いつも励みになってます!
「おー、お帰り爆豪。二回戦進出おめでと」
「おつかれ容赦なく女を爆破する爆豪」
「あぁん?!テメェだって女感電させてただろうがぁ!!」
「俺はさ、アレだよ。紳士だから手加減出来るんだよ」
「どの口が言ってんのよ女たらし」
試合から帰って来た爆豪にクラスそれぞれが労いの言葉を掛ける。ついでに上鳴が謎にキメ顔なのが腹立つ。
爆豪がハチャメチャにキレそうな表情をしているのを横目に切島とステンレスくんの腕相撲を眺める。
どちらか勝った方が私の二回戦の相手となる。正直言ってどっちが勝とうが、防御力自慢相手に取る戦法は変わらないので、あんまり興味は沸かない。
それより気になるのは、麗日がまだ帰って来ていないことだ。
やはりというか、あの負けは相当に堪えたのだろう。
意志はまだやれると叫んでいるのに、肉体が追い付けず限界にぶつかってしまう。つい最近まで、私もそのことに悩んでいた。
吹っ切れた後になってしまえば、なぜあんなことで悩んでいたのかと思ってしまう簡単な悩みだ。
限界にぶつかるなら限界をブチ破り、限界を更新して高く高く、誰も届かない程に高くしてしまえば良い。それこそ私のことを誰もが強いと言うほどの、到達不可能な限界にまでね。
それに、何も私は一人だった訳じゃない。
飯田が相談に乗ってくれたように、麗日が何かに悩んでいるなら、私も麗日の訓練に付き合う。これぞ助け合いの輪ってやつだ。
「おい麦野⋯⋯このバイオレンスビームゴリラっ!もう緑谷と轟の試合始まっちまうぞ!」
「だァぁレがバイオレンスビームゴリラですってぇ゙!!!」
「ギャァ!!??ごめんなさい!ごめんなさい!!」
我ながら物思いにふけっていた。
ふん、思考の海から戻してくれたことに免じて、ぶん殴るのはやめてあげましょう。
「ち、ちなみになんだが麦野。お前はこの試合、どうなると思う?」
「ま、そうねぇ⋯」
上鳴からの質問に、ステージに立った緑谷と轟に一度ずつ視線をやった後に一考を挟み答える。
緑谷はリカバリーで少し疲労してるとはいえ、両者ともにほぼ万全な状態だ。
となると⋯
「端点に言うと、緑谷が持久負けすると思うわ」
「緑谷が?」
「えぇ。緑谷は肉体が耐えきれないレベルの超パワーで、コンクリ壁程度なら余裕で木っ端微塵に出来るわ。
あれなら、轟の生成した大氷壁もぶっ壊せるわ」
おまけに腕を破壊しない程度のパワーで超パワーを扱うことも、騎馬戦の時はある程度は出来ていた。
緑谷は近付かれても、轟の氷結にある程度は対処出来る。
それは轟も同じなのだが、インファイトにさえ持ち込んでしまえばラッシュでハメ殺しすることが出来る分、遠距離でやり合うよりかは遥かにマシだ。
ちなみに、私が轟とやる時は速攻近付いてタコ殴りにする。
「え、なら緑谷が勝つんじゃないの?」
「セリフ取られた⋯」
横でウンウンと頷いて聞いていた芦戸にセリフを取られ、た上鳴は放っておき話を続ける。
「そうとも言えないのよね。ここまでの試合からして、超パワーを上回る程に氷結能力の方が圧倒的なのよ。おまけに瞬間火力も超パワーに匹敵するほどにある。
これじゃ緑谷の指が幾らあっても足りない。だから、緑谷が持久負けすると思う」
「たしかに緑谷って、反動避けてなんとかここまで個性を使わず来た感じがあるからな」
「はてさて、どうするかな」
最後に⋯⋯これは考慮しなくても良いかもしれないが、轟には左の発火能力がある。
戦闘中に左側は絶対使わない。そう言ったアイツの覚悟と親父との関係性を見れば、発火能力は使わないはずだ。
そう、使わないはずだ。
もしも、もしもだが、緑谷の覚悟が轟の覚悟をこじ開ける程のものであるならば⋯⋯
この勝負、緑谷の持久負けよりも早く決着が着く。
『スタァートッ!!』
スタートとほぼ同時に、最初の一撃を放ったのは緑谷だった。
指一本を犠牲にした超パワーから繰り出される衝撃波と暴風は、防御を試みた轟の氷壁を容易く砕いた。
デコピンの要領で指を弾くことで、超パワーにある程度の指向性を与えてあるようだ。威力と持久性を保つための最善策ね。
「でも、それでどこまで保つかしら」
今度は轟が氷壁を生み出す。迫る氷壁は緑谷を飲み込まんとして再度、指を犠牲した超パワーによって砕かれる。
何度か繰り返される氷結と衝撃波の応酬、周囲の空気は冷やされ衝撃波が飛ぶ度に、寒々とした風が私達を撫でる。
緑谷の顔には明らかな苦悶の表情が浮かんでいた。
既に右手の指は四本が潰れている。
ここで轟は氷壁を坂状にして生み出し距離を詰めた。
轟が緑谷へと肉薄し、あわや氷像in緑谷の完成かと思われたが、先の衝撃波を遥かに越える衝撃波がさらなる暴風を巻き起こす。
「腕一本だとこの威力、改めて見るととんでもないわね」
轟を場外スレスレの場所まで弾き飛ばしたのは、左腕一本を犠牲にした一撃だ。氷結でブレーキを掛けた上での轟を端から端まで吹き飛ばすのは、流石の超パワーと言ったところだ。
しかし、反動で紫に変色した両腕は、超パワーの残弾を全て使い切ったことを物語る。
「さぁて⋯⋯どうするかしら?」
これ以上超パワーの使用は出来ない。
残るは使用困難の両腕と筋肉質な肉体、それとよく回る頭だけだ。
ここからどうするか、観客のほとんどが固唾を飲んで見守る中、緑谷へと迫る氷壁が衝撃波で砕かれる。
「やっぱりアンタイカれてるわねェ⋯!!」
氷壁を砕いたのは、やはり超パワーであった。
「うわぁ⋯麦野が良い顔してる⋯⋯」
「良い顔というか、これは悪い顔の代表例だろ⋯」
緑谷は、右手の既に破壊された指で超パワーを発動していた。威力自体は壊れた指でも変わらず、氷壁を容易に砕く高威力の衝撃波だ。
ただ、壊れた指で超パワーを発動するということは、痛めつけた指を強引に動かして更に破壊するということだ。
傷口に塩を塗るなんてものじゃない、傷口をバナーで炙ってこんがりさせるレベルの痛みが、緑谷の指には走っている。
考え付くことには考え付くでしょうけど、それを躊躇なく即座に実行する覚悟は推して知るべしだろう。
ここで轟の氷結の勢いが弱まり、緑谷に接近を許した。
それだけでなく、轟の半身に霜が降りてから、障害物競走を楽々突破するような身体能力が明らかに低下している。
何が起こったのか、瞬時に様々な可能性を脳内で巡られ、緑谷が轟の腹に一発手痛いのをぶち込んでから結論に至る。
「個性の発生上限ねッ⋯!」
科学で裏技のような個性の使い方をしていて、私自身に上限が実質的に存在しない故に見落としていた。
個性も身体機能の一種、筋肉は使い過ぎれば筋繊維のように千切れ機能は低下するし、骨のように瞬間的な圧力で折れて使用不可能になる。
ハハッ⋯!
上鳴のことも理論と肉体的の面からそうやって少しづつ鍛えたってのに、轟の大規模攻撃に惑わされた。
ナンバー2ヒーローの息子、大氷壁をも生み出す個性出力、となると個性の上限も途方も無い⋯⋯そんな先入観にとらわれて、冷静な判断が出来て無かったみたい。
我ながら失態ね。
「個性の使い過ぎ、俺がアホになるのと同じ理屈か」
「ねぇ麦のん、私にも個性の使い過ぎとかあるのかな?」
「葉隠は⋯まあ、ないんじゃない?アンタの個性の発生原理が不明だからハッキリ言えないけど」
「あったら葉隠の可愛さが俺以外にも理解出来たのにな」
「は?私は上鳴くんだけに伝われば十分なんだけど」
「アッハイ」
うーん、透明で見えないけど恐ろしい眼光。
私じゃなけりゃ見逃しちゃうわね。
「君のッ⋯!!力じゃないか⋯!!!」
葉隠と上鳴がバカやってる間に、緑谷と轟がなんだが凄く熱くドラマチックなことになってた。
そして轟は使った。これまで封じて来たはずの発火能力を、忌み嫌う親父から受け継いだ左側を。
経緯はわからない。
轟が左側を使った今、緑谷の負けは確定した。
それでも、緑谷の覚悟が轟の覚悟を上回るものを見せたからこその結果。あれほど使わないと言っていた左側を使わせたことを、緑谷を誇っていいだろう。
緑谷と轟、互いが互いの顔を見やった一瞬を挟んで、両者は動き出す。
轟は霜を剥がしたことで使える大質量の氷壁で、緑谷は後先考えないような両足での超パワー使用で氷壁を飛び越えようと跳ぶ。
限界まで近付いた上で超パワーを撃ち込もうとする緑谷に対し、轟は一気に左側の火力を引き上げ全面に火炎を放出。
火炎は緑谷自身を焼かず、むしろ緑谷が飛び越えようとする氷壁を狙っているように見えた。
審判の先生達の制止も間に合わず、両者の全力の一撃は衝突し、会場を震わせ全方位に衝撃波を撒き散らした。
「ギャァァァ!!??」
「ほい、メルトシールド」
「あっお前だけズルいぞ!!」
「うっさいわね、男でしょ我慢しなさい」
両者の衝突によって生まれた濃い霧が晴れた頃、ステージ上に辛うじて立っている人影が見えた。
その人影の右側からは湯気が上がり、左側からは僅かな炎が漏れていた。その光景は正に、『半冷半燃』を表しているかの様だった。
「緑谷くん行動不能。二回戦進出、轟くん!!」
評価付与と感想お願いします!
結局、緑谷vs轟を割とちゃんと書いちゃった。いい加減、次は麦野の戦闘書きたい⋯⋯
どれが好き?
-
ギャグ要素多め シリアス少なめ
-
ギャグ少なめ シリアス多め
-
どっちも同じくらい