158・2学期が始まる!
今日は9月1日、始業式の日!
俺はD高校1年の
学校へ行くのが楽しみで楽しみで仕方がない!
いや、軽音部の部活でちょくちょく学校行ってるけど!
いや、学校の友達とも普通に連絡取るけど!
いや、授業始まるのは憂鬱だけど!
でも本当になんか楽しみなんだよねー!!
クラスの皆は元気にしてるかなぁー?
夏休みの間はどんな風に過ごしてたのかなぁー?
俺はね、俺はね!
部活でバイト合宿、別の所で交流合宿したでしょ。
それと軽音部の部活したり、親友の鷹田とバイトしたり、吹奏楽部手伝ったり、後はコンクールに行ってきたり、部活したり、バイトしたり……
あー! なんかもう、気分が舞い上がって止まらない!
楽しみで楽しみで仕方ないよーー!!
「ねえ、お兄ちゃん!!」
「うわっ!? どしたのカナ!?」
不意にけたたましく声をかけてきたのは妹のカナ。
「そろそろバイオリン仕舞って、朝ごはん食べなさい!!」
「えっ、うわっ!? もうこんな時間!?」
「何度も声かけたのに、いつまでも練習やめないんだから!」
「ご、ごめん! つい夢中になっちゃって……」
「ほら、仕舞ったら行くよ!」
急いでバイオリンをケースに仕舞う。
それからカナに手を引かれて練習部屋から出てダイニングへ向かう。
「あらあら、やっと来てくれたのねぇ」
迎えてくれたのは、お手伝いの梶原さん。
「待たせて、ごめんなさーい……!」
「何度声をかけても生返事で、遠足行く前みたいにはしゃいで大変だったよ!」
「ええ!? 俺、生返事してたの!?」
「テルくんは夢中になると何も見えなくなっちゃうものねぇ」
「お兄ちゃんがちゃんと一人で高校に行けるか、カナは心配になるよ……」
「き、気を付けます……」
二学期初日から、小学6年生の妹に心配される俺。
正直に言うと、ちゃんと自分が学校へ行けるか不安になってきました。ダメなお兄ちゃんでゴメンナサイ……
両親は海外に居るから、カナのためにも俺がしっかりしなきゃなのになぁー!
「忘れ物に気を付けてね? 今日は授業あるんだよね? 一応、レッスンは無い日だからね?」
「大丈夫! たぶん……」
「うーん、心配だなぁ」
「うふふ、カナちゃんのおかげで安心して過ごせるわねぇ」
「いつもありがとうね、カナ……」
「お兄ちゃんはいつも遠足前な感じだから仕方ないよ」
その通りだけど……その通りだけどさ!!
時間もあまり無いので朝ごはんを口に流し込む。でも、なるべく噛む。モグモグモグモグ……ゴックン。
「ごちそうさまでした!それじゃあいってきます!」
「うん、いってらっしゃい! 楽しんできてね!」
「カナも学校、楽しんできてなー!」
学校が、楽しみだ!!
――
「おはようー!!」
教室に着いて開口一番、たまらずに元気いっぱいの挨拶しちゃう!
「おう! おはようーマイナスー!」
「マイナス元気過ぎ。おはよ」
「ういー、おはよ」
そこまで早く着いた訳ではないけども、今はまだダラダラとした雰囲気。これからみんなが駆け込んできて騒がしくなるはずだ。
「なあなあマイナス、聞いたかー?」
「ん、何を?」
「なんかなー、新しい先生が来るんだってさー」
「へー、そうなんだ。何の先生?」
「んー、なんか偉い所かららしいなー」
「へー、うちに何の用があるんだろうね」
「わかんないけど、この間の数学の原田先生みたいな人だったらいいなー」
「だったらいいなぁー」
臨時で来てくれた数学の原田先生、本当にすごい尊敬できる先生だった……
「いやぁどうせ、させん?ってやつでしょ」
「ハラセンも仕方なくで来てくれただけだし」
「させんって何ー?」
「えーっと、悪い所に働かせるみたいな」
「島流し」
「たぶんそれ」
「へー! じゃあD高校って島なんだ!」
「歌と踊りで迎えてやろうぜ。D高校ダーンスって」
「アホくさ」
「バケツ叩いて! マイナス!」
「ん、わかった!」
そう言って渡されたのはプラスチックのバケツ。
これだったらビートを刻むのは全然できちゃう!
ノリノリのテンポで叩くならサンバのリズムかな? ポコチャカポコチャカ
「バケツだけなのにマジでなんかカーニバルっぽくてすげー!」
「D高校島のフェスティバール!」
クラスの皆が楽しそうに声をあげる。アワワワとかウッキーとかギャーオギャーオって騒いで、まるで動物園みたいでたーのしー!
「えー!? なにー!? また俺抜きで楽しい事やってるの!? ってなにこれー!?」
「おっ、馬園! 盛り上げるの得意だろ! 踊れー!」
「イエエエエイ! 踊るー!! みんな、俺についてこーい!!」
「実は俺、こんな時に備えてタンバリン持ってるんだよね」
「なんでだよ」
時間が経って人が集まってきて、そしたらこのバカ騒ぎもどんどん大きくなる。
先生を歓迎する準備、たぶん万端!
と、そんな時に肩をトントンとされる。
「あ、あの……マイナスくん」
「あっ! 波多野さんおはよう!」
「おはよう……その、えっとね……そろそろ始業式だから、終わりにできるかな……?」
「えっ!? もうそんな時間!?」
俺はバケツを叩いて音を鳴らしつつ、皆にも声をかける。
「皆! そろそろ始業式、行きまーす!!」
全員に届くように慌てて大きな声を出したから皆ビックリして固まる。
「だから、声、デカ過ぎだって……マイナス……」
「あっ、ごめーん!」
「ははは、いやぁ、羨ましいなー」
「うん、じゃあ皆、体育館にお願いします」
波多野さんが優しく皆に声をかけて、俺たちは始業式へと向かった。
――
「えっと、皆、ごめんねー! 悪い男に引っかかって、ようやく落ち着いて戻ってこれた角田ですー! これからまたよろしくねー!」
壇上で話してるのは、俺たちのクラスの元担任で、数学を担当していた角田先生。急に寿退職したと思ったら戻ってきたんだ……?
というか、偉い人って角田先生……? 違うよね……?
「急いで結婚するのは良くないって反面教師にしてくださーい! また迎えてくれてありがとうねー!」
まぁ、色々事情があるんだろうなぁ……元気に戻ってきてくれてよかった!
そして檀上から降りようとする角田先生――が止められる。教頭先生と何か話をしてから、戻ってくる。
「あ、えっと、そのー……もう一人、新しい先生がいらしてるんですけども、どうやら遅刻してるみたいでね」
生徒側からのため息や雑音が大きくなる。先生が遅刻っていうのはちょっとビックリするもんね。
「すぐ、すぐいらっしゃると思うので、えーっと……何か、私に、聞きたい事とかー……」
角田先生がそう言うと、誰かが思い思いに大きな声で聞く。
離婚しちゃったのー!? 何か月でー? 相手はどんな人だったのー? 電撃過ぎたー! とかなんとか。
なんか、タイミングが悪過ぎて記者会見みたいになってる……
「おわー! お待たせしてしまったー!!」
――体育館の入り口が開き、けたたましく誰かがやってくる。
どんな人だろうって全員の視線がそちらに向かうんだけども、俺はその声を耳にしてあり得ない想像がよぎって、顔を向けるのをためらった。
「やあやあ! 初めて会うというのにこんな失態、本当に申し訳ない!」
割とご年配のはずなのにすごい高いテンションで喋る、この人……この人って……
「私は平賀、平賀孝則と言うよ!」
うわああああ平賀先生ナンデ!? 平賀先生ナンデエエ!?
「普段は音楽について様々な事を研究しているのだけどもね」
俺が敢えて行かなかった音大付属校の先生、それが平賀先生。
俺がD高校に来ている理由は、パパとママに内緒で軽音部に入ってるからなんだ!
平賀先生に俺が軽音部に入ってる事を知られたら、その秘密がバレちゃうかもしれない……
なんで平賀先生がD高校に来たんですかぁ!?
「今回は見聞を広めるため、私の知らなかった場所にいる君たちから学びを得たくてお邪魔させてもらったのだよ!」
……もしかして前に俺がD高校の事を話したからなんですか……?
平賀先生らしい気がするし、それが嬉しくも感じるし、だけども秘密を隠したいって思うとどうしようってなっちゃう。
「そう、そして遅刻もしてしまった埋め合わせにもなんなのだけど、私から君たちに贈り物をしたくて!」
テンション高く話す平賀先生のペースはやっぱりなんかすごい。
ちょっと頭がぼんやりしている俺と違って、周りの皆は楽しそうにしている。
「君たちの願いをひとつ、聞かせてくれないかな! それを叶える手伝いをしたくてね!」
それって……願いをひとつ叶えます、ってコト……?
察知した生徒みんなが盛り上がり、歓声が上がる。
「詳しくは追って通知するから、よろしく頼むよ!
では、今日から楽しい日々を過ごしていこう!」
こうして、最高潮のテンションのまま楽しい日々が始まる――はずだった。
日々のスケジュールを見直すことで、週1投稿ペースが安定してできそうになりました。
これからまたのんびりよろしくお願いします。
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