風都探偵 The ANOTHER CASE   作:竜・M・美日

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後章2「怒れるaたち/俺の名はアクセル」

 俺のすぐ目の前でスクリームの超高周波が放たれる……。

 ギャッギャッギャッ‼

「!」

 突然、特殊なエンジン音が聞こえてきたかと思えば、Wの特殊装甲車・リボルギャリーが俺たちに向かって迫ってくる。

「メタル!」「サイクロンメタル!」

 Wの顔のようなハッチの上に乗った風と鋼のW・サイクロンメタルがスクリームめがけて飛びかかった。

「メタル・マキシマムドライブ!」

 そのガイダンスボイスに警戒したのかスクリームが俺から飛びのく。

「《メタルバットソニック!》」

 間髪入れずにWが俺とスクリームの間に割って入った。

(シュ)キぃぃぃぃ!!」

「《ウオオッッッ‼》」

 両者の攻撃がぶつかりあった末に、爆発が起きた。

 

 爆炎が晴れるとWは棒状の武器・メタルシャフトとバットショットを組み合わせた・ソニックシャフトを杖にして疲れた様子で膝をつく。

 スクリームのほうは見たところ、まだ余裕があるように見える。

「……ちっ、さすがに幹部だけのことはあるってか……」

《……ソニックシャフトの超音波をマキシマムで増幅させて相殺を狙ったが……。それでも抑えられないとは……。相変わらずすさまじい威力だ》

「左、フィリップ……どうしてここが」

 Wは立ちあがると俺をひっぱり上げた。

「……はん。あんなにやかましかったら嫌でもわかるさ」

《照井竜。亜樹ちゃんを頼む。位置はビートルフォンに送った》

「なっ。どうやって?」

「俺たちに質問してる場合か? ここはまかせな」

 Wの左手が「行け」とハンドサインをする。

 あとから聞けば、事務所が襲撃されたとき。

 ガシャン!

『えっ、何⁉』

 窓が割れ、大きな雲が入ってきたかと思うと、所長を包むように拘束した。

『キャァッ! 助けてえ!』

『所長さんっ! はっ!』

 その場に居合わせたときめが近くにいたメモリガジェットの一つ、スパイダーショックの発信機をばら撒いたらしい。

 よくやってくれた。

 俺はメモリをアクセルに戻し、ビートルフォンで位置を確認する。

「ちょ、ちょっとアタシとのコロシあいは⁉︎」

「……生憎だが、おまえの相手をしている暇がなくなった」

「はあ⁉︎ ちょ、ちょっと行かないでよっ!」

「貴様とは必ずケリをつけるつもりだ。それまで……くれぐれも二人に負けないことだな」

 バイクフォームになると所長の元に急行した。

 

 俺が去る姿を見てスクリームは地団太を踏む。

「ああぁぁっもおっ‼ あんた何してくれんのよおおっっ‼」

《それをいうなら、『あんた』ではなく『あんたたち』だ》

「風都にはもう一人仮面ライダーがいることを忘れんなよ」

 Wが指を立てて指摘する中、スクリームは身悶えはじめる。

「良いところだったのにい……。寸止めされたら……。イケナクなるじゃない……フザケないでよぉぉぉぉッ‼」

「ジョーカー!」「サイクロンジョーカー!」

 Wは素早くメモリを入れ替え、八つ当たりの超高周波を避ける。

「『ふざけんな』はこっちの台詞だ。いい加減、その耳障りな(わめ)き声は聞き飽きたぜ」

《同感だ。『究極』で対抗しよう》

「おう!」

 ベルトを閉じると二つのメモリから光の帯が空高く伸びる。

 空から鳥型の自立メモリ・エクストリームが飛来すると、その帯に沿うようにベルトに収まった。

 Wはベルトを左右に開く。

「エクストリーム!」

 メモリの装甲内部から白銀の風車が現れ、高速回転し猛烈な勢いで外気を体内へと吸収していく。

 Wのボディー中央のラインに光の亀裂が入った。

「二人」は胸をつかむと、こじ開けるように身体の外装を左右に開き、中から透明な結晶装甲が現れる。

 二人が心身ともに一体化し「地球(ほし)の本棚」に直接につながったことで、戦いながら相手の能力を検索可能になった、Wサイクロンジョーカーエクストリーム。

 Wの究極の姿だ。

「前から(シュ)キじゃないけどぉ……。万灯(ばんどう)サンから『男同士で合体する姿』だって聞いてからはますます……キモチワルゥゥゥゥイ!」

 スクリームの超高周波がW・CJX(ダブル・サイクロンジョーカーエクストリーム)に迫るが、無駄のない動きで避けた。

「前にも言ったはずだが」

「おまえにだけは言われたかねー、ってな」

「「プリズムビッカー」」

 その名を呼ぶと胸の結晶部分から剣と盾を合わせた武器・プリズムビッカーが現れる。

「プリズム!」

 起動メモリであるプリズムを()に差し、盾・ビッカーシールドから剣・プリズムソードを抜く。

「裏風都の幹部であり」

「街を泣かせる殺人鬼」

「「五条一葉」」

 W・CJXは剣先をスクリームに向ける。

 

「「さあ、おまえの罪を数えろ」」

 

 悪辣(あくらつ)な快楽殺人鬼に言い放つ。

 W・CJXはスクリームに剣で切りかかる。

「知ってるわよお! その姿だと遅いんでしょおお! じゃあねぇ!」

 スクリームはその斬撃をかわすと長居は無用と逃走を計った。

「さすがに二階堂(にかいどう)さんを倒した姿だし。いい加減、遊びすぎ……うっ⁉」

 後ろを見たスクリームが動揺を見せる。

「つれねーな。俺たちとは遊んでくれないのか?」

 W・CJXが瞬く間に飛行ユニット・ハードタービュラーでスクリームの横につく。

「欠点は補うもの。機動力はこれでカバーだ」

 リボルギャリーには陸・海・空に対応したユニットを搭載している。

 こういった事態を考え呼び出していたのだろう。

 剣の柄に付いているスイッチを押す。

「プリズム・マキシマムドライブ!」

「「プリズムブレイク!」」

 剣から黄緑色のオーラ型の刃が次々と飛び出す。

 スクリームにとって、その一撃はどれもが致命傷になるものだった。

 

 ときは戻り、俺がスクリームと戦っていたころ。

 生存者の植山の無事を確認していた刃野・真倉刑事。

「とにかく、ご無事で何より……」

 バタン!

 真倉刑事の前でドアが露骨にいらだった調子で閉められる。

「……コエェッ……!」

「女は怖えもんだ。まあ、あんな大怪我したら卑屈になるのも分かる気がするけどなあ。……ん? 課長からだ。えっと……」

 俺からのメールを受け取った刃野刑事の顔が変わる。

「刃野さん?」

「次行くぞ。課長が何かつかんだみたいだ」

 ある古いアパートについた刃野刑事は管理人に鍵を開けてもらう。

「どうもすいませんねえ」

 そのまま土足で中に入っていく。

 中にいた人物は当然だが驚いている。

 刃野刑事は警察手帳を見せながら朗らかに言った。

「芦田遥さん、だったねえ。君を保護しに来たついでに……裏アカについての話が聞きたいんだけど。それにこの部屋についても」

 部屋には浅井と藍沢の大量の盗撮写真……芦田が今、触っているノートパソコンにはSNSへの投稿画面が映っていた。

 つまり彼女が個人情報を流していたのだ。

「それじゃ、ちょっと署まで……」

「こ、来ないで!」

 芦田はキッチンから包丁を抜くと振り回す。

「あ、あぶねえ⁉」

 刃野刑事が怯んだ隙に窓を開けて外に飛び出した。

「ま、真倉っ、止めろ!」

「えっ、う、うおっ!」

 真倉刑事が立ち塞がる。

「邪魔!」

 バチン!

 平手打ちを食らった真倉刑事がもんどり打ち、その横を芦田が逃げていった。

「……ビ、ビンタされたぁ!」

「言ってる場合か! 早く追え!」

 しかし、残念ながら二人は芦田を見失い、逃走を許してしまった。

 

 ときを同じくして、どうにか勤務する病院に辿りついた浅井たち。

 浅井の到着に気づいた看護師が駆け寄る。

「浅井先生! 大丈夫でしたか……って藍沢さん⁉ ひどい怪我……!」

「手術室は空いていますか?」

「えっ? えぇ……」

「あざみ……藍沢さんはひどい外傷を負いました。かなりの出血をしています。このままでは失血死するでしょう」

 身近な人物といえ関係ない。医者故か冷静に状況を説明する。

「至急、輸血パック他、手術の準備をお願いします」

「……わかりました!」

「僕はその間に手術着を取りに行ってきます」

「えっ……先生まさか」

「はい。僕が彼女のオペをします」

「身近な人を手術するのは危険ですよ……! 他の先生にまかせられたほうが……!」

 看護師が慌てたように忠告した。

 一般的に医師でも身内が相手だと、感情が入り冷静な判断を保てない恐れがあるため他の医師にまかせると言われている。

「それにその手……」

「えっ……」

 見れば拳から血が垂れていた。

「これは……彼女の血です……。準備をお願いします」

 困惑した顔をしながら看護師はうなずくと準備をはじめた。

 手術の妨げになるため、藍沢が身につけていたアクセサリーが外されていく。

 浅井はそこである物が目に入った。(くだん)のペンダントだ。

 それを手に取ると強く握る。

(碧……彼女を守ってくれ)

 そして、浅井は外された藍沢の婚約指輪の隣に自身の指輪を置いた。

「っ……!」

 準備中、浅井は痛みで顔を歪めながら、指と手を動かせる範囲で包帯を巻いていく。

(この様子だと、折れてるな……)

 自分の浅はかな行為を後悔しながら、着替えをはじめた。

 十数分後、手術着に着替えた浅井が準備が整えられた手術室に入る。

 目の前の手術台には婚約者が横になっている。

(あざみ。君は何度も命を助けてくれた。今度は僕が恩を返す番だ)

「先生。準備ができました」

「……はい。これより、全身の止血及び裂傷の縫合手術を開始します」

 浅井は本来なら絶対にあってはならない負傷した中での手術、という長い戦いの中へと身を投じた。

 

 俺は発信機の居場所からある場所に辿りつく。

 そこはあのとき、決め手になった広場だった。

「竜くん!」

「所長!」

 見れば所長は一本の電灯を中心に、電撃の柱でできた檻に閉じ込められていた。

 俺はすぐさま救助しようとしたところで、一人の男が立ち塞がる。

「へえ、ここまで来られるとはな。あのゴスロリ女も大したことねえな」

 そこには入院着を着た、頭を丸刈りの坊主頭にし、肥満体系だった身体もすっかり細身になったことで別人に見える秋山がいた。

 歯がみする顔のデザインで「A」の文字の赤いガイアメモリを、片方の掌でリズムを刻むように叩いている。

「秋山……!」

「おい、怒る理由は俺様にもあるんだぜ。あんたたちに嵌められてから警察病院にいる間、ずぅっと計画を練っていた。どうすればあの女に復讐できるか、ってな」

 所長をメモリで指す。

「そしたら今日、突然、あのゴスロリ女が現れて街で暴れたくないかと言ってきた。俺様は二つ返事で返した。それで渡されたのが、このメモリだ!」

「アングリー!」

 ……アングリー、「怒り」のメモリか。

 秋山は頭頂部の生体コネクターにメモリを刺す。

「もちろんいっしょに俺様の人生を無茶苦茶にした、あんたにも腹が立ってんぜぇ‼」

 そう言いながら全身を黒い雷雲が包んだかと思うと、一刀両断するように雲に亀裂が入る。

 雲が晴れると中から、顔は般若の面に積乱雲のような髪、首から下は稲妻の烙印が入った赤い鎧に身を包む武者に見える、アングリー・ドーパントが現れた。

 その見た目からはウェザーとの既視感を覚える。

「ふんっ!」

 アングリーは手に雷を集めると、これも雷のような形状の二メートル近い太刀を生み出した。

「俺様の太刀、この『怒り震刀(しんとう)』で叩き潰すどころか、その頭飾りごと真っ二つにしてやるッ!」

 俺もブレードを構えた。

「やれるものならやってみろ」

気張(キバ)って……いくぜえ‼」

「! ダメ、竜くん‼」

 戦おうとしたところで所長の叫びが聞こえたと思うと、足元から電撃が走り全身を拘束される。

「なっ……⁉ グワァァァッ!」

「ははぁ! ひっかかった! よっと!」

「グハッ……! ガアァァァァッ!」

 太刀の横払いで吹き飛ばされた俺は広場の外に出かけるが、そこでも電撃を受けた。

「な、何……⁉」

 地面を見れば至る所に雷の印が入っている。

「地雷か……! 卑怯な……!」

「なんだよ文句言うなよ。あんたが気づかずに俺様のホームに入ってきたんだぜ。これぞ『電流デスマーッチ』!」

 言われて背後を見る。いつの間にか広場全体が電撃の檻で囲まれていた。

「……そのメモリで電気を操るのか……」

「よくいうだろ。怒鳴(どな)るときに『雷を落とす』ってな! それに地面でまともに動けないんじゃ、あの青くて速い奴(アクセルトライアル)にも、バイクにもなれねえだろ!」

 たしかにそのとおりだ。

「卑劣なのは相変わらずか……!」

「良いねえ。どんどん怒ってくれよ! そうすれば俺様はもっと強くなる!」

「何……?」

 そこで奴の顔にある二本角が光を吸収していることに気づいた。

 エネルギーの吸収、か……?

「徹底的に叩き潰すには、まだまだ足りねえ! それじゃあ街の連中から怒りを集めるか!」

「なんだと……?」

 アングリーは構えを取る。

「行けえ! 俺様の怒りの(いかり)! 『アンガーアンカー』‼」

 そう叫ぶと剣を上に掲げる。そこから黒雲に雷が伸びると瞬く間に活性化し……返しがついた矢のような物が街中に放出された。

 

 一方のW・CJX対スクリーム。

 超高周波攻撃をハードタービュラーでかわし続ける。

「息が続かなくなってきたんじゃねーか?」

「そんなわけ、ないでしょぉっ!」

 だが、スクリームの動きが目に見えて鈍くなっているのはわかった。

 W・CJXは盾に剣を収めると右手に持ち替え、左手をベルトに置く。

「このまま『ダブルエクストリーム』で……なんだ?」

 ゴロゴロッ! ヒュヒュヒュヒュン!

 空を見上げる。雷鳴が轟いたかと思えば、雲から雷ではなく矢のような物が大量に降ってきた。

「矢⁉ うっ!」

「くっ!」

 ドスドスドス!

 W・CJXとスクリームに矢が刺さった。

 その弾みでW・CJXはハードタービュラーから叩き落とされる。

 

「なんだ、今のは……?」

 W・CJXの右半身(フィリップ)が見れば、巻き込まれた周りの住人たちにも刺さっていた。

「殺傷能力はないのか?」

 無事だった家族や友人が被害を受けた人間に駆け寄るが。

「……おまえの態度、昔から気に入らなかったんだよ!」

「いつも稼ぎが少ないって言いやがって!」

「私以外に女がいるでしょ!」

「ぼくなんかいらないと思ってるんでしょ!」

 突如、至る所で喧嘩がはじまったのだ。

「いったい何が? ……この錨は、当たった人間の怒りを増幅させるのか」

 W・CJXが錨を手に取ると、「地球(ほし)の本棚」由来の検索能力ですぐにカラクリを見破る。

「照井竜が苦戦しているかもしれない、ここは早くスクリームを撃破し……えっ?」

 バチバチッ!

 W・CJXの左半身()から黒い雷が走っている。

「翔太郎?」

 左がうまく動けずにいる。見れば大量に錨が刺さっていた。

 フィリップは偶然、プリズムビッカーが盾となり無事だったようだが、左はまともに受けてしまったらしい。

「まさか!」

 フィリップがあわてて錨を取り除こうとするが、装甲に深く刺さっているのか抜けない。

「……おまえら……よくも、よくも、俺の街を‼」

 左が先行してスクリームに殴りかかった。

「翔太郎⁉」

「よくも街を! ときめを! 仲間を傷つけてくれたなぁッ‼ 許さねえぇッ‼」

「あたしもよお‼」

 スクリームもその影響を受けておりインファイトになるが、W・CJXはその攻撃についてこれていない。

 W・CJXは二人の一体化が重要だ。バランスが崩れればそもそも変身できない上、まともに動けなくなる。

「冷静になるんだ! 翔太……くっ!」

 フィリップが冷静さを失った左に振り回される。

 もともと左はこういった精神的な攻撃にはめっぽう弱い上、感情の高ぶりはジョーカーメモリの性能を引きあげてしまう。

 本来ならば性能の向上はメリットのはずだが、W・CJXでは片方だけがそうなると致命傷になる。

 バランスが崩れた状態が続けば、変身解除してしまうのだ。

 

「どうすれば……⁉」

 策を巡らせるフィリップ。そこで、あることを思い出す。

『遠慮すんなフィリップ! おまえは全開で行けッ! 俺がついていくさ!』

『ファングを使うときにはおまえを抑えるのが俺の役目だが……。あのクズ野郎には我慢できそうにねえ!』

『問題ない、翔太郎。ぼくもとっくにキレている。ある意味二人の気持ちは同じさ』

(そうだ。ファングとは逆だと考えればいい! 翔太郎を落ち着かせるのではなく、ぼくが翔太郎に合わせる! それがバランスだ!)

 フィリップがそう考えたとたん……W・CJXの動きが止まった。

「このままズタボロになりなさいぃぃぃよぉっ‼」

 好機とばかりに殴りかかってきたスクリーム。

 その腕を右手が止めた。

「⁉ い、痛いっ……!」

 右手に握り潰さん限りの力が入る。

「……鳴海荘吉の意志を受け継いだWは戦闘マシーンであってはならない、強いだけのWに価値はない。だが今は、今だけは……冷徹な戦闘マシーンとなろう!」

「……うぉらッ‼」

 左手がスクリームを殴り飛ばす。

 気づけばW・CJXの雷は収まっていた。

「覚悟しろよ……ヒステリック女」

「何よ……急にキレてんじゃないわよぉぉぉぉぉっ!」

 スクリームが感情のこもった最大級の超高周波を放つ。

 対してW・CJXは盾・ビッカーシールドを取り出し、四つのスロットに素早くメモリを装填する。

「ヒート・マキシマムドライブ!」「ルナ・マキシマムドライブ!」「メタル・マキシマムドライブ!」「トリガー・マキシマムドライブ!」

 熱・神秘・鋼・射撃の四つの力がシールドの中央で交わる。

「「ビッカーファイナリュージョン!」」

 とてつもなく大きな盾が現れ、W・CJXを守るが後ろに押し出される。

「消えろぉぉぉぉぉぉぉっ‼」

 そして、巨大なエネルギーがぶつかり合ったことで爆発が起きた。

 

 ……カランカラン……。

 プリズムビッカーが音を立てて地面に落ちる。

「ハハっ……さすがに、ここまでやれば、なあんにも残らな……なっ⁉」

 スクリームは驚きの声をあげる。

 なぜなら爆炎の中から砲身状態のガンナーAが現れたからだ。

「アクセルのメカ⁉︎」

 砲身が開くと顔に当たるカメラ部分が怒りの表情を見せる。

 互いの攻撃で見えなくなっている間にW・CJXがガンナーAを呼び出し、代わりを担っていたのだ。

「……いい加減叫び疲れたろ?」

 W・CJXがガンナーAから姿を見せると、結晶部分が煌めいた。

「おまえの能力は十分に閲覧した」

 スクリーム《絶叫》……叫び声を超高周波に変換、放出する。高い機動力。

「スクリームの超高周波攻撃は強力だが、代わりに攻撃中はその場を動けなくなる。言わば固定砲台だ。さらに何度も使えるものではないと考え、防御特化のマキシマムで体力の消耗を狙ったが、ぼくの狙いどおりだったようだね。だから、今度は……」

「俺たちの番だ!」「ぼくたちの番だ!」

「サイクロン!」

 サイクロンメモリを右腰のマキシマムスロットに装填。

「サイクロン・マキシマムドライブ!」

「シザースのときのマキシマムの応用だ」

 W・CJXが風の力で空高く舞いあがる。

「空気が欲しいだろ……?」

 腰のエクストリームメモリを閉じた。

「……たっぷりとくれてやるよッ!」

 ベルトを再び開く。

「エクストリーム・マキシマムドライブ!」

 サイクロンのマキシマムドライブで発生した風を、エクストリームメモリが吸収する。

「「ダブルサイクロンエクストリーム!」」

 いつもより勢いを増した必殺のキックがスクリームに放たれる。

(シュ)(シュ)キ……!」

(う、嘘、息がっ⁉)

 そのままスクリームに直撃し、爆発が起きた。

 

「よっしゃあ! 決まったぜ!」

「いや……避けられた」

 左が喜ぶ中、フィリップが顔を向けると、スクリームが肩で息をしながらも立っていた。

「んだと? なら、ダメ押しだ!」

 W・CJXは再びプリズムビッカーを手に取り、メモリを一本入れ替える。

「ジョーカー・マキシマムドライブ!」「メタル・マキシマムドライブ!」「トリガー・マキシマムドライブ!」「ヒート・マキシマムドライブ!」

 収納された剣にエネルギーが充填する。

 一気に剣を抜き、強烈な一撃をスクリームに向ける。

「「ビッカーチャージブレイク……はっ!」」

 スクリームに当たる直前、光の帯が前を塞ぐように現れたため、それを剣で切り裂く。

「この光は……!」

「そこまでだ」

 どこからともなく現れた、裏風都のリーダーである万灯雪侍(ゆきじ)が変身した、夜景に七色の光を羽衣にしたような姿のオーロラ・ドーパントがスクリームの横に立つ。

「! 万灯ッ‼」

「万灯サン……」

「お楽しみのところ申しわけないが。この勝負、無効にさせてもらう」

「なんだと! ふざけんな!」

「ちょ、ちょっと万灯サ……!」

「互いに万全ではないだろう。一葉、『街』に戻るんだ。話したいことがある」

「……はーい」

 有無を言わさぬ雰囲気で二人は裏風都へ続くゲートを開けると、姿を消した。

「ま、待て……!」

 それと同時にバランスが崩れたのかW・CJXの変身が解け、二人が「分かれる」。

 ボドボドボドボド!

 それに伴い装甲に刺さっていた錨が抜け、地面に落ちていく。 

「逃がしたが……外れて良かった」

「ちくしょう! いや、それより、照井は⁉︎」

 すると錨が光に変わり雲へと集まっていく。

「これは……」

 見れば左を含む周囲の人間が冷静さを取り戻していた。

 

「グワァァァァッ!」

 俺は電撃を受けるたびに奴の力が増していくのを感じた。

「アハハ! 良いねえ! 怒りの力が着々と集まってるぜえ!」

 奴の角にどんどん光が集中しているのが見える。

「ほら、もう一丁!」

 錨が俺たちにも降り(そそ)いだ。

 プスッ!

「ピョッ⁉︎」

 所長の頭に一本。

「所長!」

 ドスドスドス!

「グワァッ!」

 俺には全身に十本近い錨が刺さり地面に倒れ伏す。

「どうだぁ? 怒りパワーが溜まってきただろ?」

「き、きさ……うっ!」

《殺せ。こいつは愛する家族を傷つけた。外道だ》

 ……何……?

 頭の中で俺の声をした悪魔の(ささや)きが聞こえる。

《どんなに(ほだ)されても中身は変わらない。これが俺の本性だ》

 ぐっ……! 黙れ……!

《井坂が死んだとき、奴の苦しむ姿が心地良かっただろう……?》

 違う……!

《本当はわかっているはずだ。人は変わらない。犯罪者の更生など不可能だ》

 やめろ……!

《家族も必要ない。傷つくくらいなら孤独でいい》

「……お、俺は……」

 思わず悪魔の言葉に耳を傾けそうになった……。

 

 ヒュン、ヒュン、ヒュン! パコン!

「うっ!」

 緑色のスリッパが頭に当たる。

「……こんの……ダメ亭主がぁ‼」

 見れば所長がどこから出しているのか、檻の隙間から無茶苦茶にスリッパを投げまくっている。

「しょ、所長……?」

「こんな奴にも勝てへんのか! そんなんやから、いっつも大怪我して帰ってくるんや! こっちは心配してんのに! 人の気も知らんと! ええ加減にしい! この馬鹿旦那!」

 普段の彼女からは想像できないほどの罵声が飛んでくる。

「おいおい、こんなときに夫婦喧嘩か?」

 アングリーがあきれている。

 ヒュン、パコン!

「あいた⁉」

 その頭にもスリッパが直撃する。

「あんたもあんたや! メモリを使わんとこんなことしかできひん憶病もんが! このハゲーッ!」

「は、禿げてねぇ! 邪魔だったから剃ったんだよっ!」

「やかましい! 会ったときから寂しかったやろが!」

「う、うるせえ! このチビ!」

「人にいうに事欠いてチビやと? この……!」

 パチッ!

「痛あ⁉」

 ポトッ……。

 拘束されていたことを忘れて詰め寄った所長が檻の電撃を受け、必死に腕を擦っている。

「何⁉ これこんなに痛いの⁉ 私、聞いてない! ……って、あれ?」

 電撃の衝撃からか頭から錨が落ちていた。

 これは……。

《聞け! シュラウドも言っていただろう。憎しみと怒りのWになれと。悪人を倒すのに半人前の男()など不要だ。俺こそWに……!》

 その言葉で思い出すのは、かつて俺にアクセルの装備を渡した全身包帯の女に言われ想像した、緑と銀と赤の憎しみと怒りの戦闘マシーン・W・サイクロンアクセルエクストリーム……だが。

「……俺に」

あの女(所長)の言葉に惑わされるな! 正直になれ! 悪人全員を処刑したいだろう⁉》

 

「俺に質問するなァッ‼︎」

 

 今の俺に憎しみのW(そんなもの)は必要ない!

 地面の雷の印に腕を振り下ろし、誘惑を振り払うために自ら電撃を浴びる。

 バリバリバリバリ!

「ウオォォォォッ‼」

 ボドボドボドボドッ!

 思ったとおり、錨が身体から抜け落ちていく。

「な、何してやがるんだ? 怒りで頭がプッツンしちまったのか」

 アングリーが引いた様子で俺を見た。

「……ふっ。この程度の電撃、井坂のそれと比べれば可愛いものだ。本当はブラックコーヒーが欲しかったが……。代わりの眠気覚ましには丁度良い」

「んだとぉ? ハッ! じきにこの街の連中の怒りのパワーが俺様に集まる。それを一気に解き放てば、おまえどころかこの腐った街ごと吹っ飛ぶさぁ!」

『この街は腐っている……! だから人も腐るんだ……! 俺はこの街が大嫌いだ……!』

 脳裏に復讐鬼だった俺と凍りついた家族が砕け散る光景が浮かぶ。

「……この街は、俺から家族(すべて)を奪い、家族と仲間(すべて)を与えてくれた。俺が愛する街だ……。腐っているように見えるのは貴様が歪んでいるからだ。俺たちがいる限り、貴様らのような外道どもの好き勝手はできんと思え……!」

「! 竜くん……!」

「ちっ。めんどくせーな! いきなり、ギャーギャーギャーギャー吠えんじゃねーよ! 弱い警察の犬がよおッ!」

 なんとか立ちあがる俺にアングリーの一太刀が迫る。

 ヒュン、パコン!

「あいたっ!」

 そこでタイミング良く、再び緑色のスリッパが奴の頭を撃ち抜く。

 目の前に落ちたそれを見れば『気張りや!』と書かれていた。

「弱くなんかない……。ウチの旦那は強いんや! あんたなんかに負けへん! 覚悟しいや!」

「いってえ。ったく、さっきからなんなんだおまえらは……アダァッ⁉」

 奴を後ろからエンジンブレードで叩き切る。

 卑怯とは言わんな?

「……彼女は俺の愛妻・照井亜樹子だ。……そして、俺は」

 無駄な質問は受け付けない主義だが答えてやろう。

 

「仮面ライダー……アクセルだ!」

 

 ありがとう、所長。奴の気をそらしてくれて助かった。

 ザン!

 俺はエンジンブレードを地面に突き刺し、「ある物」を取り出しアクセルメモリに装着する。

 さらなる、加速を求めて。

「アクセルアップグレード!」

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