仮面のロックンローラー   作:黄色ミミズク

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114・好きで世界が彩やかになっていく

 数学のテストが50点。人生の中で一番高い点数を取って、本当に現実か俺は疑った。

 

「間違えた箇所は復習をするように。また、質問があればいつでも私に聞きにきてほしい」

 

 ここはちゃんと教室。原田先生は原田先生。周りの皆は周りの皆だ。

 

「――と言っても、一学期終了で私は大学に戻ってしまうので、それまでに頼むよ」

 

 あぁ……原田先生の授業が終わっちゃうのはヤダなぁ……それだけは夢って事になればいいのに……

 

「そして今日が最後の授業になるわけだけども」

 

 まだ、泣くには早いんだろうけども、しみじみしてきちゃう……でも、たぶんそれは俺だけじゃないはず。

 

「あの……原田先生」

 

 ……

 

『原田先生に寄せ書きでも贈らない?』

『えっ!? いいね!?』

 

 誰が発案して、もう一瞬で決まった。

 

『焼肉会のお金、少し余剰があるから花束もどうかな……?』

 

 計画性皆無の俺たちだけど、昨日のうちに色紙と花束を買って、朝から寄せ書きをし始める。

 

『ウチらも書かせてー!』

 

 どこからか聞きつけた他のクラスの人たち。

 

 ……

 

「おや、これは……」

「短い間でしたけども、皆からの気持ちです」

 

 寄せ書きと花束を原田先生は受け取ってくれる。

 

「……うん、ありがとう。とても嬉しいよ」

 

 原田先生の少しの間に、なんだか不思議に思う。どうしてだろう?

 

「あぁ、気に入らないとかそういう事ではないよ。こんなに素敵なものを私が貰っていいのか、少し疑問に感じてしまってね」

 えぇー!? 原田先生の意外な一言に皆もビックリ。疑問なんてあります!?

 

「初めて授業をした時にも話したけど、私は数学が好きでね……それ以外は取り柄の無い人間だと思っているんだよ」

 

「ひたすらに取り組む中で、挫折をした事もあったけど、その時に世界の至る所に数学がある事も知ってね」

 

「それから再び虜になり、ただただ没頭していただけのつもりが、いつの間にか大学に務めていた」

 

「……うん、やはり僕は数学が好きなだけなんだが、しかし、それでもこの好きな気持ちが君たちに伝えられた『証明』だとしたら、この寄せ書きと花束は最高の栄誉だ」

 

「みんな、ありがとう。とても光栄だ」

 

 思わず、拍手を送る。

 教室の皆も拍手を送る。

 

 ――『好き』で、世界は変わっていくんだなぁ。

 原田先生のおかげで、そんな事を知れたと思う。

 

 ありがとうございます。

 

 

=====

 

 

「はぁ、私、学年3位なんですか」

 

 担任に呼び出され、『よくがんばった』と言われる。頭の悪いD高校で3位なんて、価値があるのか甚だ疑問にしか感じない。これくらい当たり前。

 

「……そういえば、1位と2位は誰なんですか?」

 

 頭の良い人といえば波多野さんくらいしか思い浮かばない。波多野さんはなんというか、私たちとは違う人。引っ込み思案だけど優しくて色々できて、勝てないのは仕方がない。うん……

 

「2位はA組の波多野さんでね――」

 

 うん。納得――ってあれ? 2位?

 

「1位はB組の鷹田くんっていう子だよ」

 

 はっ? 有り得ないでしょ?

 

 真面目さとは無縁なフザケた奴で、マイナくん平気で騙す嘘つきで、苦労も知らなさそうな自己中人間に違いないアイツが?

 

 ――絶対に不正をしている。

 そう思うと許せなかった。腸が煮えくり返るって、こういう事なんだな。

 

 職員室を出て、どうしたらアイツに罰を与えられるか考える。

 

「お、ツッキーおつかれやでー! 先生に呼び出び、なんやったの?」

「ううん、別に大した事はなかったよ。成績上がったねって」

「最近は勉強漬けやったもんね! 結果出てやったやん!」

「大した事ないって」

 

 渋谷さんと一緒に吹奏楽部の部室へと向かう。

 本当は吹奏楽部を辞めたい。だけど、マイナスくんが、私のために、渋谷さんを吹奏楽部に連れてきてくれた。それを無碍にしたくない。だから、コンクールまではがんばる。

 

 本当はマイナスくんの為にも、波多野さんの為にも、一刻も早くアイツをどうにかしたいけど……

 

「コンクールに向けての合宿の計画、渡すねー」

 

 ……今は、コンクールに集中する。




4章はここまでとなります。
最近は立て込んでおりまして、5章はまた日を置いてから投稿予定です。
よければ楽しみにお待ち頂ければ幸いです。

※面白かったら感想、あるいは評価など頂けると幸いです
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