敗の雰囲気。
ここ耐震設計のせいか入り組んでてバレないと思ってたのに、轟の野郎思ったより感が良いじゃない。しらばっくれるのも良いけど、盗み聞きしてたのは私らが完全に悪い。
ここはアレね、一周回してもういっそ堂々としましょう!
「ふっ、流石はナンバー2の息子ってところかしら?」
「おまバカっ…!」
「…さっきの会話を聞いてて奴と俺を結び付けてるなら、相当に意地が悪いな」
私の得意なことの一つ、見えてる地雷をあえて踏みに行く。相手を感情的にさせ本心を引き出す。相手と直に意見をぶつけ合いたい時に有効と言いたいが、今回は半ば好奇心で踏みに行った。
なぜか?それは轟が自分で自分の力に枷をはめているから。ここで言うこと言って、私とやり合う時に本気を出させるためだ。
「あら、知らなかった?私は意地悪で性格が悪い女なのよ」
「そうらしいな」
「わ、悪い轟!ほら麦野も!」
ちょ、イタッ!痛いじゃない!無理やり頭下げさせるようとするじゃないわよ!!
「轟、アンタは舐めプしてトップになるつもり?」
「聞・け・よ!」
「そうだ…俺は俺はクソ親父の個性が無くたって、いや一切使わず一番になって奴を完全否定する…!!!」
ふーん、それがアンタの目的か。直接的な復讐よりもこういう間接的な方が効くのは良く分かる、個性婚を迫ったエンデヴァーへの復讐としては最適な択ね。
「お前らに突っかかるのはそれが理由だ。時間取らせて悪かったな」
入学してから一番の感情の起伏を見せた轟はそう言って去って行く。その背中は何か決意を固めたような、一人で結論付けている風に見えて、私はそんな轟が気に食わなかった。
「なに一人でスッキリしてんのよ」
良く通る声だ。怒りが込められながらも、自分でも驚くほど透き通った声が自然と出た。
「親がなんだ、生まれがなんだ。重要なのはそこか?てめぇは復讐のために
…だけどな、お前自身は何を目指してここに来たんだ」
一瞬、ほんの瞬きする僅かな時間だけ轟の左目に炎が灯った気がしたが再び澄ました雰囲気に戻る。
「重要なのは…か、知ったような口ぶりだな。お前に、何が分かるんだ」
「分かるわよ。私も……あんたと似たような
「……どういう意味だ」
「…あーあ、言っちゃった」
衝撃が衝撃を呼ぶ展開に置いてけぼりなのか、それとも深く思案しているのか、緑谷は黙ったままだ。
轟は目を一杯まで見開いて驚愕し狼狽えていた。それはもう、さっきまでの激情を潜めた冷血男のガワが崩れるほどにだ。
「昔話といきましょう。
とある少女の生まれについてよ」
むかしむかし、あるところに。とある女の科学者が居ました。
科学者の研究分野は量子力学。
その科学者は自分の個性を駆使しながら研究を進め、若くして当時の既存説ををひっくり返すような提唱し証明して見せた。
天才と言って余りある才能の持ち主だった。
でも、この宇宙が無限でなく有限のエネルギーで構築されている用に、どんな天才にも限界はあった。
個性を使って進めていた研究に来た頭打ち。
科学者は焦らなかった。自分の限界を合理的な思考で片付け、研究を次の世代に、個性を次の世代に受け継ぐことを決めた。
同分野の研究者にこの話をすると、同じく研究に行き詰まっていた研究者は喜んで賛同し、両者の個性を併せ持つ娘が生まれた。
娘も父母同様に科学者の道を進み、受け継いだ研究をさらに進めた。理論は完成間際となり、新たな個性と資金力を求めて番となる資本家と、更なる個性を持つ子を産んだ。
「その子こそ、この麦野沈利というわけよ」
怒涛の展開に追い付けていない様子の緑谷、戸惑いと同情心が混じる視線を私へ向ける轟。反応は思ってたより静かな物だった。
(その目、腹立つわね)
緑谷は良い、轟の反応が気に食わない。
私は同情されるのは嫌いだ。勝手に私を下に見て憐れみを向けてくる態度も嫌いだし、何より勝手に解釈して
今すぐにでも食って掛かりたいのだが、こちらも轟の家庭事情を盗み聞きした手前、一度目は黙っておこう。
「ま、ここまで長々と話したけど、なにも同情を誘ってる訳じゃないのよ?」
私は両親が嫌いじゃない。私が研究者の道を選ばずとも両親は私を愛してくれた。私も両親を愛してるし研究に協力する時はいつでもする。
轟とは家庭環境が違い過ぎることは理解してる。それでも意図して作られた
「轟。私とアンタは同じ生まれで同じ土俵に立っている。だから、ナメた手加減なんてするんじゃねぇぞ」
「………お前こそ、本気で来い」
「はっ!誰に物言ってんのよ、私は常に全力だっツーの!」
轟の様子は生まれの話をする前と後で変わっていないようにも思えた。でも、本気で来いと言ったコイツの根性は、根源的な意思はまだまだ死んでない。
そこが分かっただけでも話した価値がある。
あーあ、最初は私が目的を果たしたいだけだったのに、意外とセンチな気持ちになっちゃったわね。
「私はお先に失礼するわ。上鳴の話じゃ、女子はチア服着てレクリエーションでダンス?しないといけないみたいだからね」
「待って」
去ろうとした私達を留めたのは緑谷の声だった。
「三人共、僕からも言わせて」
その声色は、その目は、その佇まいは腹を括った奴のソレだ。
どうにも私はこういう覚悟を決めた奴に弱い。こういう意志をガチガチに固めた奴の思いを無下にするのは、自分のポリシーに反するのもあるし、何より見ててワクワクしてしまう。
「僕は君達みたいに一人でここまで来れなかった。いつも誰かに助けられてばかりだ、この力だってそうだ。
笑って人を助けられる、オールマイトみたいなヒーローになるためには一番じゃないといけない。
君達と比べて、僕みたいな人間が言うのはおこがましいと思う。
けど、僕も勝つよ」
こんな時にも卑屈な自己評価だが、それでも良い。こいつは勝ち気を表したんだ。私もそれに応えるべきよね。
「そんなら、私も全力中の全力をお見舞いしてやるわ。覚悟なさい」
「即感電して負けても文句言うんじゃねぇぞ!」
「……………」
上鳴も応えた、轟も無言ながら応えた。ここに全員の意思表明は出来た、あとは、戦うだけだ。
「さっ!重い話はここまでだ、試合の前に飯もあるんだから明るく行こうぜ!」
「えぇ……切り替え良すぎじゃねアンタ」
「いいじゃねぇか!覚悟でガチガチに固めたらいざと言う時に柔軟になれねぇだろ?」
「一理あるかしら、緑谷。アンタも付き合いなさい」
「え?あぁ、うん!」
轟も誘おうとしたけれどいつ間にか消えていた。ま、流石にあの空気の後で飯行こうなんて出来ないわよね。
「レクリエーションって自由参加だったよね?麦野さんそういうのに積極的なタイプに見えないから意外だったな」
「あら?私は行事とか結構エンジョイするタイプよ。自分の人生余すことなく楽しんでなんぼだからね」
「それにしてもチア服って大胆だよね……」
「あー、それは先生がやれって言うからやるだけなのよ。そうよね上鳴?」
「ウェイ」
ん?こいつもうアホから回復してたはず……まさかコイツ
「おい、何か隠してんなら吐け。三秒以内にだ、吐かねぇなら殴る」
「ウェ…「メルトダウナー込みで殴る」……峰田と共謀してA組女子にチア服着せようとしてました!」
「上鳴くんそれは流石に…」
吐いたなコイツ、めちゃくちゃ最低なことしようとしてたじゃねぇか。何より私の左眼を突破して騙そうとしたのが腹立つ。
「待ってくれ!発案は峰田なんだ!情状酌量の余地はあるだろ!」
「ん、昼メシお前の奢りな」
「しゃ、しゃあねぇなぁ……!!」
試合前に殴るのは流石にダメだからね。寿司の屋台があったからそれ奢らせましょうか!
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