いつかは助けが必要ないようにしていきたいな⋯⋯
第二回戦第四試合、常闇vs爆豪の試合。
両者共にA組屈指の実力者、オールラウンダーな『ダークシャドウ』、火力と機動力を兼ね備えた『爆破』、この対決に観客は大いに湧いたが、決着は早かった。
「⋯⋯参った」
『これは意外な展開となったァ!競り合うかと思われた試合は、恐ろしく早く終わった!』
「はへー、やっぱダークシャドウって光に弱いのね」
「やっぱってことは、なんか引っ掛かるとこあったの?」
「体育祭前に特訓した時に少しね。メルトダウナー直射したら、なんか物凄くダークシャドウが苦しんでたのよ、それ見てもしかしたらって思ったのよ」
「えぇ⋯⋯」
なぜかドン引きしてるのは、先の試合で上鳴に速攻ビリビリさせられた芦戸だ。
ちなみに、芦戸がビリビリして気絶した時に峰田が地上波で流せないようなことを口走ったので、千切れない程度に峰/田しておいた。
「ケロ、シズリちゃん。多分、ダークシャドウちゃんは直射されたから苦しんでたのよ」
「⋯なるほど!!光量関係なくメルトダウナーなんて直に喰らったら痛いわよね!」
また何故か、皆から白い目で見られた。
いやだってね?メルトダウナーの直射を耐えれた生命体なんて居なかった訳だし、盲点になってるのも仕方ないわよね?
「先程の切島さんとの試合といい、今回の事といい⋯⋯⋯麦野さんって意外と天然ですわね」
「まさか!上鳴くんが鈍感なのも麦のんの影響⋯!!」
「ぶっ飛ばすわよ」
だーれがあのクソボケ上鳴に影響を与えたって?
たしかに、戦闘スキルや闘争に対する心構えやらなんやらは感化させた気もするけど、断じてあのレベルの鈍感さに覚えはない。
『さァ!お次の試合は優勝候補のこの二人!』
『まずはコイツ!ここまでの勝ち方は感電一本、されどそれは合理的。未だ底知れないボルテージを潜める雷撃ボーイ、上鳴電気ィ!!』
上鳴は身体をほぐして準備を整え、時には地面のコンクリートやステージ外やらを眺めたり、余裕そうな表情ながらも轟の一挙手一投足に目を光らせている。
『対するは!遂に左側を開放したクールガイ、内に秘める熱血は巻き起こる炎の如く。それを御する冷静さは凍土の如し、轟焦凍ォ!!』
轟は緑谷戦で燃えた体操服を新調し、こちらも注意深く上鳴を見ていた。相変わらず目付きは悪いが、眉間にシワが寄ってない分、随分とマシな表情になっている。
流石にベスト4にまで上り詰めた者達に対する前口上だ、上鳴がビリビリなら雷撃になるくらい気合が入ってる。
試合開始前となって、両者がなにか言葉を交わしている。
試合のことか親のことかはたまた他のことか、短いやりとりの中で両者に目立った変化は無く、すぐに互いに構えを作って備えた。
一瞬、静まり帰る会場。
直後、試合開始の合図が飛ぶ。
『それじゃァ!三回戦第一試合、スタァートッ!!』
合図とほぼ同時、轟の足元から生える膨大な氷の壁。
それは誰もが考える轟の最善策。
基本的に氷は電気を通さない。ミネラルやら不純物が混じっているならある程度は通るが、轟の氷は個性由来故に純粋な氷に近く、純粋な氷は絶縁体に近い。
上鳴にとって絶縁破壊なぞお手の物だが、対象は何十メートルもの大氷壁、電撃を轟まで届かせるには十数秒の演算が必要なのだ。
「やっちまいなさい、
改めて、大氷壁は誰もが考える轟の最善策だ。
誰もが考えるなら、上鳴が予測していない筈がない。
『勝負あ⋯』
数秒しての決着宣言の寸前、大氷壁から轟の頭上へと伸びる眩い一筋の閃光。
それは高速で射出された金属が、空気との摩擦で発光する摩擦光と、それに伴う熱放射により発する閃光である。
それは観客からすれば何か凄い技であり、見る者が見れば、技と理解出来た。
「あっぶねぇなっ!!凍傷になったらどうしてくれんだよ!」
斜めに穿たれた氷壁から出て来て、呑気なセリフを吐く上鳴の表情はマジ焦りした時の顔だった。
マジ焦りしたのね⋯
「まぁいいや⋯⋯さーて覚悟しろよ。ビリビリにしてやんよッ!指向性放電5万ボルトッ!!」
速戦即決、上鳴は指で照準を定め電撃を飛し⋯
⋯⋯あっさりと防御された。
「アレ?」
速度自体は回避不能の代物なものの、予測は立てられる。照準に電圧の指定、演算に掛かる時間が氷壁での防御を辛うじて可能にしているのだ。
「なら、もっと撃ち込んでやるよ!」
上鳴の立ち位置は氷壁の半ば辺りで明らかな高所有利、電撃の弾幕で制圧するにはベストポジションだ。
「そろそろ左側使った方が良いんじゃねぇの!」
「いいや⋯⋯もう使ってる!」
「え、マジかッ⋯!」
炎どころの話じゃない、火炎の名を冠して申し分ないほどの熱量で向かう炎の奔流が上鳴を呑み込む。
アホね、さっさと気付きなさいよ。
『アァァッと!!上鳴が炎に包まれたぁ!!だが安心しろ、医療班はいつでも準備してるぞ!!』
大氷壁を使ったのにも関わらず、轟が氷壁を使えていたのは、炎の熱で身体の冷気を取り除いていたから。
それに気付けないとは、相変わらずa⋯「なーんてね」
『な、なんとッ!?火炎に呑み込まれ大火傷してたと思われた上鳴だが、無傷。無傷だァ!!』
「ちょっと焦げてたけどネ」
上鳴の周囲に薄く漂っているのは黒い粒、砂鉄だ。しかし、溶けたことを見積っても、砂鉄だけであの火炎は防ぎようがない。
答えもアイツの側に漂っていた。
『なんで氷塊浮いてるの!?ポルターガイストか!?』
『んなわけないだろ。大方、氷塊に砂鉄を埋め込んで磁力で操作してんじゃねぇのか』
「という訳だ!砂鉄の大部分は超電磁砲に使っちまったから、使える量は大してねぇけどな⋯」
ドッヂボールくらいの氷塊だ。上鳴は元々もっと大きかったはずの氷塊を使って火炎を防御したのだ。
「アイツいつの間に⋯⋯いや、流石と言うべきね」
「でもホントに、いつの間に砂鉄なんて埋め込んだんやろ?」
「入手経路自体は周囲の地面からだとは思いますが、埋め込む方法は⋯」
麗日、八百万の疑問には私も少し答えに詰まる。
「一番最初の大氷壁の時だよ」
代わりに、轟とやり合って満身創痍の両腕をガチガチに固定された緑谷が答えてくれた。
「なるほど⋯⋯⋯たしかにあのタイミング、誰にも見られてない状況なら仕込みをするにはうってつけね」
「え、どういうこと?」
「説明するね。スタートと同時、轟くんの大氷壁を、上鳴くんは磁力操作で集めた砂鉄を使って乗り切った。その次に超電磁砲、これで突破口を形成。
そして大氷壁から出てくるまでの時間、恐らくあの時間に氷塊を切り出して仕込んだんだよ」
「あとは氷壁の中に氷塊を隠して隠蔽、使う時に出すだけ。思ったよりちゃんと作戦練ってるじゃない、アイツ」
私達が話し込んでいる間にも状況は進んでいた。
火炎と宙に浮く氷塊が真正面からせめぎ合い、それに混じって飛ぶ電撃と防御の氷壁がぶつかり合う。
あまりの火炎による熱放射で、上鳴の背後にあった大氷壁の大部分は小氷壁くらいの大きさまで縮み。
あまりの電撃行使による急激な磁気変化で、周囲の磁場はステージを中心に渦巻く。
上鳴と轟はほぼ同じ視点の高さとなり、試合の熱とボルテージも一層増し、前哨戦は終わり次の段階へ移ろうとしていた。
派手で荒々しい攻撃の応酬に会場は湧き、二人の間にはある程度の拮抗状態が作られていたが、その拮抗状態を破ったのは上鳴だ。
轟の冷えた身体を炎で熱するために生まれた僅かな火炎の出力低下、それを狙って行動に出る。
「これでもぉ⋯喰らえぇ!!!」
上鳴背後の小氷壁、それが浮いた。
小氷壁なれど、それは小型トラック程の大きさ誇る氷の塊であり、重量は単純な小型トラックの比でなく、その十倍にもなる。
「どぉりゃァァ!!!」
「雑、ね」
氷塊の重量に対して、操作している砂鉄の絶対量が少な過ぎる。
全ての砂鉄を結集したとしても、相当な出力で能力を使うせいでバッテリー切れは加速する。
アイツの許容量ならば今は耐えられるが、勝負の分け目に立った時、どうなるかは分からない。
『上鳴のチルド速達便だァ!どうする轟ィ!?』
速度自体はそれ程でも無いが、とんでもない重量と圧力を今度は轟自身が受け取る側となる。
「ッ⋯!!」
ここに来て、轟の顔に明確な焦りが浮かぶ。
これまで以上の火炎、腕だけでなく上半身から放出する火炎の奔流が氷塊にぶつかり、一瞬の内に正面の大部分を溶かす。
上鳴の操作能力も驚異的だが、轟の出力も驚異的だ。
温度も範囲も、緑谷戦終盤で使い衝撃波を起こした大火炎に匹敵する、おおよその最大出力が振るわれ瞬く間に氷塊は水蒸気に変化した。
唐突、氷塊と火炎の衝突で生まれた霧の中を高速で進む影があった。
互いに視界の悪い霧の中、轟も冷却の追い付かない肉体で辛うじて影を受け止めるが、何かがおかしい。
ただ単純に電撃を飛ばしたんじゃない、辛うじて残った砂鉄を全て弾に使った電磁投射でもない。
もっと遅くて、質量があり、なおかつ
司会解説審判の先生達は何も気がつかない。もちろん観客席の大多数も、しかし私の脳髄に電流は走った。
上鳴が成し得る可能性の一つ、それを知っていたからこそ気付けた。
『なーんも見えねぇな、イレイザーなんか見えるか?』
『霧が深いな。いや、あれは⋯』
霧の中、高速で地を駆ける者が居た。
規則的な息遣いと氷壁を強く殴打する音が響いた。
再び火炎が飛ぶと霧は一気に晴れて、その全貌があらわになる。
そこには、拳を
してやったりと拳を打ち込み、生意気そうな顔で不敵に笑い、首から荒々しい雷撃の細長い羽衣を纏う上鳴。
ただそこでは、誰も彼もの予想を裏切る光景が広がっていた。
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という訳で、天衣装着と書いてランペイジ・ドレスです。
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ギャグ要素多め シリアス少なめ
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ギャグ少なめ シリアス多め
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