自称怪盗のカリスマデュエリスト   作:剣舘脇

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漸く、デュエル描写が書ける……()
色々考えてたら沼ってしまったのか、長らくスランプ気味でしたけどもなんとか完成出来て良かったです()


4th.ハノイ

 突如として始まった、ハノイの騎士と名乗るデュエリストとの一戦。何が起きても良いようにまずは先行を取りたかったが、先行後攻を決めるランプが照らしたのは相手側のデュエルディスク。つまりハノイの騎士が先行だ。先行後攻が決まるのは完全に運の為、今回は仕方ないと割り切ってハノイの騎士の展開を傍観する事に。

 因みに今回のルールは今LINK VRAINS(リンクヴレインズ)で大流行中のスピードデュエルで用いられるルールではなく、スピードデュエルが流行る前から……それこそ、デュエルモンスターズ発祥から現在に至るまで事細かく改定が続けられているマスターデュエルのルール。

 とはいえ、どっちのルールであっても先行ドローが出来ないのは共通のルールである為、先行を取ったハノイの騎士はドローフェイズを飛ばしてメインフェイズからの開始となる。

 

「先行は私だぁ!! ……フッ、フハハハハハ!! 完璧な手札だぁ!!」

 

「……完璧?」

 

 初期手札となる5枚の内、何枚かを見たハノイの騎士は声高らかに"完璧"と叫ぶ。その一言が引っ掛かった私は首を傾げるが、その疑問はすぐに解消される事になる。

 

「貴様のフィールドにモンスターが存在しない場合、このモンスターは手札より特殊召喚が可能! 私は《ハック・ワーム》を特殊召喚する! しかも一体だけではない、二体もだ!!」

 

(ハック・ワーム……サイバー流の代名詞的存在である《サイバー・ドラゴン》とは違って此方のフィールドにモンスターが居なければ特殊召喚出来るモンスターね)

 

 高らかに召喚を宣言したハノイの騎士の場に特殊召喚されたのは、見た目はどう見ても爬虫類にしか見えないのに機械族という、ちょっとした種族詐欺をしている手足の存在しない幼虫のような見た目のモンスター、ハック・ワームが二体。

 ソリッドヴィジョンで立体化されたハック・ワームを見ていた私は、元からそういった類の生き物を見る事に対して幾らか耐性があった為特段驚きはしなかったのだが……ふと気になってキスキルとリィラの二人を見てみると、私の背後で声に出さないものの、若干顔が引きつっているように見える。

 二人はああいう見た目のモンスターが苦手なんだろうなと思いつつ、流石に通常召喚権を残した状態で二体のモンスターを特殊召喚し、それだけで終わる訳がないだろうと思っていた私を他所目にハノイの騎士は更に手札を切って来る。

 

「フハハハハ!! 貴様に絶望を教えてやろう、怪盗ヴァイオレットよ! 私は二体のハック・ワームをリリース! 見よ、そして恐怖しろ!! これこそがリボルバー様より授かった最強のモンスターの姿だぁ!! アドバンス召喚!! 出でよ、《クラッキング・ドラゴン》!!」

 

 逐一高笑いするのが好きな人だなと心の中で思っていれば、ハノイの騎士は今しがた特殊召喚されたばかりのハック・ワーム達をリリースし、再びがら空きとなったフィールドへ新たにモンスターを召喚する。

 直後、空間を震わす雄叫びが轟くや否やハノイの騎士の背後の空間に亀裂が入ったかと思えば、間もなくして姿を見せたのは周囲に浮遊するビットを展開した巨大な黒鉄(くろがね)の龍。ハノイの騎士のエースであるクラッキング・ドラゴン。ハノイの騎士が"リボルバーから授かった最強のモンスター"と自負するモンスターが姿を現した。

 レベル8で攻撃力3000という、かの伝説のデュエリストである海馬瀬人がその生涯にわたって愛用し続けたという《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)》と同じレベルと攻撃力を備え、ハノイの騎士にクラッキング・ドラゴンと呼ばれたそのモンスターは此方を睨みつけ、低く唸り声を上げている。

 

「ハック・ワームにクラッキング・ドラゴン……ね」

 

「どうした、怪盗? 崇高なるハノイの騎士、その力の象徴たる我がクラッキング・ドラゴンを前にして怖気付いたのか?」

 

「怖気付く? いや全然。寧ろ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()の癖にそこまで大きく出れる貴方の方に驚いてるだけだから。ほら、さっさと進めてくれる?」

 

「ふ、ふん! 減らず口を叩けるのも今の内だ! 今に見ていろ……崇高なるハノイの騎士の力の象徴たるクラッキング・ドラゴンが私の場に降臨した以上、貴様は死ぬ程後悔する事が確定しているのだからなぁ!!」

 

 クラッキング・ドラゴンの唸り声にも動じずに淡々と告げた私の挑発地味た言動にまんまと乗ったハノイの騎士は怒り狂っていたものの、クラッキング・ドラゴンを出した後に後続を展開する事なく伏せ(リバース)カードを二枚伏せる。

 これで手札を全て使い切った状態となり、ハノイの騎士はそのままターンエンドを宣言。手札を全て使って全力の展開から察するに、ハノイの騎士の初期手札には相手の各種行動に反応して効果を使える、所謂(いわゆる)誘発系の効果を持つカードは無かったと見ていい。

 まぁ、それ以前に今目の前に居るハノイの騎士にクラッキング・ドラゴンをエースに据えたデッキを貸し与えたと思われるリボルバーなる人物が、手札誘発と言えば真っ先にその名が上がるであろう《灰流うらら》や《増殖するG》といったカードをあのデッキに入れていると思えないのが率直な感想だが。

 そんな事を考えつつ、流石に最上級モンスターが一体だけ棒立ちと恐らく此方を迎撃する為の伏せカードだけで終わる事は無いだろうと自身の初期手札を見つつ出方を見守っていた為、至極あっさりとターンエンドを宣言した事に対して肩透かしを食らったのは言うまでもない。

 

「……ん、それで終わり? もっと展開しなくて良いの?」

 

「先行一ターン目だからな、このくらいで十分だ。次は貴様のターンだ、怪盗。だが、貴様のターンが終わり次第、我がクラッキング・ドラゴンの餌食としてくれるわぁ!」

 

「そう、なら良いけど。まるで虎の威を借る狐ね……とは言っても連戦の疲れがあるし、さっさと終わらせて帰ろっと。それじゃあ……遠慮なく行くわ。私のターン、ドロー!」

 

 ハノイの騎士のターンが終わり、私のターンになる。初期手札から先程ドローした1枚を含めてこれで6枚。とはいえ、初期手札の時点で私が最も信頼を寄せている相棒を呼び出す準備は既に整っていた。だが、初期手札の時点で既に準備が整っている事に関しては精霊の力を抜きにしても当たり前のようにほぼ毎回揃っている為、傍から見たら積み込みを疑われても仕方ないだろう。

 とはいえ、ハノイの騎士も1ターンでクラッキング・ドラゴンを呼び出していた所を見る限りでは、これも運命力といった所だろうか。まぁ、ハノイの騎士は兎も角私には精霊界から来たキスキルとリィラの二人による精霊パゥワーがある為、一纏めに運命力がなせる技だと片付けられはしないが。

 それはさておいて今ドローしたカードを手札に加えつつ横目で見て僅かに口角を上げた後、二人と出会った切っ掛けとなったこのデッキを使い始めてから自然と身に染み付いた、私が最も信頼を寄せるエースであり相棒である()()を呼び出す為の展開ルートを開始する。

 

「……よし、ココはいつもの展開ルートで行きましょうか。さぁ、出番よキスキル! 私は《Live☆Twin(ライブツイン) キスキル》を通常召喚!」

 

『私の出番!』

 

『えぇー……()()キスキルがトップバッターなの? まぁ良いけどさ……偶には私に出番を譲ってよねー』

 

 私の隣で最初の出番を取られたリィラがムスッとしているが、そんなのはお構い無しといった様子で場に現れたのは、デフォルメされた頭身とピンクのツインテールが特徴の小さな女の子。その女の子は勿論、大人気ストリーマー『Live☆Twin』として活動している時のキスキルだ。

 Live☆Twinの姿の時のキスキルはEvil★Twinの姿とは違ってかなり小さい。その為、フィールドに出て直ぐに自分より遥かに大きく低い唸り声を上げているクラッキング・ドラゴンを目にしたキスキルは一瞬涙目で怯んだものの、直ぐに頭を振って『お前なんて怖くない』と言わんばかりにファイティングポーズを取る。

 私のフィールドに現れたキスキルの姿を見たハノイの騎士はと言うと、まるで親の仇のようにキスキルを睨みつけているように見える。だが、仮面をしているせいで表情は見えない。それからクラッキング・ドラゴンの方へ視線をずらすと、キスキルを見てより一層低い唸り声を上げている。

 

「Live☆Twin キスキルの効果! 私のフィールドにモンスターが存在しない時に召喚に成功した場合、デッキ、または手札から《リィラ》と名の付くモンスターを1体、特殊召喚出来る!」

 

「ふん、其奴が貴様のサイバースか……だが、貴様がモンスターを召喚したこの瞬間! 我がクラッキング・ドラゴンの効果も発動する! 私のフィールドにクラッキング・ドラゴンが存在する状態で貴様がモンスターを召喚、または特殊召喚した場合、そのモンスターの攻撃力をターン終了時までレベル×200ダウンさせる! 勿論これで終わるクラッキング・ドラゴンではない! 更に下げた攻撃力の数値分、貴様にもダメージを与えるのだぁ!!」

 

「げっ、攻撃力ダウンとバーンダメージの二つを内蔵した効果持ちのモンスターかぁ……厄介なモンスターね」

 

「フハハハハ!! 怪盗よ、クラッキング・ドラゴンの恐ろしさをその身に刻むといい!! さぁやれェ、クラッキング・ドラゴン! クラック・フォール!!」

 

 ハノイの騎士の指示を受けたクラッキング・ドラゴンは身も心も震わせる雄叫びを上げ、キスキルに向けて闇色のオーラを放つ。自身に迫り来る闇のオーラを目の当たりにしたキスキルは、慌てて躱そうとするもオーラの迫り来るスピードの方が速く、躱す暇もなくまともに受けてしまう。

 

『ちょっ、避けられ……ウワーッ!?』

 

Live☆Twin キスキル

ATK 500 → 100

 

 更にその余波が此方にも襲いかかり、キスキルの下げられた攻撃力分……つまり400のダメージが此方にも襲いかかって来た。ライフが削られた事によって体勢を崩したものの、この位訳無いと言わんばかりに体勢を立て直す。

 

「くぅっ……! 大丈夫、キスキル!?」LP4000 → 3600

 

『キスキル、ヴァイオレット、大丈夫!?』

 

『き、気分が悪くなっただけだから大丈夫……』

 

「この位全然平気! 心配してくれてありがとね、リィラ」

 

 クラック・フォールを受けたキスキルに心配の声を掛けつつ、大丈夫と返答したキスキルをよく見てみると、攻撃力が下がった影響なのか主にRPGゲームで良く見かけるステータスダウンのエフェクトが頭上に浮かんでいる。

 それと此方のライフが削られ、その余波で体勢を崩した私に心配の声を掛けてくれたリィラに大丈夫と言葉を返し、キスキルも力無くサムズアップを私とリィラに返したのを見た後に正面を見据えて言葉を続ける。

 

「続けるわ。キスキルの効果によって私はデッキから《リィラ》と名の付くモンスター、《Live☆Twin (ライブツイン)リィラ》を特殊召喚! おいで、リィラ!」

 

『お願い、リィラ!』

 

『任せて、キスキル!』

 

 キスキルが自身の隣の空間に何処かへと繋がるゲートを開けば、そこから飛び出して来たのは白いベレー帽を被り、キスキルと同じ頭身を持つ青髪の少女こと、キスキルと共にLive☆Twinとして活動をしている時のリィラ。

 サメのぬいぐるみを抱き抱えたまま彼女が姿を現してキスキルとハイタッチをした後にキスキルのの隣に立った瞬間、先程キスキルに対して"クラック・フォール"を使用したクラッキング・ドラゴンがまたも唸り声を上げている。

 

「フハハハハ! モンスターの数を増やしたようだが……残念だったな、怪盗!! リボルバー様より授かった最強のモンスターである我がクラッキング・ドラゴンの効果は、貴様がモンスターを召喚、または特殊召喚する度に発動するのだぁ!!」

 

「ターン1の制限がなく、此方がモンスターを召喚する度に発動する効果……厄介極まりないわね」

 

「さぁ、その身を以てもう一度クラック・フォールを喰らうと良い!! やれェ、クラッキング・ドラゴン!!」

 

 仮面越しにハノイの騎士を睨むも、何処吹く風と言った様子のハノイの騎士にあまり意味は無かった。それを他所目にハノイの騎士は高らかに効果名を叫び、新たに姿を見せたリィラに狙いを定めたクラッキング・ドラゴンは再び雄叫びを上げて先程と同様に闇色のオーラを放つ。それに気付いたリィラも先程キスキルがやった様に回避を試みるものの、やはり回避出来ずに喰らってしまう。

 

『えっ、ちょっ……逃げられ───きゃっ!?』

 

Live☆Twin リィラ

ATK 500 → 100

 

 そして、リィラがクラック・フォールを受けたという事は、またも此方に余波が襲い来る事に他ならない。リィラの下げられた攻撃力は最初に召喚されたキスキルと同じ400。つまり、私もまた400のバーンダメージを受ける事となる。

 これで初期ライフの五分の一が減った事になり、それによって立て直したばかりの体勢が崩れて片膝を付きそうになるも、二人にこれ以上心配をかける訳には行かないと気合いで持ち堪えて、クラッキング・ドラゴンとハノイの騎士を仮面越しに睨む。

 自身が最も信頼を寄せる相棒である二人を1ターンで呼ぶ為には双方の持つ効果による連続して特殊召喚をする必要がある私のデッキと、自身が存在する状態で相手の場にモンスターが出る度に攻撃力ダウンとバーンダメージを与えてくるクラッキング・ドラゴンの相性はまさに最悪と言える。

 

「いったいなぁ、もう……! って、リィラは大丈夫!?」LP3600 → 3200

 

『うん、私は大丈夫。だけど、ゴメン。私のせいでまた傷つけちゃったね……』

 

「この位平気ってさっき言ったばかりよ、リィラ。大丈夫、二度に渡ってダメージを受けたのはワザとだし、三度目はもう無いから……ね?」

 

 涙を浮かべつつ謝るリィラに対してそう告げれば、リィラは涙を拭って力強く頷く。リィラもキスキルと同じようにステータスダウンのエフェクトが浮かんでおり、私も二度に渡ってバーンダメージを受けたものの、Live☆Twinのキスキルとリィラの二人を私の場に並び立たせる事が出来た。

 二人ともクラック・フォールを受けてステータスが下がった影響か(いささ)か元気が無いように見えるが、コレで私が最も信頼を寄せる相棒である二人を呼び出す下準備は整った。二人と素早くアイコンタクトを取った私は右手を上空へ向け、とある一言を放つ。

 

「───現れなさい! 『カワイイ』を極めるサーキット!」

 

 その一言を告げると上空へ向けた右手からバチッ、という音と共にハートを模した電流が空へと走れば、上空に上下左右斜めの八方向を示す三角マークが目立つ電子的なゲートが現れた。そのゲートを確認した私は、更に言葉を続ける。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は《リィラ》モンスターを含むモンスター2体! 私はLive☆Twinリィラ、Live☆Twinキスキルの2体をリンクマーカーにセット!」

 

『ちぇー、今回はリィラが先かぁー』

 

『……そうは言っても直ぐに貴女も呼ばれるわよ、キスキル』

 

 今回は自分ではなく相方の方が先に呼ばれると知ってボヤくキスキルと、呆れたように首を振るリィラ。二人はそれぞれの属性の色を模した風となって飛び上がり、上空に現れたゲートの周囲を囲んでいる三角マークの内の二つ……正面から見て左と下にある三角マークに飛び込む。八つある内の二つの三角マークに光が灯り、コレでゲートは完成した。

 

「サーキットコンバイン! 来て、『カワイイ』を求める凄腕エージェントコンビの片割れ! リンク召喚! リンク2、《Evil★Twin(イビルツイン) リィラ》!」

 

『私達の大事な人を傷付けた罪は重いわよ……!』

 

 完成したゲートから舞い降りたのは、大人気ストリーマーであるLive☆Twinの姿ではなく裏の仕事を請け負った際に着る、青を基調とした怪盗服を身に纏ったリィラ。だが、リィラの顔をよく見てみると染み一つ無い綺麗な素肌に薄らと青筋が出ているように見えたが……恐らく気の所為だと思う。多分。きっと。

 それは兎も角、Evil★Twinの姿へ変身したリィラは私から見て左、ハノイの騎士から見て右にあるEX(エクストラ)モンスターゾーンに音も無く着地する。それを見たハノイの騎士は不敵な笑みを浮かべていた。リィラが特殊召喚されたという事は、クラッキング・ドラゴンの効果が再び使えると思ったに違いない。

 だが、ハノイの騎士が最強だと信じてやまないクラッキング・ドラゴンの効果には幾つか欠点がある。そして、今私の目の前に居るハノイの騎士は恐らくそれに気付いていない。クラッキング・ドラゴンの効果を聞いた際、その効果に幾つか欠点がある事に気付いてその内の一つを突いたのにも関わらず、だ。

 

「フッ……フハハハハ! 苦し紛れに新たなモンスターを召喚したようだが、血迷ったか怪盗!! 我がクラッキング・ドラゴンの効果は貴様がモンスターを召喚か特殊召喚をすれば何度でも発動するという事を忘れた訳ではあるまい!!」

 

「えぇ、忘れてないわ。私はそれを見越した上でリィラを召喚したの。万が一、コレを苦し紛れって思ってるなら……ご自慢のクラック・フォールとやらをやってみた方が早いわよ?」

 

「こっ、小癪な奴めぇ……っ! えぇい、クラッキング・ドラゴン! 三度目のクラックフォールだ! やれェ!!」

 

 先程とは違って余裕を見せる私に対して高笑いするのを辞め、苛立ちを隠せずにいるハノイの騎士の指示を受けたクラッキング・ドラゴンは、先と同じように雄叫びを上げた後に闇色のオーラをリィラに向けて放つ。対するリィラはと言うと、Live☆Twinの姿の時とは違って慌てる素振りを見せる事なく迎え撃った。

 然し、先程とは違って迎え撃つ形で闇色のオーラを受けたリィラの身体には特にこれといった変化も無い。勿論リィラのステータスに変化は無く、また私にもバーンダメージが及んでいない事を知る事となったハノイの騎士は酷く狼狽えている。

 

「なんっ、だっ、え、えぇっ……? 発動、したよな? エラーは出ていないから効果の発動はした筈……えぇい、何故其奴にクラックフォールが効いていない!? 何故貴様にダメージが入っていない!?」

 

「……さぁ? 何故でしょうね」

 

『フフーン♪ アンタの力はもう通用しないのよ!』

 

『わぁ……リィラのドヤ顔、久々に見たかもしれない……』

 

 クラッキング・ドラゴンの効果に絶対的な自信を持っていた筈なのに、その効果が効かずに平然としているリィラを見て狼狽えているハノイの騎士。先程まで余裕綽々(しゃくしゃく)といった様子でいた筈が、効果が通用していないと知った今はとんでもなく情けない姿を見せている。

 クラッキング・ドラゴンの持つ『召喚、特殊召喚されたモンスターのレベル×200の攻撃力ダウンと下げた攻撃力分のバーンダメージを与える効果』は、あくまでも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に過ぎない。

 Live☆Twinの姿の二人がクラッキング・ドラゴンの効果を受けたのも、レベルと下げられる分だけの攻撃力を持っていたから。では何故、私が新たに呼んだ相棒の片割れであるEvil★Twin リィラにクラック・フォールが効いていないのか。それは、今の姿のリィラはレベルの代わりにLINK(リンク)という数値を持つリンクモンスター。

 リンクモンスターはレベルの代わりにランクを持つエクシーズモンスター同様に元からレベルを持たない特殊なモンスターとして扱う為、リンクモンスターには召喚、または特殊召喚されたモンスターのレベルを参照して攻撃力ダウンとバーンダメージを与えるクラッキング・ドラゴンの効果は一切通用しないのだ。

 どうやら目の前に居るハノイの騎士は恐らくリボルバーとやらにサイバース族の事を教えられたが、リンクモンスターの事までは教えられてないのだろうか。仮にそうだとすると、あの狼狽えぶりにも合点が行く。とはいえ、わざわざリンクモンスターの事を教える義理も慈悲も私にはこれっぽっちも無いのは事実だが。

 

「い、一体何がどうなっている!? リボルバー様より授かったハノイの騎士の力の象徴たる我がクラッキング・ドラゴンは最強の筈なのに、何故だ……っ!」

 

「狼狽えてる所悪いけれど、私のターンはまだ終わってないわ! Evil★Twin リィラの効果! 私のフィールドに《キスキル》と名の付くモンスターが存在しない場合、このターン中はEXデッキから悪魔族モンスターしか特殊召喚召喚出来ない制約が付く代わりに墓地から《キスキル》と名の付くモンスター1体を選んで特殊召喚する! この効果で私はLive☆Twin キスキルを特殊召喚! 再びおいで、キスキル!」

 

『ほら、お呼びよ。キスキル』

 

『イェーイ♪』

 

 リィラが自身の隣の空間にゲートを作れば、そこから先程リンクマーカーに向かって飛び上がって行ったLive☆Twin キスキルが再び姿を現してリィラとハイタッチを交わし、彼女のすぐ後ろに元気良く降り立つ。

 とはいえ、レベルを持つキスキルを特殊召喚した為、今度こそクラッキング・ドラゴンの効果が発動し、攻撃力ダウンとバーンダメージの両方が此方に襲いかかってくるのは目に見えていた。だからこそ、普段の()()()()()()()で偶に使う事はあれど積極的には使わないとあるカードを切る。

 

「……フッ! さっきは何か姑息な手を使ったのかは知らないが、性懲りも無くまたモンスターを召喚したな、怪盗!! 今度こそクラック・フォールを喰らうが良い!!」

 

「ふん、高らかに効果名を宣言した所に水を差すようで悪いけど……それはもう見飽きたの! 私は手札から速攻魔法『禁じられた一滴(ひとしずく)』を発動!」

 

「なっ……何ィッ!?」

 

「禁じられた一滴の効果! 手札を任意の枚数墓地へ送り、墓地に送った枚数分相手のモンスターを選び、選んだモンスターの攻撃力を半分にして効果も無効化する! 私は手札を1枚墓地へ送り、貴方のクラッキング・ドラゴンの攻撃力を半分にして、更に効果も無効にするわ!」

 

 今度は問題なく効果が使えると分かったのか不敵な笑みを浮かべたが、それも束の間の事。リィラの効果で墓地より再登場したキスキルに反応し、今度こそ発動したクラッキング・ドラゴンの効果にチェーンする形で発動したのは、速攻魔法である禁じられた一滴。

 それに驚くハノイの騎士を余所目にクラッキング・ドラゴンが雄叫びを上げ、リィラの効果で再び場に呼び出されたLive☆Twinの姿のキスキルに向けて三度目の正直と言わんばかりにクラック・フォールを放とうとした時。クラッキング・ドラゴンの頭上に何処と無く神秘を感じさせる小さな杯のようなものが出現する。

 まるで黒鉄の龍が上げようとしていた雄叫びを遮るように出現した小さな杯のようなもの──聖杯──は、まるで誰かが意図的に傾けているかのように傾き、その淵から一滴だけ(したた)り落ちて来る。だが、聖杯から滴り落ちてきたその一滴がクラッキング・ドラゴンの頭上に落ちてくる前にハノイの騎士は伏せカードの内の1枚を発動しようとしたのだが……

 

「く、クソッ……! だったら此方も伏せカードを発動するまで───って、何故だッ!? 何故伏せカードが発動出来ない!?」

 

 ハノイの騎士が発動しようとしていた伏せカードの内の1枚は、聖杯の力によるものなのか、はたまた聖杯の淵から滴り落ちてくる水滴の力によるものなのかは分からないが、幾ら発動しようとしても一向に表にならずに沈黙を貫いている。

 本来であれば発動されたカード効果の発動にチェーンする形で発動出来る筈、それなのに発動出来ない理由が分からないといった様子で狼狽え、少ししてその原因を作ったであろう此方に向かって声を荒げるハノイの騎士に対して説明をする事に。

 

「───怪盗っ!! 貴様っ、一体何をした!?」

 

「今私が発動した禁じられた一滴の効果には続きがあるのよ。このカードの発動に対し、相手は私がこのカードの発動の為に墓地へ送ったカードと同じ種類のカードを発動する事が出来ないっていう効果がね」

 

「なっ……何ィ!? つ、つまり私が伏せカードの発動が出来なかったのは……!」

 

「お察しの通り。私が禁じられた一滴のコストで墓地へ送ったカードは罠カード『無限泡影(むげんほうよう)』。だから貴方は禁じられた一滴の発動に対して罠カードの発動が出来なかったって事。どうやら貴方が発動しようとしていたその伏せカードは罠カードのようね?」

 

「そ、そういう事か……クソッ、一度ならず二度までも姑息な真似を……っ!!」

 

 狼狽えを見せているハノイの騎士に対して禁じられた一滴の発動の為に墓地へ送った罠カードである無限泡影を見せつつ、効果の続きを説明してやると仮面越しとはいえ、ハノイの騎士が悔しさに顔を歪ませているのが分かる。私はそれを見ながら無限泡影のカードを墓地へ戻しておく。

 禁じられた一滴のコストで墓地へ送った無限泡影はフィールドにカードが存在しなければ手札から直接発動可能な効果を持っており、発動したらターン終了まで相手のモンスター1体の効果を無効にした上で無限泡影と同じ列にある魔法・罠カードの効果を無効に出来る効果を持つ罠カードだ。

 それもあってか無限泡影は出来る限り手札に温存しておきたいカードではあったものの、私の場には既にキスキルとリィラの二人が居る為手札から直接発動は出来ない。手札に抱えず場にセットしておいて相手の出方を伺う事も考えはしたのだが、恐らく出番は無いだろうと判断して場にセットせずに禁じられた一滴のコストとして墓地に送ったのだ。

 それに加えて今日は()()()()デッキ構築を変えて来ている為、何時もであれば無限泡影を3枚入れている所、今回は1枚しかデッキに入れていない。1枚しか入れていないカードをコストとして墓地へ送ってしまうのは勿体ない気もしたが、場にセットせず禁じられた一滴のコストで墓地へ送った事でハノイの騎士が伏せているカード2枚の内の1枚が罠カードだと知る事が出来た為、この選択は正しかったと思いたい。

 そうこうしている内に聖杯から滴り落ちた一滴がクラッキング・ドラゴンの頭上に落ちれば、まるで水を零した影響でショートした機械のように全身からスパークを撒き散らす。その上パワーも半減した影響なのかは分からないが、心做しか若干低空飛行になっているような気がする。

 

クラッキング・ドラゴン

ATK 3000 →1500

 

  禁じられた一滴の効果によってクラッキング・ドラゴンの攻撃力は半分になり、此方を散々痛めつけてくれたクラック・フォールも無力化出来た。これでこのターン中だけはこれ以上此方のライフと新たに召喚、特殊召喚するモンスター達の攻撃力を下げられる事は無い。

 この後に控える私が最も信頼を寄せる相棒である二人を呼び出す前にクラッキング・ドラゴンを無力化出来て良かったと安堵している私とは違い、リボルバーとやらから授かり、自身が最強だと信じ込んでいたクラッキング・ドラゴンの力に心酔しきっていたハノイの騎士はまるで信じられない、といった様子で呆然としている。

 

「わ、我がクラッキング・ドラゴンが……たった1枚のカードで効果も無効化されただけでなく弱体化もされた、だと……? こ、こんなの有り得ない……有り得る筈が無いっ!!」

 

「まぁ、現実逃避したくなる気持ちは分からなくもないけど……現実を見た方が良いわよ? それに、誘発ケアを怠るとこうなるっていう、いい勉強にはなったんじゃない?」

 

「ぐぅっ……! お、おのれ怪盗風情がぁ……っ!!」

 

 リボルバーとやらから授かり、自身が最強だと信じ込んでいたクラッキング・ドラゴンがたった1枚のカードであっさりと効果を無効化され、それだけでなく攻撃力も半減した事による悔しさの余り歯噛みをするハノイの騎士を横目に、私は次なる一手を考える。

 先程ハノイの騎士が禁じられた一滴に対抗する形で発動しようとしていた伏せカードの内の1枚が罠カードだと分かったのは、此方としては十分すぎるアドバンテージなのは確かだ。

 とはいえ、ハノイの騎士が発動しようとしていた罠カードが通常罠かカウンター罠か、はたまた永続罠かまでは分からないが、禁じられた一滴のお陰で発動し損ねた罠カードがハノイの騎士のフィールドにあると言う事を念頭に置いた上で、続けて私はもう一度右手を上空へ向ける。

 

「再び現れなさい! 『カワイイ』を極めるサーキット!」

 

 先程リィラを呼び出した時と同様に上空へ向けた右手からバチッ、という音と共にハートを模した電流が空へと走れば、上空に上下左右斜めの八方向を示す三角マークが目立つ電子的なゲートが再び現れる。それを確認した私は、言葉を続ける。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は《キスキル》モンスターを含むモンスター2体! 私はLive☆Twinキスキル、Evil★Twinリィラの2体をリンクマーカーにセット!」

 

『行くわよ、キスキル!』

 

『オッケー!』

 

 キスキルとリィラの二人は頷いた後に再びそれぞれの属性を模した風となり、上空に現れたゲートの周囲を囲んでいる三角マークの内の二つ……今度は正面から見て右と下にある三角マークに飛び込む。八つある内の二つの三角マークに光が灯り、コレで再びゲートは完成する。

 

「サーキットコンバイン! 来て、『カワイイ』を求める凄腕エージェントコンビのもう一人の片割れ! リンク召喚! リンク2、《Evil★Twin キスキル》!」

 

『私、参上! ……ってね♪』

 

 完成したゲートから舞い降りて来たのは、先程のリィラと同様にピンクを基調とした怪盗服を身に纏ったキスキル。リィラとは違って決めポーズまでバッチリと決めた後、先程リィラが居たEXモンスターゾーンへ姿を見せた事でクラッキング・ドラゴンが反応を示す。

 だが、反応は示すものの禁じられた一滴を受けた影響で既に効果は封じられている為か、依然として機械で造られた全身からスパークを撒き散らしており、辛うじて動く事は出来ても雄叫びを上げる事が出来ずにいる。それを余所目に私は更に続ける。

 

「Evil★Twin キスキルの効果! 私のフィールドに《リィラ》と名の付くモンスターが存在しない場合、このターン中はEXデッキから悪魔族モンスターしか特殊召喚召喚出来ない制約が付く代わりに墓地から《リィラ》と名の付くモンスター1体を選んで特殊召喚出来る! 私が特殊召喚するのは勿論、Evil★Twin リィラよ!」

 

『来て、リィラ!』

 

『分かったわ!』

 

 先程と同様にキスキルがゲートを作って手を突っ込み、キスキルを呼ぶ為に墓地へ行ったリィラを引き戻す。キスキルの手を取って彼女の背後に現れたリィラはLive☆Twinの時の姿ではなく、青を基調とした怪盗服を身に纏ったEvil★Twinのリィラだ。

 リィラの登場によって先程と同様にクラッキング・ドラゴンは反応を示すものの、禁じられた一滴の影響かやはり動けずにいる。コレにより、『カワイイ』を求める盗み専門の凄腕エージェントコンビであるEvil★Twinの二人が私のフィールドに揃った。

 Evil★Twinの二人は相棒が場に居る状態で召喚されると真価を発揮出来る効果をお互いに持っている。今回はリィラの効果が発動出来る為、躊躇う事無くそっちの効果を発動する。

 

「Evil★Twin リィラの第二の効果! 私のフィールドに《キスキル》と名の付くモンスターが存在する状態で特殊召喚に成功した場合、フィールドに存在するカード1枚を対象に取ってそのカードを破壊出来る! 私が対象に取るのは勿論、さっき貴方が発動しようとしていたその罠カード!」

 

『そのカード……ヴァイオレットの言う通り、嫌な予感がするの。だから其奴は頂くわ!』

 

 右手に予告状と思しき長方形の紙を構えつつ、ハノイの騎士の場にセットされている2枚カードの内の1枚……禁じられた一滴の影響で先程発動しようとして出来なかったカードに狙いを定めるリィラ。

 リィラの効果で対象に取ったカードが罠カードである事は禁じられた一滴の効果を聞いてパニックに陥ったハノイの騎士が口を滑らせてくれたお陰で分かっている為、迷う事なくそのカードを対象に取った。

 だが、今は禁じられた一滴の影響も無い為問題なく伏せカードを発動出来る状態。然し、発動せずに破壊される事を選ぶか、それとも対象に取ったカードを此処で切るかの判断はハノイの騎士に委ねられる。

 

「此処で使わずとも、どの道破壊されるのは変わりないか……ならば、破壊される前に発動するまでだ! 罠カードオープン、『威嚇する咆哮』! コレで貴様はこのターン、攻撃宣言を行う事が出来ない!」

 

 ハノイの騎士は罠カードだと情報が割れている伏せカードを、リィラに破壊される前に発動する事を選んだ。発動された罠カードは威嚇する咆哮。その効果はこのターン相手は攻撃宣言が出来ないというシンプル且つ強力なもの。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とも言える。

 

「───なるほど、さっき禁じられた一滴に対して発動しようとしていたのは威嚇する咆哮だったのね。なら、それにチェーンして私は手札からカウンター罠『レッド・リブート』を発動するわ!」

 

「……何? 今、手札から罠カードを発動すると言ったか? ククク、フハハハハハハ!! サイバースを所持しているとはいえ所詮はその程度か、怪盗!! ここで初歩中の初歩的なミスを犯すとはなぁ!! 罠カードは一度場にセットしなければ発動出来ない事を忘れたか!! コレは滑稽(こっけい)だなぁ!!」

 

「……何をそんなに高笑いしてるのかは知らないけど、コレはプレイングミスじゃないわ。よく見てみなさい?」

 

「ふん、見なくても分かるものをわざわざ見る必要はな───」

 

 私がここに来てプレイングミスを犯したと思い込み、それを高らかに嘲笑《あざわら》うハノイの騎士に対して、私が先程発動を宣言したばかりのレッド・リブートをよく見てみるように言ってみる。

 それに対して鼻で笑った後、改めて私の場で()()()()()()()()()()()レッド・リブートをよく見てみたハノイの騎士の顔はというと、余裕そうな表情から一転して段々と驚愕の表情へと変わっていくのが分かった。

 

「ちょ、まっ……まさか、その罠カードは発動しているのかっ!?」

 

「えぇ、その通り。レッド・リブートはライフを半分払う事で手札から発動出来るカウンター罠。貴方は私が焦ってプレイングミスしたものだと思って嘲笑っていたようだけど……残念だったわね?」LP3200 → 1600

 

「クソッ……!」

 

 今ので何度目か分からない悔しそうな声を上げるハノイの騎士の場には威嚇する咆哮のカードに描かれている、人間の顔とライオンの胴体とサソリの尾を持つモンスターである《暗黒のマンティコア》が現れ、今まさに此方の行動を阻害する為の咆哮を上げようとしている。

 そして、暗黒のマンティコアが現れるよりも先にキスキルとリィラの前には何かのレバーが取り付けられた小さな機械が音も無く出現し、二人が顔を見合わせた後にレバーを握ったのを見届けた私は続ける。

 

「レッド・リブートの効果! 相手が発動した罠カードの発動を無効にして、そのカードをそのままセットさせる! さぁ二人共、思いっ切りやっちゃっていいわ!」

 

『『オッケー、ヴァイオレット! せーのっ!』』

 

 互いに顔を見合わせた後に頷き、二人が声を揃えて力の限りレバーを下げれば、ガコンという大きな音と共に周囲が一瞬だけ暗転する。そして、暗転から復帰した時には先程発動していた筈の威嚇する咆哮がセットされている状態へと戻っていた。

 勿論、此方の行動を阻害する為の咆哮を上げようとしていた暗黒のマンティコアの姿も何処にも無い。だが、レッド・リブートの効果はまだ終わっていない。

 

「さてと、レッド・リブートの効果の続きよ。相手の罠カードの発動を無効にしてセットさせた後、相手はデッキから罠カード1枚を選んで自身の魔法&罠ゾーンにセット出来るわ」

 

「ふん。敵に塩を送ってどうする気だ、怪盗? 私は『リビングデッドの呼び声』をセットする! 仮に貴様が我がクラッキング・ドラゴンを突破したとしても次のターンには───」

 

「……セットしたのはリビングデッドの呼び声ね。まぁ、それは良いとして、レッド・リブートの効果にはまだ続きがあるの。レッド・リブートの発動後は私のターンが終わるまで相手は罠カードを発動できない。つまり、いくら貴方が迎撃手段を用意していたとしても、それが罠カードである限り、このターン中は発動が出来ないって事よ」

 

「───なぁっ!?」

 

 効果を使い終わり、説明もし終えたレッド・リブートを墓地へ送り、今日何度目か分からない驚愕の声を上げた後に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべているであろうハノイの騎士を横目に、ハノイの騎士が未だ発動する素振りを見せない伏せカードを見つつ、思考を巡らせる。

 

(ここまでの攻防でライフは大幅に失ったけれど、レッド・リブートのお陰でこのターン中はハノイの騎士が罠カードを発動する事を警戒しなくて良いのは助かる。これでハノイの騎士のフィールドに存在するカードは4枚。リィラの効果で対象に取った威嚇する咆哮は破壊出来るから3枚になるけど、問題はここまでの攻防の中で一切発動する素振りを見せないあのカード。アレが一体何なのかが凄く気になるな……まぁ、残りの手札を見るにこのターンで決着をつける事は出来る筈だし、仮に罠カードだったとしてもレッド・リブートで発動を封じているから、今はあのカードを気にしなくても良いかな?)

 

 二度に渡るバーンダメージに加えてレッド・リブートの発動コストにより、私のライフは既に半分を切っている。それに、初期手札を見てハノイの騎士にトドメを刺す為の手筈は初期手札の時点でほぼ揃っていたものの、詰めに持っていくには後一つ足りないと思っていた。

 だが、それも二人の精霊パゥワーとやらが作用した影響か最初のドローで3枚入れていた無限泡影の内、2枚を抜いた代わりに入れた2枚の内の1枚、最後のピースとなるあのカードが来てくれた事で揃った為、後はそれを実行するだけと考えた後で一旦思考を打ち切ってようやく順番が回って来たリィラの効果を使用する。

 

「見た所、これ以上妨害は無いわね? それじゃあ、最後にリィラの効果で対象に取ったそのカード……威嚇する咆哮は破壊させて貰うわね。頼んだわ、リィラ!」

 

『カワイイものじゃないけれど……それは頂くわ!』

 

 リィラの投げた予告状は先程レッド・リブートで発動を無効化してセット状態に戻した威嚇する咆哮へと当たり、貫通した事で破壊される。これで此方の攻撃宣言前に威嚇する咆哮で妨害されるという危険性は取り除けた筈だと思う。

 その代わりに墓地に存在するモンスターを攻撃表示で特殊召喚するリビングデッドの呼び声をセットされたものの、現時点でハノイの騎士の墓地に存在するモンスターはクラッキング・ドラゴンをアドバンス召喚する際にリリースしたハック・ワームのみの為、特に痛手でもない。

 だが、ここまで発動する素振りを見せていないあのカードが一体何なのかが気になる所ではあるものの、仮に罠カードだとしてもレッド・リブートの効果で罠カードの発動自体が許されていない為、問題ないのは確かだ。

 

「ふぅ……さてと、これ以上デュエルを長引かせる訳には行かないの。だからこのターンで終わらせる!」

 

 Evil★Twinの二人が私の場に揃い踏みになるまでの一通りの攻防を終え、一息ついた私は残った2枚の手札の内の1枚を見た後に改めて現状を確認し、このターンで決着を付けると高らかに宣言する。その様子を、遠くから観戦している何者かが居る事も知らずに。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「……Ai(アイ)。俺と同じサイバース族の使い手である彼奴の名は分かるか」

 

『彼奴の名前か? 彼奴は確か……そうそう、Violent(ヴァイオレット)だった筈だ。新人ながら卓越した決闘戦術(デュエルタクティクス)を持ち、破竹の勢いでLINK VRAINSのランキングを駆け上がっている期待のカリスマデュエリストだと、LINK VRAINSは勿論Den-City(デンシティ)でも噂されてるらしいぜ。Pray maker(プレイメーカー)様』

 

「……そうか。彼奴はヴァイオレットと言うのか」

 

 Aiが言う、俺と同じサイバース族を操る新人のカリスマデュエリストなる人物……『ヴァイオレット』とハノイの騎士のデュエルを観戦していた俺とAiは言葉を失っていた。そう思わせる程に彼女の決闘戦術は卓越した物なのだが、その決闘戦術は何処か俺と似ている節が見受けられる。

 彼女のデュエルを見たのは、Aiは勿論俺も初めてだ。にも関わらず、何故彼女と俺の決闘戦術が似ていると思ったのかは分からない。だが、もしかしたら彼女も俺と同じように1()0()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と頭の片隅で考えつつ、今の状況を整理する。

 ヴァイオレットの手札は2枚。フィールドにはEvil★Twin キスキルとEvil★Twin リィラの2体が存在し、伏せカードは無し。そして、まだヴァイオレットのメインフェイズは続いている。

 対するハノイの騎士の手札は0枚だが、フィールドには禁じられた一滴で効果を無効化されて攻撃力も半減したクラッキング・ドラゴンと伏せカードが2枚存在している。伏せカードの内の1枚は先程ヴァイオレットが発動したレッド・リブートの効果によってハノイの騎士が選んでセットしたリビングデッドの呼び声だと分かっている。

 場の状況は整理出来た為、続けてお互いのLPを見やる。お互いのLPはヴァイオレットが1600、ハノイの騎士が4000。LPの差だけで言えば既に1600までライフを削られているヴァイオレットの方が劣勢に見えるのだが、それでも尚彼女が負けるというヴィジョンが全く見えない。

 そんな中で先程まで展開されていた苛烈な攻防を制したこのデュエルの主導権は間違いなく彼女が握っているだろう。そんな事を考えつつ、俺はAiに問いを投げかける。

 

「……Live☆Twin、それにEvil★Twin。アレが奴の、ヴァイオレットが手にしたサイバース族で間違いないんだな? Ai」

 

『嗚呼、Live☆Twinはサイバース族で間違いねぇ。今まで幾度となく感じ取っていたサイバース族の気配と彼奴等の気配は100%合致してるからな。まぁ、今彼奴の場に居るEvil★Twinは悪魔族なんだけどな……』

 

「……そうか。彼奴に接触する前に聞いておきたい。お前はヴァイオレットが持っているサイバース族について何か知ってる事はあるのか。あるなら今すぐ教えろ」

 

『あー……その、なんだ。悪ぃ、プレイメーカー様。彼奴が持ってるサイバース族であるLive☆Twinに関してなんだが……俺も初めて見たサイバース族なんだ。彼奴、一体何処でサイバース族を手に入れたのか気になるな……』

 

「……何? お前も初めて見るのか、あのサイバース族を」

 

 俺がそう問いかけると、Aiは肯定の意味を込めて目玉だけの身体を上下に動かす。Aiがその気配を感じ取り、それでいて初めて見たというサイバース族であるLive☆Twin、そして恐らくLive☆Twinと関連性はあると思われる悪魔族のEvil★Twin。悪魔族とサイバース族、全く異なる種族を華麗に操る『怪盗』と呼ばれるヴァイオレット。彼女は一体何者なのだろうか。

 その疑問は彼女に接触した際に聞く事にし、『このターンで決着を付ける!』と宣言した彼女の方へ意識を向ける。このターンで決着を付けると声高らかに宣言した以上、彼女の手札には既にこの状況を(くつがえ)す逆転の一手を持っていると見て良い。

 

(……傍から見れば劣勢と見られるこの状況下、お前は一体どうやって覆す。俺と同じサイバース族の使い手、『怪盗』ヴァイオレット)

 

 そんな事を考えつつ、俺はこのデュエルの行く末を見守る事にする。だが、この時の俺とAiは知る由もない。サイバース族と悪魔族、二つの種族を華麗に操る彼女との出会いが、自身とAiを取り巻く捻れた運命を大きく変える事になる事を。




思いの外長くなっちゃった……(´・ω・`)
次でハノイの騎士とのデュエルは終わる筈。多分。
そしたら次はようやくVRAINSの主人公との邂逅かな……プロット練らなきゃ()

それはさておき、お読み下さりありがとうございました。
また次回(・ω・)ノシ
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