仮面のロックンローラー   作:黄色ミミズク

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3・初めての友だちは超頼りになりますありがとう

「というわけでクラス委員はマイナスくんと波多野さんにお願いする事になりました。まずは半年、よろしくね!」

 

 クラスの担任、角田先生からそう告げられる。

 

「よ、よろしくお願いします……!」

 

 立候補した訳ではなく、他薦からのクラスみんなの投票で決まってしまった。軽音部のみんなとの時間が更に減る事を考えると少し滅入りそうになるけども……

 

「よ、よろしくね、マイナスくん……」

 

 同じく学級委員になった波多野さん。少し大人しい感じの子でこういうのを押し付けられるのになんだかんだ慣れてるような雰囲気がある。

 

 ホームルームが終わった後、改めてクラス委員として声をかける。

 

「その……俺、こういうの任されるのは初めてで……」

「あ、わ、私はその、ちょっとやった事あるから……えと、よろしくね」

 

 中学ではあまり皆と関わらずに過ごしてた。最初、理由はわからなかったけども、仮面模様のせいで怖いと話しかけにくかったという事を後から知った。俺は普通に笑っているつもりでも周りから見ると不適に笑っているように見えるらしい。それもあって自分の気持ちを伝えるのには工夫が必要ということを学んでいる。

 

「あ、その……一緒にがんばろ。わからない事あったら聞いても良いかな?」

「わ、私でよかったら……で、でも間違ってたら……」

「いやいや、その時は一緒に考えよ! 助け合わなきゃ!」

「う、うん、よろしくね……」

 

 高校でマイナスという渾名をもらってから、思ってる以上に皆と関わる事ができている。でも、やっぱり怖い印象を与えてる人もいる。

 

「あ、とりあえず連絡先……交換しとこっか?」

「う、うん……」

 

 歩み寄るのもやらなくちゃ。軽音部に入るためがんばったように、関わってくれる人の為に、勇気を出して一歩を踏み出すのは大事だ。

 

 

 ――

 

 

「はぁ? クラス委員まで始めたってマジ?」

「マイナスくん、時間大丈夫……?」

「な、何とかするんで……」

 

 時間が無いのが理由でバンドを組めなかったのに、クラス委員なんてやってる場合じゃないのはわかってる……

 

「俺も推薦されかけたけど忙しいからマジ無理って断ったぜ?断る勇気もマジ大事だぜ?」

「まぁまだ文化祭まで時間あるし……」

「そ、その頃には絶対時間作れるようにがんばるッス……あれ、そういえば先輩たちは?」

「ああ、今日は親交を深めてくるってカラオケに行ってきてるぜ」

「文化祭で何を演奏するか決める……っていう建前でね」

「そっかー……なんで鷹田は行かなかったの?」

「一緒に行ったら先輩の小間使い確定じゃん? ひとりだけ一年生混ざっての外遊びはもう少し様子見なの」

「プライドたっか……プライド鷹田ね」

「何も考えてなさそうに見えて考えてやってるんすよー」

 

「そだ、今、せっかく空いてるんだ何か合わせてみたら? 私、上手くないけどドラムで最低限はできるし」

「俺はギターだから、マイナスはベースかな」

「うん、先輩の借りていいのかな?」

「へーきへーき。てかマイナス、楽器何でもいいって言ってたけども初めてなのか?」

「えと……触ったことはある……くらいかな」

「へー中学は吹奏楽部だったとかか? オッケー、とりあえずメジャーなのやるか」

 

 先輩のベースを手に取る。先輩たちの演奏はまだ聴いたことがなかったが、きっと凄いんだろう。そう思いながら弦を弾く。音がズレてるからチューニングを――

 

「あー、そこは触らない方がいいぜ。いつもと違うって怒るかもしんねーから」

「え、そうなの?」

「先輩のやり方に口出すのはご法度よ。今はお情けで補欠だけど、機嫌損ねて来るなって言われたらイヤっしょ?」

「わ、わかった……」

 

 音がズレてる、でも、それは先輩の音だからって飲み込む。だけど……弦はいつ変えたんだろう? 手入れはしてるのかな、そんな気がかりが頭に浮かびながら、ベースの準備をした。

 

「おっ、楽譜発見、初めてでもこれならいいかもな」

「ん、これならとりあえず叩けるね。マイナスくんもこれ知ってるよね?」

「えっとー……初めてかも……」

「マジ……? 麦津だよ……? 知らないって疎すぎね……?」

「これ、テレビでも主題歌だったけど……」

 

 楽譜を眺める。五線譜の上の音符を見ればどんな音が聞こえるか頭の中に浮かんでくる。この曲は独特の世界観が織りなされて、まるで夢を見ているような感覚を覚えた。

 

「あ、でも弾けそうだから大丈夫……!」

「おう……初めてなら間違えても気にすんなよ」

「楽譜パッと見ただけで弾けそうって言えるのは強いねぇ……じゃあ、行くよー」

 

 渡辺先輩がバチで拍を取る。

 

 カッカッカッカッ

 

 せめて、今のこのベースでできる一番良い音を出させてあげたい。どこかぎこちない渡辺先輩のドラムも、少し音が大きくて走りがちな鷹田のギターも、包み込んでひとつの世界にして、お前は最高のベースだよって伝えてあげたい。誰もが心の底に持つ、だけど誰も触れられない世界を表現したこの歌で、慰めたい――

 

 

 ……

 

 

「え、マイナス、ベースうま……」

「なんかすごいドラム叩きやすかった!」

「待って、マジで初めてか? この曲?」

「う、うん……」

 

 鷹田がすごい勢いで俺に確認する。

 

「とりあえずさ、家でベースの練習しといて? 先輩が引退したら絶対に誘うわ」

「えっ!!? う、うん!!!」

 

 誘ってもらえた、誘ってもらえた!! 鷹田に誘ってもらえた!!

 

「鷹田くん、やっぱりそこまで見据えて……」

「今、一年がしゃしゃったらメンドイじゃないすか。機を伺うの大事なんすよ」

 

 鷹田はよく周りを、人を見ている。人との距離感、バランス感覚、そういうのをすごい大事にしている。やりたい事のために、どうしたら良いかをよく考えてるんだ。

 

「確かに年功序列は大事だからね……はぁ、でも先輩が引退するのヤダなぁ……」

「おっかけマネージャーっすもんねー、でもせっかくなんで俺たちの面倒も見てくださーい」

「これだからバンドマンは……面倒かけたらはっ倒すから覚悟してね」

「マイナス盾にしちゃおっと」

「マイナスくんは良い子だから鷹田だけ狙う」

「あはは……」

 

 すごく、すごく俺はこの先がんばれるって思えた。その為にも今できることを……全力でやらなくちゃ!




 著作権諸々を尊重したく、現代音楽について特定の楽曲を本文内で詳細に記すような事はありませんが、素晴らしい曲を手軽に聞くことができて本当に良い時代ですね……
 コンテンツが増えた昨今でも、共通の話題として挙げる事ができる作品を送り出すのって本当にすごいですよね。
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