風都探偵 The ANOTHER CASE 作:竜・M・美日
特別編「Eとeのケミストリー/永遠をつかむのは」
『エクストリーム!』
『プリズム!』
『させるかッ!』
『ゾーン!』
『ゾーン・マキシマムドライブ!』
『うおぉぉッ!』
『アクセル! バード! サイクロン! ダミー! エターナル! ファング! ジーン! ヒート! アイスエイジ! ジョーカー! キー! ルナ! メタル! ナスカ! オーシャン! パペティアー! クイーン! ロケット! スカル! トリガー! ユニコーン! バイオレンス! ウェザー! エクストリーム! イエスタデイ! マキシマムドライブ!』
『エターナル・マキシマムドライブ!』
『メモリの数が違う! 終わりだァッ‼』
『『うわぁぁぁっ‼』』
『……仮面ライダー!』
『仮面ライダー!』
『仮面、ライダァァッ‼』
『……負けないで。仮面ライダー……』
『フィリップ、風だ! 風都の風がッ!』
『ぼくたちに力を!』
『『ハァッ! ウオォォォォッ‼︎』』
『なんだと⁉︎』
『『……ウオォォォォッ! ハアァァァッ‼︎』』
『どりゃぁッ‼︎』『はぁぁぁッ‼︎』
『グワッ⁉︎ これが……そうか……これが……!』
『そうだ……それが『死』だ……
『久しぶりだな……死ぬのは……! ハハハハハハハハハ! うわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎』
『諦めるな、
『仮面ライダー!』
『みんなの声がある限り……仮面ライダーは負けない。だれかを守りたい気持ちがあるから、何度でも立ちあがれるんだ‼︎』
『クロスホッパー!』『テンライナー!』
『ガッチャーオン!』
『クロス、ホッパーァ!』『テン、ライナーッ!』
『変身!』
『ガッチャーンコ!』
『ガッチャ! ガッチャ! プラチナガッチャード‼』
『変身したよっ!』
『強さが増しているだと……⁉』
『ゾーン!』
『ゾーン・マキシマムドライブ!』
『エターナル・マキシマムドライブ!』
『……ジョーカー! ルナ! サイクロン! ヒート! メタル! ファング! トリガー! エクストリーム! マキシマムドライブ!』
『ガッチャーンコ!』
『人間とケミーの絆の力が……』
『プラチナシュート!』
『借り物のおまえの力に! 負けてたまるもんかぁぁッ‼︎」
『グワアァッ!』
『ガッチャ!』
『これが私の運命……!』
「……はっ!」
黒いコートを羽織った端正な顔立ちの青年が目を覚ます。
起きあがれば、そこは雷鳴が轟き薄暗く赤黒い世界が広がっていた。
言葉に表すならば、まさに「地獄」だろう。
「こ、ここは……?」
困惑する彼の名はタソガレ。
彼はハンドレッドによって複製した「永遠」を
(私はあのときに消滅したはずでは……?)
「この
タソガレの背後に黒地で赤ライン、リンゴが刺さった剣を四匹の蛇が囲んだロゴが刻まれたジャケットを着た一人の男が立った。
振り返ったタソガレはその男を見て目を見開く。
「なっ! あなたは……⁉」
光を通さないような地獄の中で、唯一輝くような銀髪には青いメッシュが所々に入っている。
「よう。新入り」
「大道、克己……!」
大道克己。彼は青年期の交通事故により死亡したが、科学者であり母親の大道マリアによって作られた「人体蘇生酵素」により蘇生した。
克己はその酵素を手に、選ばれし「死者蘇生兵士」で構成された不死身の傭兵部隊・
NEVERはスポンサーであった財団Xへの優位性を見せるため、その不死性と圧倒的な戦闘力を武器に世界各地で雇われるがままに暴れ回り、さまざまなテロ行為や破壊活動を行っていたため裏世界では恐れられていた。
だが、そんな彼らの最大の欠点が、生前の記憶や人間らしい感情が少しずつ失われ、やがて人の心を失った残虐な「悪魔」になってしまうことだ。
さらに、当時の投資対象の競争相手であったミュージアムが開発したガイアメモリに破れ、その意趣返しとして克己は仲間を率い、自身の故郷であるガイアメモリの実験場と化した風都に侵攻。
エターナルの力を手に入れると住民全員をガイアメモリから解放するという大規模なテロを決行しようとしたが、風都のヒーロー・仮面ライダーWによって倒され正真正銘の死を迎えた。
その悪逆非道な男の名は、平行世界のタソガレの耳にも届いていたのだろう、身構えるばかりではなく少し怯えた素振りを見せる。
(死してなお、この威圧感! これが世界を滅ぼすほどの力を持つ男ですか!)
タソガレの言葉どおり、彼の最大出力の一撃はどこかの時空では「世界の一つや二つ、永遠に破壊できる」などと評されている。
「
克己が嫌味と皮肉が入り混じった一言を言い放つ。
(
「……弱い犬ほどよく吠えると言います……」
タソガレは弱みを見せまいと不敵な笑みを浮かべてみせた。
「なるほど。威勢がいいじゃないか。気に入った。なら、見せてみろ、おまえのエターナルを」
「何? はっ……!」
克己に指摘されるとたしかに両の手には変身ベルト・ロストドライバーとエターナルメモリが握られていた。
「ここならだれにも邪魔されない。最高の舞台だ」
克己は答えを聞かずに同じベルトを腰に巻く。
「俺たち、どっちのエターナルが上か決めようじゃないか」
(……マキシマムさえ当たれば勝てるはず)
余裕という克己に対し、タソガレにも勝算はあると考えていた。
というのも通常の生きた人間とは異なり、NEVERは仮面ライダーWたちが
「良いでしょう。二度も死んだ死体に負ける道理はありません。負け犬の遠吠えを聞かせてもらいましょうか」
あくまでも上の立場にいるというタソガレの挑発に、克己はにらみを利かせた。
「良いだろう。聞かせてやる。このメモリが吠える様をな」
二人はメモリを掲げ、同時に起動した。
「「エターナル!」」
ベルトのスロットに押し込む。
「「変身」」
タソガレは腕を広げ、身体全体を使い「E」の字を。
克己は指を「E」の形に伸ばす。
ベルトが開かれた。
「「エターナル!」」
二人の身体が、白をベースとした身体、無限の形を模した複眼、頭には王冠のような三本角、全身に鎧のごとく大量のマキシマムスロットが現れ、手にはコンバットナイフ・エターナルエッジを握り、腕に赤い炎を
片やタソガレはノイズ混じりに青い炎に切り替わり。
片や克己は炎の勢いが増し、青く燃えあがる。
同じ時間、同じ場所、二人の同じ仮面ライダーが立つというあり得ない状況が起こった。
「何を言おうが、あなたが負けたからこそ私はこの力を得たのです。敗北者なのですよ」
タソガレの言葉に克己は頭を抱えて笑った。
「面白いな! 笑えない冗談だ……」
「すぐにどちらが死神に
「死人が絶望する、か……ためしてみろ!」
二人はどこからともなくT2メモリを取り出し、右腰のマキシマムスロットに押し込む。
「まずは小手調べ!」
「バイオレンス・マキシマムドライブ!」
タソガレが腕力を上げ殴りかかる。
「ユニコーン・マキシマムドライブ!」
対して克己は腕にドリルをまといあっさりと相殺する。
(くっ……これが大道克己のエターナルの力! 死してなお、一筋縄ではいかないですね!)
力の差に驚きつつ、タソガレはメモリを入れ替える。
「ナスカ・マキシマムドライブ!」
メモリの特性である超高速で克己を切り裂く。
「いかがですか?」
「……悪くないな。それならこいつだ」
「アクセル・マキシマムドライブ!」
克己も速度を上げ何度か相対すると、タソガレが地の利を得るため空に飛翔する。
「逃がすか」
「バード・マキシマムドライブ!」
克己は背中のマントを翼に見立て舞いあがり、タソガレを地面に叩き落とす。
「ぐっ!」
「まだバテるなよ? こっちは熱くなってきたところだからなぁ!」
「ヒート・マキシマムドライブ!」
克己の全身が熱を帯び、タソガレに突貫する。
「暑いですね……ならば、これはいかがですか」
「オーシャン・マキシマムドライブ!」
タソガレはなんと地獄に大海を呼び出し、辺り一帯を飲み込む。
「はっ! こんなこと前にもあった気がするな! だが」
「アイスエイジ・マキシマムドライブ!」
海が一気に凍りつき巨大な氷塊と化す。
「丁度良い、クールダウンしたかったところだ」
「ならば、そのまま粉々にしてさしあげましょう!」
「メタル・マキシマムドライブ!」
鋼鉄の身体で氷の塊を砕いている間に、克己は素早くそこから逃れる。
「ふぅ……。じゃあ少し変わり種でいってみるか」
「良いでしょう」
「キー・マキシマムドライブ!」
「クイーン・マキシマムドライブ!」
二人がお互いを指すと、無数の鍵とチェスの駒が出現し至る所でぶつかり爆炎が上がる。
「少し
「パペティアー・マキシマムドライブ!」
「!」
意識を完全に奪う、操り糸が克己に迫る。
「ジーン・マキシマムドライブ!」
それに絡めとられる直前に遺伝子を組み換えると、糸が植物の蔦に変わっていく。
「くっ!」
タソガレはあわてて引きちぎる。
「隙だらけだ」
「トリガー・マキシマムドライブ!」
克己はエターナルエッジを向け、弾丸を放つ。
弾丸が直撃すると爆発が起こる。その場には人の姿に戻ったタソガレが倒れていた。
「ふん……まあ、この程度……」
「ダミー・マキシマムドライブ!」
「!」
倒れていたタソガレの姿がかき消える。
放たれた弾丸は身代わりが受けていたのだ。
「お返ししますよ!」
「ロケット・マキシマムドライブ!」
克己の死角から大量のロケットが迫った。
「フハハ! そうこなくちゃなあ‼」
「ルナ・マキシマムドライブ!」
ロケットは克己が生み出した大量のデコイのエターナルに影響され、あらぬところに着弾していく。
「切り刻んでさしあげますよ!」
「ウェザー・マキシマムドライブ!」
爆炎を晴らしながら嵐が克己に迫る。
「サイクロン・マキシマムドライブ!」
「ふん!」
克己はエターナルエッジに風をまとわせ嵐の軌道をそらす。
続けて克己は「切り札」を抜き、タソガレは「牙」を剥く。
「ジョーカー・マキシマムドライブ!」
「ファング・マキシマムドライブ!」
「ぐっ!」「うっ!」
すさまじい身体能力で同時に空に飛びあがり、二人の攻撃が交差するとどちらも地面に倒れる。
先に立ったのはタソガレだ。
(今しかない!)
「これで終わらせましょう!」
「エクストリーム・マキシマムドライブ!」
極限まで力を溜めたパンチが克己の胸に直撃する。その身体が動かなくなった。
「勝負ありですね……はっ!」
「……いや?」
克己がその腕をつかむ。
「スカル・マキシマムドライブ!」
克己のマキシマムスロットにはスカルメモリが入っていた。
「死人は死なない。当たり前だろ? だが……遊びは終わりだ」
しかし、今の一撃は危なかったのか、克己は距離をとるとついに最終手段のゾーンメモリを出した。
(! まずい!)
タソガレはその恐ろしさを知っている。
常人ではまず耐えられない二十六連発のマキシマムドライブ。
世界を破壊するそれが放たれれば敗北は確定する。
「させませんよ!」
「イエスタデイ・マキシマムドライブ!」
「ほう?」
タソガレは時間を巻き戻し、克己からゾーンメモリを奪い取った。
「さあ、さらなる地獄に送ってあげましょう!」
「ゾーン!」
「ゾーン・マキシマムドライブ!」
タソガレは自身の腰のマキシマムスロットにゾーンメモリを装填。
残りのメモリが全身のマキシマムスロットに叩き込まれる。
「アクセル! バード! サイクロン! ダミー! ファング! ジーン! ヒート! アイスエイジ! ジョーカー! キー! ルナ! メタル! ナスカ! オーシャン! パペティアー! クイーン! ロケット! スカル! トリガー! ユニコーン! バイオレンス! ウェザー! エクストリーム! イエスタデイ! マキシマムドライブ!」
けたたましいガイダンスボイスが地獄に鳴り響いた。
タソガレはその上でベルトのエターナルメモリを逆手に持ったエターナルエッジに押し込む。
「エターナル・マキシマムドライブ!」
空に舞いあがり自身のマキシマムのパワーを抑制するマントを外し、その力を一身に受ける。
「例え本物であろうともメモリの数は私のほうが多い! 負けるわけがない! ハアアッ!」
タソガレの二十六本のメモリを使った必殺のキックが克己に迫る、が。
パスッ。
「なっ、何⁉︎」
軽い音がしたと思えば、克己はその最強の一撃をいとも簡単にマントで防いでみせた。
「なんだ。俺の真似事をしているくせに、これがすべてを通さないことを忘れてたのか?」
エターナルのマントにはすべての攻撃を無力化する性能がある。
「俺を本気にさせた礼だ。見せてやる。……真のエターナルの力を!」
今度は克己がエターナルエッジにエターナルメモリを押し込んだ。
「エターナル・マキシマムドライブ!」
タソガレの全身にノイズが走る。
「バ、バカなっ……⁉︎ メモリが機能不全に⁉︎ ガイアメモリの王者たるエターナルが⁉︎」
キックの姿のままで動けなくなったタソガレを、克己は鼻で笑うとマントで弾き飛ばす。
「勘違いするな。エターナルが強いんじゃない。俺が使うからこそ『最強』になる。俺とおまえじゃあ格が違うんだよ」
「そんな理屈が……!」
「おまえは所詮、ガワをかぶっただけの偽物。俺こそ本物の仮面ライダー……エターナルだ! これからも永遠になッ!」
克己はジャンプすると足に青い炎をまとった回転キックをタソガレに叩き込んだ。
その姿は「E」の字のようにも見える。
マントを外してしまったタソガレには避けようがない。
「グハッ……!」
克己はマントをはためかせながら華麗に回転して地面に降り立つ。
「忘れるな。俺は負けたんじゃない。『たまたま風が吹いただけだ』」
たしかにあの瞬間、風都に風が吹かなければWは勝てなかった。
ここまでありありと事実を言い表した負け惜しみもないだろう。
「終わりだ。
敗者にこれ以上見せる顔はないと背中を見せた。
「グワァァァァッ!」
断末魔を上げるタソガレを爆炎が包んだ。
変身解除され、ベルトとメモリが破壊されたタソガレは立ちあがる。
だがその顔には薄ら笑いが浮んでいた。
「……本物に、敗れるとは……借り物の身としては、悪くない……運命……」
「いい心づもりだな。喜べ。これからは永遠の
克己の言葉に反応したようにタソガレの足元に亀裂が走ると、地面に崖ができた。
体勢を崩したタソガレがそこへと落ちていく。
崖には無数の異形が、救いを求めてか、新たなる犠牲者を引きずり込むためか、手を伸ばしていた。
タソガレはその手に導かれるようにして……奈落の底へと姿を消した。
克己の言葉どおり、そこから先はさらなる地獄が待っているのだろう。
「さあ、地獄を楽しみな!」
タソガレへの宣告か激励か、克己は左手をサムズダウンした。
ひとときの楽しみを終え、変身を解いた克己にどこからともなく拍手が送られる。
「いやぁ。見事でしたねぇ」
「先生か」
その人物は不気味な笑みを浮かべながら、時折舌なめずりをした。
黒いハットをかぶった紳士・
「エターナルはたしかに強いメモリです。だが、使用者が虫けらでは意味がありません。選ばれし者こそ力を得る権利がある。ですが……私も是非、欲しいですねえ」
井坂の目が貪欲そうにエターナルメモリを見た。
「相変わらず、嬉しくて心臓が止まりそうなことを言ってくれるな」
「死人にそのように言ってもらえるとは、医者としては喜ばしい限りですよ」
「おやあ? 先生も死んでなかったか?」
「おっと、そうでした。ここには長くいるもので。すっかり忘れていました」
死人同士のブラックジョークに二人が笑う。
だがすぐに井坂はため息を吐く。
「……それにしても退屈ですねえ。治療する相手もいないのでは、暇を持て余してしまう」
「ここには生きてる奴も、怪我をする奴もいないからな」
「そうです。……だが、我々にはこれがある」
井坂は銀に輝くウェザーメモリを取り出す。
「そのエターナルメモリを賭けて、勝負しましょう」
「おいおい、先生。『また』か?」
克己はあきれた様子で言った。
「いい相手だと思いますがねえ。刺したメモリの数なら、あなた以上でしょうから」
「それは違いない」
井坂は肉体・能力強化のために通常、「
「『求めよさらば与えられん!』 私はそのメモリが欲しい! もののついでです、私も楽しませてください! 時間ならいくらでもあるのですから!」
「……たしかに、悪くない賭けだ。退屈しのぎにはなる」
「ガイアメモリの王にそう言ってもらえるとは嬉しいですねえ!」
「ウェザー!」「エターナル!」
二人がメモリを起動する。
井坂は耳の辺りにメモリを刺すと身体を雷雲が包む。
体色は白を主体に黒や金が配置された、後頭部に
「変身」
克己もベルトにメモリを入れ、開く。
「エターナル!」
再びその身体にエターナルをまとった。
「負けても何度も戦えるなんて、地獄も存外、悪くありませんねえ!」
「フハハハハハ! もっと、楽しめ! 死神のパーティタイムだッ!」
高らかに笑い合いながら白き死神同士が地獄で激突した。
彼らにとって、このとき、この一瞬だけが、刺激を与えられ、自らの存在価値があると錯覚できる。
だが、これがいつまで続くのか。
そして、いつ終わるのかはだれにもわからない。
永遠に。
〜Eとeのケミストリー〜
《次回予告》
「さあ、検索をはじめよう」
「キーワードは」
「『
「『
「『
「そして……」
「『J』」
「この
《次回、最終章》
〜J・jに贈る言葉〜
《これで終わりだ》