「よーっす!さぁ麦野様のお帰りよ!拍手喝采で出迎えなさい!」
「あぁ⋯お帰り」
「凄い活躍だったね⋯」
「あれー⋯?」
なーんか静かというか疲れてるというか、試合に出るメンバー以外の奴らが意気消沈って感じ。
ホントに拍手喝采は求めてないけど、もっと何かしらは欲しかったわね⋯
「アンタらが疲れてる理由って、そこでくたばってる葉隠と何か関係ある?」
視線の先には地面に転がる人型が入ったみたいに浮く体操服、十中八九で葉隠でしょうね。
「あー、なんというか。ウォーミングアップにしては激し過ぎない?」
「これがウォーミングアップに見えたなら、相当にお花畑ですわ」
「よね、ごめんなさい」
えぇ⋯八百万にお花畑とか皮肉られたんですけど、悲しい。私が試合に行ったあとにも相当な暴れ様だったみたいね。
B組のツル髪と上鳴がイチャついてたのがの原因でしょうけど⋯⋯⋯はぁ、体育祭が終わったら上鳴にはマジにお話しをしてやらないとね。
「で、切島とB組のステンレスくんの殴り合いはいつから始まったの?」
「うぉぉぉぉ!!!」
「うらァァァ!!!」
「ケロ、かれこれ5分はあの調子よ」
耐久力が持ち味の二人が殴り合ったそうなるわよねぇ⋯
スピードが持ち味の私と飯田が速攻で終わったのを考えれば、まあ個性通りの試合運びなんでしょう。
「こりゃ、長くなりそう……屋台にでも行こうかしら」
そうして数分後⋯⋯
「上鳴くん!!私、上鳴くんのことが好き!!!」
「おう!俺も好きだぜ葉隠!!」
「オレモスキ⋯⋯スキ!?」
「葉隠が気絶した!?」
「担架ぁ!!」
「私は何を見せられてんのよ⋯⋯」
屋台で買ったリンゴ飴をかじりながらぼやく。
切島とステンレスくんの試合がドローに終わり、常闇と八百万の注目の試合が始まらんとする時。
なんと葉隠は飛び起き覚悟の宿る瞳で、戻って来ていた上鳴の元へ歩み寄り先程の告白を行ったのだ。
まあ、上鳴にとっては愛の告白じゃなくて、好意の再確認だったのだが。
「アンタ……まさか個性開発した影響でクソボケになったちゃったの…?そうだったらごめんなさい……謝意はそんなにないけど」
「女の敵」
「処す?処す?」
「峰田ステイ!」
「なんか知らんけど酷い言われようだな……」
『第六試合、スタァート!!!』
そうこうしてる内に、八百万vs常闇の試合が始まった。
「行け!ダークシャドウ!!」
常闇の腹から伸びるダークシャドウは一直線に八百万へと向かい、その黒く大ぶりな鉤爪を振るう。
「くっ⋯!!」
狙いも振りも単調なれど、八百万からすればそのスピードと攻撃力に対応するので精一杯なのだろう。片腕から盾を生成し辛うじて一撃を防ぐ。
続く二撃目。これもまた同じように防御したが、ここで盾が腕より脱落、八百万は再び無防備となった。
「これは⋯」
「⋯終わりね」
私と上鳴がそう呟く。
そして、先の二撃よりもさらに助走を付けた『ダークシャドウ』の三撃目が、再度生成した盾ごと八百万を場外へと押し出し、決着する。
『八百万さん場外!!二回戦進出、常闇くん!!』
『圧勝!!正に圧勝、無敵のダークシャドウ!こいつ最強の個性じゃねぇのぉ!?』
「少し、型に囚われ過ぎね」
八百万の個性は『創造』、素材や構造を正確に理解することであらゆる物質を生物を除いて生成することが出来る。
動揺などの精神の揺らぎで生成速度にはムラがあるものの、確実な強個性であることには違いない。
「弱点をカバー出来るほどの演算速度があれば、大概の奴は倒せそうだよな。というか試合形式が悪いだろこれ」
「あとは、演算速度を上げるより、発想を変えてみるのも手ね」
物質への性格な理解が必要ならば、極限まで物質生成への思考を減らせば良い。
防御手段の生成を盾という装備ではなく、肌全体を覆う単純な金属という形で行えば、ただの金属を素早く創るだけで防御は行える。
初撃を凌いだら次にマグネシウムと点火剤を生成、マグネシウムの燃焼時に発生する太陽光に匹敵し得る強烈な閃光を利用して目潰しを行い、さらに時間稼ぎ。
この時間で距離を詰め、ゴム弾を詰めたグレネードでも催涙ガスでもお見舞いしてやれば、勝てない試合でも無かった。
まあ、いくら考えても後の祭りだ。
出来ることは、某錬金術士漫画勧めて発想力を豊かにしてもらうことね()
「そういや緑谷は?あのデータ厨の緑谷が試合を見ないなんてことある?」
「あー、なんか控室行ってたな。麗日へのアドバイスでもしてたんじゃねぇの?」
「あ、戻って来たな」
あの二人もなんだがフラグが立ちそうで立って無いのよね。恋人というか戦友って感じ、となると次の試合も何か策を用意してくるはず。
『入学前からちょっとした有名人!ヒーロー科、爆豪勝己!!』
『俺はこっちを応援したい⋯ヒーロー科、麗日お茶子!!』
「私情たっぷりの解説ね⋯⋯」
『第八試合ィ、スタァートッ!!』
合図と同時に麗日は爆豪へと真っ直ぐ走り出す。
麗日の個性『無重力』は触れることで発動する手前、爆豪へ接近することが大前提となる。だからこそ単純な突撃で間合いを詰める。
初撃は爆豪、いつかの戦闘訓練と同じ右の大振りを麗日に見舞う。
巻き上がる爆煙とステージの破片で爆豪の視線が遮られ生まれた一瞬の隙、その隙に爆破をモロに喰らったはずの麗日は爆豪の背後に回る。
爆豪としては手応えはあったのだろう。明らかに虚を突かれていた。
爆豪が爆破した対象、実のところそれは麗日の上着だった。麗日は自らの上着を咄嗟にデコイにして爆破をやり過ごし、背後に回ったのだ。
しかし、暴力的な『爆破』は無慈悲にも麗日の華奢な肉体を容易く宙に浮かせ吹き飛ばす。
「見てから対処されてるわね」
「反応速度がダンチだな⋯触れすら出来ないなら勝負になんねぇぞ」
蹂躙、あるのは一方的な蹂躙だ。
低い姿勢で爆破の影響をなるべく減らし接近する麗日、麗日の接近と同じ数繰り出される『爆破』が麗日を転がす。
会場内部からどよめきとブーイングが聞こえ始めた頃。
麗日のヤケとも取れる何度もの接近の繰り返しの意図に気付く、ステージ上空に無数の影があることに。
「ねぇ緑谷、麗日になんか作戦でも伝えたの?」
「いいや⋯⋯麗日さんは、一人のライバルとして自分の力で戦うって⋯⋯だから僕は何も教えてないよ」
「へぇ、いいじゃない。じゃああの」
そういうのは好きだ。
確固たる決意で不利益と分かっていながらも意志を通し、そうして己の力と策を講じて勝ち筋を生み出す。
自分自身がライバルであるために、己の誇りと意地を押し通すために。
私はそんな意地や根性がヒリつく戦いと同じくらい大好きだ。
「ククッ⋯!アンタのこと過小評価してたわ麗日ァ⋯!!」
「また麦野が狂戦士モードになってる⋯」
「狂戦士モード⋯?」
ほざく上鳴をあえて無視しながら、ステージ上空の通常の物理法則から外れた状態、『無重力』で滞空する数多の瓦礫を眺める。
浮遊する瓦礫や麗日の作戦に気付かず爆豪を罵ったプロヒーローを、相澤先生がイレイザーヘッドとして一言入れた数秒後。
応えるように『無重力』が解除され、瓦礫は通常の物理法則の範疇へと舞い戻り自由落下を始める。
『こ、これはァ!!流星群!?』
数多の瓦礫を浮かせ、上空に意識を向けさせないためのあえての低姿勢。完全に爆豪は策に嵌められた。
爆豪の頭上から振り注ぐ瓦礫はその証明だ。
触れさえすれば、無重力状態になった爆豪は『爆破』の勢いに対応し切れずにブレーキの感覚すら掴めぬ内に、自分自身の機動力に振り回され360°回転シェイク状態となる。
回避にしろ迎撃にしろ必ず隙と、そこに大きな勝機が生まれる。
「⋯って考えてるんでしょう。麗日は」
たしかに、麗日は爆豪を策に嵌めた。
意地と決意を押し通した。
それでも、埋められぬ差というものはある。
流星群に向けられこれまで以上の、入学以来に発揮する最大威力の『爆破』が向けられた。
最大威力の『爆破』は流星群の大部分を粉微塵にし、残った部分を小石程度の瓦礫に戻す。
「手が震えてる。あれが爆豪の最大威力ってことね」
左眼のズーム機能で見た爆豪の右手から、麗日の方へと視線を移す。
小刻みに震える手足にブレブレな身体の芯。それでも目は爆豪を見ていた、勝利を見ていた。
爆豪も応じて不敵な笑みを浮かべ構える。
だが、麗日の肉体は追い付けなかった。
麗日は次なる一歩を踏み出せずに崩れ落ち、ステージに倒れ込む。
それでも這ってでも前へとうごめく麗日に、爆豪は構えを解かずにいたところで、ミッドナイト先生の確認が入る。
それは麗日の敗北宣言とも同義だった。
「麗日さん行動不能。二回戦進出、爆豪くん!!」
両者とも油断も傲りも手加減も無かった。
その上での決着、誰からもブーイングは上がらなかった。
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今回は気持ちハイペースで進めました!
なんとか次で麦野の描写をしたいな⋯
どれが好き?
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ギャグ要素多め シリアス少なめ
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ギャグ少なめ シリアス多め
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どっちも同じくらい