また間が空いてすみません!
試行錯誤したり学生故に勉強してたらこんなになってました!
Side 上鳴電気
『勝負アリ!青山くん戦闘不能!
芦戸さん二回戦進出!!』
芦戸と青山の試合がこれまた速攻で終わった。
芦戸の『酸』を利用した高機動力に、青山の『レーザー』の照準と射出速度が追い付かずにベルトを損傷させられ戦闘不能だ。
速攻終わったせいで見応えは無かったが、どっちが勝つか分からない試合だったのもあって面白い試合ではあったな。
さて次は⋯
「ついに麦野の試合か、無事に済めばいいんだが⋯」
「うん別に良いけどさ、なんで君こっちに居るの?」
俺に言うのは、拳をデカしたり、個性コピーの金髪を気絶させる人のイメージが染み付いたB組の姉御こと、拳藤一佳さんだ。
「いやさ、なんかクラスの奴が⋯
『今は帰って来るな!葉隠をヴィランにさせないでくれ!!』
だとか⋯
『帰って来たらお話がありますわ』
⋯って言ってきたんだよ。でも俺個人としては試合は特等席で見たい、んでこっちに来たというわけ」
「なるほど、全く分からない」
「うん!とりあえずよろしくな!」
勢いで誤魔化すのも大切、麦野の教えが役に立ったな。いやだって仕方ない、俺自身も意味わかんないんだから。
「なんでA組の奴がB組の領域にぃ⋯!!」
「まあまあ良いではないですか、汝の敵を愛せよ、ですよ物間さん」
殺気に似たものを飛ばして来る物間をなだめてくれたのは、さっき俺と覇を競い合ったクールビューティーの塩崎さんだ。
「フォローありがと塩崎さん!」
「い、茨とお呼びください⋯!上鳴さん!」
「おん?良いけど、じゃあ俺のことも電気って呼んでよ、これでお揃いだ」
「お、お揃い⋯⋯!!」
「だぁー!?塩崎しっかりしろぉ!!」
なんだかB組の連中から白い目というか、生暖かい目で見られている気がする。倒した相手に対して、さすがに馴れ馴れしかったかな?
「何やってんだか⋯⋯ほら、次はA組同士の試合だよ」
何故か呆れている拳藤さんに教えられ、麦野と飯田の入場シーンに目を向ける。
マイク先生の盛大な煽り文句に彩られた入場シーンは観客の歓声も相まって、会場全体を震わせるほどの熱狂を生み出していた。
どちらも驚異的なスピードが目に付くタイプ。どちらがより早いか、そんな好奇心をオーディエンス達は満たしたいのだろう。
麦野の凄いところはスピードだけじゃない、と言ってやりたい気持ちを抑えつつ俺は静観する。
『イレイザーからのありがーたいお言葉も聞けたとこで、スタート!!!』
合図の直後、麦野の背後に展開した大きな一つと、それを中心に旋回する六つのメルトダウナーの光球。
高出力化したメルトジェットでもするのか、普段より数が多いことからそう思ったけど、何やら違うらしい。光球の蛍光色が普段より弱く、代わりに淡い緑、淡翠の色になっていた。
なぜ淡翠になっているのか、一体どんな出力のメルトジェットなのか、どちらも分からない。
ただ一つ、先の二つ以上に、俺の第六感と直結する個性があの旋回する『メルトダウナー』をヤバいと言っていた。
最低サイズの『メルトダウナー』、それを大量に集めて圧縮成形したのが中心の光球、周囲六つの光球は中心の補助機能を目的としているんだろう。
発する電磁波からなんとなく察せられる用途と飯田の末路に、今日一番の冷や汗が一筋流れる。
直後、スタジアム全体に強烈な光量の淡翠の閃光が奔った。
一泊挟んで旋風が俺や観客の体を撫でた。
緑谷の超パワーの風圧とは違う、何かの小さい物体が高速で駆け抜けた時に起こる旋風。
予感させる光景との答え合わせをするため、未だに明滅する目を強引に開き勝敗を目に収めようとする。その場の誰もが、我先にと目を開き、ついに麦野と飯田の勝敗を目にする。
『しょ、勝負あり!!』
ステージに立っていたのは一人。
『飯田くん場外!!麦野さん二回戦進出!!』
当然、麦野だった。
場外になった飯田の様子はそれはもう凄いもので、凄まじい勢いでぶっ飛ばされ壁に激突したのか、壁に少しのクレーターとヒビ割れを作って倒れていた。
一体どんなスピードで飛ばされたらあんなことになんだよ……
「た、担架〜!!」
片や勝った方の麦野は、ステージの半ばで直立するだけで大喜びするでも無く、飯田が担架で運ばれて行くのを見届けて、自分が入ったのと逆の入場口から帰って行く。
歓声は、上がらなかった。
麦野の姿を捉えられない圧倒的なスピードや、飯田を気にもかけない無慈悲さ、呆気なさ過ぎる決着に対して声が出ないのでは無い。
麦野の背後、メルトジェットであろう技で加速した場所の地面から後方が入場口にかけてが、ただの加速の余波とは思えない程にも酷く抉れて消滅したからであった。
Side 麦野沈利
「ぶちゅぅぅぅ」
『メルトドライブ』を使って飯田を倒した私、麦野は今リカバリーガールから熱烈な接吻もとい治療を受けていた。
飯田から攻撃も受けずに完全勝利したこの私がなぜ治療?と、客席に居た奴らは思うだろう。
これを説明するには私がUSJでの戦闘の反省から新開発した必殺技、『メルトドライブ』の開発経緯について説明する必要がある。
USJでの戦闘。ヴィランが連れて来た改造人間脳無の一体、イレブン。
私は演算速度を限界まで高めるために、左眼のアナリティカルエンジンのリミッターを外した上で奴と戦い、リミッター解除の反動で気絶し、負けた。
肉体強度不足や演算の遅さ、敗因としては色々なことが考えられるけど、明確に私に足りなかったものが一つある。
それは圧倒的なスピード。
誰も追いつけない、回避も反応すら許さない、真に必殺の技と言える圧倒的なスピードで敵を一撃で無力化出来れば、リミッターも使う必要はないし余計なダメージも負うことはない。
こうした極端とも取れる設計思想と、意識外からの予想出来ない高速度から繰り出す攻撃、これをコンセプトにしてメルトジェットを基にして作ったのが『メルトドライブ』。
「はい終了。言われた通りに完治させたよ、それとアメちゃん」
「アメちゃん…?」
「あたしの『治癒』は治癒する側の体力やらカロリー使うんだよ。これで少しでも補給さね」
「なるほどね、ありがとうリカバリーガール」
「礼なんていいよ。私はもう一人を治療するけど、アンタはもうちょっと休んでな」
相手に絶対的な初見殺しを押し付けるメルトドライブには、相応のデメリットもある。
一つ目は、肉体強度の問題で私の肉体が耐え切れないこと。
メルトドライブの加速には耐えきれるものの、その後に敵に与える打撃の衝撃で接触部位の骨は良くてヒビが行き、悪けりゃポキッと骨折するのだ。
痛みからして今回は、飛び蹴りの態勢で運用して右足の軸とかかとを負傷したようね。
「はぁ…ままならないわね」
改めて自分の肉体性能を自覚して、思わずつぶやいてしまう。
新技は肉体性能のギャップを埋めるため開発した面もあるのに、その肉体性能が枷となってメルトドライブは100%の出力を使えば負傷必至の自傷技になってしまった。
メルトドライブは通常の『メルトダウナー』をも凌駕する凄まじい加速力があるが、デメリットとして肉体が耐え切れない。
結局は肉体性能の限界に足を引っ張られる。こんなこと、悔しいなんてものじゃない。
「浮かない顔をしているな……麦野くん」
ベッドの上の、私のメルトジェットをモロに受けて肋骨とアバラがバキバキになり、既にリカバリーされた飯田が語りかけてくる。
一気に大怪我直されたせいで凄くダルそうだ。
「ぼ、僕に勝ったことが……嬉しくないのかい?」
「い、いや…そういうことじゃないのよ。なんというか、どうにもならない壁にぶち当たっちまった、って感じよ」
「……僕で良ければ、相談に乗るよ」
「アンタ……優しいわね」
「こんな様子でも…委員長だからな!」
自分を完膚無きまでに打ち負かした相手に、自分が苦しい状況でも相談に乗ってくれる。あまりにも人が出来すぎてるわね。
惚れはしないけど。
「お言葉甘えて言わせて貰おうかしら」
それから私は、エンデヴァーやら自分の前世の記憶など核心的な部分はボカしながら、私の限界について『メルトダウナー』も含めて話した。
「なるほど。限界、か」
「こんなこと考えるだけ無駄だって、分かってはいるのよ。
ただどうしても、限界があるって考えると、何をするにしても気後れする気がするのよね」
私の歩みを止めるほどの悩みでは無い、ただ確実に私の歩みを遅める存在。飯田に話してどうにかなるなら、話してみる価値もある。
「…それで、君はどうしたいんだ?」
「どうしたいって、そりゃ…」
「出来る出来ないも当然重要だとは思うが、それ以上に大切なのは君が何を目指し、何を成したいのかじゃないか?」
「何を目指し何を成すのか⋯」
あぁ……そうだ、忘れていた。
私がトップを目指すのは、自分の能力不足を嘆くためじゃない。
誰かより強くなりたい、誰かと戦うことを楽しみたい。
そして、誰もが強いと口々に言い合うようなヒーローになる、そんな事が動機だったはずだ。
それがどうした。私としたことが、ここ最近は障害物競走やらUSJでの敗北に焦って見失っていた。
私が何よりも優先するのは、私の意志そのものだ。
「ブチのめした相手に励まされるなんて、まったく私らしくないわね」
だからこそ気付けた。
限界をいちいち気にしてる暇があるなら、限界そのものを超える方法を模索するべきだ。
私に限界なんて似合わない。ならば、出来る出来ないじゃない、私の意志と能力で今この瞬間から限界をブチ壊して行こう。
「麦野くんの考える限界は真の意味で限界でない可能性もある。『限界は超えてこその限界』、とも言えるしね」
「良いセリフね、それ私が言ったことにしていい?」
「図々し過ぎないか⋯⋯まあ、いいか」
言質頂きぃ!
ヴィランをぶっ倒した時用の決めゼリフ集にまた一つセリフが加わったわね。
「ありがとう飯田、私だけじゃここまでの事に気付けなかったわ。ちなみに私がここまで言うなんてホントに稀なのよ、とくと感謝しなさい」
「ハハ!その態度、調子は戻ったみたいで安心したよ」
柄にも無く微笑む私を見てつられた飯田も笑って応える。そんな飯田に感謝を念じながら席を立ち、外への扉に手を掛ける。
「そんじゃあね、私の活躍しかと目に焼き付けるのよ」
「あぁ待ってくれ、言い方を変えるならこうとも言えないか?」
出て行こうとする私を上体を起こしてまで呼び止めて、また改まってセリフを吐こうとする。
なんだろう、飯田も決めゼリフを言いたいのかしら。
「Plus Ultraってね」
「⋯⋯はっ、最高の決めゼリフじゃない」
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