仮面のロックンローラー   作:黄色ミミズク

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46・私は友達の為なら何でもしちゃうよ!

〜〜

 

「ええっ!? すごい!? これ、絶対にマイナスくん喜ぶよ!」

「そ、そう言ってもらえると嬉しい……つ、月野さん、み、見てくれてありがとう……」

 

 ちょっと無理をして波多野さんと話をしている。最初は緊張をほぐすためにも波多野さんの得意なことを聞いたのだけども……

 

「そ、その、波多野さんはマイナスくん……好き?」

「え、ええっ!? ええっ!? あ、え、ええと、あ、あわわわ」

「待って待って! 聞き方悪かったね! そ、その、ほら、私もマイナスくん、優しくていいなぁって思うし、ほら、好きになれる人だよねって」

「あ、う、うん。そ、その、す、好きになれる……よね……」

「そう!推し! 推せるよねって!」

「あっ!そう!推し!! そうなの、推し……うん、すごい推せるの……」

 

 いや、もうその反応から見るに、推しじゃなくて恋じゃないの!? 波多野さんは暫定ライバルなのに、もどかしくてたまらないよ!!

 

「すごく仲良く見えるけども、推し……なんだね。いいなぁー」

「そ、その、私、あの……オタクだし、すごく……恥ずかしがり屋っていうのか、マイナスくんには色々、フォローしてもらってばかりで……」

「あはは、でもその代わりに勉強を教えてあげていて……マイナスくんもお世話になりっぱなしって言ってたよ」

「そ、それならよかったぁ……私、マイナスくんに迷惑かけてると思うから、その……ね……だから、推し……っていうのか……」

「つり合わない……的な?」

「う、うん……」

 

 マイナスくんもそう言ってたよ、とそこまでは流石に言えない。お互いに申し訳無さが勝ってて恋に発展しないとか、俯瞰して見てる私からすると早く付き合えばいいのに!って叫びたくなる。確実に泣いちゃうけども……

 

「マイナスくんはゲームの事、全然わからないって言ってるもんね。波多野さんに詳しい友だちが別にいるって聞いたけど……」

「あ、うん。さっきのもね、その人に参考になるサイトや資料を教えてもらってね」

「そうなんだ! どんな人? あ、私もプログラミングとか、ちょっと興味があってさ」

「うーん……優しい人かな……? 後は色々知ってる人……? なんだかすごい人みたい……?」

「なんだかフワッとしてるね……?」

「一般論を色々話してくれたり、業界の事を話してくれたりするんだけども、すごい人なんだなーってくらいしかわからなくって……」

「へー……あれ、もしかして波多野さん、その人は苦手だったりする?」

「い、良い人だと思うよ。応援してくれているし……」

「そ、そっかー!」

 

 

 波多野さんもハヤトの事、苦手に思ってるじゃん!!

 

 

 ――

 

 

 SNSでそのハヤトの事を調べてみると、割と簡単に見つけられた。

 アカウントが作られた時期を見てみるとそこまで長くないみたい……? 作り直したアカウントなのかな? 映える感じの画像を載せたり、キラキラした感じのプロフィールだったりするけども、ウソは付けるもんね。

 ハヤトの投稿した内容には返信がついてて盛り上がってるように見えるけども……すごいとかカッコイイとか頭良いとか、中身のないのばっかりでちょっとわかんないな……

 

「ん……まとめサイト……?」

 

 見てみると過去に色んな女の子とトラブルを起こしている人がいるという内容で……

 

「ハヤトはその人の作り直したアカウントかもしれないんだ……」

 

 すごい辻褄があう……それに考えてみても波多野さんみたいな子は餌食にもなりやすい……そのうえでマイナスくんにも嫌がらせして、波多野さんを囲い込もうとしてるのもすごい悪質で……

 

 波多野さんに伝えるべき?

 波多野さんは恐らく知らないんだもんね。でも、急に私がこんな事言いだしたら驚くし、何よりもマイナスくんにハヤトさんの事聞いたってなっちゃう。マイナスくんも、こんな事伝えても仕方ないし……

 

「うん……証拠を揃えてハヤトに突きつけてやろう……!」

 

 これからもマイナスくんや波多野さんに迷惑をかけてくるかもしれない。アイツの悪行を纏めて、バラされたくなかったらもうふたりに関わらないでって伝えてやろう!

 悪いやつは絶対に許さない!

 

 

 ――

 

 

「わー、綺麗なお部屋ですね! カラオケはちょくちょく来ますけども、こんな部屋に入るの初めてですー!」

「女の子をもてなすんだから、これくらいはねー。あ、よかったらさっきの香水、付けてみてよ」

「すっごい高級ですよねこれ!? ありがとうございまーす!」

 

 ハヤトとはビックリするくらいすんなりと会うことができた。たぶん、いつもこんな感じで女の子と会ってたんだろうなって思うとすごく腹が立つ。部屋に入ってふたりきりになったらハヤトの逃げ場は無いぞ……! 護身用にスタンガンだって持ってきたんだからね!

 

「それで……何しようっか? ああ、お話したいんだっけ」

「うん……そのね、恋愛で悩んでるんですよー」

「失恋しちゃったとか? 慰めてもらいたいのかなー?」

 

 ハヤトは手を伸ばしてくる。それを躱しながら話を続ける。

 

「いいなって思う友達がいるんですよー。でも、その友達には好きな人がいてー、だけど、お互い両片想いみたいになってるんですー」

「えー、切ないね。でも、片想い同士なら君がアタックしちゃえばいいじゃん。こんなにかわいいんだからさ」

「はいー、でも、そのふたりの邪魔をする人がいて……」

「へー、そんな人がいるんだー」

「そうです、ハヤトっていうんですけどもね」

 

 相対してハヤトを見る。少し動揺してるのが見えた。

 

「私、波多野さんの友達なんです。マイナスくんとも」

「……で?」

「マイナスくんに嫌がらせするのやめてくれませんか? 波多野さんもあなたの事、苦手って言ってるんですよ。優しいから口には出さないけど」

「……うぜえ。わざわざそれを言いに今日来たっていうの?」

「そうです! ネットで調べてあなたが色々やらかしてる事も知ってるんですから! 今日だってすんなり来て……これって警察に通報したらどうなるかわかりますよね!?」

「なるほどね、それで脅しってわけね。はぁー」

「乱暴しようとしたって無駄ですからね! 私、スタンガンだって持ってきてるんですから!」

「クッソ最悪。もうあのネクラは面倒くせえって捨てたつもりなのによ、わざわざ首突っ込むバカがいるとか」

「は、はあ……? じゃあ、別にもう関わらないつもりだったの……?」

「そうだけど? まぁ……でもラッキーだったのかな」

「ふふん! 悪い事してる奴にラッキーが起きるわけないでしょ!」

「ちなみにさ、スタンガンってどこで買った?」

「そ、そりゃ良い所で買ったわよ!痺れたい!?」

 

「人が気絶するレベルのって買うの難しいんだよね」

「簡単に買えるのは驚かせたりするのがメインでね、出力だって全然足りないんだよね」

「こういう事態を打開するには普通のじゃ無理って事」

 

「な、なら思いきり叫んでやったって……」

「無理でしょ。そろそろ薬、効いてくる頃だし」

「はっ? アンタから受け取ったもの、口になんかしてないけど」

「香水付けたじゃん。経口摂取以外知らない?これだからバカは」

「え、え……」

 

 カバンからスタンガンを取り出そうとする。上手く意識が集中できてない事に気がつく。興奮してたから気が付かなかったけど、今では視界が歪んでいくのがハッキリわかる。

 

「普段はさー、こういう事しないんだよね。でも、今日はめちゃくちゃにしたくてさー。ちょうどよく君はD高校の子でさ」

 

 言い返そうとしても、朦朧として言葉がまとまらない。

 

「何かあっても君の素行が悪いってできるじゃん。だってD高校だよ。元々ゴミの一人がどうなろうと誰も気にしないじゃん」

 

 誰も気にしない。そうだったな。私がD高校に来たのも、受験を絶対に失敗しないでって言われて、それで選んだんだった。両親は私に期待もしてないし、どうでもよくて。

 

「いやぁ興奮するよ。君みたいな子をわからせるって奴。友達のために俺に会いに来たって?」

 

 普通なら絶対こんな事しないのにな。私なんてどうでもよくて、みんなの為に我慢して、それで流されて、良い子だねって言われてそれで満足して……

 

「上級市民である俺が可愛がってあげるからさ。安心しなよ。お金だって渡してあげるし」

 

 やだな。そう思ってもどうしようもないんだろうな。

 ちょっとだけ、ちょっとだけ世界が彩鮮やかに見えた気がしたけども、それは私には相応しくなかったんだろうな。

 

 

 

 夢の中だけでいいから、あのドアからマイナスくんが助けに来てくれたらいいのにな……

 

 ガチャリとドアが開いて、そしてマイナスくんが来てくれて……一言目はなんだろう。

 

「何してるんですか」

 

 うん、そんな事言いそう。そして私は意識を手放した。




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