自称怪盗のカリスマデュエリスト   作:剣舘脇

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ようやくVRAINSの主人公こと遊作との絡みが書ける(´・ω・`)

遊作との絡みが書きたくて本小説のオリ主こと天羽椿希/ヴァイオレットが誕生してたりしてなかったり……←


5th.Play maker(プレイメーカー)

Field

 

Violet(ヴァイオレット)

LP 1600

Hand 2

Evil★Twin(イビルツイン) キスキル L2 攻1100

②Evil★Twin リィラ L2 攻1100

 

 □□□□□

 □□□②□

  □ ①

 □□③□□

 □リ■□□

 

③クラッキング・ドラゴン ☆8 攻3000(効果無効/攻撃力半減)

Hanoi

LP 4000

Hand 0

Reverse 2(リ:リビングデッドの呼び声)

※レッド・リブートの効果適用中

 

 ─────

 

(さてと……このターンで終わらせるって啖呵を切った以上、有言実行って事でさっさと終わらせなきゃね。最初のドローで最後のピースだったカードも来てくれた事だし。本当、抜け出す事を諦めていた灰色の世界から抜け出す切っ掛けをくれた二人には、感謝してもしきれないなぁ……)

 

 残った2枚の手札の内、最初のドローで引いてきたハノイの騎士にトドメを刺すとあるカードを見つつ、もう1枚を手に取る。今手にしたカードこそ奇跡に近い出来事によって出会い、カリスマデュエリストとしての道を歩む切っ掛けをくれた、()()()()()()()()()()()()()()()のイラストが描かれたカードだ。

 そのカードを見ていると、二人と出会う前の自分を思い出す。どういう訳か『天羽椿希(あもうつばき)』として二度目の生を受けてこの世界に産まれ落ちたのは良いものの、二人と出会うまでの長い時間、自分だけにしか見えていなかった灰色の世界を慢性的に過ごして来た。

 最初はそこから抜け出す方法を探るべく色々と奮闘していたが、何時しか諦めの境地へと至ってしまったが為に永らく抜け出す事を諦めてしまっていた。然し、不意の出来事とはいえあの時データストームに巻き込まれた際にキスキルとリィラの二人と出会う事が出来ただけでなく、二人はその世界から抜け出す切っ掛けまでくれたのだ。

 その事に関しては怪盗を自称するカリスマデュエリスト『ヴァイオレット』としてLINK VRAINSで活動を始め、暫く経った今でも感謝してもし切れない。そんな二人に心の中で改めて感謝を述べた私は二人とアイコンタクトを交わし、最も信頼を寄せる相棒(二人)を呼ぶ準備へと移る。

 

「……よし。行くわよ、二人共! 私は、私のフィールドに存在するリンクモンスター2体……Evil★Twinイビルツイン キスキルとEvil★Twin リィラの二人をリリース!」

 

「リンク、モンスター……? そうか、怪盗が呼び出していたのはリンクモンスターというのか。だが……待てよ? 今、貴様は其奴等をリリースすると言ったか!? 貴様は一体何を呼ぶ気だ!?」

 

「私が今から呼ぶのは、私のエースであり私が最も信頼を寄せる相棒である二人よ。二人は通常召喚が出来ない代わりに自身のフィールドに存在するリンクモンスター2体をリリースする事で手札、又は墓地から特殊召喚出来る!」

 

 ハノイの騎士の驚きの声を聞くのはコレで何度目だろうかと内心うんざりしつつ、自身のエースであり相棒を呼ぶ為の条件を説明しておく。リリースされたモンスターは光の粒子となって墓地へ送られるのが通常の演出だ。ハノイの騎士がクラッキング・ドラゴンをアドバンス召喚する際も同様の演出が取られている。

 だが、これから私が呼ぶ相棒である二人の場合は演出の兼ね合いなのかは不明だが、その演出が少し違っていた。リンクモンスターには"リンクマーカー"と呼ばれるリンクモンスターの特徴の一つである特有のマーカーがある。

 当然、Evil★Twinの姿へ変身した二人もリンクマーカーを有しているのだが、私が二人をリリースする事を宣言した時と同時に二人の周囲に薄らと存在していたリンクマーカーが光の粒子となって消えた。リンクマーカーを失った二人はお互い顔を見合わせた後に一瞬にして闇夜に紛れたのか姿が見えなくなる。

 

「───二人は無敵の怪盗エージェントコンビ。カワイイものを頂きに、今宵も月夜に紛れて華麗に参上! 来て、私の最高の相棒! 《Evil★Twins(イビルツインズ) キスキル・リィラ》!」

 

『『私達はEvil★Twins。今宵も華麗に参上! ……ってね♪』』

 

 二人が姿を消し、がら空きとなった私のフィールドへ一筋の月光が差し込んで来た。月光が照らし出すその先に居るのは、先程闇夜に紛れるように姿を消した筈のキスキルとリィラの二人。

 雲一つ無い夜空で燦然(さんぜん)と輝く満月を背景とし、リィラをお姫様抱っこしつつウインクを決めたキスキルにとキスキルに抱き抱えられつつもバッチリ決めポーズを決めるリィラの二人は音も無く私のフィールドのど真ん中へ降り立つ。

 フィールドのど真ん中に降り立って少ししてからキスキルはリィラを自身の傍へ降ろし、一度顔を見合わせた後に改めて決めポーズを取った。二人の決めポーズを見た限り、まるで毎週日曜の朝にやっている女児向けテレビアニメシリーズに出てくる、異世界からやって来た精霊に選ばれて変身する力を得て怪物達と戦う女の子達に酷似している。

 二人を視界に捉えたクラッキング・ドラゴンはお得意のクラック・フォールを放とうとしたものの、依然として機械で造られた全身からスパークを撒き散らしており、辛うじて動く事は出来ても雄叫びを上げる事が出来ずにいる。そんな二人の華麗な登場を見ていたハノイの騎士はというと、たじろいではいたもののすぐに威勢を取り戻して叫ぶ。

 

「其奴等が貴様の、怪盗ヴァイオレットのエース……だが! 貴様がエースを呼び出したとて、私はまだ負けたと決まった訳ではない!」

 

「……威勢だけは良いのね。まぁ良いわ、まずはキスキル・リィラの効果発動よ。キスキル・リィラの特殊召喚成功時、相手のフィールドにカードが3枚以上存在する場合、相手は2枚になるようにカードを墓地へ送らなければならないわ!」

 

「───は? 私のフィールドに直接干渉してくる効果だとぉっ!? っ、そうか! 貴様は貴様のエースが持つその効果を十全に使う為に、自分のライフを半分にしてまでレッド・リブートを使い、私にカードをセットさせてフィールドのカード枚数を増やしたとでも言うのか!?」

 

 キスキル・リィラの効果を聞き、何故私がライフを半分にしてまで相手のフィールドにカードをセットさせた意図を知って驚き、悔しがるハノイの騎士。仮面をしている為か顔は見えないが、もし顔が見えていたらコロコロと表情を変えている所を見れたかもしれない。

 それはさておき、慌てるハノイの騎士を余所目にキスキルとリィラの二人はというと、ハノイの騎士のフィールドに存在する3枚のカードの内、お互いにどのカードを奪い去るかを話しているような様子だった。

 

「まぁ、それもあるわね。さてと……貴方のフィールドに存在する3枚のカードの中から1枚選んで墓地に送って貰うわよ。貴方が選ぶのはどれかしら?」

 

「クソッ、私は貴様の手の平の上で踊らされていたって事か……! ならば、私は貴様のレッド・リブートの効果でセットしたリビングデッドの呼び声ではなく、最初のターンにセットしたカードを墓地へ送る……っ!」

 

「ん、そっちを選んだのね? それじゃあキスキル、リィラ! お願い!」

 

『オッケー! リィラ、行くよ!』

 

『勿論よ、キスキル!』

 

 苦渋の決断だったのだろう。ハノイの騎士は悔しげにしながらレッド・リブートの効果でセットしたリビングデッドの呼び声ではなく、先行1ターン目にセットしてから今の今まで発動する事なく残されていたカードを墓地へ送る事を選んだ。

 リビングデッドの呼び声を残したという事は、クラッキング・ドラゴンが突破された後の事を考えたからだと思われる。ハノイの騎士がリビングデッドの呼び声ではない方のカードを選んだと同時に二人は息を合わせたコンビネーションでハノイの騎士のフィールドにセットされているリビングデッドの呼び声ではないカード目掛けて駆け出す。

 そして、目にも止まらぬ早業でそのカードを颯爽と奪い去って二人で中身を確認した後にハノイの騎士の墓地へ送り付ける。そうして墓地へ送られたカードを見た時、ハノイの騎士がリビングデッドの呼び声を残した理由が分かった。

 

(墓地へ送られたカードは『炸裂装甲(リアクティブアーマー)』……相手の攻撃宣言時に発動出来て、攻撃してきたモンスター1体を破壊する攻撃反応型の罠カードか。危なかった……今、キスキル・リィラとして私のフィールドに居る二人は勿論、リンク体の二人にも効果破壊耐性が無いからね。安易にバトルフェイズに入らず、予めレッド・リブートで罠カードの発動を封じておいて良かったぁ……ま、本音を言えば二人が破壊される所なんて見たくないだけなんだけど)

 

 此方の攻撃に反応し、攻撃したモンスターを破壊してくる炸裂装甲を墓地へ送れて安心した反面、リボルバーとやらから授かった借り物のデッキの筈なのに初手でそれを引いてきたハノイの騎士に驚きを隠せずにいる。無論、炸裂装甲を採用したリボルバーなる人物にも内心ドン引きしている。

 炸裂装甲がセットされていたという事を知った今、同時に起こりえたであろう最悪の未来も想像してしまう。初手でレッド・リブートを引けずに目を瞑っても出来る程に身体が覚えている何時もの展開ルートでエースであり相棒であるキスキル・リィラを呼んだ後、直ぐさまクラッキング・ドラゴンへ攻撃を仕掛けたとしたら、炸裂装甲を発動されて効果破壊に耐性の無い二人は為す術なく破壊されていたという未来もあったかもしれない。

 とはいえ、仮に二人が破壊されたとしても事前にリンクモンスター2体の準備が必要であるものの、効果によって墓地からの蘇生が容易ではあるのだが……相棒である二人が為す術なく破壊される所を見ずに済んで良かったと内心ホッとしたのは言うまでもないが。

 

「クッ……炸裂装甲を失ったのは痛手だが、私はまだ負けてはいない! 見た所、貴様のエースである其奴等の攻撃力は2200。禁じられた一滴の効果で攻撃力が半減している我がクラッキング・ドラゴンを上回ってはいるが……その差は僅か700! つまり、我がクラッキング・ドラゴンを突破されたとしても私のライフはまだ残るのだ! どうだ怪盗、さっきは『このターンで決着を付ける!』とか声高らかにほざいていたようだが……それは不可能のようだなぁ?」

 

 唯一の迎撃手段だった炸裂装甲を失ったものの、私のエースであり最高の相棒たるキスキル・リィラの攻撃力を知ったハノイの騎士はまだ勝ち筋が残されているとでも思ったのか、先程私が宣言したこのターンでの勝利宣言を馬鹿にしつつ下卑た笑みを浮かべている。

 しかも私の怒りを誘う為かは分からないが、ご丁寧に私の声色までほぼ完璧に真似した事にも心底腹が立ち、フツフツと怒りが込み上げて来ているのが分かった。ハノイの騎士は恐らく、LINK VRAINSにて成りすましを防ぐ名目で使用を禁止されているボイスチェンジ機能をアバターに仕込んでいると思われる。

 それを用いて此方を煽り、冷静さを失わせてプレイングミスを誘発させようという目的で盤外戦術を使ってきたハノイの騎士。確かに盤外戦術は時に有効打に成りうる事もあるが……使い方を誤れば返って逆効果だと言う事をその身を以て教え込んであげようという気持ちで一杯になる。故に、現在進行形で込み上げ続けているこの怒りを、気の緩みで解放する事が無いように理性で抑えつつ、一時の間だけ考える。

 確かに、ハノイの騎士の言う通り今のキスキル・リィラの攻撃力では禁じられた一滴で攻撃力が半減したクラッキング・ドラゴンを突破出来たとしてもハノイの騎士のライフを少し削る事は出来るが、未だ1すら減っていない4000のライフ全てを削り切るのは不可能だ。()()()()()()、だが。

 

「───それはどうかしら? もしかして、貴方は私のエースにして最高の相棒である二人には、相手のフィールドに干渉する効果だけしか持っていないとでも思ってる?」

 

「なっ……その口振りだと、其奴等にはまだ効果があるとでも言うのか!?」

 

「えぇ、勿論。それを今から見せてあげるわ! Evil★Twins キスキル・リィラの第二の効果! 私の墓地に《キスキル》と名のつくモンスター、及び《リィラ》と名のつくモンスターが存在する限り……キスキル・リィラの攻守は2200アップする!!」

 

「なっ……何ィィィィィィッ!?

 

 デュエルが開始されてから何度も聞いてきたハノイの騎士の驚きの声だったが、恐らく今回は最大の絶叫だろうと内心で思いつつ、VR空間とは言っても大音量を聞くのは堪える為、反射的に耳を塞ぐ。横目で見るとキスキルとリィラも私と同じように耳を塞いでいるのが視界に入る。

 そして、今日一大きいハノイの騎士の絶叫を聞いた後、二人の纏うオーラがより一層強さを増したような気がした。それに加えて心做しか効果を無効化されて攻撃力も半減したクラッキング・ドラゴンも二人のオーラの圧に押されたのかは分からないが、スパークを撒き散らしてまともに動かせないであろう巨体を器用にくねらせて後ろへ下がっているように見えたのも多分気の所為だと思う。

 

Evil★Twins キスキル・リィラ

ATK/DEF 2200 → 4400

 

『フフーン♪ どうだ見たかー! コレが私達Evil★Twinの、ヴァイオレットの想いを引き受けた力だー!』

 

『私達の大切な人を傷付けた貴方達には……これくらいしても足りないけれど、ね?』 

 

 ぺっt……否、スラリとした体型ながらそこそこある胸を張ってドヤ顔を見せつけるキスキルに、指をポキポキと鳴らして静かな怒りを見せるリィラを目の当たりにしたハノイの騎士はというと、あんぐりと開いた口を閉じる事が出来ずにいる。

 それもその筈、今の二人はかの伝説のデュエリストである海馬瀬人が生涯に渡って愛用したとされるあの青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)3体を素材に、融合の魔法を使用して召喚される、あらゆるモンスターの頂点に君臨する史上最強にして華麗なる究極のモンスターである青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)に迫る攻撃力を手にしているからだ。

 とはいえ、目の前の光景を受け入れる事が出来ない、信じたくないという、攻撃力が倍に跳ね上がったキスキル・リィラを見たハノイの騎士が現在進行形で感じている気持ちは分からなくもないが、速やかにこの事実を受け入れて貰わねばならない。内心でそう思いつつ、コレで準備は整った為バトルフェイズへ移る。

 

「こっ、攻撃力が4400……!? ばっ……馬鹿なっ!? 我がクラッキング・ドラゴンより遥かに高い攻撃力だとぉっ!? こんなの、こんなのは有り得る筈が無いっ! わ、私はっ、リボルバー様に認めて貰う為に、貴様を倒して貴様の持つサイバース族を持ち帰らねばならないんだ……っ!」

 

「ふぅん……? 私を倒して、私の命よりも大事な二人を貴方の組織に持ち帰るって言ったかしら? そんな事……絶対にさせるもんですかっ!! バトルよ! 私はEvil★Twins キスキル・リィラでクラッキング・ドラゴンを攻撃! 頼んだわ、二人共!」

 

『オッケー、ヴァイオレット! さぁ行くよ、リィラ!』

 

『えぇ、あの憎き機械龍をぶっ飛ばしに……!』

 

「んなっ……やっ、奴等を迎え撃て! クラッキング・ドラゴン! トラフィック・ブラス卜ォッ!!」

 

 錯乱状態のハノイの騎士を余所目にこのデュエルに幕を降ろす為、キスキルとリィラはクラッキング・ドラゴン目掛けて駆け出す。それを察知したクラッキング・ドラゴンは技名を聞き、満足に動かす事の出来ない巨体を何とかして動かして口を開け、(まばゆ)い光線を放つ。

 ()()()()()()マトモに受けたらひとたまりもない威力を誇る光線。だが、禁じられた一滴の影響でその光線は弱々しく見える。更に言えば、その光線はキスキルとリィラの二人に届く事は無かった。何故ならば、その光線を防ぐ何者かの介入があったからだ。介入してきた何者かの正体はというと、着弾と同時に巻き起こった煙が晴れた時に分かる。

 少しして風が巻き起こった影響で煙が晴れ、そこに居たのは漆黒に染まった翼を持ち、極限まで鍛え上げられた全身ムッキムキの肉体を持つ天使。堕天使とも言うべき風貌を持つ天使はまるで二人を守る騎士のようにクラッキング・ドラゴンの前に立ち塞がっている。その天使を見たハノイの騎士は錯乱状態のまま私に向かって声を荒らげた。

 

「……はっ? いっ、一体何が起きたというんだ!? や、奴は一体、何者───っ、そうだ! お前は彼奴が何者かを知っているんだろう、怪盗っ!!」

 

「えぇ、勿論。ダメージステップ開始時、私は手札からこのカードの効果を発動していたのよ。このターンで貴方にトドメを刺す為の奥の手……『ダーク・オネスト』をね」

 

「だっ、ダーク・オネスト……だとぉ……っ!?」

 

「そう。ダーク・オネストは闇属性モンスターが戦闘を行う際に手札から墓地へ送る事で、相手モンスターの攻撃力をターン終了時までその攻撃力分ダウンさせる効果を持つモンスター。クラッキング・ドラゴンの攻撃力は禁じられた一滴の効果で1500まで下げられているけど、そこから更に1500下げて貰うわ! ダーク・オネスト……お願い、貴方の力を貸して!」

 

 私がダーク・オネストのカードを見せつつ淡々と効果を説明した後、二人を守る騎士のように現れたダーク・オネストに力を貸してくれるようにお願いをした所、ダーク・オネストは私の願いを聞き入れてくれたのか私とキスキル、リィラに向けて『私に任せろ』と言わんばかりに力強く頷く。

 クラッキング・ドラゴンに向き直ったダーク・オネストは自身の羽根すら巻き込む強烈な突風を巻き起こす。対するクラッキング・ドラゴンはというと、禁じられた一滴の影響で依然としてスパークを撒き散らす身体では躱す事すら出来ず、その突風を真正面から受けた。

 ダーク・オネストが巻き起こした強烈な突風を全身で受けたクラッキング・ドラゴンは、身体の各所にダーク・オネストの羽根が幾つも入り込んだ影響か、より強くスパークを撒き散らしたかと思えば動きを止め、完全に動けなくなったのか徐々に降下して行く。

 

クラッキング・ドラゴン

ATK 1500 → 0

 

「そん、な……崇高なるハノイの騎士の象徴、リボルバー様から授かった最強のモンスターたる我がクラッキング・ドラゴンの攻撃力が0になった、だと……? 嘘だ、これは何かの夢だ。そうだ、そうに決まっている……」

 

 自身が最強だと信じて止まなかったクラッキング・ドラゴンの攻撃力が0という、下級モンスターでも容易に突破が可能な攻撃力にまで落ち込んだ事に絶望の色を隠しきれないハノイの騎士。彼が両膝を付けて崩れ落ちたのと同時に、自身の巨体を支え切れなくなったクラッキング・ドラゴンは周囲に凄まじい轟音を轟せつつ路地へと墜落する。

 墜落の際に路地に建ち並ぶビル郡が幾つか巻き込まれたが、LINK VRAINSに建ち並ぶビル郡はDen-Cityの街並みを再現する為のデータ構造体に過ぎないので問題ない。まぁ、データとはいえここまで豪快に破壊されたビル郡を修復する作業に追われるであろう、LINK VRAINSの運営元であるSOLテクノロジー社の社員達には申し訳ない気持ちで一杯になったのは言うまでもないが。

 それはさておき、クラッキング・ドラゴンの攻撃力を0にまで下げてくれたダーク・オネストはというと、私に向き直ったかと思えば優しい笑みを浮かべた後に自身の姿を虚空へ消し去る。彼の勇姿を見届けた私は心の中で感謝を述べ、改めてハノイの騎士の方へ向き直った。

 

「さてと……コレで貴方のクラッキング・ドラゴンの攻撃力は0。そして、私の相棒であるEvil★Twins キスキル・リィラの攻撃力は4400。ここまで来たら……言わなくても分かるわよね?」

 

「……………」

 

 彼にとって絶対的なエースであるクラッキング・ドラゴンを攻撃力0、効果無効と徹底的に弱体化させたせいか、或いは青眼の究極竜に迫る攻撃力を手にした二人を目の当たりにしたせいで心がへし折れたのかは分からないが、ハノイの騎士は既に一言も発さなくなっていた。

 それを見た私は内心ブチ切れていたとはいえ流石にここまでやるつもりでは無かったし、少しやり過ぎたかなと一瞬考えもした。そんな事を考えたせいかほんの少しだけ罪悪感を芽生えさせたりもしたが、その考えは一旦頭の隅に追いやる。

 

「……はぁ、仕方ない。今は兎に角このデュエルに幕を降ろすしかないか。それじゃあ改めて、私はEvil★Twins キスキル・リィラで攻撃力が0になったクラッキング・ドラゴンへ攻撃よ! お願い、二人共!」

 

 ため息をつき、気を取り直した私が改めて攻撃の指示を出すと二人は力強く頷き、既に動けない状態で抵抗する素振りも見せないクラッキング・ドラゴンの顔目掛けて飛び上がり、そのまま一撃必殺級の威力を誇る飛び蹴りを御見舞いする。

 クラッキング・ドラゴンに飛び蹴りをお見舞いした二人はその場から離れ、二人の飛び蹴りを喰らったクラッキング・ドラゴンは二人が離れた瞬間に爆発四散し、その余波は近くに居たハノイの騎士を容赦なく巻き込み、近くの瓦礫まで吹き飛ばした。

 

「ば、馬鹿、なぁ……」LP 4000 → 0

 

 瓦礫にぶつかった衝撃で一瞬だけ意識を取り戻したハノイの騎士だったが、それだけを呟いた後にガクリと(こうべ)を垂れる。そしてそのまま、ハノイの騎士から一方的に吹っ掛けられたデュエルは私の勝利で幕を閉じる事になった。

 デュエルの終了に伴い、ソリッドヴィジョンが解除されていく。私はソリッドヴィジョンが解除される前に二人とハイタッチを交わした後、二人を見送った。二人が姿を消した場に残されたのは、私と気を失っているハノイの騎士だけになる。

 

(さてと、この状況……どうやって片付けよう? 流石にそこで気を失っているハノイの騎士を放置してLINK VRAINSからログアウトするのもなぁ……でも、今日は色々あり過ぎたから、早く帰って寝たいし……どうしようかな)

 

 デュエルが終わった今、目下の悩みは気を失ったままのハノイの騎士をどうするかだった。ぶっちゃけると、LINK VRAINSでは使用が禁止されているボイスチェンジ機能を使っていたという理由でSOLテクノロジー社に一報入れ、後の事はSOLテクノロジー社に一任してもいいとは思っている。

 然し、これはあくまでも推測でしかないが、恐らくはSOLテクノロジー社もハノイの騎士の存在を知っている筈。何せハノイの騎士はLINK VRAINSに留まらず、世界中でサイバーテロ行為を続けているハッカー集団だ。

 以前もハノイの騎士の一員が何かを探し求め、それを炙り出すかのようにクラッキング・ドラゴンを引き連れてLINK VRAINSを荒らしに荒らしたらしく、その時は何処からともなく現れたとあるデュエリストが撃退したとブルーエンジェル元い葵から聞いた事がある。

 LINK VRAINSが荒らされた事件はDen-Cityのトップニュースを飾っていたし、無論そんな事があればSOLテクノロジー社もハノイの騎士の存在を把握しているだろう。故に一報入れてハイ終わり、とは行かずに後程SOLテクノロジー社の関係者……多分葵のお兄さん辺りにハノイの騎士について何かしら事情を聞かれる筈。

 一度倒したとはいえ、そこで伸びているハノイの騎士を野放しにするのも嫌だし、かと言って一報入れてハイ終わりとは行かずに後々事情を聞かれるのも嫌だなと思っていれば、誰かが此方に向かっているような気配を感じた。其方に視線を向けると、まるでそれを予知していたかのように丁度足音が止む。振り返った先に居たのは……

 

「貴方は……誰なの?」

 

「……俺は、Pray maker(プレイメーカー)。そう言うお前は『怪盗』ヴァイオレットだな」

 

「───えっ? えぇ、そうだけど……プレイメーカー、って言ったわよね? 私に何か用かしら?」

 

「……嗚呼、俺はお前に聞きたい事がある。少しだけ時間をくれ」

 

 特殊なボディスーツを着用しており、黄と赤の二色の髪色に目は少し鋭く、体格は細身だがやや筋肉質な見た目のアバターがそこに居た。自身を『プレイメーカー』と名乗るデュエリストとの出会いが、この先に待ち受けている運命を変える事になるとは、この時の私はまだ知らない。

 

 

 ◇◇◇

 

 

『ひ、ひぇ〜……末恐ろしいなぁ、彼奴。誰が見ても劣勢なあの状況でまさかのワンタ-ンキルゥ...を決めやがったぜ……』

 

「……嗚呼、そのようだ。俺の想像していた以上の手練れのデュエリストのようだな、『怪盗(彼奴)』は」

 

 俺と同じサイバース族である『Live☆Twin』。そして、サイバース族と関連性があると思われる悪魔族『Evil★Twin』。二つの種族を華麗に操る『怪盗』ヴァイオレットとハノイの騎士のデュエルはヴァイオレットのワンターンキルで幕を閉じた。

 俺と共に彼女のデュエルを見届けていたAi(アイ)は最初こそ怯えたような声を出していたが、直ぐにいつもの調子に戻る。単純に、彼女が見せたワンターンキルのインパクトが大き過ぎただけだったようだ。

 

『いやはや、ワンターンキルなんて滅多に見れるもんじゃねぇな……こりゃ良いもんを見れたぜ。流石は期待の新人カリスマデュエリストって所か? なぁ、プレイメーカー様?』

 

「……デュエルは終わった。行くぞ」

 

『……って、あり? もう彼奴の元に行くの? へいへい、分かりましたよっと……ったく、相変わらずだな。プレイメーカー様はよ』

 

 調子を取り戻した為か放っておけば延々と話をしそうな雰囲気のAiの話を強引に打ち切り、デュエルは無事に終わったものの、気を失っていると思われるハノイの騎士をどうするか悩んでいる様子でいる彼女の元へ向かう事にする。彼女の元に向かうと、此方の気配に気付いたのか彼女は俺の方へ振り向いた。

 真紅の長髪を黒いゴムで縛ったポニーテールと、髪色と同じ色をした瞳。服装は女性の怪盗が着るような黒づくめの服装。そしてハノイの騎士と同様に素顔を隠すように着用しているマスクだが、ハノイの騎士が着用しているマスクとは違って漆黒のドミノマスクを着用しており、腰には鞘に収めた細身の細剣(レイピア)を模したアクセサリーを提げている。

 自ら『怪盗』と名乗っているのも納得な見た目をしている彼女は、突然現れた俺を見て(いぶか)しげにしている。心做しかその表情に疲れが見える気がするのは気の所為だろうか。それはそれとして、名を聞かれたからここは下手に誤魔化す事をせず素直に名乗っておく。そして、聞きたい事がある為少し時間が欲しいと告げた。

 

「私に聞きたい事? 別にそれは構わないけれど……話があるなら手短にお願い。今日は色々あり過ぎて疲れてるし、出来るだけ早く帰りたいの」

 

「大丈夫だ。そんなに時間を取るつもりは無い。お前に聞きたい事は三つある。まず一つ目だが、お前がハノイの騎士とデュエルをしていた理由が知りたい」

 

「理由? えーと、確か……私がサイバース族とやらを持っているのを誰かから聞いて、奪いに来たって言ってたわね。サイバース族が何なのかはよく知らないけれど……私の相棒を何処の馬の骨とも分からない奴に盗られてたまるかっての」

 

「……そうか。お前がハノイの騎士に狙われた理由はサイバース族が原因か。二つ目になるが、お前が倒したばかりのその男……ハノイの騎士はサイバース族の他には何か言っていただろうかか。勿論、無理にとは言わない。だが、もし覚えているなら俺に教えて欲しい」

 

「何か、と言われてもね……えーと、此奴は何て言ってたっけ? 確か、誰かの名を何度も言ってたような気がするんだけど、何だったかしら……

 

 そう言いつつ、腕を組んで(しき)りに悩んでいた彼女だったが……少しして何かを思い出したようにポン、と手を叩く。そうして、とある人物の名であろう言葉を口にした。

 

「そうそう、確か()()()()()()って言ってたかしら。その他にも、『崇高なるハノイの騎士の象徴たる我がクラッキング・ドラゴンはリボルバー様から授かったものだ』とか、『リボルバー様に認めて貰う為には貴様が持っているサイバース族を持ち帰らなきゃならないんだ』とか、デュエル前は勿論デュエル中も色々言ってたわね……」

 

「───っ! リボルバー、だと? 確かに其奴はそう言っていたのか?」

 

「え、えぇ。小声で聞き取りづらかったし、最初は聞き間違いかなとも思ったんだけど……今はそこで力無く伸びてる其奴、私とのデュエル中に何度もその名を大声で口にしてたから間違いない筈よ」

 

「……そうか」

 

 サイバース族を持っていると誰かから聞いたハノイの騎士から一方的にデュエルを仕掛けられたものの、ワンターンキルで華麗に返り討ちにした彼女が聞いたのは『リボルバー』という、十中八九ハノイの騎士と関連性があると思われる人物の名前。

 まさかこんな所で思わぬ収穫を得られるとは思ってもみなかった為、少しだけ気持ちが荒ぶった事に気づく。それを彼女に悟られないように抑えつつ、その名を忘れない為にも何度も頭の中で反芻(はんすう)しておく。

 

「俺が聞きたい事はコレで最後だ。どんな理由であれハノイの騎士に目を付けられたお前の元には、お前の持つサイバース族を奪うべく、ハノイの騎士がお前を倒しにやって来る筈だが……お前はどうするつもりでいる? 奴等と、ハノイの騎士と戦うつもりでいるのか?」

 

「えぇ、勿論。今日以降も彼奴等が私の相棒を奪いにやって来るって言うなら、片っ端から倒していくしかないでしょう? 基本的に売られた喧嘩は買う主義なのよ、私。例えそれが向こうから一方的に吹っ掛けて来た喧嘩だとしてもね」

 

「……そうか。時間を取らせて済まなかった、ヴァイオレット。お前とは何処かでまた会うかもしれない。初めて出会った筈だが、そんな気がしている」

 

「……そう。そう言う事なら、私からはさよならなんて言わないわ。また何処かで会えると良いわね。プレイメーカー」

 

「……嗚呼」

 

 聞きたい事は聞けた為、一旦その場を後にする。本来であれば彼女が撃退したハノイの騎士にも用があったのだが、当の本人は俺と彼女が話している時も依然として伸びたままであり、今日に限ってはハノイの騎士に尋問する以上の収穫があった為、一先ず彼女に彼奴の処遇を任せる事にした。

 彼女の元から去って少しした頃、遠くからドローンと思しき飛行物体が一つ見えた。恐らくは彼女の通報によってやって来たLINK VRAINSのセキュリティドローンだろう。それを視界に捉えた後、此方に向かって来る前にその場から離れる事にする。

 それから暫く経ち、彼女は勿論セキュリティドローンの姿も見えなくなった場所まで来た後の事。今日はもう遅い時間の為、そろそろ寝ておかないと明日に響くだろうとLINK VRAINSからログアウトしようとした時。俺が彼女と話している時はただひたすらに沈黙を貫いていたAiが(おもむろ)に話しかけてくる。

 

『なぁなぁ、プレイメーカー様よ』

 

「……何だ。いつもの下らない話をしたいなら明日にしろ」

 

『いや、今回は下らなくない話だぜ? 実はな、プレイメーカー様が彼奴と、ヴァイオレットと話を終えた後によ……俺の元にこんな物が届いてたんだよな。今それを出すからちょっと見てみ、プレイメーカー様』

 

 そう言いつつ、Aiはとあるサイトに繋がるURLを表示する。そのURLをタップする前にウィルスでも仕込まれているのではと思いもしたが、Aiが言うにはウィルスが仕込まれていないかどうか隅々までスキャンし、なんなら自ら確認しに行った為、このURLにウィルスが仕込まれていない事を確認済みだという。

 救世主兼人質として捕らえたAi(コイツ)を1から10まで信用した訳ではないが、当の本人が頑なに『大丈夫だぜ?』と言い張る為、押し切られる形で仕方なくそのURLをタップすると、開いたのはヴァイオレットと共に戦っていた"Live☆Twin"と思われるカートゥーン調の少女二人が映っている動画のサムネイルが幾つか並ぶページだった。

 ザッと見た限り、おそらくコレはこのサイトを運営するユーザーページだと思われる。だが、一体何故このページに飛ぶURLを誰が、何の意図を以てAiの元へ送って来たのかは分からない。試しに動画を再生しようと様々なサムネイルが並ぶ動画の内の一つをタップした所、会員登録の画面へと移った。

 登録が必要な点を見る限り、誰でも動画を見れたり投稿出来たりする大手動画投稿サイトではなくファンクラブ制の個人運営サイトなのだろう。然し、一見何の変哲もない動画投稿サイトのユーザーページを見ていた時の事だった。

 

(……ページトップのメインロゴ、その右に扉のアイコンがあるな。先程見た時は無かった筈だが……このアイコン、いつの間に現れた? いや、巧妙に隠されていたのか。気付ける人は気付けるように)

 

 トップページにあるメインロゴの右にある扉のアイコンに気付く。一見するとただのアイコンにしか見えないそのアイコンをタップすると、背景がガラリと変わったログイン画面へと移った。

 そのログイン画面の背景はカートゥーン調のLive☆Twinの二人ではなく、ヴァイオレットのデュエルで見せた、二人の本来の姿だと思われるEvil★Twinのシルエットが映っている。

 だが、当然ながら俺はこのログイン画面で要求されているパスワードを知らない。ふと思い付いた適当な羅列を試しに入力してみたが、案の定何の反応も返って来ない。此処で要求されているパスワードは、彼女達の正体を知る者のみが知っている物という事だろう。

 Aiにも他に何か送られて来ていないか聞いてみたが、このURLだけしか送られて来ていないという。そうなると、このURLを送って来た意図を含めて益々謎が深まる。開いたページを一旦閉じた俺はAiに問いを投げかけた。

 

「……Ai、このURLを送って来た送り主は分かるか」

 

『いや〜、それが分からないんだよ。ふと気が付いた時には既に送られて来ててな……勿論、少しでも痕跡がねぇか隅々まで探ったんだぜ? だけどよ……余程後を付けられたくねぇのかは分からねぇけど、その痕跡が全くねぇと来た。ま、さっきまでヴァイオレットのフィールドに居たEvil★TwinのどっちかがそのURLを俺の所に送って来たと俺は考えてるけどな』

 

「……そうか」

 

 一先ず、Evil★Twinの二人の内何方かが俺のデュエルディスク宛……元い、Aiの元へ送って来たと思われる動画投稿サイトに繋がるURL、Live☆Twinの二人が運営していると思われるページ、そのページに存在する扉のアイコンから飛べる謎のログイン画面の三つに関しては後程調べる事にし、LINK VRAINSからログアウトした。

 ログアウトして少しした後、草薙さんに今日得られた情報を伝え、軽くではあるが今後の予定を立ててから自宅へと戻り、寝る前の準備を整えている間、俺はある事を考えていた。ある事とは、彼女……ヴァイオレットから聞いた"リボルバー"なる人物の名についてだ。

 

(リボルバー……おそらくハノイの騎士と密接な関係がある人物と思われる名。『怪盗』ことヴァイオレットが撃退したハノイの騎士はその名を連呼していたようだが……そこまでのカリスマを持つと思われるリボルバーは、一体何者だろうか)

 

 ヴァイオレットから聞いたリボルバーなる未知の人物の事を考えていると、それが引き金になったのか未だに払拭出来ていない10年前に体験したあの日の記憶が突如としてフラッシュバックしてくる。それに伴って頭痛と嫌な汗も襲いかかってくる為、苦しみつつもその記憶を何とかして抑え込んた後、再びフラッシュバックする前に強引に眠る事にした。

 だが、この時の俺はまだ知る由もない。今日出会った俺と同じサイバース族の使い手であり怪盗を自称するカリスマデュエリスト"ヴァイオレット"との出会いは、運命では無く()()だったという事を。そして、彼女の存在がこれから進むべき未来に待ち受けているであろう様々な困難を打ち破る切っ掛けになり得る可能性があるという事を。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「……ふぅ。ようやく戻って来れたぁ……あ、そうだ。デュエル中結構ダメージ喰らってたからフィードバックがあると思ったんだけど……うん。ほぼ無いかな? 強いて言うなら右手に違和感がちょっとあるくらいだけど……このくらいなら大丈夫かな」

 

『『あ、帰って来た。お疲れ様、椿希〜』』

 

「うん、二人共ありがとね〜」

 

 事後処理を終えてLINK VRAINSからログアウトした私は、身体に異常が無いかを確認した後に安堵のため息を零す。それから、私より先に戻って来ていた私服姿のキスキルとリィラの二人に出迎えられた後、急激に空腹を訴えるお腹を満たすべく作り置きしていたご飯の解凍をしようと台所へ向かった。

 作り置きしていたご飯を幾つか電子レンジに突っ込み、スイッチを入れる。電子レンジの音が部屋に響く中、私は今日起きた出来事を整理していた。私の持つサイバース族とやらを奪いに来たハノイの騎士、そのハノイの騎士が何度も連呼していた"リボルバー"なる人物の名前、そして"プレイメーカー"と名乗るデュエリストとの出会い。

 先の二つは兎も角、プレイメーカーと名乗ったデュエリストと向かい合った際に見た彼の瞳が映し出していた色がどうしても気になって仕方ない。見た目から想像しただけに過ぎないが、おそらく私と同年代くらいの人物なのに、その瞳には深い怒りと絶望の色が垣間見えていたからだ。

 

(……正直、彼の瞳があの色を垣間見せていたのかについてだけど、私は全く知らない。けれど、見た限りでは彼の事情を知らない人が安易に踏み込んじゃ行けない領域なのは見て分かった。でも、無意識とはいえあの色を見せられた此方としては気になる……一体彼の過去に何があったんだろう?)

 

 そんな事を悶々と考えていると、その思考を断ち切るように電子レンジから温めが終わった音が響く。思考を断ち切られた以上、その事についてまた考えても仕方ない、と一旦思考を切り替えて遅めの夕飯にする事に。

 温めて間も無い夕飯を両手に持ちながら二人の元へ向かうと、普段は半透明の姿のまま過ごす事が多い二人が今日は珍しく実体化した状態で机を挟んで座っていた。

 何かあるのかなと疑問に思いながらも、依然として空腹を訴えるお腹を静めるべく、舌鼓を打ちつつ黙々と夕飯をお腹に収めている中、ふとキスキルが私に問いかけてくる。

 

『ねぇ椿希、今大丈夫?』

 

「……ん、キスキル。どうしたの?」

 

『その……ハノイの騎士とやらを倒した後に出会ったデュエリストが居るじゃん? プレイメーカーっていう』

 

「あー……プレイメーカー、かぁ。彼がどうかしたの?」

 

『彼が付けていたデュエルディスクにさ、"何か"が居たんだ。あの気配は多分……AIだと思う。それもかなり高度な技術で作られた奴』

 

「高度なAI? んー、AIって言っても珍しくは無いんじゃない? LINK VRAINSのデュエリストの中にはデュエルをサポートするAIが搭載されてるデュエルディスクを付けてる人も居るし。というか、私も実際にサポートAIを使っている人と戦った事あるしね」

 

『いや〜……それはそうなんだけど、ねぇ……』

 

「……?」

 

 何か言いづらそうにするキスキルを見ていた私は、疑問符しか浮かばないでいた。LINK VRAINSの開発・運営を手掛けているSOLテクノロジー社はデュエルディスクの製造・販売も手掛けており、その中には初心者でも安心してデュエルが出来るようにデュエルをサポートするAIが搭載されている物もある。

 実際、カリスマデュエリストとして活動している時は勿論、エンジョイ勢としてデッキを回す日々を送っていた時にもAIのサポートを受けつつデュエルをしていた人も数多く居た。相手が使ってきたカードの効果を逐一(ちくいち)読み上げてくれる機能は、誰もが知る有名なカードから一部の人しか知らないであろうマイナーカードまで膨大にあるカードの効果を把握し切れていない初心者デュエリストにとっては大いに助かっていると思う。

 そういった事情もあってか、Den-Cityに住む人達は勿論の事、私と共に戦っている二人もAIは見慣れた物なのだが……キスキルの反応から察するに何か引っかかりを覚えているような感じがする。冷めない内に夕飯を食べつつ首を傾げていると、補足するようにリィラが付け足す。

 

『そう言えば、椿希は気付いてた? プレイメーカーが付けてたデュエルディスク、椿希が付けてる物と同じ物だったわ。確か旧型って呼ばれてるのよね? キスキル、どのタイミングかは分からないけれど、そのディスクにAIが搭載されている事を知ったみたいよ?』

 

「えっ……? ま、待ってリィラ、それ本当なの?」

 

『えぇ、本当よ椿希。キスキルに言われて私もそれに気付けたんだけど、多分そのAI……今日椿希にデュエルを仕掛けて来たハノイの騎士と、プレイメーカーも言ってた"サイバース族"に関係があるかもしれないわ』

 

「え"っ、ちょっと待って!? プレイメーカーのデュエルディスクが私と同じ旧型で、そこに高度な技術で作られたAIが居て、更にそのAIはサイバース族と関係があるって……!?」

 

『とはいえ、まだ憶測の域を出ないけれどね。でも、ハノイの騎士は兎も角プレイメーカーもサイバース族の事を知っているみたいだし、彼のデュエルディスクに高度な技術で作られたAIが搭載されているのはおそらく何かしら関連性があると思って良いわ。それに、あの時感じたあの気配は多分、サイバース族の……

 

「そっかぁ……」

 

 リィラの話を聞いた後、手に持っていた箸を置いて天を仰ぐ。最後に何か呟いてた気がするが、小声でボソリと呟いてたせいか上手く聞き取れなかった。それは兎も角、ここに来て新たに増えた三つの事柄の方が重要だったりする。

 二人が言うには、私が今日出会ったデュエリストであるプレイメーカーは私と同じ旧型と呼ばれるデュエルディスクを使っており、尚且つそのデュエルディスクには二人が見ても分かる程の高度な技術で作られたAIが搭載されているとの事。

 更にそのAIは今日、私からサイバース族を奪う為にデュエルを仕掛けて来たハノイの騎士や、ハノイの騎士とデュエルをした私に話がしたいと声を掛けてきたプレイメーカー、Live☆Twinの姿の二人の種族にもなっている"サイバース族"に関係があるというが……まず、私はサイバース族という種族に関しては詳しく知らない。

 私がサイバース族の事を知ったのは二人の精霊パゥワーで生まれ変わったEvil★Twinのデッキ片手にカリスマデュエリストの道を歩み始めた頃、他のデュエリスト達と何戦かした後に他のデュエリストが使っているデッキに対して明らかにデッキパワーが高過ぎる事に気付いてデッキの見直しをしている時に偶然知った。

 その時は『デュエルモンスターズにはこんな種族もあるんだなー』と特に気にもしなかったのだが、リボルバーとやらからサイバース族の事を聞いてハノイの騎士が奪いに来た事や、プレイメーカーもサイバース族を知っていた事を踏まえると、サイバース族はハノイの騎士とプレイメーカー、双方にとってとても重要な立ち位置に居ると思われる。

 それはそれとして、一旦置いた箸を再度手に取って夕飯の残りを食べ終えて一息ついた私は、今後の予定について二人と軽く話してからお風呂に直行。ゆっくり身体を温めた後に寝る前の準備を整え、明日に備えて寝る事にした。

 

 だけど、この時の私はまだ知る由もない。キスキルとリィラの二人が感じ取った気配の大元である謎のAIが搭載されている旧型のデュエルディスクを付けた"プレイメーカー"と名乗るデュエリストとはこれからも度々鉢合わせる事。

 その上、サイバース族を持っているという理由でハノイの騎士と名乗るハッカー集団に目を付けられたせいで、一方的に巻き込まれたが為に不本意ながらも二人をハノイの騎士から守る為、その戦いに身を投じる事になるという事。

 そして……二人の精霊パゥワーで生まれ変わり、カリスマデュエリストの道を歩む切っ掛けにもなった私のEvil★Twinデッキは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であり、完成に近づける為のピースの1つはLINK VRAINSにあるという事を。

 

 Evil★Twinのデッキを完成に近づける為のピースの1つはEvil★Twinsのライバルにあたる、とある怪盗団のリーダーとそのお目付け役の二人が握っている。そんな彼女達との出会いは、割とすぐそこに迫っていた。




ようやっと書ききれた……(´・ω・`)
遊作とはもう少し絡ませたかったけど、最初だからこのくらいかなと……

それはそれとして、お読み下さりありがとうございました。
また次回(・ω・)ノシ
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